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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


調査コードネーム:白物語「箱」
------<オープニング>--------------------------------------
┌────────────────────────────┐
 [516]信じらんない!                   
 from:スカーレット[Mail][URL]              
                             
 最近噂の「ヴァルハラ」ってゲーム知ってる?       
 ゲームの中で恋人が出来たら現実でも恋人が出来たり、家を 
 買ったら現実でも手に入るってゆーの。          
 キャラ登録して、国民になって其処で生活する地味ーなヤツ。
 メル友に紹介して貰って始めたんだけどさー所持金盗まれたら
 それもホントになって!ムカつくー!取り返したいんだけど、
 キャラ登録の時に勝手に割り振りされるみたいな「特性」って
 のが「おしゃべり」で犯人捕まえらんないの!       
 ウソかもだけどこのゲーム、自分に近い情報を入れれば入れる
 ほど、本人に近いキャラになるってゆーし…誰か腕っぷしに 
 自信のあるヒト、協力してくんない?           
 紹介がないと入国出来ないんで、メル友に声かけて3人分の枠
 確保したから連絡ちょーだい!              
                             
 Reply?                         
                             
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  [517]Re:信じらんない!                
  from:サウス [Mail]                
                             
   災難でしたね(--;)                 
   私もプレイしていますが特性が「情報」と「付与」なので
   犯人捕獲は無理ですが、もう2人分、紹介枠にご協力出来
   ます。                       
   協力者が集まるまでの間に情報を集めておきましょうか?
   情報がご入り用でしたら街の入り口付近に居ますので、 
   「サウス」に声をかけてみて下さい。         
   それでは、「ヴァルハラ」で会えるのをお待ちしてます。
                             
  Reply?                        
                             
└────────────────────────────┘
------------------------------------------------------------

