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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


調査コードネーム:蘇れ!懐かしのアイドル喫茶
執筆ライター  :壬生ナギサ
調査組織名   :ゴーストネットOFF
募集予定人数  :1人〜8人

------<オープニング>--------------------------------------

秋は学園祭、文化祭、運動会など学校行事が目白押しの季節である。
ここ、秀理学園においても学園祭が行われる事になった。
学園祭では各クラス事にそれぞれ催し物をする事になっている。
あるクラスはお化け屋敷。また、あるクラスは自作テレビの放映。
そして、秀理学園二年の山崎匠のクラスは喫茶店をする事が決まっていた。
「でもなぁ。……ただの喫茶店じゃ面白くないよなぁ」
委員長でもある匠は呟いた。
「じゃどうするんだ?」
クラスのヤツに問われ、匠は頭の後ろで腕を組み、天井を仰ぐ。
「…そうだなぁ……アイドル喫茶ってのはどうだろ?」
「アイドル、喫茶??」
なんだそれ、と首を傾げる友達に、匠は何かを得たように頷きながら言う。
「そうさ。山口百恵とか郷ひろみとかチェッカーズとか、昔のアイドルのショーを客に見せるのさ!きっと、当たるぞ!!」
「で、誰がやるんだ?それ」
「誰ってこのクラスでやるに決まってるだろ?」
「俺、昔のアイドルなんてしらね〜もん」
はたっと匠は止まる。
匠はアイドル好きの両親という家庭環境のお陰でかなり、昔の歌謡曲には詳しいが普通の高校生なら知らない方が普通だろう。
「ん〜……!」
匠は腕を組み、頭を悩ます。
「そうだ。アイドルものまね歌謡ショーってして、参加者募集しよう」
うんうん。と一人頷く匠。
学園祭に部外者が参加して良いのか?という疑問は置いておいて、さっそく匠は校外に張り出すビラを作成し始めた。
「そうだ!ゴーストネットの掲示板にもカキコしてみよっと♪」

天気、晴れ。
絶好の学園祭日和に、ここ秀理学園の一階美術室は小さいながら舞台の置かれた喫茶店へと改装されていた。
PM12:47
第一回目のショーも無事終了し、美術室内はおしゃべりに興じるお客やお菓子に舌鼓を打つ客が午後のひとときを過ごしていた。
そんな中、セーラー服を着た女性が喫茶店の窓に張られたビラを見ていた。
「ふぅん……アイドルものまね歌謡ショー、ね。面白そう♪」
黄桜川桃子はそう呟くと、喫茶店の裏へと回る。
背の低い細身の体を今、セーラー服に包んでいるが桃子は立派な27歳。
しかも「イエローチェリー」と言う名のバーの経営者である。
そんな彼女はお店の子たちとセーラー服肝試し(!?)と称して、こうして学園祭の忍び込んでいるのだが、誰が見ても違和感なく生徒たちに溶け込んでいる。
流石、自称17歳といったところか……
「あの〜すみませ〜ん」
桃子は舞台裏で食事中らしい生徒に声をかける。
「はい、なんですか?」
その中にいた匠が桃子の応対に立った。
「あの〜外の張り紙見たんですけど、私も参加させて欲しいなって思って」
自分の可愛らしさを最大限に活用しつつ、言う桃子を断る事が出来ない匠は頭を掻いた。
「困ったなぁ……あの、一応聞くんですけど、誰のモノマネ希望なんですか?」
「キョンキョンの渚のハイカラ人魚です♪」
「あ、だったらあるや。参加、大丈夫っすよ」
「ほんと?!」
「はい。俺、音源持ってますから」
その言葉に桃子は大袈裟に喜ぶと、匠に抱きついた。

