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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ちかんオバケツインズ! 〜日本色情霊連合会からの挑戦状〜

■オープニング
 とある日のゴーストネットの掲示板。
 毎日数十件の書き込みが現れるその場所に、悪戯を思わせるようなその新しい書き込みに、雫はさすがに眉を寄せた。
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投稿者: 日本色情霊連合会 墨田支部理事 たけもと

  先日は、うちの可愛い新入り幽霊・ミツモリを可愛がってくださってありがとうございます。
 ミツモリは現在、雷の音を聞くとおびえ、少女を見るとおびえ、すっかり再起不能の状態に
 なってしまいました。
  僭越至極ながら、ちょっとワタクシ怒っております。
  とはいえ、この身は霊でありますので、裁判ザタにするわけにもいきませぬし、暴力行為
 に訴えることも我が美学に反します。
  そういうわけですので、ここは皆様方に挑戦状を出させていただきたく、掲示板に書かせて
 いただくことにしました。
  里山小学校をご存知でしょうか。そちらで10月10日創立記念祭が開かれます。
  ワタクシはそこに行き、ちょっとひと暴れしてみたいな〜と思っております。
  そして暴れたアカツキには、「ゴーストネットに集まる霊能力者の仕業」と宣伝させていた
 だく心積もりでおります。
  さて、私を止められるかどうか、皆様ぜひお相手をしていただきたく、お待ち申しております。
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「何これ?」
 雫は呟き、頭を抱えた。
 里山小学校は、ゴーストネットのある場所の程近くにある小学校だ。
 調べてみたところ、確かに10/10に創立記念祭が開かれるらしい。
 お神輿やバザー等の催しもあるが、実際は運動会のようなイベントだ。
「どこまで悪戯なのかな〜…」
 難しい顔をする雫に、「まあ近所だし、覗きに行くくらいならな」と声をかけてみようかとあなたは思うのだった。

■快晴の創立記念祭(11:40)−里山小学校中庭
 真名神・慶悟(まながみ・けいご)は校門から入り、人気のあまりない学校の中庭、池の周りに佇んでいた。
 ホスト然とした風貌の金髪の彼が、苔で緑がかった小さな池を覗き込んでるのを見て、通りがかった世話好きな伯母さんが、「あんた二日酔いかい?そんなところで吐いちゃだめだよ」と親切心に声をかけてくれる。
 遠くから明るい競技の音楽が聞こえてくるのを、つい数年前までの自分の学生時代を思い出し、ノスタルジックに耽っていただけなのに、ひどい言われようだ。
 慶悟はその婦人が姿を消したのを確認して、意を決したように懐のポケットから数枚の符を取り出し、指にはさんで宙にかざした。
「…出でよ、十二神将!」
 慶悟の声に、彼の細い指に挟まれていた符から、煙ともつかないような白い靄が発生し、渦をまく。
 渦の中から、笠を被った道士のような風貌の十二体の式神が現れて、彼の前にずらりと並んだ。
 慶悟はひとつ大きく息を吐くと、符を掲げたまま、彼らを見つめて命ずる。
「色欲を露わにするもの、いつもの三森、それに連なるものがあるならば捕縛せよ」
 黙って慶悟を見つめ返している、それは彼の使役する式神であった。慶悟はさらに声を響かせた。
「これは厳格なる勅と知れ。散れ!!」
 その号令と同時に式神達は四散するように、その場から飛び去っていった。
 去った式神達は小学校の上空に立ち、それぞれの守る十二箇所の方位から、悪しき者が近づかないように監視をするだろう。
 慶悟は符を再び懐にしまうと、小さく息をついた。
「しかし…連合会とはな…。話がでかくなっているというか、なんというか…」
 呆れて物が言えない。
 けれど、放っておくわけにもいかない。小学校に破廉恥オバケ降臨とはなんて悪質な挑戦状だろう。
「今度こそは…成敗しておかなければな…」
 心に誓う慶悟であった。

