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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


最後の晩餐〜怪奇テーブル
------<オープニング>--------------------------------------
 立秋をすぎ、暑さもひと段落かと思いきや、東京は相変わらずの猛暑にみまわれ残暑は厳しさをむき出しにしていた。
 この一月の間に未解決の死亡事件が警視庁管轄区域で勃発していた。担当刑事達の頭を悩ませるような不可解な事故や病死が相次いでいた。警視庁では緊急対策本部を設置する事を決定、本日その最初の会議が行われていた。だが、手がかりはまったくなく、また相次ぐ死亡事件の関連性がまったく見えてこず、会議は空転するばかりであった。

 そんな折、月刊アトラス編集部に独りの女性が姿を現す。雑然、騒然としている編集部の入り口でたじろいでいる20代前半と見受けられる女性は、どう取り入ればいいか思案にくれていた。
 その時、編集長碇 麗香に尻を蹴飛ばされ、編集部から飛び出すような勢いで飛び出してきた三下 忠雄は、
「うわ!」
 とうめき入り口でたたずんでいた女性にぶつかり
「ごめんなさい、ごめんなさい」
 といいながらずれた眼鏡を手で整えながら女性に向き合った。
 今しかない、と決めたその女性は思い切って三下に向かって、
「月刊アトラス編集部の方ですか」
 とたずねた。
 女性の端整な顔立ちにぼう、と見とれてしまった三下は緊張しながらようやく、
「あ、は、はい!」
 と答えるのが精一杯であった。
「編集長さんにあわせていただくわけにはいきませんでしょうか」
 と小田島 日香と名乗った女性は、三下にたずねる。
 入り口でごたごたしている三下に目を付けた麗香は、何をやっているの、早く取材してらっしゃい、と怒鳴りつけた。
「あ、今のが編集長です」
 と三下から聞くと、独り勝手に麗香目指して日香は編集部内に入っていく。そして麗香のデスクの前まで行くと、一方的に勢いづいて次のような事を麗香に告げた。
 
 最近ある噂が流れている。それは、不思議なテーブルがあり、一見普通のテーブルなのだが、そのテーブルで食事をとると、それから数時間内に謎の怪死をとげてしまうというもの。料理に毒が仕込まれている、とかそういう話ではない。でも、そのテーブルで食事をとると「最後の晩餐」とばかりに不思議な死に方をしてしまう。日香の恋人もその噂を聞き、いたずら半分で試してみたばかりに死んでしまった。恋人の死から立ち直れない日香は、せめてもの慰めにそのテーブルの謎を解明して欲しい、恋人の無念を晴らしたい、というのだ。

 話を聞いて、その噂をちょっと聞いた事があった麗香は、そのテーブルの所在についてわからなかったため取材を行っていなかった、という経緯があったため話を聞くうちに気色が段々と変わっていった。すなわち、不謹慎にもこれ幸いという思いが顔に表れた。
 すぐに取材に取り組み、この噂を記事にしよう、とこのテーマに見合う人選を始めた。------------------------------------------------------------

◆カウンターにて
「リンクウッド、シングル、ロックで」
 バーテンダーにそう告げると、バーテンは無愛想にうなずきバカラのショットグラスにキューブアイスをカラリと落とし琥珀色の液体を注ぐ。今までいろんな場所、たくさんの時間を酒場で過ごしてきたけど、今日はまた格段と緊張して飲む酒だな、レイベルの目の前で12年寝かされたスコッチがグラスに注がれ満たされていく様を見つめながら言いようのない不安感と緊迫感に支配されていた。
 都心を離れ、都内にしてはやや小さいこの街のやや古ぼけた感のあるこのバーに入って1時間はたったであろうか。モルトウイスキーを2杯空にするだけの時間がたった。カウンターには3人ほどの客が止まり木で羽を休め、一日の疲れで緊張した体をアルコールでほぐしているのだろう。互いに話あっているところから、恐らくこの3人は同じ会社の同僚か、友人、またはこのバーの常連客同士なのだろう。ぼそぼそとした話声が椅子を5つ隔てたレイベルの所まで聞こえてくる。何を話しているのか、そこまでレイベルの元には届かない。
 バーテンがグラスに注ぎ終え、グラスをレイベルの前へすっと押し出してきた。レイベルはバーテンの顔をうかがおうと思ったのだが、照明がカウンターテーブルに強く照射しておりカウンターの向こう、それも照明の上に顔のあるバーテンの顔をうかがうことはできなかった。
 このバーはカウンターに10の椅子と、カウンターの後ろに4人がけのテーブルが2組あるだけの小さな店だ。世界のいろいろな酒場で酒を飲んできたレイベルにとって酒場での情報収集は手軽なものだ、と思っていた。のだが、どうもこの店は雰囲気がまるで異なり、困惑させられていた。具体的にどう、というわけではないのだが、何か客、それに独りでカウンターの向こう側に陣取っているバーテンダーも一種、独特の空気をかもし出している。レイベルは一見さんと見くびっているのだろうか、と疑念を抱いていた。なんにせよ、調査が終わればあまり居心地の良いとはいえぬこの店に二度と来ることはないのだから、と自信の胸に言い聞かせて居住いを正した。