PM13:29
鈴代ゆゆは一番前の席にひとり座り、ちびちびと水をすすっていた。
鈴蘭の精である彼女は今日も表の世界へと出かると何やら賑やかな雰囲気に惹かれ、学園祭見物をしていた。
その時、ふっと耳にした「アイドル喫茶」の単語に、少女趣味なものは全てに興味を持っている彼女は目を輝かせここにやって来た、という訳である。
「早く始まらないかな〜?」
開演をいまや遅しと待つ人々の中、ゆゆは呟いた。
その時、室内の明かりは落ち、音楽が流れてくる。
アップテンポなリズムに億千万〜♪億千万〜♪のバックコーラス。
流れてきた曲は郷ひろみの『2億4千万の瞳』!!
現れた匠はマイク片手にノリノリである。
客もショーの始まりだというのに、まるでもうライブ中盤のような盛り上がり。
そんな中、また一人この熱気に惹かれてやって来た者がいる。
「なんだ?なんだ?何盛り上がってんだ?」
征城大悟は客大入りの美術室の覗き込んだ。
「おい、ここは何やってんだ?」
近くにいた生徒を捕まえ尋ねた強面の彼に少々怯えながら、女子生徒は返す。
「…あ、アイドル喫茶で今、アイドルのモノマネショーをしてるんです」
「あいどるぅ?」
「は…はいぃ」
涙目でこくこく頷く女子に礼を言い、大悟は舞台へと視線を向けた。
「おいおい、アイドルで郷ひろみだと?なってねぇな……」
何やら不穏な呟きと共に、大悟は人波を押し退け、室内へと入って行った。
「皆〜ノッテるか〜〜い?!」
匠のマイクパフォーマンスに歓声で答える観客。
もうすっかり小さなライブ会場の出来上がりである。
それに気を良くした匠は更に続ける。
「アイドルは好きか〜?!」
  『オー!!』
「今日は楽しんで行こうぜ〜!!」
  『オ〜!!』
だが、その盛り上がりを中断させる男が一人。
「ちょ〜っと待った!!」
と、突然舞台に上がりこんだ大悟は匠に近寄る。
驚いたのは匠の方だ。
「あ、あの……?」
「貸せ」
そう言うなり、マイクを奪い取った大悟は客に向かい言う。
「アイドルといやぁ、YAZAWAだろー!アイラブユーOK?ってなモンだぜ、オイ」
そう言うなり皮ジャンを脱ぎ捨て、取り出したYAZAWAネーム入りのタオルを首にかけた大悟は大きく息を吸い込んだ。
「アイ・ラブ・ユーOK〜♪ この世界に〜♪」
曲なしで歌い始めた大悟。
だが、その声のデカさといったら半端なく歌唱力と相まってまるでジャイ○ン並の被害を撒き散らし始めた。
あまりの声のデカさに耳を塞いでも効果なし。
逃げ出す者も現れ始める、がそうは問屋が卸さない。
「どこ行きやがる!」
そう紫の坊主頭に一喝されれば、動ける者もいるはずなく、恐怖のリサイタルが続くかと思われた。
「もう、お止めなさい!」
そう言って桃子は大悟からマイクを奪い取る。
その勇姿の誰かは女神の姿を見たとか見ないとか……ま、兎に角最悪の状況は免れた。
「何すんだよ」
女性には甘い彼は大声を出すでもなく、だが不満そうに言った。
「何すんだよ、じゃないわ。死人でも出すつもり?」
「し、死人ってな…」
言葉に詰まる大悟に更に桃子が続けようとした時、別の乱入者が現れた。
「はい!私、松田聖子の青い珊瑚礁を歌いたい〜♪」
ゆゆが立ち上がり、舞台に駆け上がってきたのだ。
先ほどの事の成り行きをのほほんと見ていたゆゆだったが、どうやら『歌いたい人は舞台に上がって歌って良し!』と解釈したらしい。
桃子からマイクを取ると
「鈴代ゆゆ。歌いま〜す」
ぺこりとお辞儀をした。
すると、音楽が流れはじめる。
「ああ〜私の恋は〜♪南の〜風に乗って走るわ〜♪」
気持ちよく歌い出したゆゆ。
だが、お世辞を言ってもあまり上手くはない。
いや、はっきり言おう。激しく、それはもう音痴だ!
だが、マイペースに気持ちよく歌い続ける彼女はまったく気付かず、これには桃子も大悟も匠も客達もどうしたものかと困り果てていた。

