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調査コードネーム:自殺志願
執筆ライター :紺野ふずき
調査組織名 :草間興信所
募集人数 :1人〜5人
------<オープニング>-----------------------
『自宅赤坂のマンションから飛び降り自殺。遺言に『独りぼっちは面白くない』と一言』
草間は毎々新聞九月八日の記事を思い出していた。死亡したのはアメリカ国籍の若い男性──目の前にいる幽霊『オニコラス・ケイジ』。
「ジショウ、二十三サイデース」
……自称? 草間は眉を潜めた。
オニコラスと草間がいるのは、港区赤坂の八階建てマンション『コートフォレストB』の屋上だ。その鉄柵を挟んでやり取りしている。
「とにかく、だ。君がそこから飛び降りる度に、目撃者が『飛び降りだ』と通報する。警察も困ってるんだ。そろそろそんなイタズラは止めにして成ブ」
「イタズラジャないヨね! 私、退屈で人生にムンザリシタよ。面白くないでしょうが! それで飛び降リタよ。目が合ったから見たでしょう?」
どこを……。
オニコラスは草間に切々と訴える。訴えるがしかし、その日本語はどこで覚えたのか、素晴らしく妙だった。草間は「うん……」と言ったきり押し黙った。早く帰りたい気持ち満々だった。
「歩いていた人ダよ! 目を大きく見開いて、口を開けて……。その顔が面白かったと思ったらいいですか? 面白かった時はどうするの? 面白かったです」
鼻から息を吐き出して、草間は目頭を揉んだ。眩暈がする。
「皆の反応が面白いから、飛び降りを続けているってワケか?」
「へえ。貴様も一緒に飛び降りてはいかがですか?」
沈黙……。草間はオニコラスをジッと見つめた。ソバカスに眼鏡。つぶらな瞳が輝いている。悪気は全く無さそうだが、無ければいいってものでもない。
「……いや、俺は遠慮する。それより、どうしたら説得を受け入れてもらえるんだ?」
「朝起きて一人はイヤデ〜ス。寂しいノ。『オハヨウ』、『オヤシミ』。貴様とコーヒーを飲んだらいいでしょう? 皆で朝ご飯はおいしいですか? おいしかったらどうですか? おいしいだよねえ!」
「……」
ここでか? 草間は悲しげな顔をした。寝袋が必要だな、と真剣に考えた。しかし、我に帰って顔をしかめた。果たしてこれは会話になっているのかどうか。それからオニコラスは微妙に無礼者だった。
草間はフーッと息を吐く。こめかみが激しく痛んだ。と、思ったらオニコラスのゲンコツ梅干しがバッチリ決まっていた。
「……何をしてるんだ」
「貴様にゲンパツウメバシ」
「……」
「楽しいと感じたらいいでしょう?」
確か岡田──草間は電話をしてきた警官の名前を忘れないように内で呟いた。つまり、成仏させてやってくれと言う。
草間は携帯を取り出すと、目に見えぬ早さでボタンを押した。
「草間だ。ちょっと手を貸してもらえたらいいと思いませんか? アーッ!」
うつっていた。
※今回は通してオープニングのような傾向です。
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自殺志願者
── 豪毅達 ──
「成仏させる、と言って俺を呼ぶと言うのも、芸がないんじゃないかな? 草間」
青い空。向かい行く道すがら。銀杖をシャラリと鳴らし、僧は苦笑を浮かべた。顎髭を撫でる。見上げた視界をトンボが横切って行った。目指すは赤坂のマンションである。その途中、見知った影を見かけて僧──抜剣白鬼(ぬぼこびゃっき)はニッコリと笑った。
「是戒阿闍梨」
「!」
ポンと肩を叩かれて振り返るは、白鬼に見劣りのせぬ豪壮。ギョロリとした目を大きく見開き、浄業院是戒(じょうごういんぜかい)は歓声を上げた。
「おお、白鬼坊ではないか!」
特に急ぐでもない身柄。白鬼の話に耳を傾けた是戒は、ムウ、と唸って眉根を寄せる。その顔は渋い。
「件の幽霊……外人か? 英語は話せんぞ、儂は……」
「いや、日本語は話せるようだ。かなり怪しい気はするがね」
「フム……異邦人と言えども、憐れな魂である事に変わりはない……話を聞けば人恋しいと見える。とはいえ諭すのには骨が折れそうだのう」
「何、二人で成仏後の楽しさを刷り込んでやろう」
そう言って白鬼は一癖ある笑みを浮かべた。しばしの思案。是戒はそれならと頷いた。
