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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:黄泉津比良坂 −千引きの岩−(前編)
執筆ライター  :立神勇樹
調査組織名   :草間興信所
募集予定人数  :1人〜5人

■オープニング■

 自分が死ねばいい。
 自分が死ねばいい。
 そうすれば、この国は、愛しい人は助かるだろう。
 かつて女神を殺し、男神に殺され、今よみがえろうとしているこの焔の邪神と共に自分が死ぬことで、この世界は救われる。
 愛しい妻である彼女も、自分と彼女の血を継ぐ娘も、この世界に生き続けていけるだろう。
 ――しかし、その世界に自分は居ない。
「彼女は私を憎むでしょうね」
 隣に立っている緑の瞳の魔術師が、同じ警察官であり、自分の上司である男が微笑みながらつぶやいた。
「でも決めているんでしょう?」
 ……警視は俺を犠牲にしてこの国を守るだろう。
 泣きわめいても、懇願しても、怒り狂っても。
 この上なく冷酷に、この上なく優しく。俺を犠牲にすることで破壊を最小限に押さえ、国を守ろうとするだろう。
 寂しいのか、悔しいのか、諦めているのか自分でもわからない。
 ただ……密かに危機を乗り越え、守られ、平和にすぎていくその世界に自分は居ない。
 彼女の、娘の居る世界に自分は居ない。
「二人を頼みます」
 使い古された独創性のない言葉が口から漏れる。最後なのだからもう少し格好の良いことを言えればいいのだが、それ以外に思いつかなかった。
 緑の瞳の魔術師は、微笑みをくずさないまま。だがしっかりとうなずいた。

 白昼夢を見ていた。
 どんな夢なのか思い出せない。ただ、どこかで見た誰かがいた気がする。過去なのか、予感なのかわからない。
 そんなことをぼんやり考えながらソファーにもたれかかり、髪をかき上げていると、そろそろと興信所の扉が開き、一人の女の子が現れた。
 背中に背負った赤いランドセルが重いのか、しきりに肩を動かしている。
「パパを探してほしいの」
 と、鈴を転がすような声で開口一番にのたまった。
「おいおい、ここは交番じゃないぞ」
 今まで子供が依頼者という事件を幾つか担当してきたが、どれも金がとれない……つまり骨折り損の事件ばかりだった。
 その為、子供が関わる以来は極力避けたい。というのがありありの口調で草間はぼやく。
「パパを探してほしいの。お仕事先からも居なくなってみんな心配してるの」
 負けじと少女は繰り返す。
「パパ、どうしていなくなったのかな?」
 子供を放っておけないのか(便宜上)草間の妹の零が、しゃがみこみ、少女と同じ目線で語りかける。
「パパね、由良とお約束したの。由良の誕生日に本当のパパを連れてきてくれるって。由良の本当のパパは「ほのおがくち」の悪い神様が「ふしのやま」から出てこないようにする為に「よも」に行ったの」
 舌っ足らずな声で言うが、要領を得ない。
「ママが「し」のあがないに「よも」の坂にある「まかる」の玉を持ってきなさい。ってパパを怒ったから、パパも「よも」に行ったの」
「うううううーん」
 零が頭を抱え込む。何を言いたいのかさっぱりわからないといった処だろう。
 草間が面倒くさげな仕草でタバコをくわえた瞬間、けたたましく電話が鳴り響いた。
 いそいそと受話器を取り上げ、草間は肩をすくめた。
 少なくとも子供の戯言よりは電話の向こうの相手が金になる仕事だ、と思ったのだろう。
 しかし、電話を受けて10秒たたない内に草間の顔がこわばった。
「……なんで警察が……榊が行方不明?」
 警察庁に所属し、怪奇事件の調査解決を指揮する男。
 しばしばここに来てはやっかいな事件を押しつけていく彼――榊千尋の名前を何度かつぶやくと、草間はとうてい判読不可能な文字で忙しげにメモを取っていく。
 ふと気になって、少女の方をみる。
「パパの名前教えてくれるかな?」
 零の頭越しに少女に向かって問いかける。と、少女――由良は汚れない純真な瞳を輝かせながら、予想通りの言葉を返した。
 ――パパの名前は「さかき・ちひろ」なのだ、と。


■15:00 草間興信所■

 ほろ苦いコーヒーの香りが鼻孔をくすぐる。
 その心地よさを楽しんでいた武神一樹は、草間が漏らした言葉に眉根をよせ顔をしかめてみせた。
 ――「し」のあがないに「よも」の坂にある「まかる」の玉か。
 黄泉津比良坂? まさかな。
 思いつつも、めがねの奥の瞳は彼らしくもなく揺れていた。
 そう、まるで手にあるカップの中の漆黒の液体が、かすかな身動きにも揺らめき、波紋を広げるように。