『ヴァルハラへようこそ』
指定のURL、その言葉以外は入力フォームしかない簡素に白いトップは、来訪者の侵入を拒む。
 英数字をランダムに組み合わせた10文字のIDを入力し、Enter。
 ディスプレイの中心線に光の筋が一筋入り、軋んで開く扉の音を模し奥に向かって画面が開き…現れる、緑に満ちた島。
 複雑に入り組む海岸線に縁取られて隆起に富んだ地形…四方を海に囲まれた其処を…純粋に島と呼んでいいものか。
 歪に菱形に…その島を囲む海、その紺碧に輝く波、寄せて崖を、砂浜を削り、返って巨大な瀑布となって虚空に落ちかかる。
 ディスプレイそのものに見立てられた視界は、急速にその一点に向かって急降下した。
 海原を走る船、その甲板に。
 そして画面は切り替わり、一枚の羊皮紙と羽根ペンが表示された。
『ヴァルハラの国民となる為に必要な書類です。各事項を詳細にご記入頂く事で、より貴方に近く登録されます…それでは、より良き生を』
焼き付けられて焦げた文字が溶けるように消え…今度は入力フォームが現れる。
 名前、性別、生年月日、身長、体重…いくつかの質問のチェック、そしてパスワード。
「うーんと…りっちゃんの好きなアーティストの誕生日でいいかな?」
花の図案の愛らしいライティングデスクに広げたノートPCの液晶ディスプレイを前に、月見里千里はスパッツにおおぶりのTシャツを合わせた部屋着で可愛く首を傾げて見せた。
 雫のサイトで見つけたスレッド、噂に聞くゲームをプレイ出来る機会を好奇心旺盛な千里が見逃す筈もない。
 スカーレットに連絡を取ってみれば、「絶対に捕まえてね!」の返答と共に、IDが送付されて来た…要した時間は僅かに10分。実害を被っただけあって、迅速である。
「ちーちゃんにお任せ♪」
千里はメール本文を読み上げると、PCの脇に添えたタワー型HDDをポン♪と叩いた…USBケーブルで繋がれた銀一色のそれ…当然、ただのHDDではない。
 千里がその特異能力で以て創造り出したマシン…その用途はゲーム上に指定したキャラクターのユーザーのアクセスログからIPアドレスを割り出し逆探知でアカウントを解析してファイアーウォールを破り犯人のPCに侵入するという…間違いなく犯罪目的で作られた凶悪な代物である。
『ようこそ…ここは神々に守られた庭、もう一人の貴方が住む世界…』
ありきたりの創世神話がテロップで流されていく…北欧神話に題材を置いたこのゲームは、敵を倒してレベルを稼ぐという物ではないらしい。
 働いて賃金を得たり、人と対話したり…平和な世界で平和に暮らす、ただそれだけが目的のだというのだ。
「でも一時間以内に見つけなきゃねー」
千里の能力で作り出された物体は、一時間後に分子崩壊を起こして跡形もなく消え去る為だ。
 画面は海原を走る船へと移り変わり、直角に曲がるという有り得ない航路を取りながら、船は島で唯一の港に着いた。
 千里の見守る中、キャラクターはオートで桟橋を下りた所で止まる。
 平面的な町並みは、中世を模した煉瓦造りで暖かみがある。
 画面の右下に、キャラクターのデータが蔓を編んだような枠に囲まれて表示されていた。
┌りっちゃん─────┐
|ルーン:ソーン   |
|特性:説教、忠告  |                            
└──────────┘
「わーい、登録成功ー♪」
黒髪を三つ編みにしたキャラクターは、桟橋の所で待っていたかのような薄茶にウェーブがかった髪のキャラクターと並んで止まった。
 そちらにもカーソルを合わせれば、
┌ちーちゃん─────┐
|ルーン:ベオーク  |
|特性:天然     |                            
└──────────┘
である…千里自身のキャラクターは既に登録済であった。
「こういうのってやっぱり人海戦術よねぇ♪」
プレイヤーを紹介制にしている『ヴァルハラ』では、一プレイヤーに対して紹介枠は一人のみ…その枠を使って、千里は級友の蒼梨花のデータでキャラ登録を済ませたのだ。
 千里は傍らの携帯電話を取り上げると、電話帳を呼び出す…コールは2回。
「あ、もしもしー?」
『ちー?何の用?』
梨花は長電話をする性質ではない…必要な用件のみを伝えれば終わりとばかりの彼女にとって、携帯電話は本当の意味での連絡用である。
「お昼休みに一緒に見た『ヴァルハラ』ってあるでしょー?」
『それがどうかしたの?』
「今、りっちゃんの分も登録したから、一緒にやろー♪」
陽気な千里の言に…だが、返ったのは冷たい沈黙だった。
『ちー…ちょっとそこにお座りなさいな』
「す、座ってる…」
たっぷり一分半、電話の先で黙りこくった梨花の言に、千里はチェアの上で居住まいを正した。
『そのネトゲってあれよね?個人に近い情報を入れれば入れるほど、本人に近くなるのよね?』
「うん。だからあたしが代わりに登録して…」
『友人の立場から正直に言わせて貰えば、個人データの流出はそれだけで犯罪なの。そうね…電磁的記録不正作出罪が該当するのかしら?5年以下の懲役、50万円以下の罰金が科せられるのよ、知ってた?』
「知らない…」
『そう、ひとつ勉強になったわね。』
そこで溜息を一つ。
『ついでに言えば、君子危うきに近寄らず、があたしのモットーなの。恐縮ですけれども慎んでご辞退致しますわ。また誘って下さいませね、それでは月見里様ごきげんよう』
お嬢様学校の生徒に相応しい辞意を最後に、通話が切れる…千里は携帯を手におろおろと立ち上がった。
「ど、どうしよう…りっちゃんが怒っちゃったよぅ」
自分の考えに囚われると些か周囲を失念してしまう千里、時に地雷を踏んだ後で後悔する事もあったりする。
「どうしよぅ〜…」
下がる目尻に涙をにじませた千里の手の中で、携帯がメールの着信を告げた…梨花からである。
『折角だから彼氏と遊べば?』
