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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


 鏡

------<オープニング>--------------------------------------

都市伝説や怪談を扱う、あるHP。
掲示板には意味不明な依頼分が多数書き込まれ、時折「了」の文字が追加される。
そして今日もまた、一つの書き込みがあった。

依頼者は、ある高校の関係者。
最近学内のトイレで、奇異な行動を取る生徒が現れるらしい。
失神、我を忘れた暴れ方、唸り声を上げて転げ回る……。
教室から離れた場所にあるため、発見者は教職員。
それがせめても救いだが、いつ生徒達の噂に上るとも分からない。
また学外に漏れるのは、何としても避けなければならない。

彼等が奇異な行動を取る理由は分からない。
それを知る術は、ただ一つ。
意識を取り戻した彼等が呟いた、「鏡」の前に立てばいいだろう……。

 ある高校の、正門前に立ち尽くす北波大吾(きたらみ だいご)。
「女子高?」
 甲高い声。 
 困惑と、微かな喜びの表情。
 大吾は軽い足取りで、ツタの生い茂る校舎へ向かって歩き出した。

「休み。建物の補修のため、臨時休校」
 理事の言葉を繰り返す大吾。 
 かなり、切なげに。
「あの。あなたが依頼を受けられた方ですか」
「ああ。見た目はガキだけど、やる事はやるよ」
「い、いえ。そういう訳では」 
 年配の理事が差し出した書類を押し戻し、トイレの入り口で立ち止まる。
「やっぱり女子トイレ、だよな」
「え、ええ」
「そうだよな。当たり前だよな」
 妙に頷き、にやけていた顔をすっと引き締める大吾。 
 彼は腰の辺りで印を結び、小さく頷いた。
「出る気配は無し。出られても困るけど」
「はい?」
「いや、こっちの話」
「では、私はこの辺で。お仕事のお邪魔でしょうから」
 速い足取りで去っていく理事。
 ぽつりと、人気のない廊下に残される大吾。
 奇怪な出来事が起きるという、トイレの前に。
「おい、ちょっと。あのさ」
 廊下に響く、自分の声。
 大吾はそれとなくトイレの中を窺い、気まずい顔で後ずさった。
「これって、相当に誤解されないか?」
 吹き抜ける乾いた風。
 虚しさという文字の、よく似合う……。