 絶え間なくいくつもの考えが揺れ、一つの考えが次の考えを呼び起こす。
 死の贖いに黄泉津比良坂にある死反玉を取ってくる。
 子供の舌足らずの言葉ではあるとはいえ、立派につじつまが合う。しかも取りに行ったのは怪奇事件を専門に調査・解決する部署の調査官なのだ。
(草間に珈琲をたかりにきて黄泉津比良坂の名を聞くことになろうとはな)
 この場合、近所の喫茶店ではなく事務所内の買い置きの豆で「珈琲をおごった」という、草間のせせこましさが幸したのかしなかったのか……。ともあれ、事件の背後関係は全くわからないが、その名を聞いた以上、一樹が黙って居られる筈もなかった。
 黄泉津比良坂。
 かの地はこの国の防人に取って、知らぬではすまされぬ禁忌の地である。
 榊がいかなる目的で近づいたのかは定かではないが、その地に踏み込んだ者がいるとなれば、最悪、この国を滅ぼすほどの災厄を呼び込みかねない。
 それだけはなんとしても阻止しなければならない。
 それが、歴史の陰、吉備の地において人と妖の調停役を担ってきた物部氏残党末裔としての、自分の役割であり使命であった。
 普段であれば、そのような先祖代々の使命など意識することもなく、ただ、自分の生き甲斐。ただ、それのみにより、事に当たるのだが、今回の場合は、事情が違った。
 はらり、と目の前に落ちてきた闇の色をした髪を指先で疎ましげに払い、一樹は顔を上げた。
 と、均整のとれた体をぐん、とのばしながら一人の男がこの緊急時にしてはやたらとのんびりとした口調で言葉を放つのが見えた。この興信所を遊び場の一つのように利用している大上隆之介である。
「う〜ん……なんだか日本神話に出てくるような単語だけど……この辺の講義マトモに受けてねーからなぁ」
 頬を指さきで書きながら、光の加減で金色にも、影の差した琥珀のようにも見える不思議な色合いの瞳を曇らせる。
 己の知らない過去の片鱗を手にできれば、と歴史を専攻してみたものの、日本神話となればいささか「遠すぎ」る。
 長い手足をあやつり、軽くストレッチを繰り返す。と、ぽきぽきという音がした。運動不足なのか、はたまたいっときもじっとしてられない性質が体にまで繁栄されているのか、体も心もすっかり事件に飛び込む気である。
「黄泉・火之迦具土・富士の山? って事は榊さんの居場所は富士山か?」
 由良のつぶらな瞳をのぞき込みながら、肩をすくめた。
「それじゃ、由良ちゃんの本当のパパが犠牲に火山噴火を止めてると?」
 事務所の影の実力者。泣く子も黙る財務大臣であるシュライン・エマが挑むように蒼い瞳をきらめかせて大上に聞き返す。
 電話の受話器をおいた草間が、ぎょっとしたように目を見張った。
「ちょっとまて! どこからおまえらその火之迦具土だの火山だのの情報を知ったんだ?」
「え?」
 草間に指摘されて、今初めて気がついたというようにシュラインと大上が顔を合わせた。
「武彦さんがみた白昼夢の邪神の話から……だけど」
「俺は……そういえば、何でだろう」
 数々の怪異にあたり、たいていの事には驚かなくなった草間興信所常連の面々だが、この事象にはさすがに驚いたようだ。
 と、鈴の音が聞こえた。
 高く、低く、まるで神楽の曲を奏でるように。

 自分が死ねばいい。
 自分が死ねばいい。
 そうすれば、この国は、愛しい人は助かるだろう。
 かつて女神を殺し、男神に殺され、今よみがえろうとしているこの焔の邪神と共に自分が死ぬことで、この世界は救われる。
 
 歌うように緩やかに、ささやくようにかすかに、言葉が繰り返される。
 それは耳から入る音ではない。心に密やかに滑り込み、意識のうたかたに消える何か。
「霊体……いや、残留思念だな」
 彫像のように身動きもせず、ただただ呆然とする一同の中にあって、武神一樹だけが「それ」が何でもない事のように言った。
 由良のそばに寄りそうだけであった零が、おずおずとした調子で一樹の意見の後に言葉をつなげた。
「あの……由良ちゃんの腕にある鈴が……」
 ――鳴っております。
 その言葉に反応するように、由良の腕に赤い糸で結びつけられた鈴の音が止み、静寂があたりを満たす。
「由良ちゃん、それは……」
「二年前にパパからもらったの。本当のパパがいるんだよって。ママは捨てなさいって言っていたけど……由良、この鈴好きだから」
 瞬きをしながらシュラインを見上げ、手を差し出す。
(何の変哲もない……ただの鈴に見えるけれど)
 素材は金だから子供の持つものにしてはいささか高価すぎるが、それでも、鈴は普通に見えた。
 指先でつまみ、振ってみる。と、音がしなかった。