 シュライン・エマから携帯電話が入り、他のメンバーの現状を聞く。

 シュラインは、神輿の担ぎ手の小学生たちに、徹夜で作ってきたお守り袋を手渡し、そして学校関係者に学校行事の妨害をすることなしに、警備をすることの許可を得たらしい。
 浅田・幸弘(あさだ・ゆきひろ)は彼女と普通に小学校の運動会を楽しむ計画という。 多分「ショタ」であろう幽霊に関わるつもりはないと冷たくあしらわれた。
 けれど、彼の彼女の弟はこの小学校に通う児童らしい。何かあれば力になってくれるだろう。
 ファルナ・新宮(−・しんぐう)は、体育館の中でバザーを楽しんでいるようだった。
 育ちのいい彼女は、こういった学校行事が珍しいのだろうか? おうどんを食べてます、おいしいです〜、と嬉しそうに言っていた。
 そして水野・想司(みずの・そうじ)は、グラウンドを囲んで座っている児童達に、模造光刃を配っているとのことだった。彼が持つライトセーバーのような剣・光刃を模したものだという。
 何をするつもりなのだろうか?
 
■ちかんオバケの悪巧み(0:20)
 ちかんオバケ二人組は小学校の上空に浮いていた。
 一人は牛乳瓶の底のような眼鏡に、詰襟の制服を着た若い男。
 彼はしきりに足元の景色をきょろきょろ見回し、落ち着かない様子で見回している。
『んー、どうしたの? ミツモリ』
 ファンデーションを頬にぱんぱん当てながらメイクに余念のない様子の、ポニーテールの女性<外見は二十代妙齢くらいか>が、三森を振り返った。
『たけもとさん、あんな予告状出して…絶対、あの人たち来てますよぉぉ〜〜〜。…どうするんですか〜??』
『あーん?』
 たけもと、と呼ばれた彼女は、つまらなさそうな表情で三森を見ると、またパフパフと化粧を開始する。
『昼休みが開けたら、とっとと突入するわよ。お神輿担ぎがあるみたいだし、いやん、たけもと胸がどっきどきしますわ〜ん』
『…あーうー…知りませんよぉぉ〜〜』
 三森は泣き顔になった。
 彼らの足元には、慶悟の十二神将が辺りを警戒している空間があることを、ちかんオバケたちも気づいていた。
 だが、そのさらに下にある空間には、たけもとが愛してやまない「小学生の生足」がたくさんある。彼女にとっては、神聖な楽園、エデンの園のようなものだ。
『…なによ、ミツモリ。その顔は。あなた、ゴーストネットの奴らが怖いなんて今更言うんじゃないでしょーね?』
『怖いですよぉぉぉ〜』
 三森は両耳に手を当て、目をつむった。
 雷に打たれ、過去を暴かれ、そして可憐な少女にライトセーバーで追い回され、…できることならあんな体験はもうしたくない。
 たけもとが思うほど、ゴーストネットから来る連中は半端ではないのだ。
 涙して訴えても、たけもとは全く聞く耳をもってくれない。
『つまんない男ねー! それじゃいつまでたっても、大成できないわよ! さあ、そろそろ時間だわ!』
 たけもとは三森を叱り飛ばし、さあ、行くわよ、とその腕を引く。『うきゃ〜〜〜〜』と悲鳴を上げながら、三森はたけもとに連れられて結界内に突入した。

■神輿(1:00)−中庭
 十二神将の一人が反応を見せた。
 続いて、彼らによって作られていた結界に侵入者があり、それが結界が破られたことを知る。
「…来たな」
 慶悟は低く呟いた。
 あえて簡単に破れるような弱めの結界を張ったのだ。彼らに反応した神将は、ちかんオバケ達の後を追い始める。けして逃さないはずだ。
「行くか」
 慶悟は息を一つ吐くと、彼らの後を追って走り出した。