 月刊アトラス編集部に顔を出したのは昨日の夕方になる。編集部員にちょっとした所用があって訪れたのだが、レイベルの光の波打つ金髪に編集長の碇 麗香が目を留めると、レイベルに向かって「こっちおいで」とにこやかな笑顔を浮かべて、手でおいでおいでをした。ふと不安な気持ちにかられたのだが、借りも貸しもある関係なので麗香のデスクまで行くことにした。そこでこのバーでの噂を聞かされた。座った人間が怪死するという不思議なテーブルの噂を。
「怪死するテーブルね。座ると必ず死んでしまう椅子や仕掛け皿の話なら昔聞いたことがあるけど」
「不思議な事があれば即取材。これ、うちの編集部のお約束ね。どう?報酬はあまりはずまないけど面白いそうじゃなくて」
「医者として興味はあるけど。自分から薄給だっていうものかね」
「正直なのよね。だから損してばっかり。ね、行ってみてくれる?」
 あまり気が乗らないレイベルだったが、麗香の押しの強さに負けてしまい依頼を受けることになった。
「結果はあまり期待しないで欲しい。情報が足りなさ過ぎる」
「情報は現地で集めて欲しいのよね。何せ場所は酒場。人と人が行き交う交差点でしょう?」
 レイベルの長生きの経験を生かすいい機会だと麗香は踏んだらしく、彼女ならば現地でどうにかしてくれるだろうという思惑のようだ。レイベルとしては過剰な期待に写らなくもないのだが、まあ確かにその現場がバーのようだから情報収集にはそれほど難渋しないだろうと安請け合いをしてしまった。後で後悔することになるのだが。
 そしてレイベルの手元には依頼主の描いたといわれる一枚の地図が手渡された。他にこの調査を受ける人間はいないのか、と問いたところみんな気味悪がって依頼を受けなかったらしい。どうもはめられたかな、とレイベルは思ったのだが後の祭りだった。
 
 昨日の忌まわしい事を回想してみてもしょうがない。が、いっこうに調査は進まない。それもこの嫌な雰囲気のせいだな、と思った。たいていのバーなら陽気に話しが進んで、調査も簡単に終わるのだが、この店はどうも勝手が違う。それぞれの領域を守って外に関心を示さない。バーテンダーからしてそもそも寡黙であり、笑顔一つこぼさない。それ以前に今だレイベルはバーテンの顔を見ることに失敗している。この店の照明がそういう構造なのだから、あまりバーテンは人好きのする人間じゃないのかもしれない。それではこの商売やっていけない、と思うのだが。
 その時だった。レイベルの耳に突き刺すように気になるワードが飛び込んできた。
「また死んだらしいぜ」
 という声が聞こえ、その後に、くっくっくと低く嫌らしい笑い声がついてきた。
 レイベルは声のする方に全神経を傾けた。体中を耳にして。だが、その後の言葉は上手く聞き取る事ができなかった。
 恐らく、この店の座ると死ぬというテーブルの噂話だろう、と直感で受け取った。無意識のうちにレイベルはテーブル席の方に首を向けた。テーブルが2つ空いている。麗香の話から推測すると、このテーブルのどちらかが噂のテーブルなのだろう。薄暗い照明ではっきりとは見えないがテーブルを注視する。1つのテーブルはいたって普通、黒塗りの木製のテーブル。もう1つをよく観察してみると今まで感じかなった違和感を覚えた。そのテーブルをこの店に入ってから今までは普通のテーブルだと思っていたのだが、明らかに不自然な点がある。そのテーブルもやはり木製であるのだが、塗装が施されておらず軽くニスを塗ったような光沢があるだけである。それはそれで完成されたテーブルであると言われれば納得するのだが、この店の他の調度品との調和がまっとくといっていいほど取れていない。その空間だけまるで異世界のような様相を呈している。テーブルの上からは各々にサスペンションライトが下げられ、テーブルを照らし出している。明かりが差しているのに何故かその空間だけ黒々としているようにレイベルには感じられた。
 意を決して先ほど噂話をしていた客に話かけようとレイベルは決めた。恐らく、あの塗装されていないテーブルが噂のテーブルであろう、と。そこまでめぼしがついたがまだあのテーブルに近づく勇気が持てないでいる。禍々しい雰囲気がレイベルを怖気付けさせる。今とりあえず情報収集できるとすれば先ほどテーブルの噂話をしていた3人組からだ。
「先ほど『死んだらしい』っお話されてたようですが、ひょっとして今噂になっているテーブルの怪談の話でしょうか」
 と思い切ってレイベルは話かけてみた。先ほどから3人組みは人を寄せ付けない雰囲気を醸し出していて非常に話を切り出しにくかったが、ストレートに聞いてみた。すると3人組の客は今までぼそぼそと話しをしていたのをぴたっと止め、そろって顔を見合わせているようだ。レイベルの席からおよそ4m弱離れているだけなのだが、店の薄暗い照明のせいか、その表情をうかがい見ることはできなかった。やがて、3人組みはまたぼそぼそと会話を始めてしまい、レイベルの問いに答える者はいなかった。ひょっとしたらこの店ではその話はタブーなのだろうか、バーテンの手前その噂話をする事はできないのだろうか、とレイベルは思った。それにしてもレイベルは話を無視された形になったので以前より居心地が悪くなってしまった。それになんとなく腹立たしくなってきたので、手元のグラスをぐいっと一気にあおった。

