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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


声失いし星(スター)・<調査編>

★オープニング
「声を失ったスター、か」
 草間武彦は、デスク上に残されていた、週刊誌の小さい見出しを見てそう呟いた。
 週刊誌は草間が買って来た物ではない。ここを訪れる誰かが、置いて行ったのだろう。
「全く、何で女はこういう、嘘か本当か分からない話題に踊らされるんだか……」
 そして、煙草を吹かし、横になる。

 どの位、時が経ったのだろう。興信所の玄関の、チャイムの音が武彦の安眠を妨げる。
「……誰だ?」
 むくりと起き上がった武彦を横に、零が玄関へと向かう。
「いらっしゃいませ。 どんな御用ですか?」
『こちら、草間興信所ですわよね……一つ、依頼をお願いしたいのですが……』
「……調査依頼ですね。 こちらへどうぞ」
 と、雫が中へ招き入れた。

『真理が声が出なくなった理由、それを調べて欲しいのです』
 依頼者の名前は平川静穂。芸能プロダクションの社長。
 そして、真理というのは、週刊誌の声の出ないスターの事。
『実は、その通りなんです。 知られては大事になる為、隠していますが……もう、時間の問題です。真理の声を、取り戻してください』

渡された情報は、真理が声を失った場所、真理の住所等が記されていた。

☆ 幽霊、現る?

 草間興信所の、依頼者と草間武彦のやりとりを遠い上空から、静かにふわふわと浮かびながら見ている者がいた。
「突然声が出なくなった、ですか……幽霊のたたりの臭いがしますね」
 声の主の名前は、司・幽屍(つかさ・ゆうし)。声を聞いただけなら、ダンディな声と言えるだろう。あいにくこの場にその声を聞くものは居ないけれど。
「悪霊の恨みの理由等は、人間には納得出来ない理由で、この世に一杯存在していますし、理解しようとしても無理でしょうね」
 彼がこう言う理由。そう、司は人間ではない。幽霊なのだ。
 400年の時を生き続けている、サイコゴースト。昔は霊能力者として除霊を稼業として生きていた司だが、強力な怨霊が現れ、その除霊の最中に、怨霊に命を奪われてしまう。
 彼は怨霊を倒せなかった事が心残りで、満足いくまで除霊しなければ成仏できん、という事で400年もの長い間、現世に留まって人知れず悪霊退治を霊の世界の方から行っている。
 いわば、ゴーストのゴーストハンター、という訳だ。そして、彼のおかげで既に何十、何百の霊は人知れず除霊された。
 ……でも、満足は未だ得られてない。自分の満足する、強い怨霊が現れないから。強い怨霊が現れるまで、彼が成仏する事はないだろう。
 話を戻そう。
 司は、依頼主の依頼を整理して、考える。
「そうですね……とにかく、声の出なくなった女性の所へ出向いて見る事が先決でしょう。幽霊が憑いているかいないか、直接見れば分かるでしょうし、一度会ってから考えましょう」
 そう考えていると、依頼者が草間興信所を出て行き、暫くの時が経過していた。
「依頼者も帰ったようですし、私も調査開始に行くとしましょうか……まずは、平賀さんの所へ向かわねばなりませんね」
 司は依頼書に書かれていた、女子寮へと向かう。

☆ 女子寮に幽霊降臨?

 時は経過し、女子寮の上空。司は空から女子寮を見渡している。
「大きい女子寮ですね、芸能プロダクションの女子寮、仕方ないと言えば仕方ないですが」
 空から見ただけでも、三階建てのそのマンション、周囲を高い塀で囲み、入り口に警備員等がいる事が、他の周囲のマンションに比べて違和感をさらけだしている。
 上空から司が周囲を確認していると、入り口の前で警備員と、集団が言い争っている光景が見える。
 司が目を凝らし、その集団を見ると、彼らのハチマキには赤い文字でこう書かれていた。
【我らがアイドル、MARIAの声を取り戻そう!】
【声を失っても、俺達はMARIAが大好きだ!】
 ……惜しげも無い、口に出して読めば恥ずかしさ一杯の応援の文字が彼らのハチマキには書かれていた。
「……どうやら、あの人達は、声を失った歌手の熱心なファンのようですね」
 耳を澄ませば、彼らが口々に「元気を出して!」やら、「声を失っても俺達はずっと応援するぜ!」やら……彼らの暖かい声援が司の居る上空まで聞こえてくる。
 それを警備員は辞めさせようとしているようだ。
 さぞかし、周りの一般の住人達や、女子寮に住む他のアイドル達も迷惑だろう。
「……応援する者がいるから、頑張ってほしいものです……現在彼女がどのような状況にあるかは分からないですが」
 そう司は呟いた。そして、真理の部屋へと近づく。依頼者が渡した資料には部屋番号が書いてあるので、階だけは間違わずに済む。
 しかし、部屋番号は分かっても、部屋の場所だけは外からじゃ確定しない。
「平賀真理さんの部屋……三階の304ですね……外からだと、どの窓の部屋が304か分かりませんから……総当りしかありませんね」
 司は仕方なく、部屋を総当りで調べ始めた。

「……ここでも、ありませんね」
 窓からちょっとだけ頭を入れて、部屋の中を確認して回る司。もちろん、部屋に入る前に人がいるかどうかはちゃんと調べてから入っているが。
 と言っても、部屋の数自体は多くは無いので、すぐに部屋を見つける事は出来た。
 真理の部屋に入ろうと、司が窓から中の物音を聞こうと、窓に聞き耳を立てる。
 部屋の中から音楽が聞こえてくる。何かの会話の後に、歌が流れる。
 どうやらテレビの歌番組らしい、と司は想像する。
「……人が、いるようですね……注意しましょう」
 司は更に、自分の気配を消し部屋の窓から部屋へと侵入した。