素っ気ない一文だが、梨花の怒りは冷却型…何かしらの応答があるという事は心底からの怒りではないという事か。
 とはいえ、千里は言われるよりも先にそのつもりであった…キャラ登録の連絡は梨花のメールアドレスに送られる為、そこから彼に登録IDを送ってもらおうと思っていたのだが…これ以上刺激したら本当に怒らせるかもしれない。
「でも一人じゃつまんないよー…」
しょぼんと肩を落とした千里だが、ディスプレイにふ、と目を止め、マウスを動かした…それに合わせて動くのは『りっちゃん』。
 登録キャラは二人居る…個人による複数登録を避ける為か、同サーバーからではキャラ一人しか動かせないようになっているらしい。
「いー事思いついた♪」
ピピッとアドレスの最上部に呼び出せるようになっている…千里は恋人の番号を呼び出すと一転、笑顔でコールを待つ。
「あ、もしもしー♪こんばんは、ちーです♪そっちは今お昼?学校はどーしたの?そっかお休みが多いんだね、いいなー。あ、それでねちょっと面白そうなネットゲームがあるんだけど一緒にプレイしよー♪今からメールで送るから♪うん、ちょっと先にキャラ登録してあるんだけど…ネットでデートもたまにはいーじゃない?……はーい、それじゃ待ってるね♪」
 いつもなら二時間は続く電話だが、今日はすぐに終わらせると、PCを立ち上げ直し、今度はちゃんと『ちーちゃん』でログインする。
「ホントにホントになるんだったら〜♪二人きりで丘の上の教会で結婚式上げるんだー♪白いウェディングドレスにブーケ♪ライスシャワーに見送られて世界一周…♪」
妄想…基、乙女の夢は翼を広げて天井知らずに飛び続ける。
 海辺の白い家で築く幸せ、三人目の子供が産まれて近所の家から子猫を貰い受けたあたりで『りっちゃん』がログインして来た。
┌りっちゃん───────────────────────┐
|よぉ、ちー。なんかコレ変なカンジだな?         |
└────────────────────────────┘
画面の前で千里はパッと顔を輝かせる。
┌ちーちゃん───────────────────────┐
|そんなコトないよ、とってもよく似合ってるー♪      |
└────────────────────────────┘
┌りっちゃん───────────────────────┐
|いや…コレ女で登録されてねー?             |
└────────────────────────────┘
┌ちーちゃん───────────────────────┐
|気にしないで♪だって中身は…っと、ホントはよくないコト |
|かも知れないから「りっちゃん」って呼ぶね?変わらないから|
|全然いいもん!                     |
└────────────────────────────┘
いや、構うって。
 悩む彼氏in『りっちゃん』に『ちーちゃん』がおもむろにピンクのハートを差し出した。
┌ちーちゃん───────────────────────┐
|りっちゃんお願い!あたしと恋人になって下さい!     |
└────────────────────────────┘
同時に選択肢が「はい/いいえ」で表示される。
┌りっちゃん───────────────────────┐
|…………ちーよぉ                    |
└────────────────────────────┘
その微妙な沈黙に千里の胸が不安を覚える。
┌りっちゃん───────────────────────┐
|こーいうのは、男に譲れよ?よっぽど甲斐性ねーみてーじゃん|
|…とりあえず納めろ、自分から渡す            |
└────────────────────────────┘
┌ちーちゃん───────────────────────┐
|りっちゃん………!                   |
└────────────────────────────┘
感極まる千里、ハートの贈呈は改めて『りっちゃん』から『ちーちゃん』に…『ヴァルハラ』に新たなるカップルが誕生した鐘が鳴り響いた…それが、女同士であるという事を除けば。
 腕を組んだ二人が一歩を歩く毎、ハートが飛んで移動に時間がかかる事この上ない。
┌りっちゃん───────────────────────┐
|……な、歩きにくくねぇ?                |
└────────────────────────────┘
┌ちーちゃん───────────────────────┐
|いーの!だって滅多と会えないんだもん、これくらい…   |
|いいよね?                       |
└────────────────────────────┘
女ってホント人形遊びとか好きだよなー…言いつつ逃げようとはしない『りっちゃん』、少し…というよりかなり、まんざらでもないカンジである。
 その甘々な二人の会話に、勇気ある割り込みがあった。
┌サウス─────────────────────────┐
|こんばんは、本日新規加入された方全員にメッセージを送って|
|います(情報を付与の形で送れるので)          |
|スカーレットさんの依頼にお心当たりのある方は中央広場まで|
|お出で下さい                      |
└────────────────────────────┘
┌ちーちゃん───────────────────────┐
|…あ、そうだった!                   |
└────────────────────────────┘
すっかり本来の…盗難事件犯捕縛の目的を忘れそうになっていた千里であった。