◆二人目の客
 レイベルの真後ろにあたる位置で扉の開く音が聞こえた。それも力強く勢いづいて。扉を開けた人物は、つかつかと足音を立てカウンターに近づき、
「バカルディ、ロックで」
 とバーテンに注文をすると、レイベルの隣の席を音を立てて引いて無造作に座った。
 その男はバーテンの後ろに広がるバックバーをサングラスの目で眺めやり、そして店の中をぐるりと見渡した。すると、
「マスター。あのテーブル、なんか曰くありげだね」
 と口を開いた。バーテンは顔をその男の方へちらりと一瞥をやるとすぐに、手元のグラスにラムをコトコトと注いだ。
 レイベルはその男に興味を抱いた。それは先ほどレイベルが怪しいと踏んだテーブルの話を、その男は口に出したからだった。隣の男は『あのテーブル』としか言わなかったのだが、恐らく間違いなくレイベルの思っているテーブルに違いない、と思った。レイベルは隣に座った男を盗み見た。年の頃は30代前半といったところの青年に見えた。髪には整髪料をつけ短髪の髪を立たせている。こげ茶色のジャケットをはおり、表情はサングラスのせいで見分ける事ができない。観察をしていると、
「これはこれは。金髪に碧眼の御婦人のお隣とは気づかずに、失礼しました。今日はお独りで?」
 とレイベルの方に顔だけ向けて話しかけてきた。
「独りだと寂しい女にみえて?」
 別に本気で受け答えしているわけではないのだが、これはいい機会だとレイベルは思った。この男はあのテーブルの噂の何かを知っているのじゃないか、と。
「いえいえ。あんまり美しい方がお独りとは想像できなかったもので。こんな綺麗な方に独りで酒を飲ませるのは人類の損失というものです。できれば、私めでよろしければしばしお話相手になれるかと思うのですが」
 と口元を緩めてレイベルに軽く頭を下げてきた。美しい、綺麗な、という形容をされるのは悪い気がしないが、この男の場合あまりに口が軽いので背中がむず痒くなってくる。だが、ここは我慢だ。この男からあのテーブルの話を聞きだすまで。
「ところで、先ほどあのテーブル、ってお話されてたようですけど」
 とレイベルが水を向けると
「ああ、ちょっと野暮な用事でしてね。ひょっとしてあなたもあの噂、御存知なんですか?」
「ええ、ちょっとはね。野暮な用事と言いますと?」
 とレイベルが尋ねると、その男は内ポケットから一枚の名刺を取り出し、レイベルの前に差し出してきた。その名刺にレイベルは目を落とすと、そこには「KM探偵社 調査員 北沢 摩周」と書かれていた。
「探偵なんてやくざな商売やっているもので」
 と北沢は鼻の頭にしわを作って苦笑いをしてみせた。
「北沢さん、ですね。私、レイベル ラブと申します。私もあのテーブルの事をちょっと調べているもので」
「おやおや。それは偶然ですね。ひょっとして同業さんですか?ラブさん」
「レイベルで結構です。私は探偵さんではありませんよ。探偵で噂話を調査するなんてお珍しいですね。北沢さん」
 とレイベルは尋ねたものの、「怪奇探偵」で馴らしている草間の事を思い出していた。
「摩周、ましゅうでかまいませんよ。レイベル」
 自分からレイベルと呼んでくれと言ったものの、いきなり呼び捨てにされるとは思ってもみなかった。この男思った以上に軽い男かもと思い、少々鼻白んだ。なんとなく、今まで丁寧語で話していたのが馬鹿らしく思えてきて、いつもの口調でいいか、と思った。アルコールが少し入っているせいもあるのだろう。心が大きくなった気がする。
「で、摩周はどういった経緯でこの噂に?」
 摩周は顔を少し歪ませた。
「実はね、俺はそんな噂なんて信じちゃいなかったし、どうでもいい話なんだ。だがね、ある失踪人の調査を受けていた。調査を始めて3日後、その失踪人の死体を発見してしまってね。その調査の途中で話を聞いているうちに、あのテーブルの噂話をよく聞くようになった。まさか、と思っていたが失踪人は死亡。そう、あの噂のようにね」
 死体、と聞いてレイベルは嫌な予感が走った。麗香から依頼を受けた時にも変死体という話を聞いていたのだが、この時に初めてその噂話が実態を伴って現れたように感じた。いざとなれば、自分の手でその患者となる人物を、医療を駆使して回復させるという漠然とした自信を持っていたのだが、今この瞬間、死体という言葉を聞いてややその自信が後退していくように感じた。
「それで、その噂なんだけど、どこまで御存知?」
「どこまで、と言われても困るんだけど、いろんな話を聞いてきた」
 レイベルはこの噂話の曰くをまったく聞いていなかった。噂話、都市伝説のたぐいには必ず曰くが取り付いている。曰く、その部屋で自殺があった、曰く、その場所は昔墓場だった、等など。
「いろんな?あのテーブルにはどんな曰くがあるっていうの?」
「まあ、俺が聞いたところだと3パターンある。あのテーブルの上で悪魔との血の契約を結んだ者が過去にいて、その契約というのがあのテーブルで真夜中の2時に座ったものから魂を地獄へ落とすというもの。あと、昔あのテーブルで婚約を交わしたカップルがいたんだが、男が相手の女を裏切ってしまい、女は未練を残して自殺を図ってしまい、それ以後、あのテーブルで食事をするカップルが次々と奇怪な死に方をするようになった、即ち、あのテーブルには裏切られた女の怨念が残っているというもの。最後に、ある占い師が中世ヨーロッパの魔女の秘術を用いた禁断の占いを行おうとしたんだが、その禁断の術の最中、占い師の手違いによって占いをされていた女が死んでしまったという。その後、その女の霊はそういった不自然な死に方をしてしまったせいで浮かばれないでいてそのテーブルに着いた者を次々と呪い殺してしまうというもの。どれもこれも俺にしてみればどうでもいい話でな」
 レイベルは摩周の話を聞いて考えた。確かに、都市伝説にはよくありがちな噂話ばかりでいっこうに手がかりにはなりそうにないし、摩周の話だとその噂は複数あるという事。ますます絞り込めなくなってしまった。