「音が……しない……。中に何も入ってないわ」
 どんな鈴も外側の殻と、中の玉。二つがそろわないと音を奏でない。
 しかし由良の鈴には玉が入ってなかったのだ。
「古来、鈴の音は「玉音」といい、鈴を振る事を「玉振り」……ひいては「霊魂(たま)振り」といい、神祭りの場の穢れを祓い、邪をのぞく作用があるというが……この場合は」
 骨董屋であり、いにしえの日本をよしとする彼らしい含蓄をよどむことなく口にしていた一樹がふと口ごもった。
 しかし言わなくても、その場の全員にはわかっていた。
 ――この場合は魂がない。
 あるいは。
 由良の父親の「魂」こそが「玉」というのだろうか。では、由良の守護霊、あるいはそれに近い存在として「本当のパパ」が居るというのだろうか。
(それにしても、ひどく、半端な)
 本来守護霊とは、しっかりと意志をもつ……つまり霊魂の状態で存在し、またある程度の霊力やその心得があるものは感じられる筈である。だが、今の由良にまとわりついているのは、守護霊にもなりきれない、残された強い想いだけなのだ。
(以前、榊千尋に接触したさくらの話を想い起こすかぎりでは、一筋縄ではいかない輩のようだったがな)
 何を考えて鈴を渡したのか。それはわからないが。ともあれ、最悪の事態を防ぐにはかの地に向かったという榊の意図と動向を探らねばなるまい。
 そう思って一樹が顔をあげると、シュラインが彼女らしくもない、トーンのはずれた声を上げた。
「由良ちゃん、このあざどうしたの?」
 小さな手の、その手首にぼんやりと虫さされのような赤いあざができていた。
 と、由良は頭をふった。
「知らない。あのね、ママはね、鈴をつけているから、鈴があたってあざになってるんだって、だから鈴を捨てなさいって」
 鈴を取られるとおもったのか、シュラインの手から自分の手をはなし、鈴を隠すように左手で手首をぎゅっと握りしめる。
「変ねぇ」
 草間の残したメモを取り上げながら、全員の心中を代弁する。
 鈴を外せ、はともかく捨てろというのはおかしい。無き夫の遺品でもあるはずの鈴を捨てろとは、どこかずれている。
(まあ、世の中には別れた男に関連するものすべて捨てちゃう人もいるし。一概には言えないけれど)
 鈴をつけているから痣になる。もおかしくはない。畳の上で昼寝して畳の後が顔につくようなものだろう。しかし……。
(あそこまで赤くなるのかしら……まるで……)
 ――炎のような形の赤い痣だった。
 訳の分からない恐怖が足の裏から心臓まで、じわじわと浸食してくるような気がした。不吉な予感。と言い切ってしまうにはあまりにも重苦しい何かが喉をしめつけた。
 ぞくり、と身をふるわせ、嫌な考えをあたまから振り払う。
「死のあがないにまかるの玉ってなんなんだよ。禍津の玉?」
 シュラインが感じた何か、に気づかなかったのか、隆之介がすう、と目を細めていらだたしげにつぶやいた。
「違うわ。多分……まかるの玉……十種神宝のまかるがえしの玉かしら? 死反玉て事は生き返りの為のものよね……そんな事可能なの? 現在は石上神社か玉置山にっていわれてるらしいけど。うーん。でも由良ちゃんが行ったのは黄泉津比良坂」
 何かのたとえだろうか。それとも死体だけでも持ち帰るとか。
「石上神社には、無い」
 端的に一樹が否定する。
 隆之介とシュラインがわからない、と行った面もちで一樹の方へと視線を集中させた。
 かつて各地の国津神を高天原系の神々の支配下におくべく、天皇家が行った政策の一つに、地方の神宝・呪物の徴発があった。
 神宝や、ご神体であるモノを集め、それらすべてを大和神話系に組み込んだのである。
 集められた神宝は奈良の石上神社に集められた。という。
 当然、十種神宝も石上神社に集められ。その祭祀権を持つ氏族……物部氏が管理を担当することになっていたのだ。
「祭神であるニギハヤヒが持って降臨した、十種の宝の一つに確かに「死反玉」はあるが。しかし十種神宝自体は死者をもよみがえらせるほどの霊験がある一方で、その実体はもちろん、その入れ物でさえ見た者はいない。という」
 腕を組み、眉根を寄せたまま一樹は頭をふった。
「現在の石上神社に残され、保存されているのは形を模した「古図」だけだ。本体そのものではない」
 他の者が言ったなら、そうだろうか、と反発したくもなるが。骨董屋を経営し、古の品にまつわる情報のネットワークを保有する……しかも、この場合はその神宝を代々守ってきたと言われる一族の末裔だ……の一樹が言う事に、誰も反論できなかった。
 つまり石上神社には、死反玉はもともとから「ない」という事になる。