「儂は般若湯持参と行こう」
豪毅は二人、草間の待つマンションに向かって歩きだした。
── 真打 ──
「ねぇ、武彦さん。どうして彼は独りぼっちなの? 家族とかいなかったのかしら」
執筆途中の手を休め、シュライン・エマは眼鏡を外した。草間の連絡はいつも突然やってくる。久しぶりの小説家稼業だが、やはり思うようには進ませてもらえぬらしい。窓の外を見やる。青空に白い雲。少し肌寒い風が吹いていた。
草間の妙な言葉使いは気にかかるが、話の内容はひとまず分かった。オニコラスは唯一の家族だった母を亡くし、身寄りも無く二年前、日本へやってきたのだと言う。
「現在は、青山霊園の無縁墓地に埋葬されただからでしょう」
「……。そ、そう」
シュラインは二言、三言の会話を交わし電話を切った。草間は随分と苦戦しているようだ。微かな苛立ちが口調に表れていた。
「とりあえず人数分の毛布と珈琲……。それと朝ご飯って、軽食でいいのよね」
それにしても──。
「何でハリセンが必要なのかしら……」
シュラインは小首を傾けた。
── カード使い ──
「あの僕、草間興信所からやってきました。狩生熾凛(かりゅうしれん)って言います。岡田さんに会いたいんですけど、いらっしゃいますか?」
カウンターの向こうにいる固い表情の警察官は、熾凛をチラリと見た後で、ソファーへ腰掛けて待つようにと言った。
場所は警視庁赤坂署。小学生である熾凛には、あまり馴染みのない空間だ。草間に聞いた、依頼主である『岡田』を訊ねてやってきた。
「ん? や、ホントだ。君かい? 草間さんトコの……って」
岡田は交通課の警官らしい。明るいブルーの制服に身を包んでいる。年は三十と少しだろうか。熾凛を見るなりニヤッと笑った。
「大変だぞ。エライのに関わっちゃったなあ。まあ、草間さんトコの使いって事は、やっぱり何か力を使うんだろうけど。で、何が聞きたい?」
岡田は隣に腰を下ろすと、熾凛の顔を覗き込んだ。協力的な笑顔を浮かべている。
「はい、あの。話では残されていたのは『遺書』ではなくて、『遺言』って聞きました。誰かそれを聞いた人がいるんですか?」
「ハハハ、鋭いな。君は。最後の言葉を聞いたのは、俺の相方なんだ。二人で警ら中に、屋上で騒いでるのを見つけて『下りる』、『下りるな』の押し問答をやった。俺が無線で連絡を取ろうと車に戻ってる間に──ドスン、だ。おかげで相棒は落ち込んでるよ」
「そうだったんですか……。他にオニコラスさんの事、何でもいいから教えて下さい」
「うん……そうだな。その後は俺の管轄じゃないんで、詳しくは聞いてないんだが……。奴さんはそれまで土建屋の日雇い作業員をしていたみたいだな。部屋には何故か空っぽの大きな鳥カゴがあったそうだ。後は、日本へ来てまだ長く無いってのと、身寄りが無いって事くらいか」
空っぽの鳥カゴ。オニコラスは何かを飼っていたのだろうか。岡田はそこまでは分からないと言った。
熾凛はオニコラスが寂しいと言ったその気持ちを、自分に置き換えてみた。朝起きた時に母がすでに仕事へ出ていたら……。いつもいる者がそこにいないだけで、寂しいと言うのに。誰もいない部屋の中を想像して、熾凛は少しブルーになった。
「学校があるから泊り込みは難しいけど……、でも一日くらいならかまわないかな」
警察を出て真っ直ぐにマンションへと向かう。高い秋空に大きな入道雲が泳いでいた。
「寂しかっただろうな。そうだ……。もし、珍しい物が見たいと言うなら、得意のカードでモンスターを召還して見せてあげよう」
それで少しでもオニコラスの退屈が吹き飛べば。熾凛はそんな事を考えていた。
── 腹を据えた陰陽師 ──
気を晴らさせる事が先決だ。若き陰陽師は着崩しのスーツをひるがえし、秋晴れの中を歩いた。銜えタバコの火が冷たい風に煽られる。問題のマンションは赤坂にあった。
都心の一角に彷徨える孤独な異国の魂は、悪戯に楽しさを見いだした。だがその理由にもやはり孤独が付きまとう。精一杯楽しませてやればいい。付き合える事は付き合い、そして成仏の道を指し示す。
「飛び降りはしないが、な」
真名神慶吾(まながみけいご)は、白い煙を吐き出した。
── 始まっちまいました・どうやっても移ります ──
オニコラスが落下。マンションへ辿り着いた慶悟の目は、それを捉えた。周囲の者の驚きを余所に、オニコラスはゆっくり起きあがる。
