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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡線・仮面の都 札幌>


調査コードネーム:激突! 魔ゲーム!?
執筆ライター  :水上雪乃
調査組織名   :界鏡線シリーズ『札幌』
募集予定人数  :1人〜2人

------<オープニング>--------------------------------------

 ナインボールの勝敗を左右するのは、運だ。
 たとえ一番から八番までのボールをポケットに沈めても、最後の一つを沈められれば負けなのだ。
 逆に、ブレイクショットで九番を沈めることができれば、勝負はそこで終わる。
 技術を求められながらも、最後は運。
 それが、ナインボールだ。

「決めた。やっぱりこの大会、出るわ」
 新山綾が言った。
 茶色い髪、黒い瞳。
 撞球のプロとして、全日本四位の実力を持った女性である。
「ほう。貴女も出場なさいますか。今から対戦が楽しみです」
 応えたのは男だ。
 黒い長髪を後ろで束ね、どこか人を喰ったような笑みを浮かべている。
 国籍も不明。年齢も不明。
 謎だらけの男だった。
 その通り名は、
「次は負けないわよ。ライ=エイトハンドレッド」
 挑戦的な綾の言葉。
「ふふふ。泣いても許してあげませんよ」
 奇妙な名を持つ男が笑う。

 ナインボールの勝敗を決めるのは運。
 だが‥‥。
 運も、ときに芸術だ。




※スポーツシリーズ第四弾です。
※ゲームはビリヤード。ナインボールです。
※コメディーです。念のため。
※水上雪乃の新作シナリオは、通常、毎週月曜日と木曜日にアップされます。
 受付開始は午後8時からです。
 が、10月17日(木)21日(月)24日(木)の新作アップは、著者、私事都合およびMT13執筆のため、お休みいたします。
 ご迷惑をお掛けして、申し訳ありません。


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激突! 魔ゲーム!?