 と、シュラインは草間が電話を受けながら取っていたメモを拾い上げ、肩をすくめた。
「どうやら、そのようね」
 ミミズがの悶絶したような、汚い字を、いかにして解読したのか。それともつきあいの長さがなせる技なのか。
 シュラインはため息をついたあと、米子空港。とつぶやいた。
「米子? 榊さんの足取りはそこで途絶えてるのか?」
 話についていくのがやっと、という体だった隆之介が目を見開いた。
 不死の山というからてっきり富士山だと思いこんでいたのだ。
 かつて、中国の風水龍にまつわる事件の時のように、何かを犠牲にして富士山の噴火を止めているのだろうと。
 同じく大学生で暇をもてあましている(と、隆之介が勝手に認識しているだけなのだが)友人の幸弘――浅田幸弘に車で富士山まで送ってもらい、五合目以降は身一つで火口を目指すつもりだったが。
 点で予想が外れてしまった。
(何をやろうとしているかは知らないけど)
 何としても止めてやる。
 心中でつぶやいて、唇をかみしめる。
 手は、無意識的にポケットの中を探っていた。
 そこには、かつての事件で「国を守る」という名の下に榊が抹殺した陶磁器人形……緑(リュー)の欠片が密やかに、忍ばされていた。
(榊サンの事だ……また何かを犠牲にして……下手すりゃ自分自身を犠牲にして……何かを守ろうとしているに違い無い)
 今度は、今度こそは止めたい。例えそれがどんな大儀の元でも生け贄の様に犠牲になる存在など、あってはならないのだ。
 みんなが幸せになるなど、青臭い幻想でしかない。そんなことがわからないほど子供ではない。
 しかし、そんな簡単な事すら信じられないほど、隆之介は「大人」ではなかった。
 欠片を握りしめる。
 固く鋭い陶器の欠片は、手のひらを傷つけるではなく。まるで励ますかのようにぴったりと隆之介の手になじんだ。
(……そうだよな、緑(リュー)?)
 人ではない。しかし、人ではないと言い切ってしまうにはあまりにも人じみた、風水人形の顔が隆之介の脳裏に浮かんで消えた。
「ともかく、由良ちゃんを預けにいって、ついで母親から事情を聞くか」
 感傷を吹っ切るように、わざと明るい声で隆之介は言う。
「うーん。多分奥さんに何かを言われて榊さんが行方知れずなんだとは思うけど」
「時間がもったいないな」
 一樹がシュラインの言葉を追うように言った。
 確かに全員が同じ行動をするのは、時間がもったいない。
 先ほどの不思議な現象が、ただの偶然や錯覚ではないとすれば、事態が差し迫ってるのは明白だ。
「由良ちゃんは、俺が家まで送り届けよう」
「武神が?! 大丈夫か?!」
 草間の素っ頓狂な叫びに、さすがの一樹も憮然とした表情で答える。
 確かに保父になれるようなタイプではないと、自認しているが。よりによって草間武彦につっこまれたくはない。
「どういう意味だ。それは」
「いや、あー、うー。ああ、そうだ。子供には子供の方が話があうだろう。ちょうど良い相手がいる。そいつと一緒の方がいいだろう」
 などとお茶を濁しながら、草間はノートパソコンを操作し始めた。今更止めても止まらないだろうし、人手は少ないより多い方がよい。
「ともかく私は米子から東出雲町揖屋にあるっていう黄泉津比良坂、千引きの岩へかしら」
 そういうとシュラインは由良の頭に手を乗せて、柔らかい髪の毛をなでて整えてやる。
「具体的に榊さんが何をするつもりかわからないけれど、見つけてこなきゃ。由良ちゃん本当のパパじゃなくて榊さんを心配してるんだもの」
「本当のパパって……榊さんの娘じゃない……のか。そっか、そうだよな。子連れには見えないもんな」
 今更気づいたかのように、大上が肩をすくめて口笛を吹いた。
「いろいろ不安だらけだけど……武彦さん、零ちゃん。行って来るわね」
 由良を武神の手に預けながら、シュラインが言う。
 その声にも、青い瞳にも。
 もう迷いはなかった。

■17:00 禍津火神の使徒■

 歩くたびに由良の手首にある金の鈴が揺れる。
 玉がないためか鈴口から音が漏れることはなく、ただ、秋の夕日をうけて静かにゆらゆらと輝いている。
 小さい手は、しっかりと少年――草間が子供のお守りに最適だ、とよこした術者の少年の手を握りしめていた。
 握りしめられている方、つまり御崎月斗といえば、どこか困惑したような呆れたようなぶっちょう面で武神の隣を精一杯の早足で歩こうとしていた。
 しかし由良の歩みが小さいためかうまく行かず、二歩歩いては半歩タイミングをずらし、タイミングをずらしてはまた歩き始めるという事を飽きることなく繰り返していた。
 それはどことなく年齢に似合わない無理を重ねているようで、武神としては苦笑するしかなかった。