 トイレの前に集う面々。
 それぞれが一応の自己紹介をして、少しの沈黙が訪れる。
「あまり、深刻になる場所でもないよね」
苦笑気味に呟く相生葵(そうじょう あおい)。
 北波大吾(きたらみ だいご)も鼻で笑い、入り口から中の様子を伺った。
「何か、入るのにすごい抵抗があるな」
「僕は平気だよ」
 軽い足取りで中に消える葵。
 その背中から、大吾へと視線を移してくるレイベル・ラブ。
「入らさせて頂きます」
「当然だろう」
 レイベルは低い声で呟き、壁にもたれた。
「ったく。後で、捕まらないだろうな。おい、どうなんだよ」
「無断で入れば不法侵入だけど、許可は得てあるから問題ない。お前が何にも手を付けなければ」
「ここで、何を持って帰れって言うんだ」
 それもそうだと笑う、鋼孝太郎(はがね こうたろう)。
 気まずそうな表情で、大吾はトイレ内を見渡した。
 入り口から見て、右が壁で左にトイレのドアが並んでいる。
「これ、か」
 やはり、入り口から見て右。 
 簡素な洗面台と、その上に備え付けられている四角い鏡。
 特に変わったところもない、少し汚れが目立つ程度の。
「思い出すなー」
 突然詠嘆口調で呟く葵。
 鏡を指で突いていた大吾は、怪訝そうに彼を見つめた。
「何か、知ってるのか」
「ああ、ごめん。この件についてじゃなくて、店に入った頃の話なんだけど。新人はまず、トイレ掃除。雑巾で、拭いて、拭いて、拭いて」
「雑巾?」
「色々拭いたなー」 
 再びの詠嘆。
 視線を床へ落とす大吾。
 汚れ自体はさほどでもないが、雑巾がけしたい場所でもない。
 孝太郎は何の変哲もない鏡に自分の顔を映し、大袈裟に肩をすくめた。
「お前の感慨はいいけどさ。何が原因で、女の子が暴れるんだ」
「僕は、そういう事に疎くてね。あなたは、どう思います」
「推論は幾つでも立てられる。消毒液による神経障害、アンモニアのショック。他の生徒の暴行」
「で、結論は何だよ」
 答えないレイベル。
 大吾は鼻を鳴らし、多少警戒気味に鏡を覗き込んだ。
 そこに映るのは優男と爽やかな感じの男に、金髪をたなびかせる綺麗な女性。 
 後は、口を開けた自分だけ。
「特に、おかしい感じはしないんだけどな。場所は、本当にここなのか?」
「もしかして、ロッカールームだったりして」
「そんな訳……、あるのかな」
 見つめ合う男二人。
 何となく緩む顔。
 だがレイベルの険しい眼差しを受け、すぐに表情を改める。
「そ、それで。誰か、暴れたくなった?」
 首を振る葵。
 レイベルも無言で、それに応える。
「あんたは」
「さあ。鏡に聞いてみたらどうだ」
「ああ、なる程。って言えばいいのかよ」
「無駄でも何でも、やらない事には分からないだろ」
 鏡に向かって尋ねる孝太郎。
 帰ってくるのは沈黙と、周囲からの醒めた視線くらいな物だが。
「分かんない事ばっかりか。しかし、結構ぼろいトイレだな。どこかで、水が漏れてる音もしてるし。蛍光灯も、消えかかってるし」
「元々人の来ない場所だから、直すのも惜しいんだろ。少なくとも、用は足せるしね」
「確かに、不備が目立つな」
 短く呟くレイベル。
 緑の瞳に力がこもり、それとなくトイレ内を視線が滑っていく。
「仕方ないな。鏡を持って帰って、割るとするか」
「器物破損だぞ、それは」
 そう言いつつ、大吾の作業に手を貸す孝太郎。
 葵は鼻で笑い、後ろを振り返った。
「アバウトだね、随分。あなたは、どう思います?」
「私にいちいち意見を求められても。第一、原因が鏡と決まった訳でもない。仮に鏡が原因として、それを割った事で何か起きたらどうする」
 論理的な指摘。
 鏡から手を離す大吾と孝太郎。
 かなり不満げに。
「じゃあ、どうするんだよ。暴れた女の子は、何も覚えてない。発見者の教職員も、何も知らない。俺達も、暴れたくならない。やっぱり、割るしかないだろ」
「鏡が原因とは限らないという意見には、僕も賛成」
「え?」
「たまたまここで倒れていて、鏡と呟いたというだけだろ。それがどこまで本当かも分からないし。大体、ここにこもってるのは楽しくない」
「それは、俺も賛成だ」


 トイレから、階段を隔てた右隣り。
 進路指導課と札の掛かった部屋に収まる三人。
「ええ。確かに、私も一人だけ見つけました。突然奇声が聞こえてきて、声のする方へ行ったら生徒が倒れてました」
 お茶を勧める、スーツ姿の男性。
「休みなのに、出勤ですか」
「進路指導という役柄上、学校の都合で休む訳にも行きませんから。生徒からの連絡もありますし」
「大変なお仕事ですね」
「受験する生徒に比べれば、何でもありません」
 苦笑気味の口調。
 壁際の本棚は参考書で埋め尽くされ、机には大学の募集要項や資料が山積みされている。
「時には、厳しい指導になる事も?」
「一生を決める出来事ですからね。その辺りは、生徒達が一番分かってます」
「なるほど、なるほど」
 一人頷く葵。
 大吾は嫌そうな顔で、参考書の列を睨んでいる。
「私も質問したいんだが」
「どうぞ」
「その暴れたという女の子達は、ここで面談を受けた子かな」
「え、ええ」
 顔を見合わせる、葵と大吾。 
 尋ねたレイベルは瞳に力を込め、目の前にいる男を見据えた。
 緊迫する空気。
 長い沈黙。
「で、こいつをやればいいのか」
 木刀入れを担ぐ大吾。
 小さく声を上げる男。 
 葵は苦笑して、さりげなくマグカップを手に取った。
「そう簡単な問題なら、学校がとっくに処理してるよ」
「そうか?」
「話は終わった」 
 短く言い残し、部屋を出て行くレイベル。
 葵がそれに続き、大吾も渋々といった様子で付いていく。
 額から汗を吹き出し、呆然とする男を置いて。

 一人トイレの中に残る孝太郎。
「現場は確保しないとな」
 万が一を考えてか、一応鏡に背は向けている。 
 時折、振り返りながら。
「わっと、手でも伸びて来るんじゃないのか」
 言ってる自分が信じていない口調。
 のんきな台詞とは裏腹に、表情が徐々に引き締まってくる。
 ジャケットの前を押さえ、手は髪へと触れていく。
「風なんて……、吹いてないよな」
 警戒気味の態度。
 ここを立ち去った方がいいとでも言いたげな。
「これで、逃げ出せる性格ならいいんだが」
 小さな呟き。
 自嘲と、微かな誇りを込めた。