 情報の収集は芳しいとは言えない。
 キャラが実際に犯行…と思しき行動に出た瞬間を目撃した者がなかった為である。
 その代わりに集まる情報といえば、
『商店街に店を出すには一定金額を神殿に納めて権利書を発行してもらわなければいけない』
とか、
『新たな職業の申請は承認されるのに一週間かかる』
とか、
『生産系のバイトは元手が要らないから気軽に出来る』
とか、
『あらおにーさんいい男ねうふふアタシと所帯持ってみない?』
と逆ナンパに逢った『ウルフ』が『YUKI』にしばき倒されるなどの主にゲームにかかる話題がメインである…まぁ当然といえば当然か。
 それでも、しばらくは噂の『ヴァルハラ』世界に馴染むため、と皆それなりに楽しんでいる様子である…が、進行上、ただで済む筈もないのは世の理である。
 その憂き目に遭ったのは…ひたすらに黒い髪のキャラを追い回していた『ケイ』『アツキ』『神楽五樹』のグループであった。
 慣れない操作に遅れがちになる『ケイ』は、人のぶつかりぶつかられながら移動していたのだが、ふと一人になった…画面外から走り込んできた一人に勢いよく二マスをすっ飛ばされた。
 その後に、丸くて黄色い…コインと思しき画像が表示される。
┌ケイ──────────────────────────┐
|所持金が0になった                   |
└────────────────────────────┘
どうやら飛ばされたショックで落としてしまったらしい。
 移動した分だけスクロールした画面内に入り、事態に気付いた『神楽五樹』と『アツキ』が戻ってくる。
 その間に『ケイ』は慌てて元の位置に戻ろうとする…が、『ケイ』を突き飛ばした黒髪のキャラ…子供らしく頭身が低い『日向』がいち早くその間に割り込んで来た。
┌神楽五樹────────────────────────┐
|お前、ぶつかったんならゴメンなさいくらいゆえや?    |
└────────────────────────────┘
『神楽五樹』が呼びかける…が反応はなく、その間に『R』と表記されたキャラが一度コインの上で立ち止まった…そして移動した後に、もうコインはない。
┌アツキ─────────────────────────┐
|待てやお前ら!                     |
└────────────────────────────┘
言われて待つどころか、とっとと逃げ出す『日向』と『R』。
 咄嗟に追う三人だが、ゲームをプレイして長いのか、彼等の小さな、かつ最短距離の動きにともすれば見失いそうになる。
 四方の退路を断たねば捕らえられない。
 他の協力者に連絡の手段を持たない彼等は焦る…が、情報を技能として持つ『サウス』『ジン』『スナイパー』は優秀だった。
 情報を技能としてもっていても、PLが使いこなせなければ意味がない…が、それを割り振られているだけはあり、異変に気付くのも早い。
 東西南北に分けられた区画、その東の位置で動きがあった事を共に行動する者達に告げた。
 特に、通信を技能とするサウスは協力者全員に詳細な位置関係まで送りつける。
┌サウス─────────────────────────┐
|南の噴水のある広場                   |
|ニイドとハガルのルーンが一緒に動いてる         |
└────────────────────────────┘
操作に慣れた者の一日の長…とはいえ、必要な情報だけ選り出す技量は生半可ではない。
┌ジン──────────────────────────┐
|金がまんま移動してんのは…『ケイ』から『R』に…?   |
└────────────────────────────┘
とりあえず、金額の移行にのみに検索を集中していた『ジン』、沈黙の三点リーダーに何とも言えない感情が込められている。
┌スイーパー───────────────────────┐
|お気の毒様です…                    |
└────────────────────────────┘
『ケイ』に向かって情報技能組から一様に慰めがかけられるが、同画面内でなければチャットは機能しない。
 …まあ、所持金2,253はある意味そんなに痛手でもないような気がするが。
 東西南北、有事に即座に対応出来るように散っていた面々は、それぞれ北に向かって移動するが、如何に急ごうにもPC内のキャラの移動速度には限界がある。
┌ちーちゃん───────────────────────┐
|やーん、間に合わないよー                |
└────────────────────────────┘
┌りっちゃん───────────────────────┐
|腕を放せば走れるだろ?                 |
└────────────────────────────┘
┌ちーちゃん───────────────────────┐
|それもイヤー                      |
└────────────────────────────┘
殊に西の端…夕陽がキレイだというデートスポットに赴いていた『ちーちゃん』と『りっちゃん』は現場から最も遠い。
┌英彦──────────────────────────┐
|放ってっていいかコイツ等                |
└────────────────────────────┘
そのラヴラヴカップルに同行していた『英彦』がげんなりと独り言に近い発言で、そのままとっとと移動していく。
 そしてその間、盗難に遭遇した『ケイ』と『アツキ』『神楽五樹』も手をこまねいて居たのではない。
 逃げようとする『R』と『日向』の動きを追う『サウス』指示に従って、小路へと追い詰めていく先に『ウルフ』『YUKI』が行く手を遮った。後退しようとするが、今度は周辺の犬や猫、馬を引き連れた『ライ』が退路を断つ。