「パパねぇ、由良の幼稚園の運動会にも来てくれたんだよ。今度の小学校の運動会にも来てくれるって約束したんだよ。本当はものすごぉく仕事が忙しいから来るの無理な筈なのに、いつも由良との約束まもってくれるの」
 にこにこと無邪気なことこの上ない笑顔で、由良が舌っ足らずな口調で言う。
「誕生日に、おっきーな由良よりおっきーなピンクの象さんのぬいぐるみくれたし」
「由良ちゃんは榊――パパの事がすきなのだな」
 ほほえましさから来る笑いを堪えながら武神一樹が問うと、由良は「うん」と大きくうなづいて月斗とつないだ手を力一杯振った。
「でも由良悪い子なの。ママがね榊のぱぱに頼んだらきっと「本当のパパ」連れてきてくれるって。約束で契約したら、ぱぱは約束破れないんだって。由良、本当のぱぱにちょっと逢いたかったから……ほんとかなぁってママに言われた通りに言ったの。そしたらパパちょっと怖い顔してた。由良がママの意地悪どおりにしたから由良の事嫌いになっちゃったのかな」
 うつむいて、立ち止まる。
 人気のない夕方の住宅街のアスファルトに、三人の影が長くのび、刻み込まれる。
 たったそれだけのことが、訳もなく月斗には悲しくて悔しかった。多分、つないでる由良の手から感情が伝染したのだ。自分は人より心の――精神の動きを察知しやすい術者なのだから。と思いこもうとして、やめた。
 事件の背後関係はしらないが、由良は多分踊らされている。
 大人達の都合によって。
「ま、俺がなんとか二人のパパを捜し出してやるから心配するな。大船にのったつもりでいろよな」
 まとわりつく、由良の寂しげな感情を振り払うように、月斗が元気良く言った。
 と、由良はふたたび大きくうなずくと、手を離し一気にかけだした。おそらく家が近いのだろう。
「無理をするな」
 月斗の頭に手を置き、一樹が言う。
 人と妖。その調停役を担う武神は、人と人との間にも容易に解きほぐすことのできない、感情の糸のもつれがあることを知っていた。
 大人でさえうんざりとして、なげうちたくなる糸だらけの世界を、子供である月斗が自力だけで生きていくのは容易ではない。
 しかし。
「世界はおまえ一人を受け入れられないほど狭くはない。おまえが一人で受け入れなければならないほど広くもないがな」
 ふ、と息をもらして言うと、プライドを傷つけられたとおもったのか、月斗が乱暴に一樹の手を払った。
「わかるかよ、そんなの」
 頬を上気させ、ふくらませて反論する。
 何が言いたいのかわからない。矛盾している様にも聞こえる。
 しかし「わかって」いるのだ。一樹が何を言いたいのか。ずっと自分で分かっていたのだ。ただ、気づきたくなかっただけで。
 常に落ち着いた言動で、とても小学生には見えない。
 しかしどう言おうと、まだ手も足も細く頼りない事が否定できない事実だ。だから少しでも大きくみせようと。そう無理をしていたのかもしれない。していないのかも知れない。
 ただ、兄弟がいる時のように純粋に人前で笑うことはできない。
 自分には守らねばならないものがある。だから強く無ければならないのだと。
 しかし一樹を見てると、やはり自分は無理をしているのかもしれない、と感じずにはいられない。
 一樹には今まで見てきたどの大人にもない、自然体の強さがあった。
 無理をするわけでもない、怠惰に自分の力を無いものと見なしているわけでもない。
 ただ、千年も昔からある杉の巨木が、無理に枝をざわめかせるでもなく、周囲の木々を圧倒するでもなく、「ある」ということ。ただそれだけで自然の強さを、命のたくましさを伝えるように。
 そういう強さがあり、それが月斗にはまぶしくも、そしてねたましくも感じられた。
 言葉を失い、ただ、黙々と二人で由良の後を追いかけていたが、ふと、月斗が足をとめた。
「どうした?」
 一樹が尋ねると、月斗がつい、と手を空にのばした。
 そこには美しく、輝いているのではないかと思えるほど、ただただ白い小鳥が飛びさえずっていた。
 小鳥は最初からそうなることが決まっていたかのように、月斗の指先にとまり、その羽を毛繕った。
 十二神将が式神化した存在――情報収集の為にとばした「迷企羅(メイキラ)」だった。
 迷企羅は指先から肩へと飛び移ると、月斗の耳をついばむような仕草をし、しばらく戯れるように羽を耳元でばたつかせた後、再び赤から黒へと染まりつつ空へ飛び立った。
「由良の家の周りに警察と……神道系の術者が……いるらしい」
 かすかに顔を強ばらせ、月斗がぼそりと言った。
 一樹はめがねを押しやり住宅街の奥、まだ建てられたばかりの小さな二階建ての家を見た。
 警察が……いる?