◆からくり仕掛けの罠
 レイベルが独りで考え込み初めてどれくらいの時間がたっただろうか。摩周はラム酒をお代わりし、レイベルの前のグラスは結露がたまってテーブルの上に小さな池を作っていた。
「もし、もしも私の目の前であのテーブルに座って、呪いだの、真相はわからないにせよ、死にそうな人間がでたら私が救ってみせる」
 突然、レイベルが独り言のように言うと、摩周は驚いた様子でレイベルを見つめた。
「おいおい。どうしたっての?救ってみせるっていったいどうやってさ。まあ、俺はそんな噂は信じちゃいないがね」
「私はこう見えても医者なんだ。きっと私の力でどうにかしてみせる」
「なるほど。お医者さんね。へえ、そうは見えないけど。いいねぇ、こんな美人のお医者さんなら僕ちゃん治してもらいたいね」
 と、摩周は言うと、おもむろに席を立ちテーブルを指差して、
「治してくれるんなら、俺このテーブルに座ってみようか?」
 驚いたレイベルは、
「待て、まだ何が起こるかわからないんだ。私が治せる自信があるといってもその原因がわかってからだ」
「わかった、わかった。そう血相変えて怒らなくってもいいじゃん」
「でも、待って。その噂のテーブルって確かにこのテーブルなんだろうか?」
 レイベルが素朴な疑問を口走った。麗香に言われた店は確かにこの店だ。だが、どのテーブルについてなのかは聞いていない。
「俺がみたところ、このテーブルで間違いなさそうだ。だって、ほら」
 と摩周が指差した先にはもう1つのテーブルがあり、そこにはいつの間にか他の客が座っていた。
「それに、さっきマスターに聞いたとき、マスターは何も答えなかった。店にそんな薄気味悪いテーブルがあるとしたら、マスターはまともに答えないだろうしな」
 いつの間に客が入ってきたんだろう。さっき考え事をしていた時に来店したんだろうか、とレイベルは不審に思ったが、摩周の話からも件のテーブルに見当がついたので、次の行動に移ることにした。
 レイベルは、その塗装の施されていないテーブルを詳しく調べる事にした。席を立ち、そのテーブルへ向かう。だが、その時、レイベルは足元がぐらつき視界が軽く歪んだ。まだ、たったスコッチを3杯飲んだだけなのに酔ったのだろうか、と思った。だが、やがて足元もしっかりし視界ももとにもどったのでさほど気にも留めなかった。さて、と心の中でレイベルは呟き、テーブルを詳しく調べてみる。だからといってその席には着かない。まずは、どこから調べようか。かといって、他に客もいるしバーテンだっているので、あまり派手に調べることはできない。テーブルの上辺と裏面そして、足、さらに椅子を調べてみる。テーブルの上の天井はどうか、と。だが、何か仕掛けがあるようにも見えないし、不審な点はない。魔術や呪いの類でも、何か形跡が残っているはずである。
 席に戻って何事もなかったかのようにバーテンにお代わりを頼む。
「で、なにか見つかりましたか?ドク」
「不審な点はまるでなし。手がかりもなくなったわ」
「やっぱり無駄だろう?そんな噂話が現実にあるわけないじゃないか。そんなのは噂にきまっているのさ」
「じゃあ、摩周、あなたはどうしてこの店を訪れたの?それにどうしてあのテーブルの事を聞いてみたの?」
「そりゃ、一応手がかりの1つだからな。正直、こっちもお手上げでね。こんな噂話でも頼りの綱なんだよ」
 陽気で軽いと思っていた男が急にしおらしくなったので、レイベルはちょっと驚いた。こんな素直な男だったのか。
「だからといって変な噂話にのせられてるわけじゃないぜ。あくまであのテーブルが怪しいと思っているだけだからな」
 と一応の態度はとったものの、レイベルからはどこかから元気のように感じた。