「……それは、ギャグで飛んでいるのか……? いや、見てる奴を笑ってるのはお前だから、お前はギャラリーか? いや違うな……って何を言ってるんだ俺は?」
呆然。慶悟はオニコラスと目があった。ウッフ。笑っていた。笑いながらオニコラスは屋上へと戻っていった。平泳ぎで。
「なるほどな」
楽しんでいる。慶悟は屋上へと向かった。そこには草間がいた。草間は疲れていた。疲れ草間だった。疲れ草間は疲れた目を、慶悟に向けた。
「来たな。気をつければどうでしょう」
「……あ、ああ」
オニコラスの前に立ち、慶悟はフンと鼻を鳴らす。
「他に何が出来る。いつまでも皆が面白い顔をしてくれるとは限らん。『また飛んでるよ』と皆が呆れ顔になった時、お前はどうする? 新しい事をしなければならないぞ? 飛ぶこと以外に何が出来る?」
「パスワード変更」
「……」
よくわからなかった。
「他には」
「病理ガクと岩て山についての放牧ヨネ!」
慶悟はチラリと疲れ草間を見た。こんなのと朝から……。慶悟は哀れみの眼差しで草間を労った。
「他には」
「じゃあ、質問大会はどうでしょうが! 私、質問スルし。貴様、答えやがれよね!」
符……式神。そんな物が一瞬、慶悟の頭を過ぎった。ポケットの中で二本指がちょっぴり立った。しかし、堪えた。
「うーん。そうね。簡単な問題ダヨネ! 答えたらいいでしょう。答えたらそうでしょう。答えなかったダメでしょう? 負けだからそうだね!」
慶悟が頷くと、オニコラスは満足そうに微笑んだ。
「もし貴様が勝ったら、私、死ぬよ、そうでしょう?」
いや、もう死んでるんだ。草間の眼鏡がキラリと光った。それは涙かもしれない。邪悪な光かもしれない。慶悟に全てがかかっていた。「第一問!」オニコラスの声が響いた。
「貴様、ステキ! だとしたらそうでしょう? 今までにお付き合いした女の人、一杯ね?」
そんなたわいもない。金髪の陰陽師に向かって草間は微笑んだ。慶悟もフッと遠い目をした。
「覚えていない」
ありとあらゆる深い意味で。日本語の持つ曖昧さを駆使して。微妙な間。オニコラスは突然笑い出した。
「ハハハ! 貴様、覚えてないなんて『バカ』だねえ!」
通じなかった。慶悟は事切れた。
── どうされますか ──
「一筋縄では行かないだから」
ッフー。自分に溜息。何かを言う度、草間は遠い目をした。遠すぎて、何を見ているのかさっぱり分からない。だが、さっぱり分からない中にも、確かな事が一つあった。もうどうでもいいや。そんな感じ。草間の目には諦めムードが満開だった。慶悟は鉄柵越しに景色を見ている。何故か輪に加わろうとはしなかった。背中には哀愁。
草間はあらかじめ用意して置いたメモをシュラインに手渡した。筆談。これならオニコラスに邪魔されないはずだ。
『本名? 自称? 通称? あだ名? オニコラス・ケイジ。二十三歳? アメリカ国籍? 母一人子一人の家庭で、母が病死? 身寄り無し。土建屋の日雇い作業員?』
「まだ確定じゃないって事かな?」
白鬼はメモを覗き込んで苦笑した。あまりにも疑問符が多すぎる。だが、これだけ聞くにも相当の根気が必要だっただろう。ご苦労さん。そんな眼差しの白鬼とシュラインの目がかち合った。あの怪奇探偵にしては随分と振り回されたものだ。言葉無き会話を交わした。オニコラスが動く。
「ご焼香に預かりましたオニコラス・ケイジよね! 宜しくだよ! 『クサマタ・ケヒコ』の友達の貴様達!」
是戒は目を閉じた。どう対応していいか分からないッぷり百パーセント。それよりもその妙な名前の区切りは何なのか。シュラインは手にしたハリセンを握りしめた。正しい日本語を。ちょっぴりやる気だった。
「『草間・武彦』よ。オニコラスさん」
「クサマタケ、ヒコヒコ?」
ッへ。
草間は嗤った。嫌な笑いだった。そんなのは当に何度もやりました。という顔つきで目を伏せている。微かに、そして思いっきり性格が拗ねかかっていた。可哀相な草間。がんばれ草間。ッフ。慶悟も背中で笑った。
シュラインは気を落ち着かせた。日本語で分からないなら母国語で。
「……He is Takehiko Kusama.」
「タケピピコ・クッサマー?」
気合! ──シュラインは大きく振りかぶった。幽霊にハリセンは聞くのか! 聞かないのか! どうなのか、どうなんだ! 今──素晴らしい音速のハリセンが、目の前のオニコラスを通り抜けて、
クサマノガンメンヲヒットスル。