 家の中なら分かる、失踪した仲間――しかも、エリートであり、一応幹部候補生の榊が失踪したのだ、警察が捜査の為に由良の母親に事情聴取するのはありうるだろう。
 しかし、家のまわりにいるとはまるで。
「張り込みか」
 きな臭い。ただの失踪ではないな、と確信した。もっとも予想無いの出来事だったのでそこまで意表はつかれなかったが。
 問題は神道系の術者とやらだ。
 榊の部署の人間なら問題ない。だが何かが引っかかる。
 引っかかると言えば先ほどの由良の話もだ。
 ――約束で契約したら、ぱぱは約束破れない。
 ママに言われて、約束で契約した。だ。
 約束と契約は違う。特に術者あるいはそれに関わる者にとっては。
 では榊は何らかの罠にはめられて、何かと引き替えに「由良の誕生日」という期限までに「死反玉」を手にいれなければならない状況に陥ったというのだろうか。
 そして、それは彼の立場と相反していた。だから警察官として動くことはできず、単独で行動したというのだろうか。
 ――ならばすっきりと、収まる。
 かつて榊に関わったさくらから得た人物像では、榊は「国を守る」為にはあらゆる手段を辞さない冷酷さを持ち合わせていると見えた。
 おそらく、国を守る、というのが彼のなにがしかの信念にかかっているのだろう。
 国――否、国家だ。
 この国に息づく者ではなく、この国の秩序、人間が人間のために、人間が生きやすい社会となるために作った秩序を守る彼が、その組織から抜け出し、単独で動く。その気持ち悪さが先ほどの由良の言葉で納得が行った。
 裏切らざるを得ない……何故?
(まだ、足りない)
 おそらく、事件の全体という設計図を描くには、まだ足りないパーツがあるのだ。
 そしてそれを「由良の母親」が持っているに違いない。
「思ったより、やっかいな事になりそうだな」
 暮れゆく空には、厚く黒い雲が徐々に立ちこめており、夜半ともなれば雨が降り出しそうな気配だった。
 じっとりとまとわりつくような、湿気の多い空気をどこか息苦しく感じながら、一樹と月斗は走り去った由良の赤いランドセルを見つめていた。

 嘉数透子は、日本人形のように綺麗に切りそろえられた髪を払い、自動人形のように感情を感じさせない動きで月斗と一樹の前にお茶を出した。
 通された居間はテレビドラマで良くみかけるような、ありきたりの風景だったが、どこか生活感がかけていた。
「榊さんは、本当に由良に良くしてくれたと思います」
 ぽつり、とうながされるでもなく透子が言った。
「学校の行事も、クリスマスや七五三なんかも、お忙しい仕事に無理矢理都合をつけて、いろいろとしてくださって。本当に――由良の父親代わりとしては、最高の方だと思います。良介が生きていたとしても、榊さん程の「理想の父親」にはなれなかったと思います」
 「理想の父親」に、かすかな皮肉を込めながら、透子は唇をゆがめた。
 生来なのか、それとも夫を失ってからそうなったのか、不健康に乾き、紫がかった唇が、ぎこちなく動く。
 その笑いに、すべてが込められていた。
 由良の父親代わりとしては、最高だ。
 しかし、由良の父親――自分が愛した男ではない。
 自分が愛した男の代わりにはなり得ない、なることを許さない。と。
「私と良介は、伊勢・伯家という違いはありましたがともに神道の術者であり、榊さんがいらっしゃる部署が設立される前から宮内庁・警察と、いくつか表沙汰にすることができない事件に携わってきました。だから「宮」が――ああ、国家は便宜上「火神教」と呼称しておりますが――が、富士を活性化させ日本転覆させようとしているのは、重々承知しておりました」
 火之迦具土――日本神話から忘れられた、宮を持たない祭神。
 母を殺して生まれ、生まれすぐ父に殺された。
 親殺し、子殺しをその一身に背負いあらわれ、すぐに表の歴史から消し去られた存在。
 静岡県周智郡春野町の秋葉山(あきはさん)山頂にある秋葉神社本宮が、祭神としてまつってはいるが、信仰しているというよりは、むしろその力を恐れ、封じる火防(ひぶせ)信仰として、かろうじて組み込まれているのみである。
 イザナギ・イザナミの直系であるにしてはあまりにもささやかで、伊勢などに比べれば遙かに零細なまつられ方である。
 しかしその影で、火之迦具土こそが主神であるという神話解釈をする術師があらわれた。
 すなわち、イザナギ・イザナミの国生みは失敗であり、その失敗を正すために火之迦具土は生まれたのだと。
 すべてを生み出したイザナミの女陰(ほと)を焼き、国土を焼き、新たに炎の中からすべてを生み出し、それこそが完璧な国になるはずであったと。しかし、父により殺されたが故になし得なかったのだと。
 そして今の日本はイザナギの子殺しの罪の上にあり、「だから」争いや苦悩が耐えないのだと。
 正す方法は一つ、不死の山において火之迦具土を復活させ、日本という国を炎で浄化せねばならないのだと。
(強引ではあるが、つじつまは合うな)
 苦笑しつつ一樹は頭を振った。
 世界終末思想と選民思想の良くあるパターンだ。
