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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


消えぬ忠義


◆オープニング
 それを一番最初に目撃したのは、夜遅く帰宅したサラリーマンであった。
 少々酒が入っていたらしいが、意識ははっきりしていたと、本人は証言している。
 そのサラリーマンが、ほろ酔い加減で帰宅途中、目の隅に何かが映って思わず足を止めた。
 だが、暗がりの上、酔いの入った目ではよく判らない。
 それでも不思議に思って、じーっと見詰めていると、暗闇の中に何かが現れた。
 現れたそれは、じわりじわりと染み出すように出現すると、白い煙のように広がっていく。
 サラリーマンがあまりの事に硬直して動けないでいると、やがてそれは何かしらの形をとり始めた。
「犬・・・?」
 微かに判別出来るのは、四つ足にしっぽ、そして垂れた耳。
 半分透けていてよく判らないが、それは確かに犬であった。
 ゴールデンレトリバーであるようだ。
 現れた犬は、くーんと鳴くと、サラリーマンなど見向きもせず去って行った。
 以上が目撃証言である。


「へ、編集長・・・」
「なにかしら?」
 月刊アトラス編集部、三下忠雄は、おそるおそる上司である女性の顔を見上げた。
「まままま、まさか・・・」
「なに?」
 返すその顔は、美しいながらもいたって厳しい。
「僕に・・・これの取材に行けなんて、言わないですよね・・・?」
「なにを言っているの、三下君」
 さも、あたりまえじゃない、と言外に告げる碇に、ほっとした三下だが、次の瞬間、自分の認識が甘かった事を実感させられた。
「他に誰がいるのよ」
 ・・・・・・。
「編集長ぉぉぉ〜〜〜〜〜!!僕、怖いの苦手なんですぅぅ〜〜!!」
 今にも泣き叫ばんばかりの三下。
 頭を抱えた碇を誰が責められよう?
「何言ってるのよ!幽霊が怖くて月刊アトラスの編集者が務まりますか!」
 さっさといってらっしゃい!!
「編集長〜〜〜〜〜〜」
 編集室に号泣が響き渡った。

 碇の声に叩き出されるように編集室を後にした三下は途方に暮れた。
「あぁ・・・ほんとに。どうしよう。そんな、幽霊犬の取材なんて!誰か・・・誰か助けて〜〜〜〜〜」


◆闇に浮かぶは
 微かな月明かりの中だった。
 それはぼーっと浮かび上がった。
 霧のように不確かだったそれは、やがてゆっくりと形を取り始める。
 すらりと伸びた四足。
 そして揺れるしっぽ。
 耳は垂れおり、つぶらな黒い瞳が印象的である。
 半分透けているものの、それは明らかに犬と判別できた。
 しかも毛並みのよいゴールデンレトリバーだ。
 犬はくーんと寂しそうにひと鳴きすると、その場を去って行った。