ハゴ──ッ。思った通りだった。
「ごっ、ごめんなさい! 武彦さん!」
いいんだ、シュライン、君のハリセンなら喰らっても──
「イッツー」
痛かった。顔も赤かった。ハリセンの跡がついていた。草間は人知れず泣いた。心は不幸のずんどこだった。オニコラス、早く成仏しろ。目に怨念がこもり始めた。むしろ呪う気だった。白鬼は苦笑、是戒は沈痛。オニコラスだけが、大ヒット。
「ハハハ! 『クサッタ・マケヒコ』さん。可哀相、可哀相だねえ!」
そしてどんどんおかしくなっていく草間の名前。是戒が見るに見かねず乗り出した。
「面白い事は無かろう。皆、お主の為を思ってここへ集まっておるのだぞ? 話は真面目に聞いたらどうさね」
ドウサネ。移っていた。
「!」
『あの大阿闍梨』の言葉使いに一同の視線が集まる。是戒本人も愕然。ッへ。悲しげに草間が嗤った。慶悟は肩をすくめた。やはり誰もがこうなるのか。白鬼はその感染能力に感心した。ちょっとしゃべってみる。
「是戒阿闍梨の言う通りだ。そもそも、1人は面白くないって、今まで何をしていたらそうでしょう? していたらこうでしょう。友達いたとしましょうか? 働いていたのなら、毎日独りぼっちという事もあるマイ〜ニ」
素晴らしかった。一同沈黙。作戦会議開始。顔寄せ合って、オニコラスから遠ざかる。その間、オニコラスは過去を勝手に振り返っていた。
「友達、飛んデッタでしょう。お仕事毎日同じ事のムリ返シネ! 穴掘ったり、柱立てるバッカリ! つまらないね。兄弟、いない。お母さんもお父さんもいない。私、ヒト〜リ〜ヒ! だからニポン来たのに……ヒドイヨオ! 私を除け者、仲間はずれ、村八分、四面楚歌、三三七拍子ねえええ!」
夕暮れまで一時間の空にオニコラスの絶叫がこだまする。オニコラスは鉄柵を乗り越えた! オニコラスに飛び降りを許してしまった! しまった! 一同は慌てて鉄柵へ駆け寄った。笑い声が遠ざかった。と、思ったら速攻で戻ってきた。
「ハハハハハハハハハハハハ」
トッス。帰還して着地。何故か光るドラゴンに乗って、オニコラスは皆の目の前に戻った。
「ウッフ」
かなり手強い相手みたい。だが、オニコラスがしゃべった内容に、ほんの少し彼の孤独が見えた。
── 救助者か被害者か ──
声。熾凛は、響き渡る大笑いに顔を上げた。『コートフォレストB』の屋上から、オニコラスが振ってくる。楽しそうだ!
ハハハハハハ落下──
「わ!」
召還! オニコラスを救え! 少年が構えたカードから、光の竜が躍り出た。が、躍り出た体勢のままオニコラスに捕まって──ハハハハハハ一緒に上昇。
熾凛、呆然。ひとまず動揺した熾凛は動揺しながら、悩ましげに動揺状態で屋上へと向かった。
── 首都高速環状線 ──
その頃、首都高速環状線を一人、赤坂に向かって走る男がいた。工藤卓人、元走り屋のその人である。彼は彼流のやり方で、オニコラスを成仏させようと思いめぐらしていた。
「コイツを使って、楽しませてやろうじゃないか」
ハンドルを握りしめる。峠、埠頭に湾岸、環状。身近で手っ取り早くスリルを楽しみたいなら、やはり環状線だろう。卓人の脳裏に懐かしい過去が過ぎる。
ブローオフバルブの開閉音。太いマフラーと、Gに負けない足回り。クラッチのオンオフと、ギアを繰る手。それは頭で感じるより早く反応する。
耳が、目が、体が。車と一体だった。あの頃の仲間達の声。今は何もかもが記憶の底だ。
卓人はフッと寂しげな笑みを浮かべた。
── ワケあり陰陽師 ──
ビル群。朧月桜夜(おぼろづきさくや)はキョロリと辺りを見回した。特に不振な影は無い。ワケありの身。桜夜には追っ手がかかっていた。それを躱しての除霊の日々。今日も問題の外人幽霊の元へと移動の最中だった。
「とりあえずマンションの同じ階の住人にでも、聞き込みをしてみようかしらね。確か、四階だったはず」
オニコラスの家族、交友関係。何でもいい。寂しさの理由が分かれば。
桜夜は生前オニコラスの暮らしていた部屋の、隣のチャイムを鳴らした。インターホン越しに若い女性の声が返ってくる。
「オニコラスさん? うーん。ご家族の方……どうなのかしら。隣に住んでいても、ご本人にさえ滅多に会わないから……。ただ、時々楽しそうな声は聞こえてきたかな? お友達でも見えてたのかも」
「友達ですか?」
「多分。でも何て言うか。こう……変わった声をしてたわ」