 世界は滅ぼさねばならない。自分たちが信じている神によって滅ぼさねばならない。しかし神を信じている自分たちは特別だから生き残るのだ。と。
「それを阻止するために、良介と榊さんは富士において「宮」の者達と対峙しました。不利なのは明らかな戦いでした。でも、良介は榊さんを信じておりました。また、榊さんや良介が判断するとおり、あの時――あの二年前に止めなければ、本当に日本は富士噴火という天変地異によって、立ち直れないダメージを受けたかもしれません」
 そして戦い――かろうじて「宮」の意志は防がれた。
 嘉数良介という一人の術者の犠牲によって。
 だが、だからといって許せる訳がない。
 納得するには、あまりにも良介の存在は大きすぎた。
 そこには一人の子供がいた。
 愛する人を返して、とひたすらに泣きじゃくる小さい幼女が。
 由良の母親としてではなく、ただただひたすらに愛する者を求める女として。
 嘉数透子が泣いているように見えた。
「だから、あんたはその榊とかいう奴をなじった訳か」
 そんな事をしても、死んだ奴は帰ってこないのに。
 大人のくせにそんな当たり前の事も知らないのだろうか。
 どこか冷淡に透子を突き放しながら月斗は言った。と、透子はうっすらと――怖気がするほど冷えた笑いを浮かべた。
 尋常ではない。
「俺は、人と妖の調停役をしている。だが人と妖が反目するのを快く思わないのと同じように、人同士が反目するのも黙っては見ていられない質でな」
 いつの間にか空になってしまった湯飲みを、テーブルの上に戻しながら一樹は深く静かな夜の森のような闇色の瞳で、じっと透子を見た。
「ことここに至るまでの榊の意図と動向を尋ねさせてもらおうか。彼の行動にも、貴女の行動にも不明瞭な点が多すぎる」
「例えば?」
「例えばあんたが榊とかいう奴を何らかの罠に陥れた事だ」
 一樹の言葉につづけるように、辛辣に月斗がいうと透子の眉がぴくりと上がった。
「そう、随分と賢い方々なのですね。確かに私は由良の口を借り、彼が由良の誕生日までに死反玉を持ってくるようにし向けましたわ。約束ではなく神の名に基づく契約として」
 引きつるように透子の喉が動いた。
「無意味だ、死んだ人間を生き返らせるだなんて!」
 いつになく感情的に月斗が叫ぶ、大人の勝手な都合で由良が踊らされている。
 そのことがこの上なく悔しかった。この上なく許せなかった。
 怒りが熱となり胸の奥でぐるぐると渦巻いていた。
 しかし怒りの対象である筈の透子は、氷結した彫像のように顔色一つ変えずさらりと言い放った。
「ええ、私だって神道の術を使う巫女の端くれ。死反玉が「死体すらない人間」を生き返らせるなどできないと、そんなこと当たり前にしってます」
 では、何のために。単に榊を苦しめたいのか。
 ただそれだけなのか。
 一樹は頭の中でめまぐるしく状況を理解し、先を推理しようとした。
 何を犠牲にしても国家を守るという榊の冷酷な信念、その信念すら曲げさせる「契約」。
 死体すらない人間なと死反玉では生き返らせられないと言いつつ、死反玉を求める透子。
 刹那。
 一樹はすべてを悟った。
 シュラインが事務所でみた、赤い痣。
 鳴り響いた黄金の鈴。
 鈴を捨てろといった透子。鈴を渡した榊。
 めまぐるしく記憶が交差する。
「契約の代償は由良――娘を契約の代償に、人質にしたのか!」
 あの痣は透子が施した契約の代償、契約が守られなかった時の為の神々への生け贄の印。
 鈴は榊が施したささやかな封印であり、抵抗。
 しかし契約の期限が近づくにつれ、封印することができなくなってきたのだろう。
 当然だ、契約は「契り」なのだ。決して破ることは許されない誓いなのだ。
 おそらく死の間際に際して良介は、榊に妻と子供を頼むとでも言ったのであろう。
 そして榊は罠にはめられてなお、誰の約束も破ることが出来なかった。
 亡くなった部下との約束も、誕生日にパパを連れてきてと言った由良との約束も、そして娘の命を代償に死反玉を持ってくるようにと榊を罠にかけた透子との約束も。
「その死反玉を、何に使うつもりだ!」
「――おわかりの、癖に」
 ゆらりと陽炎のように透子が立ち上がった、そしてリビングの片隅で絵をかいていた由良をその腕に引き寄せると、首に自分の腕を絡め抱き寄せた。
「ママ?」
 喉がくるしいのか、身じろぎしながら、由良が透子を見上げる。
 しかし透子は誰も、何も見てはいなかった。
「「宮」に、火之迦具土に捧げ、富士の眠りを覚ます為にきまってるじゃ、ありませんか」
 陶然と夢見心地のようにゆったりとした声があたりに響いた。
「火之迦具土が解放されれば、「ソレ」を封じている良介も解放される――いいえ、解放されなくてもいいの。だって、私が生きてる世界に良介は居ないんですもの」
 糸が切れるかすかな音がした、そして鈴の落ちるかすかな金属音。
 そして鼻をつく何かが腐ったような異臭。
「由良を草間興信所に行かせたのは私。榊に何かがあれば警察があそこに連絡を入れるのはわかっていたもの。でも駄目よ。榊が死反玉を手に入れるまでは、誰にも邪魔させない」
