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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


『Happy Life』

〜序章〜

その日、珍しく麗華は出社が遅れた。
もちろん、わざとではない。
スーツの入ったバッグを提げ、颯爽と編集部に入って来た彼女を見た者は、みな驚いた。
「なあに?」
そんな視線をばっさりと切り捨てるように、麗華は斜めに彼らを睨んだ。
そう、彼女は、喪服だったのだ。
「へ、編集長、今月これで3度目ですよ、ね?」
編集員のひとりが、確認のために彼女に尋ねた。
どさっと、重そうな音をさせて、自分のデスクにバッグを置く。
それから、編集部内を見渡すと、更に不機嫌そうな声で言った。
「そうよ!これで、3度目よ、友達が死ぬのは!・・・しかも」
そこで一旦言葉を切り、彼女はやるせないようなため息をついた。
「・・・全部、自殺、なんて・・・」
ここ一ヶ月で、3件の自殺。
それだけでは、事は済まなかった。
「三下くんは?」
「はい、ここですぅ」
麗華のすぐ横から、三下が情けない声で答えた。
「・・・そこで何してるの?」
「ズ、ズボンの裾が引っ掛かって・・・」
床と床の隙間に、ズボンの裾がはまり込んでいる。
それを何とか抜き取ろうと、三下が悪戦苦闘していた。
床に届きそうなくらい、疲れ果てたため息をつくと、麗華は、いきなり、一枚のコピーを渡した。
「さあ、取材よ!真相を突き止めてくるまで、帰って来ないように!いいわね?!」
「はははは、はいぃぃ」
三下は、凄まじい形相の麗華に、思わず、おびえて壁まで退いた。
「・・・あ、取れた・・・」
「裾なんかどうでもいいでしょ?!さっさと行きなさいっ!!」
「はいぃぃぃ〜」
気の抜けるような返事を残して、三下は去って行く。
そして、麗華は改めて、編集部内を見渡した。
「ねえ、三下くんについて行って、彼の調査を手伝って欲しいんだけど、誰かいないかしら?」
麗華はその調査について、簡潔な説明を施した。
三下に預けたものは、麗華の通帳のコピーだった。
そこには、死んだ三人から、10万円ずつ、振り込まれた履歴があった。
振込元は、『カ)Happy Life』となっている。
「どういう意図でこれを振り込んできたのかを、三下くんと一緒に調べて欲しいのよ」
麗華は、瞳に鋭光を湛えて、もう一枚、メモを取り出した。
「この『Happy Life』っていう会社はどうも、最近出来た会社らしいわ。情報がまるでないのよ。でも、ひとつだけ、手に入れた情報があるの」
メモの内容が、編集部内に、向けられる。
そこには、たった一言、『特殊な通販会社であるらしい』と書かれていた。
「今回の調査は、この『Happy Life』について調べること、それから、もし通販会社なら、カタログか何か、出しているはずだわ。それを入手して、試せるなら試して欲しいのよ。・・・危険は承知だけどね」
編集部内が、しんと静まり返った。
生来、運の悪すぎる三下はともかく、名前に反して、この『Happy Life』、三人の自殺にも関わるようである。
しかし、ネタとしての輝きはかなりのものだ。
「死んだ三人を心の底から弔いたいのよ、頼んだわ」
麗華は、思わず、編集部内に頭を下げたのであった・・・。