それは男性とも女性ともつかぬ妙な声だったという。ふざけて出した声じゃないか、と女は言った。他にもいくつかの部屋を当たってはみたが、これという情報は得られなかった。
「友達はいたみたいね。でも……変わった声、か。本人に聞くのが一番かしら」
はめ殺し窓の外の青。通路に指す自然光。風の音さえ聞こえない静けさの中、桜夜は屋上へと向かった。
── 誰か止めたってください ──
聞きしにまさる破壊力。あの大阿闍梨が、あの翻訳家が、あの
退魔僧が。皆、言語破壊中。合流した桜夜と熾凛は押し黙った。代表草間の言葉。
「桜夜に熾凛か。遅かったでしょう? 遅かった時はどうなの? 遅かった時はごめんなさい。はい、ごめんなさい」
「もう草間さんじゃないわね……」
草間の顔にはハリセン筋。熾凛と桜夜はチラリとシュラインを見た。その手にはハリセン。そしてもう一度草間を見る。何も聞かないでおこう。二人には二人のストーリー。
オニコラスは光のドラゴンを愛でている。僕のドラゴン……。熾凛は呟いた。
「『クサマ・タマタマヒコ』、これ見て! これ! 可愛いだろう。これ!」
「ああ」
誰か草間を助けて! 五人は顔を寄せ合った。白鬼、是戒、シュライン。皆、真剣だ。しかし三人のその言葉。
「とにかくこれを何とかしたらいいでしょうが」
「うむ。このままではラチがあかんだからだよ」
「でもどうやったら治るでしょう? 治ったらどうでしょう?」
クスリ。桜夜と熾凛に三人の視線が向いた。二人は顔を背けている。その肩が小刻みに震えていた。楽しげ(?)な一同の後ろで、オニコラスが突然(また)走った。ドラゴンが隙をついて熾凛のカードに逃げ込んだ。オニコラスは鉄柵を飛び越えるつもりだ! どうする一同! 間に合うか一同! 飛び越えた!
オニコラスの絶叫をお聞き下さい。
「皆、そうやって仲良くして、また除け者にするのだとしたらそうでしょう! もう悲しいDETH! 飛び降りてやったらどうだから! そうしましょう」
キキーッ、ドン。
どうやら何かにぶつかって跳ねられたらしい。草間の携帯が鳴った。依頼主の警官、岡田の話。
「もしもし! 草間さん? どうなってるんだよ! アンタ達、現場に行ってくれてるんだろう? 今、飛び降りた『ヤツ』を車が跳ねたって通報が入ったよ! 頼むよ! 早く何とかしてくれって!」
色々な意味で早いな──皆、そう思った。
── 跳ね飛ばされました ──
屋上からオニコラスが落っこってきた! 現場に滑り込んできた卓人の車は、それを見事に跳ね飛ばす。
キキーッ! ズドン、ゴロン!
急ブレーキを踏んだり衝撃を受けたりして、慌てて車を降りてみれば、それは噂のオニコラスだった。あのオニコラスだった。だった。
「痛かったけど、面白かったよお!」
卓人、目が点。オニコラスはスパーンと屋上へ戻っていった。
── オニコラスって一体 ──
『コートフォレストB』の屋上は引き続き戦争だった。夕闇が迫る。オニコラス以外の影が長く伸びていった。
桜夜は、イライラとオニコラスへ向かって叫んだ。
「How do you want to carry out?」
「A favorite song is KITASAKABA.」
(訳・アンタは一体何がしたいの? 好きな歌は北酒場です)
会話になりませんでした。
「スゴいよねえ! イッピキ2ピキ3ピキ4ピキ5ピキ、8ピキ皆、貴様の友達達?」
ピキ。オニコラスはにんまりと笑って、一人一人の肩に触れた。
「もう言葉大ジョブよ。貴様達、ゴメンなさいでしょう? 私、ちょっと貴様達の口に悪戯したよ」
草間はホッとしたように胸を撫で下ろした。是戒と白鬼も顔を見合わせている。これでどうやら打ち合わせの通りに事が実行出来そうだ。酒も無駄にならずに済んだ。
桜夜はオニコラスに、マンションの住人から聞いた疑問を訊ねた。
「友達はいたのよね? 声を聞いてる人がいるわ」
「エディだよね。大切な私の友達。ある日、飛んでっちまったでしょう。通称エディ! 略してエディだよ! わかた?」
分からなかった。というか、略しても同じだ。シュラインは彼の通訳を買ってでた。彼に英語で話すよう諭す。オニコラスはかなり強い訛りのある発音で、過去を語った。
「えーっと……彼に家族はいないわ。身寄りも無いし。たった一人の身内はお母さん。でも二年前に病気で亡くなってる。それで寂しさを紛らわす為に、日本へやってきたらしいわ」