「わ〜かわいい〜〜〜!ねね!見て見て!」
「た、確かにかわいいですけど・・・透けてますよね・・・?」
「まぁ、幽霊犬だからねぇ・・・」
 透けてても変じゃないと思うけど。
 そう言ったのは着物を粋に着崩した女性であった。
 頬に人差し指を当て、微かに首を傾げる様子がまた艶がある。
 項に落ちるほつれ毛がなんとも色っぽい、色気たっぷりの女性である。
 同行していた女性のその言葉に、高校生らしき女の子が一気に青ざめた。
 黒いストレートの髪を腰まで伸ばした、小柄な女の子である。
「ゆ、ゆうれい・・・」
 いえ、そうなんですけど・・・。
「ねね、追いかけなくていいの?」
 振り返って尋ねたのは、先ほどまで幽霊犬に熱い視線を送っていた女性だ。
 日本人にしては彫りの深い顔立ちは沖縄を思い出させた。
 小麦色の肌がそれを証明しているようだ。
「ほら、いっちゃったよ!あのワンちゃん、どこにいくのかな??」
 犬が去った路地の曲がり角から顔を出したのは、三人の女性であった。
 この面々、一見なんの共通点のない三人に見えるが、幽霊犬を恐れた三下に頼まれやって来た三人である。
 夜遅く、しかも女性の身で幽霊犬の調査に来れるのだから、三下よりよっぽり勇敢と言えようか?
「おっといけない。じゃ、行きましょうか」
 先頭に立ったのは、着物の女性、棗桔梗(なつめ・ききょう)である。
 その後ろから、こわごわといったていで現役高校生の志神みかね(しがみ・みかね)が。
 桔梗に並んで、元気印の諸見里優希(もろみざと・ゆうき)が歩き出した。
「それにしても、幽霊が苦手なのに、なんで幽霊犬の調査なんて引き受けたの??」
 優希は、みかねを振り返ると言った。
「そうなんですけど・・・知り合いにゴールデンレトリバーを飼っている人がいるからなんだか他人事じゃなくて・・・。きっと、心残りな事があるに違いないと思うんです」
 出来れば成仏させてあげたいなって。
 そう言うとみかねは、はにかむように微笑んで見せた。
「同感だねぇ・・・」
 みかねの言葉に、桔梗がうんうんと頷く。
「その「ごーるでんれとればー」って言ったかい?えらく立派な犬だって話じゃないか。そんじょそこいらの野良じゃなし、愛されて生を全うした子が化けてでるなんて、ただ事じゃない。飼い主か誰かになにか用向けがあったりするんじゃないのかい?」
 桔梗さん・・・「ればー」じゃなくて「りばー」です。
 みかねは心の中で呟いた―。
「あ、あたしもそう思う!!きっと、何か思い残した事があるんだよね??」
 二人の言葉に、優希は嬉しそうに頷いた。
 あの犬を救ってあげたい。
 それは三人共通の願いであった。
「あ、そういえば、三下さんは??」
 肝心の三下の姿がない事に気付いて、みかねが声を上げた。
 たしか、調査を手伝うという話だったような・・・?
「あ、三下の旦那は、用があるからって伝言を貰ってるよ」
 振り返った桔梗が言った。
「それって・・・・」
 優希がうーんと唸る。
 逃げた・・・・?
 一同、声に出さすに呟いたのだった。


◆心に残る事
 歩き出した犬は、脇目もふらず、慣れた足取りで道を行く。
 微かな月あがりの中で、それは不思議な光景であった。
 半透明の、一目で通常ではないと判る犬が一匹。
 しかも微かに浮いているようである。
 ただ、その後ろ姿はどこか悲しげであった。
 やがて横断歩道まで来ると、犬は立ち止まった。
 座り込み、しっぽを振っている。
 やがて、くーんとひと鳴きすると、ゆっくりと消えた。
 後には、なにもない。
「あれ?消えちゃった」
 三人は犬が消えた辺りまで駆けつけると、あたりを見回した。
「もう、気配も何もないね。ここでぷっつりと消えちまってるよ」
 桔梗が首を振る。
 もはや、どこにも幽霊犬の存在した形跡は残されていない。
「この横断歩道で何かあったんでしょうか」
 見渡すのは、かなり道幅の広い十字路の交差点であった。
 三人の横を自転車に乗った男性が通り過ぎて行った。
 夜とはいえ、かなりの交通量があるようである。
「ここで消えたって事は、きっとココで何かあったんですよね・・・」
「うーん、どうやらここは散歩道だったようだねぇ・・・」
 みかねの言葉に、桔梗が何かを探るように目を閉じながら言った。
「うん、その可能性は高いよね。思い出の残る道ってわけだ」
 優希がうんうんと頷く。
 なんでそんな事が判るのだろう?と思ったものの、口にはしなかった。
「じゃ、夜も遅いし、ワンちゃんも消えちゃった事だし。続きは後日・・・と行きますか」
「そうですね。犬の飼い主さんとか、調べれば何か判るかもしれないし」
 じゃ、明日また、と約束を取り付けて、この場は解散となった。
「でもよかった。正直な話、このお話を引き受けたものの、すっごく怖かったんですけど、お二人がいるから、とっても心強いです」
 みかねが、よかったっと微笑む。
「よし!じゃ、この調子で明日は飼い主捜しだね!!」
「はい!」
 二人が気合を入れる横で、桔梗は共に微笑みつつあらぬ方向へ視線を泳がせていた。
 実はあたし、幽霊なんだよ・・・とは、言えないかねぇ・・・・。
 はは、と笑う桔梗であった。


