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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


水際への問い

+オープニング+

『愛』ってなんですか?

問い掛ける幽霊が居る。
もし、この問いに答えられる者が居るのであれば
答えてあげてください。


そう、ゴーストネットへの掲示板に短く書き込まれた
書き込み……果たして本当に問い掛ける幽霊は
出てくるのだろうか?


+優しい心+

「ねえ、どっち?」

問われた時、どう答えて良いか解らなくて。

「あっちの子の方が大事だって言うのなら許さないから」

許さないって、なんで?
私は皆と一緒に居たいだけ。
だけど、それじゃあ駄目なの?

「どっちの方が友人としてより大好きなの? 一番なの?」

…順位なんて決めなくちゃいけないの?
ねえ、どうして?
どうして……そう言う事言うの?
私は、貴方も大事な友達だって思ってるの。
なのにどうして……番号、なんてつけなきゃいけないの?
そうまでしなくちゃいけない?

……解らない、解らない……。

こうして、幽霊になってしまった今でも。
あの時の答えは、出せない。
何故?
何故?

この言葉だけが、繰り返し繰り返し。
漣のように繰り返す。
忘れられない言葉となって。


+ゴーストネット+

「……え?」

それは、本当に偶然に見つけたと言って過言ではない書き込みだった。
「愛」ってなんですか?
そう問いかける幽霊が居るのだと言う。
この問いに答えられるのなら答えてあげてくれとも。

来生・千万来は、その何処か淋しげな幽霊があまりに心配で昼も夜もなく
愛というものについて考え込むようになってしまった。

愛ってなんだろう?

実質的に最初に思い出すのは、この愛と言うものが形には出来ないものだと言う事。
名づけても何かが奇妙で、やはり「愛」と言うしかない一つの偉大なる気持ち。

だが幽霊がそんな答えを求めているわけではないと思う。

学校で授業を受けている時も少し考える時間に余裕があるとその事に費やし
部活でも、時折先輩たちにからかわれつつもふっとした瞬間に思ってしまう。

―――愛って本当になんだろう?

なんなのだろう?
自分に、この問いが答えられるだろうか?
だが、逢いたい。
逢って話してみたい。
それを思う幽霊の孤独を少しでも癒してあげたいから。

こうして、千万来の問う幽霊探しが始まった。
時間的に3年とは言えまだ平日は学校があるから、かなり限られた時間ではあったけれど。


+放課後の探索+

「幽霊ねえ…来生、本当にお前そんなの探してんのか?」
「はい。一度逢って話してみたいんです」
「…ゴーストネットは俺も一度見たことあるけどさ、探してみようとは
考えた事なかったなあ……」

ぼそり。
放課後、一緒に何故かついてきてくれている友人との会話。
自分としても確かに友人が幽霊見ませんでしたか?と聞くのは限られた人にしか
聞けない質問だとはわかっているが……やってもいいと言ったのは目の前の友人なのだ。
…と言うより幽霊見たことない人が幽霊探しを手伝う、というのもどうかとは思うけれど……
自分だって人のことは、それほど言えないわけだし。

「もし、アレなんでしたら帰っても良いですよ? もしかしたら俺1人で探したほうが
見つかるかもだし……」
「そうかあ?逆に不安だがなあ……」
「…何が」

ぴきっ、と表情を強ばらせつつ千万来は友人へと詰め寄る。
確かに自分は小柄だ。
しかもそれに加えて童顔だし?
この二つが合わさって女の子に間違われた事もしょっちゅうだけれど…一体何が
心配なんだ、何がッ。

「いや、逆にナンパに間違われて何処か連れて行かれるかな?と」

あははっ。
そう笑った友人の笑い声は長く続かなかった。
綺麗に千万来の弁慶の泣き所への蹴りが決まっていたからである。
うずくまる、友人を他所に千万来は今度こそちゃんと探し出すべく歩き出した。

時刻は夕刻。
じきに逢魔ヶ刻、といわれる時間がやってくる。


+1人、思ふ+

どうしてだろう。
何で上手く行かなかったのだろう。
誰もが本当に大事で。
誰一人、欠ける事などないと思っていた。
全てが優しくて、大事な時間はゆっくりと過ぎる、その毎日が何より好きで。

「どっちが大事?」
『どちらも大事よ? 比べられると思うの?』
「思うわ、私は貴方が一番の友達だと思ってる。貴方はどう? 私だと言って。でなきゃ……」

ユルセナイモノ。

許すとか、許さないとか、そういう問題なの?
私の意志は?
私の思考は必要でない?
……いらないのかしら「私」は。
貴方の目に映る「私」だけが必要なら…そういう事になってしまう。

……誰か助けて。
もう、こんな事考えたくないの。
愛って、何?
そこにある気持ち―――に、嘘偽りは無いのに。
想いは。
汚されてしまうのだろうか?