■ちかんオバケの悪巧み2(1:05)−校庭上空
『きゃーきゃー、神輿神輿! なまあしなまあしなまあしっっ』  
『たけもと…さん〜、後ろから怖い顔した人が追ってきてますよぉぉぉっ』
 なきつくような三森をがっしり掴みながら、それを引きずるようにして、たけもとは一直線に神輿に向かって降下していった。
 三森の視線の先には、後方からついてくる慶悟の神将達がいる。
 長いポニーテールが風の中を揺れていく。
 追ってくる慶悟の神将よりもすばやいスピードで、彼女は手を伸ばすと、一直線に生足のふとももあたりをなで上げて行こうとする。
 だが。
 バチィィィィツ。
『やんっっ』
 案外可愛い声を出して、たけもとは自分の手首を押さえて、空中で固まった。
『ど…どうかしましたかぁぁ?』
『はじかれたわっっ』
 たけもとは神輿を担ぐ少年達を見下ろし、悔しそうに叫んだ。
『あの美味しそうななまあしに触れないなんてっっ』
『…あああああ、追いつかれますぅぅ〜〜〜』
 三森はばたばたとたけもとを動かそうと暴れた。 ようやくたけもとも三森の言う方向を振り返る。
『…な、なによ、あれは。逃げるわよっ』
 たけもとは三森の腕を握ったまま、再び空の上に急上昇する。
 だが、その上昇した先に、違う方向から来た神将が待ち伏せていた。
『なんですって!?』
 再び右の方向に二人は猛スピードで逃げる。
 するとその先には校庭にそびえる、巨大な光の柱がたっていた。
『…な、な、な、なんなの??』
『だから…ゴーストネットの人たちに…逆らわないほうがいいって…』
 二人がその光に動きを止めたとき、背後から神将たちが追いついて、ふたりをはがい閉めにしようとする。
『いやぁぁぁっ』
 たけもとは地上の方へと滑空した。

■光の柱(1:10)
「あれは何?」
 神輿の担ぎ手達に渡したお守りの効果に気づかないうちに、更衣室に向かっていたシュラインも、校庭に立つ光の柱を目撃していた。
 それは校舎の上の屋上に立っていた水野・想司の仕業らしい。
 彼が児童達に渡した模造光刃と自分の光刃を呼応して、巨大な結界、いやもうそれどころではなく、巨大な光の龍を作り出していたのだ。
 参加している者にとっては素晴らしいデモンストレーションなのだろうが、すごい騒ぎである。
「お神輿の盛り上がり…削られちゃったかしらね」
 シュラインは苦笑し、その付近を神将に追い回されている、ちかんオバケ達の存在にも気がついた。
 素晴らしいスピードで、三森をぶらさげたままポニーテールの女は飛びまわっている。
 ところが突然、光の龍の口がぱくりと開き、ふたりの姿をごくりと飲み込んだ。そしてどこかに連れ去ろうとする。それはシュラインの頭の上を越えていき、今は使われていないプールの方へと飛んでいった。
「なるほどね」
 シュラインは微笑むと、プールのほうへと駆け出した。
 
■(1:19)−プール
 シュラインは途中で慶悟と合流し、柵を乗り越え、プールサイドへと降り立った。
「あの光は想司くんね」
 さらに駆けだしながら、シュラインが言う。金の龍はくわえた二人を25メートルプールの脇の銀杏の木の下に下ろすと、姿を消した。
 そして下ろされたオバケ達を神将達がぐるりと囲んで動きを封じる。
「…今度ばかりは逃げられないわね」
 二人はプールに辿りつくと、フェンスを乗り越えて、中に入る。
 そこには神将達に囲まれたちかんオバケ達が暴れていた。
『な…なによぉ、あんたたち!レディに失礼よ!離しなさいってば』
 叫ぴながら暴れているのはポニーテールの女性に見えるオバケである。その隣で、おろおろと辺りを見回しているのは三森だ。
「おまえがたけもとか」
 慶悟とシュラインは二人に近づく。
 たけもとはぎろりと二人を睨みつけると、大きな声でいった。
『あんたたち、こんなことしてただですむと思ってるの!?』
「挑戦状を送りつけてきたのはあなたよ」
 シュラインは呆れたように溜息をつく。
「あなたこそ、こんなことをしてどうなることか…」
 もう私には止められないわよ、と苦笑すると、シュラインはプールの入り口を振り返った。
 右手に熱気、左手に冷気を背負った、無表情だが明らかに尋常でないオーラを背負った青年が、ゆっくりと入ってくるところだった。
『…な、なにっっ!?』
「もう…捕まっていたんだね…それはよいことだ」
 口元に冷たい笑顔を浮かべて、幸弘はちかんオバケ達に近づいてくる。
『ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 私、まだ何もしてないわよ! なまあしも触ってないし!!』
「そういう問題じゃないね♪」
 プールサイドの銀杏の枝の上には、魔法使いルックの少年が笑っている。
 彼は光刃を手にとると、その刃をかざしながら、舌を出し、くすりと微笑む。
「まったくだ…」
 幸弘も両手を掲げる。熱風と冷風がプールの上を吹き荒れた。
「…そうだな」
 慶悟も遅れまじと、胸元から符を取り出した。その符を手にした途端、空には突然黒い暗雲がたちこめてくる。
『ひ…ひぃぃぃぃっ』
 たけもとは蒼白になり、逃げようと浮かび上がろうとした。
「させるか! 禁呪!!」
 慶悟が叫ぶ。それを合図にしたように、想司が空に舞い、幸弘の両手が振り下ろされた。そしてとどめに雷が轟く。

