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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


声失いし星(スター)・<調査編>

★オープニング
「声を失ったスター、か」
 草間武彦は、デスク上に残されていた、週刊誌の小さい見出しを見てそう呟いた。
 週刊誌は草間が買って来た物ではない。ここを訪れる誰かが、置いて行ったのだろう。
「全く、何で女はこういう、嘘か本当か分からない話題に踊らされるんだか……」
 そして、煙草を吹かし、横になる。

 どの位、時が経ったのだろう。興信所の玄関の、チャイムの音が武彦の安眠を妨げる。
「……誰だ?」
 むくりと起き上がった武彦を横に、零が玄関へと向かう。
「いらっしゃいませ。 どんな御用ですか?」
『こちら、草間興信所ですわよね……一つ、依頼をお願いしたいのですが……』
「……調査依頼ですね。 こちらへどうぞ」
 と、雫が中へ招き入れた。

『真理が声が出なくなった理由、それを調べて欲しいのです』
 依頼者の名前は平川静穂。芸能プロダクションの社長。
 そして、真理というのは、週刊誌の声の出ないスターの事。
『実は、その通りなんです。 知られては大事になる為、隠していますが……もう、時間の問題です。真理の声を、取り戻してください』

渡された情報は、真理が声を失った場所、真理の住所等が記されていた。


「本当に、武彦さんはこういう依頼がすぐ集まってくるわね、さすが、心霊探偵ね?」
 草間興信所でバイト(?)をしているシュライン・エマが、調査依頼の書類を見ながら言う。
「仕方ないだろ? 黙ってても依頼が来るんだから……心霊探偵で売っているつもりはないんだが、その名の方が有名になってしまったしな」
 武彦は、くわえ煙草をしながら言う。
 そう言う二人に零がお茶を持って給湯室から出てきて。そしてにっこりとシュラインに。
「仕事があるのはいい事ですよ。 昔は、人を雇う事も出来なかった位だったのでしょう?」
「確かに、ね……最初に来た頃と比べれば、ここもずいぶん賑やかになったわね」
 昔からここに出入りしているシュラインには、ここに出入りする人が増えたのを実感していた。
「まぁいいわ。この依頼、誰が行くのかしら? 私でも構わないけど」
「ああ……そうだな、シュラインと……すぐ連絡がつきそうな、プリスの二人で頼むとするか。確か今日本に帰ってきているはずだしな」
 武彦はアドレス帳を見て、プリスと呼ぶ者を探し出す。
「今からプリスに電話するから、ちょっと待っててくれ、その依頼書のコピーを頼む」
 と言って、武彦は電話のダイヤルを回す。
「分かったわ、プリスって、プリンキアさんの事ね?」
 武彦の言葉を聞いて、プリンキアを思い出す。あのアメリカンな口調の人だと。
 確かにメイクアップアーティストである彼女なら、芸能界へのコネもあるし、うってつけだろう。
「……私、事前に調べておきたい事があるから、コピーを取ったら先に行ってるわ。プリスには夕方に女子寮の前で、と言っておいて」
 シュラインは依頼書を纏め、コピーを取って戻ってくる。そして丁度武彦が電話を終わったのを見て。
「じゃぁ武彦さん、零ちゃん、行って来るわね」
「はい、いってらっしゃいませ、気をつけてくださいね」
 
☆ 電車の中で

 シュラインは、真理が声を失ったとされるスタジオへと、電車で向かっていた。
 幽霊が出るというスタジオ、そして真理がその怪談話のレポーターとして仕事を請け負っていたという事。
 その二つから、幽霊が何らかの悪さをしているのではないか、とシュラインは考える。
「しかし、霊はあくまでも可能性の一つ。真理さん自身も霊感が強いと聞くし、霊がその霊感に引き寄せられたと言う事も考えるわね。単に精神的な原因、というのもあるでしょうけど……」
 依頼書を見返して、原因を色々と考えるが、それは全て想像でしかない。
「ともかく、スタジオへ行き、スタジオに現れた霊の原因を調べる事が先決ね。 ただ、人が死んだとなれば、管理している側も隠そうとしているでしょうけど……」
 そう呟くと、彼女の前の吊り革に手を掛けていた人が、脇に抱えていた週刊誌を落とす。
「ん……はい、落ちたわよ?」
 シュラインが、その週刊誌を拾い、目の前の女性に返す。
「あ、ありがとうございます」
 シュラインがいえ、とにこやかに微笑む。そして目線を上げると、電車の中吊り広告が見える。
 その中に、平賀真理の事についてなにか書かれてないかと見渡していると。
【スクープ! MARIAが声を失った真実】
 という見出しを見つける。その横には、
【3年前の人気歌手、TOMOMIの再来と呼ばれる歌手、MARIAが声を失った訳】
 と書いてある。ゴシップ記事だから面白おかしく書きたてているように、目に映るが。
「……3年前……一応、記憶に留めておくかな」
 そう考えている間に、電車はスタジオのある駅へと到着した。
 