是戒は神妙な顔をオニコラスに向けた。慣れぬ異国の地で一人、寂しさも苦労も並大抵の事では無かっただろう。
「死ぬほど辛かったのか」
「エディ、いなくなってからねえ」
シュラインは頷いて、話を続けた。
「彼のアルバイト先の社長さんが、寂しそうだからってオウムをくれたらしいわ。言葉を話すオウムで」
「キバタンって白いのの。可愛いよ! ニポン語、エディに教えてくれたでしょう! 教えてくれた時はどうなの? 面白かったですか? 楽しかったがね! でも飛んでったよ……」
オニコラスの奇妙な言葉はオウムが原因だったようだ。そのオウムに言葉を教えたのは、東北生まれの社長と外国人の妻だという。
キバタンは体長五十センチにも及ぶ、オウムの中でも最大級の種だ。その体に見合った大きな声を持つ。
人の言葉をよく覚えては真似する利口なオウムだが、買えば三十万はくだらない。近隣の者が『来客』とまでに勘違いをする饒舌なオウムを、一介のアルバイト風情であるオニコラスに譲るというのは、社長が彼を可愛がっていたと言う証拠ではないのだろうか。
話し相手はオウム以外にも、オニコラスの気づかない所に居たのかも知れない。早まったものだな。白鬼は吐息を吐いた。
「つまり……もらったオウムが友達でもあり、言葉を教えてくれた先生でもあった。それが逃げてしまった。まさかそれだけの理由で飛び降りたのかね?」
オニコラスは白鬼の言葉に頷いた。
「エディのいない毎日は絶望のずんどこよ? でも楽しい事、見つけたら面白かったでしょう!」
ワハハハハ! オニコラスは何の前触れも無く走り出した。それがあまりにも突発的で、誰も反応出来なかった。鉄柵を素晴らしい跳躍力で乗り越える白鳥のような可憐な舞、かどうかは疑問。飛び降りた時の周囲の反応が面白い、と言うのなら。
「反応を返さないというのはどうかな?」
白鬼は皆の顔を寄せ集めて言った。オニコラスが飛び降りても、見に行かない。帰ってきても話しかけない。表情を消して、退屈そうな素振りを見せる。彼がそれをつまらなく思えば、しめたものだ。なるほど、と全員で頷いた。オニコラス、帰還。
「ああ、面白いねえ! 面白かったでしょう!」
無言。
「……どうしたの? 貴様達。面白くない顔、面白くないねえ。面白くないの? 面白くしたらいいでしょう! 面白いよう!」
ダイブ。それはそれで、逆効果みたいだった。
── それならもうやってやるわい ──
「なんや、騒がしいどすなぁ。飛び降り自殺なんてよくあることですやろ?」
フワフワと空中を漂ってやってきたのは夢魔の李杳翠(りようすい)だった。お家の事情で桜夜を追っている手の者だ。オニコラス一人でさえ、手を焼いているというのに。桜夜は咄嗟に身構えた。杳翠は呑気に上がってくるオニコラスを見つめている。
「ああ、生きた人間やないんどすか。って……桜夜はんやないですか! こない所で何で霊と張り合ってはりまんの?」
「仕事なの! 放っておいて!」
近寄ってくる杳翠に桜夜は札を構えた。険しい視線。ただならぬ雰囲気を気取り、いつでも加勢と熾凛の手がカードにかかる。
「ンな……剣呑な目つきせんと……その符も引っ込めて下さい! そこのアンタはんも! 黙っときますから、堪忍どす!」
オニコラスは杳翠を見た。不思議そうな顔で首を傾げている。
「貴様、誰者?」
「誰も……。うちどすか? うちは夢魔どす」
「『ムマドス』?」
「ム・マ。どす」
「む・マドドス?」
始まってしまった。まあまあ、と卓人が間に入る。が、「おおう! 分からないドスよねえ!」オニコラスは駆けだした。吸収能力は抜群だった。
「あんさん! お待ちなはれ!」
杳翠が追う。鉄柵を越える影の足を掴んで──。
一緒に落ちた。
「結構面白いどすな」
二人は肩を組んで戻ってきた。杳翠は気にいったみたいだった。辺りには闇が落ちていた。卓人はポンとオニコラスの肩を叩き、ニッと男臭い笑みを浮かべた。
「ここでこうしていてもしょうがない。どうだ、オニコラス。俺の愛車でドライブといこうぜ?」
「じゃあ、私は残って、その間に色々と用意しておくわね」
シュライン、是戒、白鬼、慶悟、それに草間は残って夜越しと朝を迎える準備を、卓人、桜夜、熾凛、杳翠はオニコラスと共にドライブへそれぞれ別れての行動となった。
── 戦士達の休息と、初めての高速ドライブ ──