+発見?+

「……あれ?」

千万来は、歩いている瞬間何か引っかかる物を見た様な気がして振り返った。
歩いている人たちには無い、何処か不思議な空気。
流れ出す何かが千万来へと探しているのであろう人物を感覚ではない何かで教えていた。

ビルの影。
その場所にうずくまる、少女。
…間違いない、彼女だと千万来は確信した。
どう話し掛けても驚かせてしまうだろうけれど千万来は思い切って声をかけた。
くるり、と振り返った姿はかなりの美少女で思わず逆にビックリもしたけれど。
艶やかな黒髪とはっきりとした目鼻立ち。
生前はかなりの友人にも恵まれていたのではなかろうかと思うほど
何処か、その顔の華やかさとは裏腹な柔らかな雰囲気が彼女にはあった。

「こんにちは?」
『…こんにちは』
「つかぬ事をお伺いしますけれど、問う幽霊さんで間違いない、ですよね?」
『…多分、そうよ。でもね、誰もが答えをちゃんと言ってくれないから…疲れたわ。
多分、貴方に聞いても答えてはくれないんでしょうね?』
「それは…どうでしょう。とりあえず聞いてみてもらえますか? 俺は答えますから」
『では。……愛って何? 友愛でもなんでもいいわ、答えて』
「はい…納得してもらえるかはわかりませんけれど……俺の考える愛とは
人の感情の基本で、誰もが欲してやまないもの。誰もが無償で与えあえる唯一のものだと思う」
『………』
「そして」
『?』
「そんなことを尋ねる貴方が一番望むものなのではないか、貴方が淋しいのではないかが
非常に気がかりです、俺は」
『貴方、面白い人ね』
「…良く、前に先輩に言われましたけど…そうですかね? 面白いですか?」
『少なくとも私にとってはね。ねえ? 私もねそう思ってたのよ?与えあえるものだって。
私の友人から私へ、そして更に違う友人へと与えていく事が出来る広がっていく世界。
そう言うものが友愛というものにはあるんだって、信じてた』
「…ええ」
『けどね、私の友人の1人は違ってたの……一番でなければ嫌だって泣いたの。
私の、私にとっての一番でありたいと言って。でも……それは』
「無理ですよね、気持ちに順番なんてつけれませんから」
『ええ……だから、そう言ったんだけれど…無理だったわ』
「……淋しいですね」
『そうね』

苦笑混じりの笑い声に千万来はやりきれない思いを抱いた。
何故死んだのかを彼女は詳しく語らないけれど、多分きっと……いいや、これは
憶測に過ぎないし考えてはいけない事なのだ、きっと。
だから、もう。
これ以上、彼女を淋しく思わせては駄目だ。
出来る事ならばしたいと思うから、どうかそんな風には笑わないで。

「…もし、問いに答えたものとして俺ができる事があるなら傍に居ますし
貴方が望む事は俺に出来る範囲でなら叶えたいと思うんですが…どうでしょうか?」
『…貴方、本当に変わってる。幽霊なのよ、私。傍に居てくれるのは嬉しいけれど本当にそれでいいの?』
「はい、勿論」
『…では、傍にいて頂戴。この淋しさが心から消えるまで』
「ええ、一緒に居ます。それまで、ずっと。では、自己紹介ですね。俺は来生・千万来。
ある高校の三年生です。貴方は?」
『私は―――』


そしてこれが幽霊と千万来との一つの出会い。
どうか、淋しく思わないで。
決して1人で居ると思う時でも。
誰もがきっと、1人ではないから。




―End―

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0743 / 来生・千万来 / 男 / 18 / 高校生】
【0818 / プリンキア・アルフヘイム / 女 / 35 / メイクアップアーティスト】
【0428 / 鈴代・ゆゆ / 女 / 10 / 鈴蘭の精】
【0332 / 九尾・桐伯 / 男 / 27 / バーテンダー】
【1021 / 冴木・紫 / 女 / 21 / フリーライター】
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■         ライター通信          ■
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初めましてこんにちは、ライターの秋月です。
今回は「水際の問い」に参加して頂いて有難うございました!
今回、問う幽霊と言う事で特に1人に限定せず複数の幽霊が
出ています、よって今回も個別の文章となっておりますが
少しでも楽しんで頂けたら幸いです(^^)

来生さん、初めまして!
凄く誠実なプレイングに幽霊もすっかり一緒に居ることを決めたようですが
淋しくなくなったら、ちゃんと何処かへ行くと思いますので
その点はご安心くださいね♪本当に有難うございました!

では、また何処かで会えることを祈って。
*お返事等は、かなり遅くなりますけれど宜しければテラコン等からの
メールお待ちしております。