┌R───────────────────────────┐
|なんだよアンタ等!                   |
└────────────────────────────┘
十字路を抜けようとした先を押さえられ、『R』が漸く言葉を発した。
┌ケイ──────────────────────────┐
|落とし物は交番へって習わなかったか?          |
└────────────────────────────┘
『ケイ』の項目を囲む蔦の葉が紅葉している…かなり怒っているらしい。
┌日向──────────────────────────┐
|交番ないもん                      |
└────────────────────────────┘
┌ライ──────────────────────────┐
|それもそうだね                     |
└────────────────────────────┘
この上ない事実ではあるので、素直に同意するライ。
 犯人が見つかった時点で追跡に回ってきたらしく、画面上部から登場した『スイーパー』、そして『ジン』が年長者の威厳でもって重々しく言う。
┌ジン──────────────────────────┐
|しかしそれで道理が通るワケでもねーだろ。        |
|人のモンを盗るのはたとえゲームでもマナー違反だろうが。 |
|違うか?                        |
└────────────────────────────┘
┌R───────────────────────────┐
|たかがゲームだろ?必死になってバッカじゃねー?     |
└────────────────────────────┘
┌神楽五樹────────────────────────┐
|ちゃうやろ!                      |
└────────────────────────────┘
ご丁寧に首を左右に振るアクションをつける『R』に最も近い位置に居た『神楽五樹』のキレの良いツッコミが入った…ダメージを計上するようなHPの設定がないのが何やら口惜しい。
┌YUKI────────────────────────┐
|…そう、「たかが」ゲームだよな?            |
└────────────────────────────┘
感情的な意見が飛び出す前に、ぽつり、と言った風で『YUKI』が言う。
┌アツキ─────────────────────────┐
|せやな。あんた等の言う通り「たかが」ゲームや      |
└────────────────────────────┘
┌スナイパー───────────────────────┐
|「たかが」ゲームですよね                |
└────────────────────────────┘
┌英彦──────────────────────────┐
|確かにゲームだな、「たかが」              |
└────────────────────────────┘
┌ジン──────────────────────────┐
|そうだな「たかが」ゲームだな…たとえ、何があっても…  |
|平気だよなお前さん方?                 |
└────────────────────────────┘
┌ライ──────────────────────────┐
|それじゃぁ…悪魔に代わっておしおきしてあげよう♪    |
└────────────────────────────┘
何処までも冷静な人々は答える間もなく立て続けに問いかけると同時、じり、と包囲を狭める…進退窮まった二人の項目が、徐徐に青く染まっていく。
 と、同時にその輪に挟まれる形になった協力者達の蔦も青みを帯びている。
┌ウルフ─────────────────────────┐
|なんだかわかんないけどとにかく謝れ(>_<;)        |
└────────────────────────────┘
┌ケイ──────────────────────────┐
|今ならまだ取り返しがつく!多分!            |
└────────────────────────────┘
実際被害を被った『ケイ』にまで忠告を発せさせてしまうほどに…抗しがたい迫力と圧力があった。
 お陰で、聞いてもいないのに犯行の動機から何からぺらぺらと喋ってくれたのは有り難いが。
 彼等の曰く所、最初はたまたま…『日向』が人にぶつかった時に、所有アイテムや所持金を落とさせてしまうのだという事に気付いた。
 相手が気付かぬままに行ってしまったので『R』が拾い上げた翌日、それと同額の臨時収入が入ったので味をしめ…という二人は、あまり豊富でない語彙でそう述べると、出来る物なら平身低頭の勢いで所持金を置き、哀れになった『ウルフ』が道を開けると脱兎で逃げ出した。
┌ライ──────────────────────────┐
|心を尽くせば、理解してくれるものだね♪         |
└────────────────────────────┘
いや、それはどうかと…果たして脅迫より性質が悪い。
 そして。
┌ちーちゃん───────────────────────┐
|やっと着いたー♪                    |
└────────────────────────────┘
┌りっちゃん───────────────────────┐
|…何かあったのか?                   |
└────────────────────────────┘
ようやく、『ちーちゃん』『りっちゃん』が合流した時には、解決に至った経緯について、誰も口を噤んで語らなかったという…。