「何?」
美術室の外にまで漏れ出している怪音に、ふらりと遊びに来ていた鬼頭なゆは立ち止まった。
白い肌に、澄んだ青い瞳。柔らかそうな金髪の五歳児はいつも一緒のふかふかのクマの縫ぐるみを抱き首を傾げた。
とてとてと美術室へと近づき、その怪音が人の歌声であると知ったなゆは可愛らしく更に首を傾げた。
「変なお歌」
そして、じーっと舞台を見ていたが、顔をぱっと輝かせ、抱いていたクマさんに話し掛ける。
「わかったわ。きっとお歌の大会なのね!なゆは何を歌ったらいいかな?」
もう、歌う事を考えているなゆはあれこれと幼い頭の中にあるリストを探し始めた。
「♪〜ああ 青い風切って〜走れ あの島へ〜♪」
景気良く気持ち良くフルコーラス歌い切ったゆゆは満足気にお辞儀をすると、何事もなかったかのようにまた席へとつくと乾いたノドを潤した。
「……あ〜終わったんです、よね?えっと…じゃあ、次は」
あまりのド音痴に思考回路がマヒしつつあった匠は一生懸命思考と進行を戻そうとしていたが、そこへまた邪魔が入る。
「はいはい!なゆもやる!!」
かわいい声は聞こえるが、大人たちの背に隠れ姿が見えないなゆ。
だが、小さな体はすぐに舞台へと降り立った。
サイコキネシスで舞台へと降り立ったなゆは、ぷかりと浮いたまま匠の側へと行く。
「なゆも歌うの!」
「え、でも……」
オロオロと困っている匠に桃子は諦めの溜息をついた。
「いいじゃない?歌わせてあげたら?もうこうなったら楽しみましょ!」
「おっ!いいね〜!!ジャンジャン歌おうぜ!」
「あなたはマイク無しで、ね」
勝手に話が纏まって行く状況に、匠も半ばヤケ状態でなゆにマイクを渡す。
「え〜い!もうなんでも来い!!音源ならたくさんあるぞ!!」
「わーい!なゆはパラダイス銀河歌う〜♪」
「あら、よく知ってるわねぇ。私はキョンキョンメドレーがいいわ♪」
「俺はもちろんYAZAWAだぜ!」
そして流れ始める音楽。
光ゲンジの『パラダイス銀河』
クルクルとサイコキネシスで浮いたまま、まるでローラースケートでもはいているように踊り出すなゆ。
あまり上手とはいえないが、一生懸命の愛らしい姿に皆微笑むが、何故こんな小さい子が光ゲンジを知っているのか……心の中で謎が渦巻いている。
気持ちよく一番を歌い終えたところで、桃子がマイクをバトンタッチ。
「さぁ〜盛り上がって行くわよ♪はいはい、手拍子手拍子♪」
と、自ら場を盛り上げて行く。
そこのところの技はやはりバーで鍛えたものだろう。
「なっぎさのハイカラ人魚〜♪キュートなヒップにズキンドキン♪」
ウィンクなどしつつ、歌う姿はバーでも行われているのだろうが、そんな事実を知る者はなく、かわいい女子高生の歌う姿に骨を抜かれる男性は少なくない。
そして、仕上げの大悟は……マイクなしで充分通る声量で、今度は客も聞ける『アイ・ラブ・ユーOK』を熱唱したのだった。
だが、異常な盛り上がりは収まる事を知らず、アイドル喫茶ではなく歌声喫茶へと変貌をとげつつある美術室からの歌声は学園祭終了まで続いたのだった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0568 / 守崎北斗 / 男 / 17歳 / 高校生】
【0554 / 守崎啓斗 / 男 / 17歳 / 高校生】
【0526 / ウォレス・グランブラッド / 男 / 150歳 / 自称・英会話学校講師】
【0814 / 黄桜川桃子 / 女 / 27歳 / バー経営】
【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家
                                +時々草間興信所でバイト】
【0662 / 征城大悟 / 男 / 23歳 / 長距離トラック運転手】
【0428 / 鈴代ゆゆ / 女 / 10歳 / 鈴蘭の精】
【0969 / 鬼頭なゆ / 女 / 5歳 / 幼稚園生】

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■         ライター通信          ■
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初めまして。黄桜川桃子様、征城大悟様、鈴代ゆゆ様そして鬼頭なゆ様。
ヘタレライターの壬生ナギサと申します。
この度は参加頂き有難う御座います!
今回のお話如何でしたでしょうか?
上手く皆さんの頭の中で曲が流れたでしょうか?(汗)
かなり挑戦的要素が多かったのですが……
まだまだ自分の未熟さを思い知った作品になりました。

ご意見、ご感想などありましたらお気軽に送って下さいませ。
では、ご都合が合いましたらまたよろしくお願い致します。