 北海道知事杯争奪撞球大会。
 アマチュアも参加できること大会は、ローカルなタイトルとは異なり、多くの強者が集まることで知られている。
 賞金額が、さして高額ではないのにもかかわらず、だ。
 むろん理由がある。
 じつは、この大会の三週間後に世界選手権の予選がおこなわれるのだ。
 世界の頂点を目指すハスラーたちにとっては、絶好の調整舞台といえるだろう。
 その日、秋風のなかにたたずむ札幌ドームに参集した撞球師たちも、例年通りそうそうたるメンバーだった。
 世界ランキング一位のライ=エイトハンドレッド。アメリカNO,1ハスラーのミネソタ・ファッツ。全日本一位の九尾桐伯。同じく全日本四位の新山綾。新宿の荒武者という異名を取る巫灰滋。学生チャンピオンの斎悠也‥‥。
 ざっと目につくところだけでも、たかだか優勝賞金一〇〇万円の大会とは思えない顔ぶれである。
 非友好的な視線を交わし合う出場者たち。
 すでに勝負は始まっているのだ。世界選手権に向けての。
 ライバル心むきだし、というのも美しくない構図であるが、それだけ本気という証明であろう。
 もっとも、そんな雰囲気とは無縁なものもいる。
 アマチュア連中だ。
 彼らには、そもそも世界選手権への出場資格はない。
 純粋に力試しとして参加している者がほとんどである。
「おひさしぶりです。綾さん」
 スリーピースに身を包んだ斎が、綾に声をかける。
「あら斎くん。あなたも来てたのね」
 茶色い髪の女性が微笑む。
「ええ。ちょっと気になる方が出場しているもので。あ、これどうぞ」
 言って、赤い薔薇の花束を渡す斎。
 嫌味なほどに洗練された動作だった。
 思わず綾が苦笑を浮かべる。
「ありがと。でも、視線が痛いこと痛いこと」
 黒髪の青年目当てで集まった観客、女性ファンたちから殺人的な眼光を注がれている。
「いやぁ、それは俺も同じですよ」
 飄々と笑う斎にも、男どもからの棘どころか針だらけの視線が集まっていた。
 ビリヤード界の明日を担うと称される白皙の美青年。
 妖艶な魅力と気さくな人柄で人気のある黒い目の美女。
 下手をすれば血を見そうなカップリングである。
「ん‥‥と、わたしと斎くんが当たるとしたら準決勝かぁ」
 対戦表を眺めつつ綾が言う。
「そうですねぇ‥‥俺と当たるまで負けないでくださいよ」
 不敵に笑う金の目の青年。
「そっちこそ。変なところでつまずくじゃないわよ」
 綾も、挑戦的な口調をつくった。
 視線が絡み合う。
 仲の良い二人でも、やはりライバルなのだ。
 ところが、端からは見つめ合っているようにしか見えない。
 このあたり、ふたりの容姿のせいもあろう。
「じゃ、俺はこれで」
「頑張ってね」
「綾さんこそ」
 軽く身を屈めて自らの肩にも届かない女性の頬に口付けすると、優雅な一礼を残して斎は歩み去った。
「‥‥なんか、どんどんキスが上手くなるわね‥‥」
 困ったような顔で綾が呟く。
 その様子を、少し離れた場所から男が見ていた。
 野性的な体躯。挑戦的に輝く赤い瞳。
 新宿の荒武者と呼ばれる巫である。
 去りゆく斎に敵意を込めた視線を、綾にはそうではない視線を送っていた。
 まあ、器用なことであるが、意識しての動作ではない。
 整合されない感情ゆえのことだ。
 態度からも判る通り、この野性的なハンサムは綾を憎からず思っている。
 だが、彼は綾や斎のような正規のスクール出身者ではない。
 我流のハスラーである。
 したがって、接点はあまりないのだ。
「だが、今日はちょっと違うぜ‥‥」
 声に出さず呟く。
 掌に握られた対戦表。
 順当に勝ち進めば、準々決勝であの黒い目の女王とぶつかる。
 実力を見せつけ、記憶層に自分の名を刻み込ませるチャンスだった。
 もちろん世界選手権も念頭に置いている。
 いずれにせよ綾は乗り越えねばならない存在なのだ。
 正々堂々と戦い、相克する。
 そして願わくば‥‥。
 野心だか期待だか判らないことを胸に抱き、巫は黙々とキューを磨いていた。

「女王に荒武者、そして学生チャンプ。良い大会になりそうですね。ミスター九尾」
 会場の一角。
 ひとり静かにコンセントレーションを高めている九尾に声をかけたのは、ライ=エイトハンドレッドという名の男である。
「ミスターエイトハンドレッド。どんな相手でも関係ありません。私は私のビリヤードをするだけです」
 九尾が応える。
 世界の頂点に立つ男と日本をリードする男。
 技術でもメンタル面の強さでも優劣つけがたい。
 昨年の世界選手権決勝、最終ゲームまで縺れ込んだ戦い。
 最後に残された九番ボール。
 指に引っ掛かるキュー。
 三ミリメートル。わずか三ミリメートルずれる打点。
 ポケットにはじかれるボール。
 苦い記憶がフラッシュバックする。
「‥‥‥‥」
 黙り込む九尾と、肩を叩くエイトハンドレッド。
 駆け引きは、すでに始まっているのだ。
 彼らが対戦するのは決勝である。
 できればこの勇敵には途中で消えてもらいたい。
 だが、実際に戦って手の内を見たいという思いもあった。
 深刻な二律背反といえるだろう。
「健闘をお祈りしますよ。ミスター九尾」
「ええ。お互いにベストを尽くしましょう」
 エイトハンドレッドが差しだした右手を九尾が握る。
 空々しいほど完璧なポーカーフェイスだった。
 世界を制するものは、まず自分の感情をコントロールしなくてはいけない。
 会場に、開会式のはじまりを告げるアナウンスが五カ国語で流れていた。