「休まなくていいの?」
「慣れてるよ、雑用は」
 明るさのない笑顔で返す孝太郎。
 葵は肩をすくめ、廊下の壁に背をもたれた。
 しきりに言い合う、大吾とレイベルへ視線を向けながら。 
「だったら、何が原因なんだよ。あいつに怒られて、爆発しただけじゃないのか」
「その可能性もある」
「じゃあ、やっぱり」
「君は、何か嫌な思い出はある?」
 静かな、しかし問い詰めるような口調。
 鋭さを増す、レイベルの瞳。
 大吾は笑う素振りを見せ、ぎこちなく彼女を見つめ返した。
「自分では分かっているのに、人に触れられてしまう。捨てられない、嫌な思い出は」
「何だよ、それ」
「逃げたくても逃げられない状況に置かれた事は?胸が痛いまでに、追いつめられた事は?」
「うるさいな」
 苛立った表情。
 反発気味な視線。
 今にも、手にした木刀入れを使いかねない程の剣呑な佇まい。
「無いならいい」
「あ?」
「大吾君。頬に何か付いてる。ちょっと、見てきたら」
 トイレを指差す葵。 
 大吾は彼にも険しい眼差しを向け、壁を一蹴りしてトイレへと入っていった。

「助かる」
「でも、どうして彼を。僕で、不都合な理由は?」
「暴れた少女達と同じ高校生で、悩みを抱えてる雰囲気だったから」
「僕だって、悩みくらいはありますよ」
 ひどいなと言いたげな、甘い笑顔。
 レイベルは鼻で笑い、この場を離れるよう二人を促した。
「あまり、遠くへ行かない方がいいぞ。冗談抜きで、死人が出てもおかしくない」
 短い、警告にも似た台詞を呟く孝太郎。
 ただし本人も、その理由は分かってない顔である。
「どうして」
「単純に、嫌な感じがするだけだ。そっちのお姉さんが、何か知ってるんじゃないのか。大体、あいつは大丈夫なのか」
「そのくらいの覚悟がないなら、こういう事に首を突っ込まない方がいい」
「俺達も?」
「当然、私もだ」

 
 顔を洗ったのか、濡れた顔を鏡に映す大吾。
 消えない苛立ち。
 どこか、焦点の合わない瞳。
 深くなる呼吸。
 聞き取れない言葉が、口元からこぼれ出す。
 木刀入れを掴む手に力がこもり、指先が一気に白くなる。
 震える足、小刻みに動く腕。
 焦点の合わない瞳が見開かれ、正面を見据える。
 鏡を。
 それとも、その奥にある何かを。

「どうしたっ」
 奇声を聞きつけ、トイレに飛び込む葵。
 その鼻先をかすめる、真剣の切っ先。
「冗談、でもないか」
 振り下ろされる真剣を倒れ込んで避け、左手で蛇口を開く。 
 迸る水。
「頼むよ」
 緩む口元。
 頭上に迫る真剣。
 だがそれは、不可視の障壁で遮られる。
 正確には、蛇口から迸った水で作られた壁によって。
「嘘」
 壁に食い込む刃。
 それは深さを増し、切っ先が床へ倒れた葵の喉元へと向かってくる。
「……室内に嵐の突風を」
「え」
 はげしい唸りと共に叩き付けられる暴風。
 それに流され、強度を弱めていく水の壁。
 葵は素早く立ち上がり、腰をためてその風に耐えた。
「少し手荒に行くけど、後は綺麗な先生に診てもらってくれ。もう一度、お願い」
 蛇口から迸る水が数滴、宙へ舞い上がる。
 長い、針の形となって。
「これで、目を覚まして……」
「二人とも、落ち着いて」
 地震のような衝撃。
 耐えきれずに壁へ手を付く葵。
 大吾も後ろへ仰け反り、水へ足を滑らせて床へと転がった。
 持ち主を守るかのように、その体へと乗る木刀。
 床で打ったのか、小さく唸りながら頭を抑えている。
 すでに風はなく、先程までの異様な迫力もない。
 壁に亀裂を作って二人を制止したレイベルは、風に乱れた髪を抑え小さくため息を付いた。
「水、か」
 握り拳を開く孝太郎。
 針の形状となって、大吾を襲ったはずの。
 人の目では捉えられない程の早さで。
 水の針も、彼の動きも。
「大丈夫か」
「私は問題ない。自分こそ」
「目はいいんだ」
 針に襲われたのは、葵だけはない。
 突風により向きの変わったそれは、数本がレイベルへ向かっても飛んできた。
 そのどれもが、孝太郎の右足一本で宙に散ったが。