☆ 幽霊の出るスタジオ

 そしてシュラインは、スタジオへと到着する。
「ここね……あまり周囲に人気がないけど……」
 スタジオを見て始めに思った事は、ともかくあまり人気がない事だった。
 現在ではここは使われているのだろうか、と少し不安に思いながら。
「……ともかく、管理事務所に行けば、分かるわね」
 そう言って、スタジオの管理事務所へと向かった。

「どのような、ご用件でしょうか?」
 応対に出た職員は、突然来たシュラインに対して、不信感を露にした。
「平川社長から、連絡は行ってませんでしょうか? こちらの使用記録を調べたいと言う人が来ると」
「確かに話は聞いておりますが……貴方は社長とどのような関係なのでしょうか」
 明らかに、見せるのを渋っているような態度。シュラインは少しいらいらしながら。
「社長から調べて来いと言われたのです。それとも何か、調べられると困るわけでもあるのでしょうか?」
 社長から、草間興信所から来たと言う事を言うのは言わないでと言われていたシュラインは、逆に威圧に出て行く。
「あ、ありませんけど……ちょっと、お待ちください」
 そう言って、慌てて職員は奥の偉そうな者の所へ戻る。
(ふぅ……この分では、幽霊騒ぎも本当の事のようね。 そして、その使用記録にその真意が隠されている、というのもありえそうね……)
 と考えていると、先程の職員より偉そうな職員がやってくる。
「分かりました、使用記録をお見せいたしますので、中にお入りください」
 と中に招かれる。そして奥の粗末なソファーに座るよう勧められて。
「一つだけ、お願いしたいのですが……此処の使用記録は、絶対に他方へ漏らさないようにお願いします。 以前から報道の方々が煩いもので……いつも使ってくださっていた平川様の知り合いと言う事で、秘密を守って下さる、というのなら特別にお見せいたします」
「ええ……分かったわ。もちろん、他方に漏らしたりはしないわよ」
「分かりました……では、少々お待ちを……」
 そうして、暫く経った後に、このスタジオの使用記録を職員が持ってくる。その数、ファイル数にして10。
「5年前までのは、規約に基づき保存していましたが、それ以前のは既に焼却処分になっています。なので、ここにあるファイルが、現在存在する全てになります」
 と言う。
「結構です、では、調べさせていただきますね」
 時計の音だけが流れる事務室で、シュラインは使用記録を黙々と調べ続ける。
「……繁盛している時と、していない時の差が激しいわね」
 シュラインはある事を見つけ出す。3年前のある日を境に、暫くの間の予約がバツ印で消されているのだ。
「……このバツ印は何ですか?」
 とシュラインが聞き出す。職員は更に脂汗を出しながら。
「そ、その日から、改修作業が突然入ったのですよ……」
 と、言う。シュラインは一目でそれが嘘をついている目だと分かった。
「……3月18日……ね」
 日付をメモする。そしてファイルを閉じ、職員に向けて本題を切り出す。
「ところで……こちらのスタジオで、今までに収録中に死んだ方とかは、いらっしゃるのですか?」
 鋭い目で、じっと見られる職員は、更に更に脂汗を出す。言葉も「あー、うー」としか喋れていない。
「……いたのですね?」
 更に追求するシュラインに、職員は逃げられなかった。そして、正直にこのスタジオで死んだ者が居る事、どのスタジオで死んだと言うのを話し始めた。
「……そうですか、その死んだ方の名前は、何とおっしゃるのですか?」
 最後に、シュラインが聞いたその質問に、職員は【トモミ】、と答えた。
 
☆ トモミ?

 その後、シュラインはインターネットでその芸能人について調べた。
 検索しただけで、彼女がアニソンの世界で、根強いファンが居る歌手であったというのが良く分かる。
「……平賀さんと同じ方面で活躍していた歌手、そして、あのスタジオで、死んだ、か……共通点があまりにも多いわね」
 ネットで検索して、分かった事。
 トモミが死んだ2日後の、3月20日には新しいシングルが発売されることになっていた事。
 そして、そのシングルは突然販売中止になり、その歌を聞いた者は誰も居ないこと。
 彼女の声が、今の真理の歌声と似ていると評する者が、沢山居る事。
 最後に、真理と所属レコード会社が同じであった事……。
「……間違いないわね、これは……きっと、彼女に、トモミが取り付いているわ」
 と、シュラインは確信した。
 そして、シュラインが時計を見ると、もうそろそろ夕方になる。
「そろそろ、女子寮に行く時間ね……最後に、真理に逢えば、確信がもてるわ」
 と、カフェを後にした。