ビルの屋上に点滅する赤い光。月はその頭上、遙か高見から全てを見下ろし輝いている。光害に泣く空にも、やはり星は輝く。
折り畳み式の小さなイスと膝掛け。それに毛布が少し。傍ではお湯を沸かす為の、キャンプ用コンロ。ポッポと音を立てて燃える炎に、束の間の休息を味わう一同。そしてその頃──。
「俺さ、少し前まで走り屋ってのしてたんだ。楽しくてスリル万点で、それが好きだったんだが……。まあ昔話は今しても仕方ない。って、わー!」
助手席に座っていたオニコラスが、コーナーで引力とか重力とか、つまり横Gに逆らえずに飛び出した。座ったままの体勢でオニコラスが車をすり抜けていく。
召還! 熾凛はカードを使った。風属性のドラゴンが煙をまとって現れる。ドラゴンの生み出す強い追い風に、座ったままの体勢でオニコラスが吹き戻された。座ったままの体勢で戻ってきた。座ったままの体勢で助手席に落ち着いた! それはそれで面白かったようだ。コーナー事にしでかしていた。
卓人はハンドルを駆る。流れを避けるように右へ左へ。きついコーナー。切り角固定のハンドル。修正を小刻みに入れた。流れ出すタイヤにカウンターを当て、パパンと蹴った急ブレーキにスキール音が鳴る。その間。
オニコラスはあっちとかこっちとかに、座ったままの体勢で飛び出して行った。スラー、スラーと座ったままの体勢で飛び出すオニコラス。座ったままなもんだから、やけに行儀がいい。ピンと張った背筋。腿に置いた手。オニコラスは正しい座り方の見本です。
それを杳翠が連れ戻しに行く。桜夜の式神の手も借りる。周囲の反応にオニコラスは楽しそうだった。桜夜はやれやれと首を振る。
「こんな事が楽しいの?」
「嬉しいよね! 楽しいでしょう!」
とにかく注目されたいのだろう。構ってもらいたいのだ。熾凛は思慮深げな顔をしている。
「せやかて……悪戯に人様を騒がすのはあまり良くないと思いますえ。何度も繰り返して傍迷惑や思われて疎まれるのも、寂しいですやろ?」
うん、と素直なオニコラス。寂しいという言葉には、敏感なようだ。桜夜はポンポンとオニコラスの肩を叩いた。首だけが百八十度振り返る。傍目にエクソシストだが、誰も気にしない。
「アタシもさァ、色々あって今、家出してんだけど……。実家から追っ手かかっちゃってて大変なのよォ」
「おう、イエディ? 立派カラ取っ手絡まっちゃった、異変だよねえ!」
「そうそう、それでねえ」
卓人や熾凛には分からないが、何故か会話は成り立っているようだ。テンションは全く同じの二人に杳翠は悩ましい顔をする。
屋上へ戻る直前、楽しそうなオニコラスを掴まえて卓人は言った。
「楽しかったか? 楽しいとか面白いって感情はさ、生きててこそ何倍にも膨らむんだよ。もう一度楽しい時間を過ごしたいなら、生まれ変わってこいよ? 生きてなきゃ体験できない楽しい事、いっぱいあるぜ?」
オニコラスの戸惑いの目が桜夜を見る。
「そう! 生きてる方が絶対楽しい事は多いって。ヨシ! 生まれ変わったら、今度は生身で一緒に遊びましょ。骨の髄まで人生の面白さ叩き込んであげるわよ〜♪ 約束ねン!」
心に変化が現れ始めたようだった。
── 懐柔 ──
オニコラスを待っていたのは、僧二人の歓待だった。「まあ、座れ」と是戒に手招きされるがままに、大きな二人の間に腰を下ろす。是戒はオニコラスの眼鏡の奥を覗き込んだ。
「こんな所で飛び続けていても何も変わらん。一時お主を見る者達を『面白い』と思うかも知れぬが……それもいつまでもという訳には行かんだろう? 面白い顔と申すが、彼らは驚いているだけだ。お主を楽しませるための変な顔ではない」
ズイと身を乗り出し。
「解るか? 解るな?」
と、強引に説く。白鬼は白鬼でにこやかな笑みを崩さず、オニコラスの肩をポンと叩いた。
「『去る者は日日に疎し』と言う言葉があるんだがね。死者は日毎に忘れられて行く。そうなると、キミはもっと寂しい思いをするんじゃないのかな?」
「私、もう寂しいの嫌だからそうでしょう……」
ションボリとオニコラスは肩を落とした。是戒の渡した紙コップを受け取るオニコラスは単に素直な好青年だ。注がれる酒を見る目に郷愁が漂った。
「社長サンも、いつもお酒呑ませたね。私、あまり飲めないだったの。社長サン、子供いないでしょう? 私、社長サン、大好き。でもお酒飲めないだった。エディ、社長さんの子供だっただよ」
白鬼は緩やかに首を振った。穏やかな眼差し。オニコラスはスと顔を上げた。