〜小さな片鱗〜

浦賀素美(うらが すみ)は、その日、13時から三下と打ち合わせであった。
素美は、おっとりした性格で、どちらかというと「天然」に近い。
思いっきり気力ですべてを切り抜けるので、周りはいつも彼女の「幸運」に驚かされるのであった。
今回のオカルト企画は、彼女らしい仕上げが施された、上々の出来である。
締め切りが近いこともあって、最後の詰めをと思い、担当の三下を訪ねたのであったが。
「不在って・・・忘れられちゃったってことですか?」
びっくりしたように、素美は言った。
麗華が、申し訳なさそうに、素美を見た。
「悪いわね、どうせ、今日も暇そうにしてるんだろうと思って、ひとつ取材を頼んじゃったのよ。原稿は私の方で預かっておくわ。戻ってきたら、バントラインへ出向かせるようにするから」
「ありがとうございます。でも、あの、取材って・・・?」
このアトラスで扱っている企画だ、面白いに決まっている、そう思った素美は、単刀直入に訊いた。
すると、麗華は小さく笑った。
「『Happy Life』って、知ってるかしら?」
「え、あ、それってもしかして」
素美は、ごそごそとバッグの中から、カタログを取り出した。
「これですか?」
「・・・やっぱり、通販の会社だったのね」
麗華は、素美からそのカタログを受け取ると、つぶやくように言った。
「これ、コピーをもらえるかしら?」
「いいですけど・・・その取材、素美も同行させてもらっていいですか?ちょうど、他の雑誌の仕事で、この『Happy Life』、調査中だったんです。多分、お役に立てると思うんです」
「そう、それなら、ぜひお願い。でも、そっちの仕事とかぶらないの?」
「はい、大丈夫です。そっちは特殊な通販特集で、扱っている商品の詳細が知りたいだけなんですよ」
素美は、それでも、少し首を傾げた。
「でも、おかしなことに、この『Happy Life』のカタログ、商品の詳細がないんです。コースだけ」
麗華がパラパラとカタログをめくると、いろんなコースの名前が書いてあった。
しかも、そのネーミングセンスがいただけない。
『暁のバラ』や、『夜の精霊』等、どこかの三文小説のタイトルのようだ。
「なんなの、これ・・・」
「さっぱりですよね。ただ、ランク分けはされているようですよ。それ、置いていきますから、この仕事、素美にもやらせて下さい」
「ええ、よろしく頼んだわ。三下クンは、携帯で呼び出してちょうだい。これが彼の番号よ」
一枚のメモを渡し、麗華は指を組んだ。
「個人的に、この件は、どうしても何とかしたいのよ・・・お願いね」
「分かりました。行って来ます」
素美は、緊張感があるのかないのか、分からないような笑顔で去って行った。
それを見送る麗華の目に、レイベル・ラブの姿が映った。
「私も行こう」
妙にはりきった様子のレイベルに、麗華はふふ、と笑った。
「ありがとう。もしかしたら、今度の仕事は、あなた向きかも知れないわね」
「カネ、か。昔、どこぞの悪魔が拵えたとか言われるシステムだ。私をこの世に繋ぐ錨のひとつでもある。私と関わらないままに周囲で数億の金が飛び交うのは奇妙な眺めで・・・」
そこまで言って、レイベルは話がそれたことに気付いた。
さっさと打ち切って、麗華に相対する。
「ところで、その友人との関係は?」
「もう10年来の友人よ、三人とも。かなり親しかったわ。それぞれ、別の場所で出会った友達だけど。だから、三人の間に共通点はないわ。あるのは、この通帳に刻まれた、『Happy Life』からの入金記録だけよ」
「成程な」
真摯な瞳で、レイベルは頷く。
「今の世、大抵何かを得るには代価が必要で、逆に言えば会社と友人は何かを得、そして麗華は奪われた・・・」
そこまでつぶやいて、彼女は、ふっと笑った。
「まあ、いい。三下に合流しよう」
「よろしく頼むわ」
ガコォン――――レイベルの靴音が編集部内に響き渡る。
そして・・・床にも穴が空いていた。
どうやら、何か彼女の逆鱗に触れているらしい。
「行って来る」
無造作にそれだけ残して、レイベルは去った。
今回は、「患者がいるから」ではない。
彼女を未だこの世に留めている、巨大な運命の歯車、「カネ」に対する、明らかなる挑戦、であった――――