 真理は、ベッドの上にいた。寝間着を着て、ベッドの上からただ、テレビから流れてくる映像をただただぼーっと眺めている。
 いや、眺めているというより、映像が目を通り抜けているだけ、といった状況。真理の心は、此処にあらず、といった所か。
「……普通の真理さんの状態ではありませんね……でも、幽霊や、悪霊が憑いているようには見えませんね……」
 司の霊能力を使って、真理を確認してみるが、取り憑かれている様子は真理には無い。
「……霊が憑いた、という訳ではないようですね……しかし、あの目の覇気の無さは……何かに呪われた可能性の線かもしれませんね」
 司は、何時霊が襲い掛かってくるかもしれないと、警戒をしながら真理に近づく。
「呪いは、私の専門ではありませんが……これで少しは変わるはずでしょう」
 そして、右手に握る数珠を真理の額へと当て、左手で印を組む。
『臨……兵……闘……者……皆……陳……列……在……前!!』
 古来より伝わる九字切りを、司は唱える。呪われて居るなら、この経文で何らかの反応が返ってくるだろうと予測して。
 九字切りを唱え終わり、手を下ろす。
 ……すると突然、真理が苦しそうに息をし始める。胸を抑え、何かに耐えるように。
『……! ……』
 声が出ない真理が、体でひたすら苦しさを訴えようとしている。
「やはり、何かの呪いに縛られているのですね。 ……何の呪いを掛けられているかは分かりませんが……」
 司は真理の呪いを払いのけようと、再び九字切りと印を切る。何度も、何度も。
『……コエ……ハ、ワタシノモノダ……!」
 擦れた声で、確かにそう司の耳に聞こえた。
「やはり、呪いか! 何故真理を苦しめようとする!」
 司が強い調子で、真理を苦しめる、その擦れ声を叱る。しかしその声は従うことなく。
『……コノウタハ……ワタシノ……ダ!」
 そう、擦れた声が告げると、真理は次第に落ち着きを取り戻し始めていった。
 最後の印を切ると共に、真理は目を閉じ、寝息をたて始める。
「ふぅ……一応は、呪いを沈める事は出来たようだな……。 ……しかし、スタジオの霊に原因がある事は、間違い無いでしょうね……」
 汗を拭いながら、状況を整理する。
「……真理さんを助けるために、スタジオの霊を倒しに、行くべきですね」
 と呟いた。

★ そして……

 司が、真理が落ち着いたのを見て、司は真理に戻ってくるまでの間、呪いが再発しないよう、札に念をこめる。
 すると突然に、部屋のチャイム音が鳴り響く。
「ミズ平川? いまイマスカ? メイクアップアーティストのプリンキアデスー、お見舞い持ってきましたネー」
 声の主は、プリンキア・アルフヘイム。その隣に居るのは、シュライン・エマ。草間興信所で依頼を受けた二人だ。
 特に、プリンキアはメイクアップアーティストという職業柄、色々な芸能人を知り合っていた。もちろん真理も、プリンキアにメイキングして貰った事がある一人だから親しく話しかけて行く。
「……まずいですね、見つかって私が原因の幽霊と勘違いされると困りますし……一旦出ますか」
 そう言って、司は部屋を出て行った。入れ替わり立ち替わり、部屋に二人が入ってくる。
「……ん? ……幽霊の気配……?」
 シュラインが部屋に入るとすぐに、この場に今まで幽霊が居た事を感じていた。
  

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0818 / プリンキア・アルフヘイム / 女 / 35歳 / メイクアップアーティスト】
【0790 / 司・幽屍 / 男 / 50歳 / 幽霊】


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■   ライター通信          ■
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どうも、皆様始めまして。新人ライターの燕(つばめ)と申します。(多分新人ライターと着くのは次回まででしょう(汗))
これからどうぞ、お見知りおきを m(__)m

今回ご参加いただいた三名の皆様、どうもありがとうございます。
皆様のアクション、大変面白いアクションで、私も楽しみながら書かせていただきました。
今回の依頼は、調査編と解決編の2編構成で、今回のはその調査編のリプレイとなります。
前回の依頼に続き、全員ほぼ個別です。(一部一緒の部分はありますが……)
なんだかこっちのほうが自分の性に合って居るようですね(汗)

解決編に関してのヒントは、各キャラクターに分割して渡しています。司様の情報のみ司様個人所有です。
解決編に関してはその情報を使って下さいね。
解決編のみ参加するPCの方と、シュライン様及びプリンキア様の所持する情報は所持しています。

尚、文中の真理・及びMARIAというのは、誰も居ない街にて私が登録させて頂いた、
平賀・真理(ひらが・まり)です。詳しい情報は、誰も居ない街のコンテンツ等をご参照ください。
尚、私の登録した他の2人のNPCは、この依頼では出てこないのでご安心を。

>司・幽屍様
 アクションを見た限り、ダンディなおじ様という感じがしたので、かっこよくダンディに書いて見たつもりですが、どうでしょうか(汗)
幽霊と言うクラスな為、基本的にリプレイ上では、他の誰にも見えていないと言う扱いで登場しています。
見えないので、リプレイ上ではPCの方とのコネクションは殆どありませんが、その代わりに誰も持って居ない情報を所持してます。
尚、シュライン様及びプリンキア様の情報を所持するかどうかは司様自身にお任せいたします。
次回にシュライン様やプリンキア様に姿を見せるかどうかも同じく、お任せしますので。

解決編については、水か木曜日に依頼の受付を開始したいと思いますので、どうぞ宜しくお願いいたします。