 ざわざわと観衆がざわめく。
 大会四日目、準々決勝である。
 さすがにベスト八に進出する面子は、強者揃いであった。
 そして今日、このうちの四名が脱落する。
 一番テーブルでは、第一シードのエイトハンドレッド対斎。
 二番テーブルでは、巫対綾。
 三番テーブルでは、ラム・クローズ対ジョージ・コナリー。
 四番テーブルでは、第二シードの九尾対ミネソタ・ファッツ
 どれを取っても注目の一戦といえる。
 試合開始が同時刻なので、観客としてはいずれを観戦するか大いに悩むところだろう。
 審判の手が挙がり、ブレイクショットの唸りが鳴り響く。

 まず先手を取ったのは九尾だった。
 黒髪の青年が得意とする技法、ナインカッターが炸裂する。
 ブレイクで九番ボールをポケットインさせる大技である。
 むろん、成功率はさほど高くない。
 手玉を含めた八つのボールがどう動くか、完全に予測するのは不可能というものだからだ。
 ありていにいってしまえば、運任せというところだろうか。
 それに、九番を落とすためには、他のボールの動きを考慮から外す必要が出てくる。
 賭なのだ。
 一つのボールもインさせることができなければ、ショット権は相手に移る。
 頂上レベルの戦いだ。
 なるべくなら相手にペースを掴ませたくはない。
 自然、ショットは慎重になるものなのだが、
「このまま、五ゲーム連取といきましょうか」
 長い髪を掻きあげながら豪語する九尾。
 やすやすとナインカッターを決めたあとの台詞である。
 小面憎いほどの余裕だ。
 もっとも、半分は演技であろう。
 初手で大技を繰り出すことによって、相手を萎縮させたり、いきり立たせたり、と、心理的優勢を確保するのだ。
 それでも、確率の高くないナインカッターを用いるあたり、九尾の性格がよく出ている。
 繊弱げで優美な外見とは裏腹に、かなりの攻撃型に属する青年なのだ。
 対するミネソタ・ファッツは、でっぷりと肥った身体で、黙然とたたずんでいる。
 動揺したような仕草は、まったく見せなかった。
「‥‥さすがにこの程度の挑発には乗りませんか‥‥」
 声に出さず九尾が呟く。
 アメリカ随一のハスラーと呼ばれる男である。
 精神的なタフネスは、充分に持ち合わせがあろう。
 簡単な相手ではない。
「こちらも、気を引き締めなくてはなりませんね‥‥」
 慎重に、キューの先にチョークを塗りつける九尾であった。

 ナインボールには、それほど複雑なルールはない。
 テーブル上に存在するボールのうち、最も小さい数のボールに手玉をぶつける。
 それが、唯一ともいえるルールである。
 むろん、床から両足を離してはいけないとか、ビリヤードの基本的な規則は遵守しなくてはいけないが。

「ふふふ。けっこうやるわね。あなた‥‥」
「お褒めにあずかり、光栄だぜ」
 二番テーブルでは、女王と荒武者が挑戦的な視線を絡み合わせていた。
 第五ゲーム。
 ここまで、両者が二ゲームずつをキープしている。
 互いに一歩も退かない戦いだった。
 とはいえ、綾の方はいささか精彩を欠いている。
 試合開始から平凡なミスを幾度か犯し、その都度ピンチに陥っているのだ。
 女王らしからぬプレイといえるだろう。
「落ち着いて‥‥落ち着いて」
 自身の内心に語りかける綾。
 しかし、この日に限って、綾の心臓は脳の統制を受け付けてくれなかった。
 視線の先で、野性的なハンサムがキューを構えている。
 この男に会ってからだ。
 試合前の軽い挨拶。
 交わされる握手。
 大きく力強い掌。
 意外だった。
 四歳も年少の男性にときめくとは。
 認識は動揺を誘い、本来なら完璧に近いキュー捌きを微妙に狂わせる。
 そして、そんな調子で勝てるほど巫は甘い相手ではなかった。
 大きく差が開かないのは、地力で綾がわずかに勝っているからであろうか。
「しゃ!!」
 巫が小さくガッツポーズを決める。
 白い帯のついたボールがテーブルから消失していた。
 沈められたのだ。
 この試合、初めてリードを許してしまった。
 嘆息する女王。
 悔しいはずなのに、ピンチなはずなのに‥‥。
 ここまできて、試合に集中できないなんて‥‥。
 意外な困惑の中に立ち竦む綾であった。