◆飼い主捜し
 翌日、みかねと優希は再び犬が消えた交差点へ来ていた。
 もちろん、日はまだ高い。
 桔梗は昼間は都合が悪いとの事で、夜になって合流する予定である。
 二人は何箇所かお店や近くの人に声をかけた後、交差点近くの交番に来ていた。
 この近所ではあまりめぼしい情報は得られなかったものの、ここなら何か判るのではないか?
 微かな期待を込めて、交番の中を覗き込む。
「すいません〜」
 その声に顔を出したのは、優しそうな壮年のお巡りさんであった。
「ちょっとお聞きしたい事があるんですけど・・・」
「はーい。どうしたかね」
「ここの交差点で、犬が事故にあったって話はありませんか??」
 優希がぐるっと交差点を見渡しながら言った。
「事故?犬かい??」
 そうさなぁ・・・・・。
 お巡りさんはうーんと首を捻った。
「ここは結構交通量あるから、事故がまったくないとはいわないが・・・犬が事故にあったって話は聞いたことないねぇ・・・・」
 交差点を見ながら言う。
 その言葉に、二人は顔を見合わせた。
 犬の事故はない・・・。
 ならば、あの犬はなぜココに現れるのだろう?
「そういえば、犬といえば、よくここを散歩していた犬を最近見ないねぇ・・・」
 そうなんですか・・・と言いかけて、みかねは一瞬動きを止めた。
 散歩・・・。
 散歩!?
「それ、それって、どんな犬でした??」
「たしか、茶色い犬だったなぁ。えらく頭のいい子でな。綱をつけずに散歩してたっけ。たしか、「リュウ」って名前だったような・・・」
「茶色い犬・・・・」
 二人は顔を見合わせた。
 頭のよい、茶色の犬。
「それって・・・ゴールデンレトリバー・・・ですか?」
「うん?どうだろうね。大型犬だったから、多分そうだと思うけどな」
「あの、飼い主の方って、わかりますか??」
「あぁ、それならこの近所の人だよ。ただ夜が遅いからね。昼間は逢えないと思うよ」
 それでも!ということで、二人は飼い主の家の場所を聞くと、交番を後にしたのだった。


◆幽霊に聞く
 ほぼ同時刻の事である。
 桔梗は昨晩の犬が出現したあたりに来ていた。
 その姿は昨晩とは違い、幽霊犬のように微かに透けており、べっ甲の豪華な簪を黒々とした髪に刺して、朱の長襦袢に打ち掛けを纏うという、まるで遊女のような出立ちである。
 否、遊女のような、ではなく、桔梗は正真正銘江戸時代に命を落とした遊女であった。
 火事にあい死亡して以来、幽霊として彷徨っているわけだが、中には問答無用で成仏させようとする奴もいる。
 別に悪さをするわけでもなし、ただの人畜無害の幽霊なのだから自分の何が悪いんだい、と思う桔梗である。
 それなりに人通りのある道だが、幽霊である桔梗を見咎める者はいない。
「だれか、最近ここいらに現れる犬の事を知ってるやつはいないかい?」
 桔梗の声に現れたのは、近くの家の部屋に座り込む、古い霊であった。
「だめだよ。あいつは」
「だめ?何がだい?」
「何か思い残した事があるらしくて、俺たちに見向きもしない。というより、俺たちの声が聞こえてないみたいなんだよな」
 幽霊はやれやれ、と首を振る。
「思い残した事?それはなんだい?」
「さぁな。ただ、何かを待っている事は確かなんだがな。毎晩のように、同じ事を繰り返してる。詳しい事はさっぱりさ」
 俺たちのほうが知りたいね。
 そう言うと、幽霊は消えた。
「一体、何が心残りなんだろうねぇ・・・」
 桔梗は首を捻った。