〜そして合流〜

意外にあっさりと、三下はつかまった。
編集部を出たところで、すぐにうろうろしていたのである。
「三下さん、何してるんですか?」
「え、え、ああっ、素美さんっ、どうしてここに!!」
「今日、打ち合わせだから来たんですよ。やっぱり忘れてるんですね」
がっくりと素美はうなだれた。
これでいったい何度目だろう。
「次から、メモしておいてもらえますか?」
「は、はいっ」
・・・これではどちらが担当者か、分かったものではない。
「それで、これから、どこへ行くつもりだったんですか?」
「それがー、全然見当がつかなくて・・・」
相変わらず、頼りない三下の言葉に、普段おっとりしているとよく言われる素美でさえ、思わずため息をついてしまうのであった。
何か言いかけようとした時、いきなり三下の背後から、ものすごい勢いで走って来た者がいた。
「いたな、三下!!」
「レ、レイベルさん、どうしてここに」
「脱げ」
「い、いきなり」
「ウザイ。脱げ!」
「うわあああ」
レイベルの迫力と気迫によって、三下は往来でズボンを脱がされていた。
突然のことに唖然としている素美の目の前で、レイベルは、チクチクと裾上げ驚速30秒でやってのけた。
もちろん、その間、三下はあわあわしながら、往来の視線を一心に集めていた。
「完了だ。履け」
「はいぃぃ」
情けない声で答え、三下は慌ててズボンを履き始める。
しかし、あまりに慌てていたので、何度も足を通そうとしてはつんのめり、とうとうドガコン、と地面に顔から突っ込んでしまった。
「い、痛いですぅ・・・」
「うるさい。それで?どこへ行く?」
不意に話題を振られて、呆気に取られていた素美が、はっとしてレイベルに向き直った。
「え、えっと、どちらさまですか?」
「私の名は、レイベル・ラブ、医者だ。患者あるところに私は行く」
「またの名を『借金女王』・・・」
ぼそ、とつぶやいた三下に、鉄拳をくれてやり、またしても道路に沈んでいる彼を放って、レイベルは素美に向き合った。
「名は?」
「浦賀素美と言います。よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げ、素美は挨拶した。
「一応、さっきのカタログを印刷した印刷会社を当たります。そこで、その依頼元にあたる『Happy Life』の住所が分かれば、そちらに向かいます。もし分からなければ、実際にカタログから商品を頼んでみるのが得策でしょう」
「そうだな。普通の人間では、あのカタログから発注できまい。私が頼んでみよう」
レイベルは、考えながら、次の言葉を吐いた。
「カネ、というシステムの闇の中で、会社と友人たちは何かを得たのだ。そして、麗華は何かを奪われた・・・何を?彼等の命か。その対価に納得しているのは、会社だけだろう」
「確かに。『命で支払い』は大きすぎますよね」
「そう考えるのが当然だ。ここに【契約】は破綻し、さあ、整理屋の出番。怪しげな金の動きなら任せろ」
レイベルは、いつになく嬉しそうだ。
「借金女王の称号も役に立つことはあるのだな」
「だからそう言ったのに・・・」
三下が、顔を腫らしながら、涙目でそう言った。
向かうは、まずは、カタログの印刷会社。
三人は、悲しくも寂しさにあふれたこの事件の、手掛かりを探しに、歩き始めたのである。