 鮮やかなジャンプボールが、セイフティーの位置にあるはずの的玉を的確に捉える。
 まるで、大空から獲物を狙う鷲のように。
 そしてそのまま飛び散ったボールたちが、ポケットに吸い込まれてゆく。
「‥‥お見事」
 思わずエイトハンドレッドが唸り声を発した。
「それほどでも」
 斎が謙遜してみせる。
 力と力、技と技が鎬を削る一番テーブル。
 世界チャンピオンと学生チャンピオン。
 力量でははっきりと差があろうに、エイトハンドレッドの顔にはいつもの余裕がなかった。
 四対三。
 勝利まであと一歩と迫った世界チャンピオンに、斎が猛追をかけている。
 意外なほどの難敵だった。
 差は、もはや一ゲームまで詰め寄られた。
「‥‥そこです」
 斎が打った手玉が、計算され尽くした軌跡を描いて、五番ボールに命中する。
 スリークッションショットと呼ばれる高等技術だ。
 命を吹き込まれた五番が、静かに九番を弾いた。
 ゴトンという音をたてて、ポケットに落ちる白い帯のボール。
「これで、タイブレイクです」
 金の瞳に自信をたたえ、学生チャンプが宣言する。
 勝負の行方は最終ラウンドまで縺れ込んだ。


 ハスラーの条件として数えられるものの一つに、メンタル面の強さがある。
 難局に立って退かない勇気、リードしていても油断しない剛毅さ。
 そういったものがなくては、厳しい実力の世界では生きてゆけない。
 むろん、これはビリヤードだけに限った話ではない。
 どんなスポーツでも、否、スポーツ以外でも同じである。
 とはいえ、ナインボールに関しては、それ以上に運が大切だ。
 どれだけ勝利の女神の寵愛を受けられるか。
 文字通り、運も実力のうちなのである。
 そしてこの日、徹底的に運に見放されていたのが、綾だ。
 女王という異名の女性は、内心の動揺を整合できないまま敗れ去った。
 ほとんど無名の新人に。
 五対二‥‥。
 惨憺たる結果だった。
 結局、リードを許した後、なんらの良いところもなく振り切られたのだ。
 溜息を漏らす綾に、
「なんなんだ! このヘタレた試合は!!」
 むしろ怒ったような声で巫が近づく。
「ぅ‥‥」
 目を逸らす女王。
 言われなくても、本人が一番よく判っている。
 実力を半分も出せずに敗退。
 これでは、デビューしたての新人と変わらない。
「どういうつもりなんだ!?」
 詰め寄る巫。
 綾の唇がわずかに動く。
「ごめ‥‥せんせ‥‥」
「は?」
 よく聞き取れなかったが、巫は綾のコーチなどしたおぼえはない。
「なにいってるんだ? アンタ」
 疑問符を頭に乗せたまま問いかける。
 だが、綾は質問に応えず、踵を返した。
「おい。ちょっと待てって」
 思わず腕を掴む。
「ぁ‥‥」
 まるで身体を稲妻でも走り抜けたように、崩れ落ちる女王。
 異常な事態だった。
 やや慌てた巫が手を差しのべて支える。
「ぁ‥‥りがと‥‥」
「いや、べつにかまわねぇが。一体どうしたんだ?」
「べつに‥‥」
「べつにって顔じゃねぇな。俺で良かったら相談に乗るぜ」
 頼もしく請け負う。
 けっして邪な考えがあるわけではない。きっと。
「‥‥立てそうもないの‥‥このまま控え室まで連れてってくれる?」
「お安いご用だ」
 綾を半ば抱えるようにしながら、歩き出す巫。
 なんだかよく判らないどよめきが、会場を包んでいた。