◆三人目の客
 摩周が黙って考え込みはじめ、彼の煙草が3本煙になったその時だった。レイベルの後ろの扉が音もなく静かに開いた。店内は気づけば人でいっぱいになっており、カウンター席にようやく一つ空きがあるだけであったので、入ってきた人物は大人しくそのカウンター席についた。摩周の左隣であった。男はタンカレーを注文するとため息を一つついた。
 それに気づいた摩周がレイベルに向かって小声で
「なんか陰気臭いのが入ってきたな」
 と漏らした。
 すると男はバーテンに向かって、手帳と数枚の写真を取り出し
「ちょっと聞きたい事が」
 といった。男は警察手帳を見せた所から刑事のようだ。
「この写真の人物に見覚えは?また誰かと接触していた事はないか」
 と続けて尋ねている。だが、バーテンは相変わらず一言も口をきかずにいる。
 摩周が面白そうに小声で隣の男に向かって
「駄目駄目。ここのマスター無口で通ってんだから」
 とまぜっかえした。
 すると男は真剣な表情で、
「この写真の人物に見覚えは?あんたここの常連客だろう」
 と一方的に決め付けて話かけてきた。
 摩周は辟易した顔をしたが、1枚の写真に気づき、その表情が青くなった。
「この写真。これはいったいどこで」
「あんた、この人物に見覚えがあるのか」
 レイベルが摩周の態度の変わりように驚き尋ねる。
「摩周。どうしたの?」
「彼だよ。俺が探していた失踪人、そして死んでしまった」
「あんた何者だ?」
 と刑事が質すと
「あんたの商売敵、探偵だ。その写真の人物は俺の探していた人物だ」
 刑事は探偵という言葉を聞くと、ふっと鼻で笑い、
「そいつはご苦労さん。で、あんたはどこまでこの男のことを知っている?」
 と摩周に問いただした。
「それはこっちが聞きたいね。捜査はどこまで進んでいる?それにどうしてこの店にきた」
 摩周が勢い込んで問い詰めると、刑事は苦々しい表情を浮かべ、
「現在調査中の一連の怪死事件の害者の足を洗うと、全てこの店に行き着く」
「それで聞き込みかい。で、どこまで調査は進んでいるんだ?容疑者の1人でもでてきたのかい」
「目下調査中だ。それ以外は話す事はできない」
 と取り付く島もなかった。