「その子供代わりのオウムを、キミにやった理由を考えてみるといい」
「お前の死を嘆き、考える者は傍におる。もうこれ以上、抗うな。飛ぶのはやめよ。死は覆せぬ。せめて成道に臨み、新たな生を以て幸を掴め」
僧は代わる代わる言葉を尽くして、オニコラスの説得に当たった。次第にオニコラスの口数が少なくなっていく。
月は傾き、星は沈み。うっすらと空が白み始める。一升瓶は空になり、街を照らしていた街灯が消えた。コンロの火を囲んで夜は明けた。
── 夜明けと共に ──
八人と二人分。十の珈琲とサンドイッチがズラリと目の前に並んだ。鉄柵に腰掛けて足を振るオニコラスに、「おはよう」とシュラインは声をかけた。オニコラスは歓声を上げ、シュラインの手を激しく振った。
「オハヨウだ! ありがとう、ありがとう! 朝起きて貴様達と珈琲! 朝ご飯もおいしいでしょう? 独りぽっち違うだよね!」
小躍りで宙を舞う。そのはしゃぎ方の異常さに、オニコラスがどれだけ孤独だったかが現れていた。熾凛は、ハハハと笑ってオニコラスの隣に腰を下ろした。サンドイッチを取り、二人でそれをムシャリと頬張る。オニコラスはニッコリと笑った。
「イタダクマス、忘れただね。独りは、イタダクマスいらないの」
オニコラスは暖かい湯気の立つ珈琲を旨そうに啜った。朝焼けが眩しかった。貫徹にハッキリとしない皆の目。オニコラスは微笑んだ。
「アリ、ガトネ」
卓人は軽く手を上げた。桜夜とシュラインは笑みを浮かべ、是戒と白鬼は頷いた。そして──。
「往く先に、友人ならきっといる。次は早まるな」
オニコラスの薄れて行く笑顔に向かって、慶悟は呟いた。
ウン、ソウスルダヨ
オニコラスは朝日に溶けた。オニコラスの手にしていた空の紙コップが転がった。ビルの街、東京。孤独な魂が一つ、救われた。
終
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 (年齢) > 性別 / 職業 】
【0065 / 抜剣・白鬼 / ぬぼこ・びゃっき(30)】
男 / 僧侶(退魔僧)
【0086 / シュライン・エマ(26)】
女 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト
【0389 / 真名神・慶悟 / まながみ・けいご(20)】
男 / 陰陽師
【0444 / 朧月・桜夜 / おぼろづき・さくや(16)】
女 / 陰陽師
【0551/ 狩生・熾凛 / かりゅう・しりん(11)】
男 / 小学生
【0707 / 李・杳翠 / り・ようすい(930)】
男 / 夢魔
【0825 / 工藤・卓人 / くどう・たくと(26)】
男 / ジュエリーデザイナー
【0838 / 浄業院・是戒 / じょうごういん・ぜかい(55)】
男 / 真言宗・大阿闍梨位の密教僧
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■ ライター2心 ■
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『ありとあらゆる何もかもがごめんなさいで
ありがとうございます』
こんにちわ、紺野です。
大変遅くなりましたが『自殺志願者』をお届け致します。
今回はジェットコースターギャグ仕立てでお送り致しました。
『石の賦』・『旅館 紫野』と踏みまして三作目、これが一番
はじけています。
ヒットなさった方、ほくそ笑んだ方、ダメだった方。
十人十色だとは思いますが、少しでも楽しんで頂けたなら
意図する所、幸いです。
さて、改めましてご挨拶を……
白鬼様、桜夜様、熾凛様、杳翠様、卓人様、初めまして。
今回のお話では生かし切れない設定がかなりありました。
次回がありましたら、ぜひ真面目なお話でも一度お付き合いさせて
頂けたらと思います。
シュライン様、慶悟様、是戒様、いつもお世話になっております。
皆々様、この度は本当に当依頼を選んでくださり
ありがとうございました。
どんな些細な事でも思う事がありましたら、
紺野まで宜しくお願い致します。
それでは皆様の今後ますますのご活躍を祈りつつ、
またお逢いできますよう……
紺野 ふずき ハイ↑
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