◆幽霊犬の心
「そっかー、優希さんは、ドックトレーナーの専門学校に通ってるんですね」
「うん、犬とか、動物大好きだからさ、ぜひ動物の世話をする仕事をしたいなって」
 だから余計ワンちゃんの事が気になるんだよねー。
「そうですよね・・・せめて、飼い主に逢わせてあげたいですよね」
 望みを叶えさせてあげたい。
 そう思う二人であった。
「遅くなってすまなかったね」
 そこは、幽霊犬の消えた交差点であった。
 とっくに夜の帳は落ち、そろそろ幽霊犬の出現時間になろうかという時間である。
「あ、桔梗さん!こっちこっち」
 合流した三人は、今日の結果を報告し、ひとまず幽霊犬の出現を待つ事にした。
「ということで、飼い主さんは日曜にしか家にいないらしいので、日曜に会いに言ってみようと思うんです」
「飼い主は判ったものの、結局はワンちゃんの目的はわからないままかぁ」
「本人に聞いて見るのが一番、かねぇ・・・」
 幽霊仲間に聞いても何も判らなかったし・・・。
 桔梗は誰も聞こえないように小さく呟いた。
 勿論、これは二人には内緒である。
「本人!??あの犬に直接ですか??」
「そりゃそうさ。他に誰がいるんだい」
 そうなんですけど・・・・・。
 あっさりと言ってのける桔梗に、ほろりとみかねが呟いた。
「あ、ワンちゃん来たよ」
 優希の声に、みかねははっと顔を上げる。
 優希の言葉どうり、微かな月明かりに照らされて、半分透けている犬が三人のいる交差点へ向かって来ていた。
 迷いの無い足で交差点へ向かってくる。
 やがて、横断歩道の手前まで来ると、ぺたりと座り込んだ。
 いつものようにくーんとひと鳴きする。
 待ってましたとばかりに、優希がまず幽霊犬の前に回りこむと、犬を覗き込んだ。
「こんばんわ♪ワンちゃん」
 声を掛け、犬の頭を撫でる。
 が、反応がない。
「あれ?」
「どうしたんですか?」
 優希の声に、みかねが桔梗の後ろから顔を出した。
 犬の前に座りこんだ優希は、うーん、と唸って、犬の目の前で手を振ってみる。
「やっぱり・・・反応がない」
 優希に続き、みかねも犬に声を掛けたが、結果は一緒であった。
「うーん、どうしたもんかね」
 桔梗が首を捻る。
 このままでは犬は消えてしまう。
 そういれば、気配も何もすべて途絶える。
 結局、飼い主に会うまで何も判らないままになってしまうのだろうか。
 他に何か方法はないのか?
 その時であった。
 前方からやってくる自転車が一台あった。
 歳若い男性が乗ったその自転車は、そのまま前進し、三人の横を通過すると思われた。
 だが、自転車が交差点に差し掛かった時の事である。
 信号を無視した車が、自転車の右側から飛び出してきた。
「あ・・・!」
 それを素早く見て取った優希が声を上げる。
「危ない!」
 キキィーー!という大きな音と共に、いくつかの悲鳴が上がった。
 轢かれる・・・!!と思った瞬間。
 今まで何事にも無反応だった幽霊犬が、バッと走り出した!
 走り出した犬は、大きくジャンプし、自転車に飛びかかる。
 それはまさに、一瞬の出来事だった。
 犬は自転車に乗った男性の襟首を加えると、そのまま道路の反対側に大きく飛び込んだ。
 大きな激突音。
 後に残ったのは、誰も乗車しない自転車を押し潰して交差点に激突した車と、向かいの歩道で呆然と座り込む男性の姿であった。


◆消えぬ忠義
「だ、大丈夫ですか!??」
 みかねが座り込んだ男性に慌てて走り寄った。
 優希が、救急車救急車と叫びながら近くの電話ボックスに飛びつく。
「あ、あの・・・今一体・・・・」
 何が起こったんでしょうか?
 突然の事で混乱しているらしい。
「あんた今、事故に遭ったんだよ。怪我は無いかい?」
 混乱した男性は、落ち着いた桔梗の言葉に、やっと自分を見下ろし慌てて確認する。
「あ、はい。怪我は無いです。あ!それより・・・いま、リョウが・・・・!!」
「リョウ?」
 聞き覚えのある名前に、みかねが声を上げた。
「あの、うちで飼ってた犬なんですけど・・・・この前、死んじゃって・・・でも、確かに今のは・・・!」
 消えた犬を探すようにキョロキョロあたりを見渡すが、勿論、犬の姿があろうはずがない。
 そんな男性を前に、桔梗はやっと犬の心残りの理由がわかった気がした。
「そうか、そういう事だったのか・・・」
 なんとも殊勝な事じゃないか。
 思わず笑みが漏れる。
「桔梗さん?」
「つまりさ・・・」
 桔梗は交差点をぐりると見渡して言った。
「あの犬は、この事を予知してたんだよ」
「この事?」
 戻ってきた優希が不思議そうに首を傾げる。
「そ!つまり、飼い主を助ける為に現れたって事さ」
 なるほど!
 二人は顔を見合わせ頷いた。
「そっか、飼い主さんのために、この時を待っていたんですね!」
「うん、きっとそうだよ!!」
 優希とみかねが手に手を取って喜ぶ。
 男性は訳がわからずに呆然とそれを見詰め。
 微かに明るくなっていく中で、救急車が到着したのだった。