◆噂の殺意
 たまりかねたレイベルが刑事に一連の噂話の事、そしてテーブルの事を話した。
「テーブルに座った人間が死ぬというのか?そんな馬鹿げた話信じているんじゃないだろうな。馬鹿馬鹿しい。そんなことよりあんたもこの写真に心当たりはないか」
「じゃあ、どうして刑事さんはこのお店に?被害者がみんなこのお店に来てる事は調べてわかったんでしょうけど、それ以外にも何かこのお店に原因があると踏んでるから来たんでしょう」
 レイベルが思わず語気を強めて口火を切ると、堰を切った放水のように勢いづいてしゃべった。
「わかった。何かあるのね。このお店か、私達の言うそのテーブルか、もしくは、この店の誰かに」
 レイベルのあまりの勢いに押されてか、刑事は渋々と口を開いた。
「以前、この場所、この店ができる以前に殺しがあった。被害者は成人女性。だが、ホシは今だつかめず。容疑者は一応上がっているのだが、害者の死に不審な点があってな。いや、死因は不明のまま、今だ未解決となっている。捜査もほぼ打ち切りの状態だ」
 いやに素直に話し出したしおらしくなった刑事を不審に思った摩周が尋ねる。
「んで、その害者があんたの知り合い、ひょっとすると恋人だったりしてな」
 摩周のその発言に、きっと睨み返す刑事。レイベルはまさか、と思った。
「ま、まさか図星」
「否定はせん」
 と刑事は言ったきり無口になった。
 レイベルの頭にピンと閃くものがあった。この同じ場所を起点とする事件が2つ。何か関連があるかもしれない、解決の糸口になるかもしれない、と。
「刑事さん。その以前起きた事件、容疑者がいるっていってたわよね。その容疑者と今回の事件、何か関係があるのかしら」
 あまり思い出したくないのだろうか、頭を軽く左右に振り、答えた。
「いや、その容疑者だったら完全なシロだ。何せ、害者の死因が単なる心不全だ。害者から特別な薬物も出ていないし、容疑者は害者の死亡時に同じ場所に居合わせただけだ。特に、何かをしていたわけじゃ・・・・・・」
 刑事が眉をひそめ、視線が虚空を捕らえる。レイベルは突然話を打ち切った刑事を不審に思い話しかける。
「どうしたの?」
「いや、先ほどのあんた達の話。占い師がどうって話があったろ」
 摩周が答える。
「ああ、占い師の占いで死んだ女の話か。ありゃ、どうみたって単なる話だよ。どこかの誰かが作ったんだろう」
 単なる噂話とは思えない、何かの手がかりだと思っているレイベルは、
「でも、きっとそういう話にだって何かの手がかりが」
「そうだ。その話は作り話なんかじゃない」
 刑事の思わぬ一言に、レイベルと摩周はしばし戸惑った。レイベルは思わず、
「作り話じゃないって、どういう事」
 と刑事の顔色をうかがいながら尋ねた。この人どこまで本気なのだろうか、と。
「さっき話したこの場所での事件。その話がその噂話とそっくり同じなんだよ」
 えっ、とレイベルと摩周が言葉を詰まらす。
「作り話なんかじゃない。その害者はこの場所で占いの最中に死んでしまったんだ」
 