〜発見〜

印刷会社では、そのカタログの発注元がどこか、詳しくは教えたがらなかった。
顧客情報である以上、当然と言えば当然である。
ただ、墨田区のある会社だとだけ、教えてもらった。
素美は、さっそく104で会社の住所を聞き出し、その後、三人はその場所へと向かった。
「ここです」
素美が指差したそのビルは、とても殺風景なビルであった。
「確かに、そうだな。異様な空気が感じられる」
レイベルが先頭で、そのビルに入った。
そして、その会社のプレートのかかったドアをノックし、返答がないことを知って、中に入った。
しかし。
「もぬけの殻か・・・」
案の定、という感じである。
レイベルは不敵に笑った。
「まあ、カタログが存在する限り、会社も存在する。それでは、私が発注してみよう。費用は当然、三下がもつからな」
「えええええ」
「うるさい。必要経費だ」
一喝して三下を黙らせ、レイベルは、先ほどのカタログを開いた。
それをのぞき込むように、素美はレイベルに尋ねた。
「それって、何のカタログなんですか?」
「・・・自殺のカタログだ」
「自殺?!」
素美は驚いて、レイベルを見つめた。
「それって・・・違法じゃないんですか?!」
「ああ。だから、ここには、コースしか書いていない。正確には、『自殺』ではなくて、『自殺幇助』だがな。しかも、生やさしいものではない。確実に死に至るための方法が、ここには刻まれている」
「ど、どうしてそれが分かったんですか?」
「簡単だ。そのカタログ、もう、一度使われているのでな。そこにこめられた感情が、怨念のようにしみついていて、私に訴えかけるのだ。『私は死すら自分でコーディネートした』とな」
レイベルは、考えながら、素美に言った。
「呪的約定に囚われた『状況』ならば、歯車を逆回転させて彼等を救い出せる可能性もある。記事にはならなくなるが」
「記事にすることが全てではないと思います・・・」
素美の表情が暗く翳った。
「麗華さんも、三人が生き返ることで救われる部分は、絶対あると思います」
「確かにな」
手にしたカタログを見下ろし、レイベルは挑むように笑った。
「不相応にも幸福と人生を商う『会社』よ、売買してみるか?この私の全てを!!」
三下は、既に部屋の隅でガタガタ震えている。
情けないヤツだ、と口の中でつぶやいて、レイベルは、適当にコースを選択した。
「それでは、これでいこう。なに、FAXしろと?」
「あ、あそこにコンビニがあります!」
ふたりは、三下を置いて、さっさとコンビニに移動する。
その後ろを、涙目の三下が追いかけた。
「待って下さい〜〜〜」
ふたりは、コンビニのFAXから、申込書を送る。
10分後、素美の携帯に、レイベル宛の電話がかかってきた。
「しっかり取材するんだぞ、三下」
きっちり釘を刺してから、レイベルは電話を受け取った。
『レイベル・ラブ様でございますか?』
「そうだが」
『こちら、「Happy Life」と申します。先程お申し込み頂きました内容の、ご確認をさせて頂きたいのですが』
「ああ、よろしく頼む」
『コースは、「海辺の夕暮れ」でよろしいですか?』
「ああ」
『実行期日は本日、即時でございますね?』
「そうだ」
『それでは、お振込金額ですが、コース料金として、87万円を、これからお伝えいたします口座に、お振り込み下さい。お振込がお済みになりましたら、またこちらまでお電話下さい』
レイベルは素早くメモをした。
それを三下に見せ、冷たく言った。
「今すぐその口座に、87万円、振り込んで来い」
「む、むむむ、無理ですぅ、そんな金額・・・」
「さっさと行け!時間がない!」
「そ、そんなあああ」
「借金という方法があるだろうが!」
「そ、それは・・・」
「いいから行け!!」
三下は、号泣しながら去って行く。
それから、30分も経ってから、三下が更に悲惨な顔をしながら、振込明細書を持って来た。
「・・・よし、振り込んで来たな」
「ああああ、これで僕も、身売りでもしないとダメかも・・・」
「何でもするがいい」
レイベルは相変わらずそっけない。
三下を冷たくあしらって、先程の連絡先に電話をする。
『ありがとうございました。お振込を確認致しました。先程の金額から、10万円を、今までお世話になられた方にお贈りすることが出来ますが、どなたかいらっしゃいますか?』
「それでは・・・」
レイベルは、不敵に笑ってみせた。
「碇麗華さんに、振り込んでくれ」
『かしこまりました。そうしましたら、所定のお薬をお渡ししますので、これから申し上げます場所に、おひとりでいらして下さい』
レイベルのメモは既に一杯である。
電話を切ると、素美と三下に言った。
「どうやら、銀行に振り込まれた30万は、三人からの贈り物だったようだな。では、行くぞ」
三人は、指示された場所へと向かった。
どこかの埠頭である。
一旦、隠れるように言い、レイベルはひとりで現地に赴いた。
そこには、10人ほどの覆面をつけたスーツ姿の者たちがいた。
「レイベル・ラブ様、でいらっしゃいますね?」
白いスーツの男が、くぐもった声で彼女に言った。
「そうだ」
レイベルは頷く。
男は、小さな小瓶を差し出した。
「こちらが、コースの劇薬になります。入手ルートは、絶対に割り出せません。安心して自殺なさって下さい。私たちが見届けさせて頂きます」
「そうか。よろしくな」
レイベルは至って冷静だ。
男の手から、その小瓶を受け取ると、ぐっと一気に飲み干した。
甘い甘い、コーヒーのような味がした。
瞬間、鈍器で後頭部を殴られるような感覚に襲われた。
ぐらりと身体が傾いだのが、レイベルの覚えている最後であった――――
レイベルの身体が、どさりと地に投げ出された。
男たちは、レイベルの脈を調べ、心臓の鼓動がないことを確かめた。
それから、瞳孔の開き加減を見、何かにさらさらと書き込むと、一斉に頷いて去って行った。
彼らが完全に去ったのを見て、素美と三下は慌てて物陰から飛び出した。
そして、レイベルに近付き、素美は彼女を抱き起こした。
「レイベルさんっ、大丈夫ですか?!」
「レイベルさああああん、死なないでええええ」
三下の目から、滂沱の涙があふれる。
真っ白な顔をしたレイベルは既に息をしていない。
心臓の鼓動も止まっている。
「ど、どうしようっ、三下さん、救急車を呼んでください!!」
「は、ははははい!!」
「・・・その必要はない」
「うわあああ、幽霊だああああ、くわばらくわばら〜」
天に向かって拝み始めた三下に、鉄拳を食らわしつつ、レイベルはむくりと起き上がった。
「・・・いろんな事情があって、死ねない身体になっているのでな」
「ゾ、ゾンビ・・・」
「うるさいと言ってるだろう、三下」
ぎろり、と睨まれて、三下は、数メートル飛びのいた。
素美は、ほっと胸を撫で下ろした。
「確かに、普通の人間では、レイベルさんのようにはいきませんね」
「ああ、普通は一度しか死ねないはずだからな」
少し頭を振って、意識をはっきりさせつつ、レイベルは腕を組んだ。
「麗華の友人の死が人為的なものである以上、生き返らせるのは無理のようだな」
「そう、ですか・・・」
残念そうに、素美はうつむいた。
「死は、やっぱり一度だけ、なんですね・・・」
「望まぬ死と望んだ死と、どちらがどれだけ、幸せなのかは分からん。だが、残された者たちのことを考えた時、それはあまり望んではいけないものだと思うがな」
「そうですね・・・自殺は、周りの人のことを何一つ、考えていないことだと思います。生きていれば、楽しいこと、たくさんあるのに・・・」
素美の目から涙が落ちる。
それを見て、レイベルは転がっている小瓶を取り上げた。
「こんなものでいともたやすく、命の灯など消せるからな。そう死に急ぐこともなかろうに」
ふたりは、埠頭の向こうで鈍く光る、夕暮れの海を見つめた。
人は死を恐れるが、死による解放を望む者もいる。
そうなる前に、救うべき者が近くにいさえすれば、『Happy Life』のような会社も存在することはないのだ。
素美とレイベルは、赤い海に、三人の冥福を祈ったのであった・・・。