 …後には小さなコゲカスだけが残っていた。

「やったな…」
 慶悟が息をつく。
「当然だ…」幸弘も憮然とした息をついた。
「本当に消えちゃったのかな〜」想司は星のタクトを振りながら、辺りをきょろきょろと見回した。
「あ…あれ?」
 シュラインは何かに気がついた。
 今トドメがさされる瞬間、横から何かが飛び込んできた気がしたのだ。
「ん? あれは…?」
 幸弘が眉をひそめ、プールの入り口の方を振り返っている。シュラインも一緒に振り返ると、そこにはメイド姿のゴーレムが、三森を抱えて走っているのが見えたのだ。
「ファルファ…?」
「すみませんー、すこし借りさせてくださいーっ」
 ハッピを着けたファルナが柵の向こうから手を振った。
 そして三人でそのまま駆けていく。
「どうしたのかしら…」
「少しお話がしたくて。すみません」
 去っていくファルナに一同は一瞬唖然として見送る。
 しかし、何故か次の瞬間、笑いが彼の中で起こっていた。
「また、三森には逃げられたのかな?」
「さすが強敵。そうこなくちゃだね」
「…そんなものなのか? 危険だと思うぞ」
「ファルナさん、大丈夫かしら。しばらくしたら探しに行かなくちゃ…」
 四人は笑顔で顔を見合わせると、プールサイドから歩き出した。

 そろそろ、神輿はグラウンドまで辿りついたらしい。ワッショイ、ワッショイと威勢のいい声が秋空に響き渡っていく。
 誰が詠んだのだったか、秋の空はとても高く、そして美しい。
 
                                           ちかんオバケツインズ! 了
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0086 シュライン・エマ 女性 26 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト
 0158 ファルナ・新宮 女性 16 ゴーレムテイマー
 0389 真名神・慶悟 男性 20 陰陽師
 0424 水野・想司 男性 14 吸血鬼ハンター
 0767 浅田・幸弘 男性 19 大学生
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■             ライター通信                ■
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 こんにちわ。鈴猫(すずにゃ)と申します。
 大変お待たせいたしました。「ちかんオバケツインズ 〜日本色情魔連合会からの挑戦状〜」をお届けします。

 真名神慶悟さん11回目、シュライン・エマさん8回目、
 水野・想司さん4回目、ファルナ新宮さん3回目のご参加ありがとうございます。
 浅田・幸弘さんは初めましてですね。
 皆様、数ある依頼の中で、私の依頼を受けてくださいまして、本当にありがとうございます。

 さて、今回の依頼、皆様の行動がそれぞれとても楽しいくらいに個性的で、楽しみながら書かせていただきました。
 おかげで「たけもと」は「手も足も出せない」うちにやっつけられちゃったようです。
 ちかんオバケなので、煩悩の赴くままに再び復活することもあるかもしれませんが、当分は現れないでしょう。
  
 それではまた違う依頼でお会いできたら幸いです。
 ご参加、本当にありがとうございました。皆様のご活躍、これからも期待しています。

                                               鈴猫