◆増えゆく殺意
 刑事の話が終わるとしばらく、3人は黙って酒を飲んだ。それぞれ思うところがあって思考に集中しているようだ。酒場なので黙々と酒を飲むペースが上がる。レイベルが今日何杯目かもう忘れたくらいのスコッチをお代わりした時、ふと刑事の方を見やると、刑事は涙を浮かべている。恐らく失くした恋人のことでも思っているのだろう、と黙って見過ごした。
 すると、刑事はだいぶ酔いが回っている様子でこう言い出した。
「あんたたちの話だとあのテーブルに座ると死ぬんだってな。へへ、死神でも現れるのかね。それとも天使でもやってきてあっちの世界に連れてってくれるのか」
 見かねた摩周が、
「あんただいぶ酔いが回ってるみたいだ。そろそろやめておいたほうがいいんじゃないか」
「へへ、勤務中じゃないんでね。誰にも邪魔されずに飲みたいんだ、俺は」
 そういうとふらふらとグラス片手に、あのテーブルへと歩み寄る。そして、
「あっ」
 と、レイベルと摩周が叫ぶが早いか、刑事はあのテーブルに腰掛けた。
「俺はな、死んだ人間なんだ。あいつが死んで、俺も死んだ。死んだも同然なんだ。もう抜け殻なんだ。だから、いつお迎えが来ようがかまやしないんだ」
「おい、早くそこからどくんだ」
 レイベルが思わず叫んだ。だが、酔いが回った刑事はどこうともしない。見かねた摩周が立ち上がり刑事に歩み寄る。
「あんたいい加減にしないか。みっともない」
 とテーブルから立ち上がらせ、もとのカウンター席へと座らせる。
「あんたの恋人が死んだってのは気の毒だが、刑事だったらホシを上げるのが彼女のためだろう」
「お前に何がわかるっていうんだ。俺は絶対にシロだなんて思っちゃいないんだ。なのに課長をはじめ上の連中は捜査打ち切り。それじゃ誰も浮かばれやしない」
 レイベルは2人のやり取りをぼうっと見ていた。酔いがまわったのだろうか。辺りがぼやけて見える。気のせいかこの店の客数が増えたような気がする。気のせいか、と思いながら頭数を1人ずつ数えていく。1、2、3、4、5・・・・。どうやら店中に客があふれかえっているようだ。通路にも人があふれていて座れずに立っている人までいるようだ。レイベルは数え続けるのだが、どうも数が途中であやふやになってしまう。酔いがまわっているのか、そんなに私は飲んだのか、と自問自答しつつ、また客の人数を数え上げていく。8、9、10、11・・・・・・・。
 やがて人数が30を越えた時点でようやくレイベルは事の異常さに気がついた。おかしい。これだけ人数が増えているのに、レイベルはその客が入ってきたのを1人として見ていない。レイベルが1つしかない出入り口に一番近いというのに。気がつかないなんて事はないはずだ。現に、摩周と刑事が入ってきたときには気がついた。それが、これだけ人数が出入りしたのにレイベルは気がつかないなんて、そんな事はない、と。
 事の異常さにあわてて、摩周と刑事にその事を告げた。すると摩周も
「そういえば、気がついたら人いきれでむんむんしてるな。一体何人いるんだ」
「何人じゃないのよ。客の出入りにあなたも気がつかなかったのね」
「そういわれてみれば出入りがあったのは気がつかなかった」
「これっておかしいわよ」
「ああ、異常だ。おい、あんたは気がついたか」
 と摩周が刑事に尋ねると刑事は、何かに取り憑かれたようなぼうっとした表情で前方の虚空を眺めている。摩周が何度話かけても、肩をゆすってもまったく反応が返ってこない。
「一体、どうしたっていうの」
「わからん。まさか、あんたの言うとおり、あのテーブルを使ったからだってのか」
 出入りの気配がなかった数十人の客、あのテーブルを使った直後取り憑かれたような刑事。ようやくレイベルの頭の中の非常ベルがなりたて始めた。

◆仕組まれた殺意
 これは異常事態だ、とレイベルは察知したのだが、体が言う事を聞かない。いや、それ以前にどうも気分が優れない。気持ちが悪いというのか、眼前に幕が覆うような閉塞された圧迫感を感じる。アルコールを多量に摂取したからか、とレイベルは思ったのだが、モンゴロイドの摩周はコーカソイドのレイベルより飲んでいても平気そうだし、レイベルの本来のアルコール分解の許容量の半分も飲んでいないはずだ。普段なら一本くらいは平気なレイベルである。
 レイベルは席を立ちとりあえず気分転換を図ろうとトイレへ向かおうとした。だが、もう店内には人でいっぱいになっており、歩くのもおぼつかない。人垣を掻き分けてなんとかトイレへ向かおうと懸命になる。だが、どうにも思うように前に進む事ができない。後ろから摩周の声が聞こえるような気がするのだが、レイベルの周りに薄い幕でも下りたかのように視界がぼやけ、聴覚も鈍くなる。やはり飲みすぎか、今日は体調がすぐれないのか、といろいろ考えているうちに、気がつくと1つのテーブルの前に出る。あのテーブルである。一体どう歩いてこのテーブルの前にやってきたのだろう、とレイベルは踵を返してもう一度トイレへ向かおうとした。相変わらず人の山々である。思うように進めずに苦渋しているうちに、気分も段々と悪くなり早くトイレへ、トイレへ、と思って人の波を掻き分けるとテーブルの前にでる。またあのテーブルだ。後ろから摩周の叫び声が聞こえるのだが、何を言っているのか判別が不能である。摩周の方を向こうと努力するのだが、周りの人にもみくちゃにされ思うように体が動かない。
 レイベルがそうしているうちに、周りの人影から小さな声が聞こえてくる。
「・・・すわれ。・・・すわれ」
 と最初は小さく、やがて段々と大きくその声の合唱が響き渡り、レイベルの聴覚を占拠する。。
「すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。すわれ。」
 うるさーい、とレイベルは心の中で叫んだ。もはや声がでないほど気分が優れない。その薄気味悪い合唱の奥の方で、摩周の声が辛うじて聞こえる。
「・・・すわっちゃ駄目だ」
 そういっているように聞こえる。だが、レイベルは人影の合唱に精も根も尽き果てようとしていた。そのうち、次第に辺りの声に慣れてきた。するとどうだろうか、レイベルはそのテーブルに着くことがすごく当たり前のような気がしてきた。長年使っている自分のデスクのように。いや、それ以上に、レイベルはそのテーブルに着かなくちゃいけない何かがあるように思えてきた。座らなくちゃいけない、そんな気分になってくる。やがてその気持ちは確信へと変わり、ワタシハコノてーぶるニスワラナクチャイケナイ、という言葉が頭の中でくるくると周り始めた。
 その時、レイベルの隣に1つの人影が現れた。ぼうっとそこだけ薄明かりが差しているように見える。その時、レイベルの背後で声がした。
「日香、日香!日香だよな。あぁ、そうだ。間違いない」
 さっきまで呆然としていた刑事が突然叫び出した。
 レイベルは日香という名前を頭の中でぐるぐると回してみた。どこかで聞いた名前。誰だっけ。そうだ、月刊アトラスの麗香の所へこの依頼を持ち込んだ女性の名前だ。小田島 日香っていったっけ。でも、その人が今頃なんでここに、と疑問を感じたが、それ以上考える事がレイベルにはできなかった。
「早くそのテーブルの椅子に着いて。そしてあなたもこっちへいらっしゃい」
 日香はそうレイベルに告げると、レイベルは抵抗することができなくなってしまい、そうするしかないと思った。