◆けして明けぬ夜はない
「これで一件落着ですね!」
 大分明るくなった夜道を三人は帰路に着いていた。
「でもさすがに賢いなー。あのワンちゃん。死んでもなおご主人様を守るなんて」
 突っ込んできた車の運転者は、軽症ではあるもののしばらく入院が必要であった。
 だが犬に助けられた男性は、怪我一つない。
 今後事故の詳細についていろいろ面倒な事になることは判っているが、なにはともあれ、最悪の事態は免れたわけだ。
 あのまま激突に巻き込まれていたら、確実に命は無かったのだろうから。
 それだけに、あの幽霊犬のしたことは大手柄であった。
 理由を聞いた男性は、驚きながら三人の言う事を信じてくれた。
 きっと、リュウが助けてくれたに違いないと。
 微笑んだその笑顔が晴れやかで、印象的だった。
「なんだかこれをこのまま三下さんに報告するのも勿体無いなぁ〜」
 だって、逃げたし。
 みかねがぽりつと呟いた。
「あ、私もそう思う!」
 優希もまた、賛成の意を示す。
 逃げたしね。
「じゃ、これは三人の秘密って事にするかい?」
 桔梗が意地悪く笑った。
「賛成賛成!桔梗さんの言うことに賛成!」
 こうして、女三人の協定が結ばれる事となった。
 碇に叱られる三下が目に浮かぶようである。
「おっと、夜が明けるね」
 桔梗が眩しそうに東の空を見上げた。
「じゃぁ、私はそろそろ行くよ」
 数歩前に出て、じゃぁねっと手振る桔梗。
「?」
 二人が声を掛ける間もなかった。
 次の瞬間、桔梗の輪郭が薄れると、そのまま透けて・・・。
 消えた。
「え・・・?汗」
 桔梗さん??
 何が起こったんだろう?と優希は目を擦る。
 でもその目には変わったものは映らない。
「???」
 その横で、パリンっと何かが割れる音がして、びくっと振り返った。
 見れば、軒先の植木蜂が割れている。
「え?なになに!??なにが起こってるの!??」
 パリン、パリン、とさらに砕ける。
「み、みかねさん・・・!!」
 振り返った優希が見たものは、硬直して動かないみかねであった。
「わー!!ちょっとちょっと!どうしちゃったの!??みかねさん!!」
 くすくすっと笑う声が、優希の耳に届いた―。


 幽霊犬の噂が消えると同時に、目に見えない幽霊が物を壊すらしいという噂が立ってのは、また別の話である。
 この後、三下がどうなったかは、誰も知らない。


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■     登場人物(この物語に登場した人物の一覧)     ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0249/志神・みかね/女/15/高校生】
【0616/棗・桔梗/女/394/一般的な幽霊】
【0980/諸見里・優希/女/20/専門学校生】

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■               ライター通信               ■
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ども、はじめまして。しょうと申します。
このたびは、依頼へのご参加ありがとうございました。
未熟者ながらも精一杯書かせて頂きましたので、少しでも楽しんでいただければと思います。
今回は女性ばかり三人おあつまり頂きまして、しかも三人が三人とも性格が違うということで、これはいいコンビだ(コンビじゃないですが)っと楽しく書かせていただきました(笑)
さて、幽霊犬ですが、飼い主のために一途に待ちつづけた結果、皆様の見守る中で、無事に飼い主を助ける事が出来ました。
当人も喜んでいる事と思います。ほんとうにありがとうございました。
ちなみに幽霊の桔梗さんは、幽霊がにがてなみかねさんが一緒ということで、夜の間だけ実体となって頂きました。ご了承くださいませ。
今回、調査を逃げたばかりに結果を内緒にされてしまった三下君の明日はあるのか・・・乞うご期待!って感じですが(って、次はないです)再び皆様にお逢い出来る事を祈っております。
では、お疲れ様でした。