★ 昔の歌

 シュライン・エマは、女子寮前で待っていた。女子寮の入り口を見ると、なにやら警備員と男女の集団が押し合っている。
「……そろそろ、時間ね」
 シュラインが空を見上げると、夕焼けが紅く染まっていた。そして視線を戻す。遠くから青い髪の女性がこちらに向かって走ってくる。
「待たせたネ、ミズシュライン。真理のフェイバリットなお菓子買っていたらちょっと遅くなったネ、ソーリーネ」
「いえ……じゃ、行きましょうか。真理さんの所へ」
「OK、行くネ♪」
 そう言って、二人は入り口に入った。
 後ろではどうやら真理のファンらしい人達が騒いでいた。

 シュラインは、上に上がる前に、女子寮の寮母を尋ねる。
「すみません……この寮に、昔、芸名をトモミという人が住んで居ませんでした?」
 寮母は、少し暗い顔をして話す。
「ああ……居たね。 突然、事務所から部屋の物を片付けるように言われて、何でだと言われたら……収録中に死んだって聞いて、ね」
「そうですか……その方の部屋はどちらでしたか?」
「305だよ……だけど、今は、誰も入居してないよ。さすがに、死んだ人の部屋を使うわけにもいかないからね」
 と、寮母は告げた。

そして、その後、二人は真理の部屋へと向かう。
 プリンキアは部屋のチャイムを押して。
「ミズ平川? いまイマスカ? メイクアップアーティストのプリンキアデスー、お見舞い持ってきましたネー」
 と言うが、返事がない。何度叩いても変わらずだ。
「おかしいデスネ、部屋に居ると思うのデスが」
 と、プリンキアがドアノブを捻ると、鍵はかかっておらずに開いてしまう。
 二人は不審に思い、中へと駆け込む。入り口から奥のドアへ。ドアの奥からは、テレビの音がする。
「……ミズ平賀、大丈夫デスカ?」
 しかし、返答は無い。声を失っているのだから声での反応は無いだろうが、テレビの音以外は全く音を立てて居ない。テレビの音が周囲の音を消しているのだ。
「……行くしか、無いようね」
 ドアをバンっと開ける。目に飛び込んできたのはテレビと、ベッド。
 そして、真理はベッドの上で目を閉じて、すぅすぅと寝息を立てていた。
「なんだ……テレビをつけっぱなしで寝てただけね」
 と、シュラインは安心する。
「声が出なくて、部屋の中に閉じ込められる生活じゃ、仕方ないわね……」
 と、シュラインはテレビを消そうと近づく、と。テレビの中の司会が元気良く紹介を始める。
『次の歌は、トモミさんのウィズ・ユーです、どーぞっ!!』
 テレビからは、死んだ歌手、トモミの生前の姿が映し出されていた。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0818 / プリンキア・アルフヘイム / 女 / 35歳 / メイクアップアーティスト】
【0790 / 司・幽屍 / 男 / 50歳 / 幽霊】


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■   ライター通信          ■
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どうも、皆様始めまして。新人ライターの燕(つばめ)と申します。(多分新人ライターと着くのは次回まででしょう(汗))
これからどうぞ、お見知りおきを m(__)m

今回ご参加いただいた三名の皆様、どうもありがとうございます。
皆様のアクション、大変面白いアクションで、私も楽しみながら書かせていただきました。
今回の依頼は、調査編と解決編の2編構成で、今回のはその調査編のリプレイとなります。
前回の依頼に続き、全員ほぼ個別です。(一部一緒の部分はありますが……)
なんだかこっちのほうが自分の性に合って居るようですね(汗)

解決編に関してのヒントは、各キャラクターに分割して渡しています。司様の情報のみ司様個人所有です。
解決編に関してはその情報を使って下さいね。
解決編のみ参加するPCの方と、シュライン様及びプリンキア様の所持する情報は所持しています。

尚、文中の真理・及びMARIAというのは、誰も居ない街にて私が登録させて頂いた、
平賀・真理(ひらが・まり)です。詳しい情報は、誰も居ない街のコンテンツ等をご参照ください。
尚、私の登録した他の2人のNPCは、この依頼では出てこないのでご安心を。

>シュライン・エマ様
 どうも始めまして。シュライン様も始めてですね、ご参加いただき、光栄に思います。
シュライン様のプレイングに書かれていた質問はその通り、正解です。(^^;
シュライン様のプレイング、大変お上手で、それを上手く表現できたかどうか不安ですが……。
武彦さんについては、私なりの文章で表現して見ました……どうでしょうか?
今後も、頑張って行きたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いいたします。

解決編については、水か木曜日に依頼の受付を開始したいと思いますので、どうぞ宜しくお願いいたします。