◆傷痕
 摩周の所からはレイベルがテーブルの前で呆然としている姿が見える。隣の刑事は突然わけのわからない叫び声を上げたと思ったらがくんと前のめりになってしまった。増え続ける客の数。おかしい。現実主義者で無心論者で無信心者の摩周にはこの異様な光景はにわかには信じがたかった。だが、目の前で起きている現実に冷静に対処するのは仕事柄訓練されている。明らかに自分の知らない何かが動き出している、と。
 レイベルの視界には1つのテーブル、それと日香しかなかった。いたってシンプルな構図にレイベルはまんざらでもない気分になっていた。世の中はシンプル、それでいいじゃないか、と思っていた。日香の声がする。
「早くあなたもこっちへいらっしゃい」
 そういう声が聞こえた時、日香の姿がより輝いて見えた。なんて綺麗なんだろう、とレイベルはその美しさに恍惚としていた。レイベルは早くこのテーブルに着いてしまうべきだと考えていた。そしてその時、テーブルの椅子が音もなく後ろへと引かれた。まるで、どうぞお座りください、といわんばかりだった。そして、レイベルはその椅子に向かって1歩、歩み寄った。足取りがなんて軽いんだろう、ととても気持ちが良くなる。多幸感に支配されていた。まるで天国に昇ったようね、とレイベルは思った。そしてもう1歩前へ。もう目の前には一対のテーブルがあるだけだ。さあ後は座るだけ、と腰を降ろしかけたその時、レイベルの体を強い衝撃が襲った。レイベルを覆っていた美しい光のカーテンが無造作に破られ、そこには不快感を伴った現実感が体を支配した。せっかくいい気持ちだったのに、とレイベルは強い憎悪感を抱き、この気分を壊した相手を強く嫌悪した。
「あぶなかった。あともう少しで君はあのテーブルに着くところだったんだ」
 という声がした。摩周のものだ、と気がつくまでほんの数瞬必要だった。
 すると辺りのざわめきがぴたっと止んだ。辺りには今までいたと思っていたバーの姿はなく、野原にぽつんと摩周とレイベルが座り込んでおり、刑事を背負った日香が中空に浮いていた。彼女は顔中に憎しみの感情をむき出し、目は血走り吊り上げ、口元は醜く歪んでいた。そして、こういうとふっと姿を消した。
「あなたも死ねばよかったのに」
(了)

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
 0606   /レイベル ラブ/女性/395歳/ストリートドクター

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■         ライター通信          ■
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 お約束の落ちになりました今回のお話、いかがでしたでしょうか?
 レイベルの過去をちょっとほじくって書いて見たいな、と思って推敲を重ねたのですが結局こういう話に落ち着いてしまいました。レイベルが男を翻弄する話というアイディアもあったのですが、軽くナンパしてくる男が登場したっきりになってしまっている、という現実です。
 テーマとなった都市伝説なのですが、座ると死ぬ椅子と話がありまして、その亜流です。プレイングで御指摘の通りなのです。昔、その椅子の話を聞いたときには心底気味悪く、怖い思いをしたものでして、おちおち椅子にも座れねぇと思ってビクついていた原体験をなんとか東京怪談のお話にできないものか、と依頼にしました。

 怪談の季節も終わりを迎えましたが、東京怪談はまだまだ続きます。面白そうな依頼があったらまた是非御参加ください。
 またどこかでお会いできるのを楽しみにしております。
 この度はありがとうございました。