〜終章〜

その後、たったひとりの「生存者」からの情報によって、『Happy Life』は、警察の摘発により、解体を命じられた。
しかし、主犯格の幹部たちは、海外に高飛びしており、国際的な指名手配をされることになる。
『Happy Life』の実態が、マスコミによって明らかにされるや否や、日本中が騒然となった。
そして、この事件が、会社の善悪を問う前に、人間の孤独が生み出した産物であることに、ようやく世の人は気付かされた。
「これで、人が人を大事にするっていう、一番根本的なことを、人々が思い知ってくれるといいわね――――私も含めて、だけど」
素美とレイベルからの報告を受けて、麗華は、この事件を、寂しそうにこう締め括ったのであった――――。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【 0983 / 浦賀 素美(うらが・すみ)/ 22 / ライター 】
【 0606 / レイベル・ラブ(れいべる・らぶ)/ 395 / ストリートドクター 】

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■         ライター通信          ■
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お待たせいたしました!
担当ライターの藤沢 麗(ふじさわ れい)です。

今回のテーマは「自殺」でした。
通販の商品の読みは当たりましたでしょうか。

浦賀さん、初めまして!
今回、展開が展開だったせいで、おっとり加減がイマイチでした。
スミマセン。
友人を思う優しさが、浦賀さんの行動に見出していただければ幸いです。

それでは、また未来の依頼にて、ご縁がありましたら、ぜひご参加下さいませ。
この度は、ご参加、本当にありがとうございました。