 後日。
 『スカーレット』からは『ちょーサンキュ♪』という表題のメールが関係者全員に送られた…彼女の落とした財布は、交番に届け出されていたらしく、無事手元に全額が戻ったそうだ。

 が。
 ゲーム内の現象が、己が現身に及ぶという噂のネットゲーム『ヴァルハラ』…その中に貴方達の姿は映されたままですが………さて?




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0389/真名神・慶悟/男/20歳/陰陽師】(特性:喫煙、天誅)
【0527/今野・篤旗/男/18歳/大学生】(特性:ボケ)
【0724/日下部・敬司/男/44歳/フリーカメラマン】(特性:喫煙、情報)
【0751/遠野・和沙/男/22歳/掃除屋(いわゆるなんでも屋)】(特性:清掃、情報)
【0703/神楽・五樹/男/29歳/大学助教授】(特性:ツッコミ)
【0476/ライティア・エンレイ/男/25歳/悪魔召喚士】(特性:使役)
【0365/大上・隆之介/男/300歳/大学生】(特性:ナンパ)
【0555/夢崎・英彦/男/16歳/探究者】(特性:裕福)
【0767/浅田・幸弘/男/19歳/大学生】(特性:ツッコミ)
【0165/月見里・千里/女/16歳/女子高校生】(特性:天然)

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■         ライター通信          ■
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………多ッ!
列記してみて己の所行におののく北斗に御座います…さて、今回はちょっと毛色の変わった依頼で御座いましたが如何でしたでしょうか?
相も変わらず遅筆なライターで平身低頭お詫びするしか…ッ!なんとも微妙に特性を使い込めなかったり、謎のまま捨て置いてしまった部分があったりとかですが、少しでも楽しんで頂ければと願っております。
苦情・提言、どうぞ遠慮なくお寄せ下さいませ。

ご参加ありがとうございました。
それでは、また時が遇う事を願いつつ。