 妙に息苦しい。
 透子の怨嗟の性なのか、由良の苦しげな顔の性なのか。
 下手に動くこともできず、にらみ合う一樹と透子の間に、月斗の声が入り込んだ。
「武神さん! ガスだ!」
 悲鳴の様な声に合わせて透子が、けたたましく笑い出した。
 そして、由良の赤い――契約の痣から炎が吹き出した。
 充満したガスに、炎が引火する。
 閃光、そして爆音。
 かろうじて生きて居られたのは、術者としての本能であるいは、月斗をしたう十二神将の守護が結界となり二人を守ったからに他ならない。
 燃え落ちていく、カーテン、写真立て、ソファー、絨毯。
 術の炎とガスに引火した炎が合わさって、結界の外はつきること無い焔獄と化していた。
 外で透子を張り込んでいた警察が連絡したのか、けたたましいサイレンの音が家屋が崩れ落ちる轟音の向こうから聞こえた。
「一度撤退だな」
 術で炎を中和・消滅させることは出来る。
 しかしそれでは何の解決にもならない。透子も、由良も――榊も救われない。
 縺れた感情の糸は解けない。
 由良が泣き叫ぶ声が聞こえた。
 透子が笑う声が聞こえた。
 炎はあの二人を焼く事はないだろう。
 あれは、透子の――否、夫を亡くした透子の心につけいった「宮」の者達からの宣戦布告なのだから。
 十二神将に守られながら、月斗と一樹が燃え落ちる寸前の屋外に出ると、火事の野次馬から離れた所に和服を着た金髪の女性がひっそりと立っていた。
「一樹様」
 と、彼の経営する「櫻月堂」の住み込み店員である、たおやかな女性は唇をふるわせた。
「どうした、さくら?」
 彼女らしくない、落ち着きの無い声に、一樹が聞き返す。と、彼女は「草間様よりの伝言です」と前置きし、しばしの迷いのあと一息に告げたのだ。
 ――黄泉津比良坂に置いて、伊邪那美(いざなみ)の領域を侵し、死反玉を手にした榊千尋が、神の呪いを受け、あと二日の命なのだ。と。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0173 / 武神 一樹(たけがみ・かずき)/男/ 30/骨董屋『櫻月堂』店主】
【0599 / 黒月 焔(くろつき・ほむら)/男/27/バーのマスター】
【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 /草間興信所事務員&翻訳家&幽霊作家】
【0213 / 張・暁文(チャン・シャオウェン) / 男 / 24 / サラリーマン(自称)】
【0365 / 大上隆之介(おおかみ・りゅうのすけ)/ 男 / 300 / 大学生 】
【0778 / 御崎・月斗(みさき・つきと) / 男 / 12 / 陰陽師 】
【0908 / 紅・蘇蘭 (ホン・スーラン)/ 女 / 999 / 骨董店主・闇ブローカー】

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■         ライター通信          ■
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 私的事情により、納期を遅らせてしまい大変申し訳ありませんでした。
 プレイングの違いにより文章量にかなり差がでたり、情報量に差が出てしまい、調整しましたが、あまり差を埋められなく、己の至らなさに閉口するばかりです。
 ともあれ、後半解決のヒントはすべて出ております。
 というよりも、むしろ「こう」という解決の答えはありません。
 前編にちりばめられた各種の情報を活用して「自分ならこう解決する」あるいは「こう解決されるべきだ」という行動を貫いてくだされば、事態は落ち着くべき所へ落ち着くのではないかと思います。
 なお、今回はプレイングの内容や、ばらまくべき情報のかみあわせにより、他の方の事件を参考しなければ全貌が見えないという多少面倒な作りになっております。
 一つのファイルにまとめようかと思いましたが、それではあまりにも文章量が多すぎるのであえて分割させていただきました。
 後編にも参加していただけると幸いです。
 では。

・武神一樹様。
 今回母親に関する情報収集あるいは、その情報収集の優先順位が高いととれるプレイングだった方で性格1が防御よりの方のルートです。
 母親に会いに行くというプレイングをかけられた方があまりにも多かった為、防御が高い順とさせていただきました。(交渉に値する部分なので攻撃的でない人間が適任という数値判断です)
 いろんな情報がばらけているため、難解なルートになってしまい申し訳ありません。コンパクトに情報を納めようとしましたが、これが限界でした(汗)
 事件の下地になる部分の情報はすべてここに集約されております。
 武神様の能力に関して、発動可能にしようかなとラスト思いましたが、そうすると事件がここで決着してしまうので(苦笑)
 あえて、発動しなかった、という事にしてしまいました。
 勝手な判断ではありますが、後編につなげるということで、ご了承の程お願いいたします。