「良い勝負でした」
 九尾が右手を差し出す。
「また戦いたいものですな」
 ミネソタ・ファッツが、しっかりと握りかえした。
 四番テーブルでおこなわれた試合は、五対三で九尾が勝利を収めた。
 まず順当な勝利である。
 むろん、危ない場面は幾度もあったが、全ての危機を乗り切り黒髪の青年が準決勝へと駒を進めた。
「いや、さすがにお強い」
「運が良かっただけです。つぎはどちらに転ぶか」
 笑い合う。
 このあたりは、社交辞令の領域を出ていない。
 ミネソタ・ファッツにしてみれば、次は負けないぞという思いを言葉の影に隠しているのだろうし、九尾は、次も叩き潰してやると言外に語っているのだろう。
 その程度の気概がなくては、プロハスラーとはいえない。
 ともあれ、優勝候補の一角は揺るぐことなく健在であった。
 健在でなかったのは、もう一人の優勝候補である。
「まさか‥‥こんな‥‥」
 がっくりと膝をつくエイトハンドレッド。
 終わってみれば、五対四。
 学生チャンピオンたる斎の鮮やかな逆転勝利だった。
「‥‥こんなことがあるんですねぇ」
 勝った斎が、あるいは最も驚いているのかもしれない。
 まさか世界ランキング一位に勝利することができるとは思わなかった。
 序盤で大きくリードされ、開き直ったのが良い結果に繋がったのだろうか。
 もちろん、運が良かったことも否定できまい。
 かつて九尾が苦杯をなめたように、エイトハンドレッドもまた最後の一球に泣いたのだ。
 それが勝負の世界である。
「お見事でした。ミスター斎」
 割り切ったのか、明るい笑顔で対戦者が語りかける。
「ありがとうございます。ミスターエイトハンドレッド」
「また、このような勝負がしたいですね」
「光栄です」
「はやくプロ(こちら)へいらっしゃい。待っておりますから」
「ええ‥‥でも、その前に」
 言葉を濁す斎の目は、四番テーブルに注がれていた。
 日本最強の男に。
 そう。
 世界を目指すなら、必ず超えなくてはいけない厚くて高い壁。
 その名は九尾桐伯。
 いまの運が持続できれば、あるいは‥‥。
 まるで焦がれるように見つめる。
 会場を包む拍手が、勝者と敗者を平等に讃えていた。


  エピローグ

「‥‥ねえ‥‥ホントにいかなくて良かったの? 今日の準決勝」
 同衾している男に向かい女がささやいた。
「いいさ。まともにやってたら、俺は準々決勝で姿を消していたはずだからな」
 女の頭の下に置いた腕をわずかに動かし、茶色の髪をもてあそぶ。
 準決勝を不戦敗で終わる。
 少し残念な気もするが、
「それ以上に大事もん、見つけたからな」
 巫は胸中に呟いた。
 パートナー。
 それは、一つの大会の結果などよりはるかに貴重な存在。
「灰滋‥‥」
「どうした? 綾」
「世界選手権さ‥‥ペア部門に出場しない?」
「いいねぇ。優勝狙おうぜ」
「‥‥うん」
 返答の前の一瞬の沈黙の意味を、いまの巫は知っている。
 むろん彼は、わざわざ口に出したりはしなかった。
 言ったのは別のことである。
「ペアパートナーなら、もっとユニゾンを高めておかねぇとな‥‥」
 日に灼けた健康的な肌が、白い肌と重なる。
「ばか‥‥えっち‥‥」
 台詞とは反対に、男の背中に手を回す綾。
 後にペア部門で世界を制するカップルの、これがはじまりである。





                         終わり


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0143/ 巫・灰慈     /男  / 26 / フリーライター 浄化屋
  (かんなぎ・はいじ)
0332/ 九尾・桐伯    /男  / 27 / バーテンダー
  (きゅうび・とうはく)
0164/ 斎・悠也     /男  / 21 / 大学生 ホスト
  (いつき・ゆうや)

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■         ライター通信          ■
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お待たせいたしました。
「激突! 魔ゲーム!?」お届けいたします。
ハスラー気分が味わえたでしょうか?
もちろんパラレルワールドです。
楽しんで頂けたら幸いです。

それでは、またお会いできることを祈って。