「初めから、そうしてくれれば良かったのに」
「男同士の勝負に、女が口を挟むのも無粋だと思って」
「冗談はいいですから、傷を見て下さい」
 甘い笑顔と共に、顔を突き出す葵。
 初太刀がどう動いたのか、左頬に赤い筋が一本付いている。
「染みるけど、我慢して」
 ガーゼに消毒を浸し、傷を洗うレイベル。
 少し顔をしかめつつ、反対側の頬に添えられた手に視線を向ける葵。
 息が掛かるくらいの近い距離。 
 二人だけの空間。
「はい、終わり」
 頬に張られる絆創膏。
 葵は拍子抜けした顔で、大吾の介抱へ向かったレイベルを見つめた。
「あ、あの。これだけですか」
「縫って欲しいの?」  
「それは、もう」
 何かを期待した表情。
 絆創膏で、頬に手を添える。
 では、縫った場合はどうなるかという話である。
 レイベルはジャケットの懐から小さな救急セットを取り出し、針と糸を用意した。
「麻酔がないから、鍼でいい?」
「え」
「チョウセンアサガオもあるんだけど、こっちは失敗すると失明したりするから」
 懐から取り出される小さな茶色の袋。
 冷たい表情と共に。
「あれだ、あれ。口にハンカチ突っ込んで、舌を噛まないようにすればいいだろ。良く、刑事ドラマでやってるみたいに」
 真顔で提案する孝太郎。
 現職の警官である。
「それともライターで鉄を焙って、傷口に……」
「絆創膏って最高ですね」
 頬を抑え、立ち上がった大吾に肩を貸す葵。
 レイベルは救急セットをしまい、彼の手足に軽く触れていった。
「骨折はないし、軽い脳しんとうといったところかな。さっきの水に、毒性は?」
「水質は、水道水のままです」
「そう。とにかく、一度医務室までお願い」
「障害未遂だぜ、おい」
 やはり大吾に肩を貸し、声を出して笑う孝太郎。
 他の者からも、自然に笑い声が漏れる。
 安堵感と、信頼感と共に……。  
   
「催眠術?」
 ベッドの上にあぐらをかき、頭を抑える大吾。
 レイベルは小さく頷き、話を続けた。
「それに似たような物だと思う。あそこにある幾つかの物と、進路指導での話が重なった結果の。キミが体験したように」
「全然覚えてないんだけど」
「結構な話だね」
「全くだ」
 頬の絆創膏に触れる葵。 
 大吾は怪訝そうに、彼を見上げている。
 拳を何度も握り返す孝太郎は、葵の顔を。
「何でもない。さっき彼の動揺を誘ったのは分かりますが、催眠術ってそう簡単に掛かる物ですか」
「規則正しい、トイレタンクの水漏れ。ちらついた照明が映り込む鏡。進路指導で精神的に追い込まれている状態。それも深く、自分の内面へ意識を向けるような」
 訥々と語るレイベル。 
 静かに耳を傾ける三人。
「でも悪いのは教師でもないし、大学でもない。受かるだけの実力がにない自分。そして、それはどこにいる?」
「目の前の鏡に」
 同時に答えた三人に、レイベルは笑顔を浮かべた。
「ただ、普通催眠状態になっても自分を傷付ける事はしない。だから、私の推測が正しいとも言えない」
「お前は、覚えてるか。その時の事」
「いや、何も。いらいらして鏡の前に立って、そこから先の記憶はない」
「人間、嫌な記憶は心の奥へ封じ込めるように出来ている。思い出したくないというレベルではなくて、それを心の奥底に閉じこめてしまう。逆に言えば、そこを突くと精神的な恐慌をきたす場合がある」
 口元を抑える大吾。
 葵も苦笑気味に、頭を掻いている。
「でも、教師や職員はどうにもならなかったんだろ。俺だって一人であそこにいたけど別に、どうという事も」
 嫌そうな顔をする孝太郎。
 レイベルは苦笑気味に首を振り、彼等を見渡した。。
「催眠には何段階ものレベルがあるし、誰もが掛かる訳でもない。それと彼がが何を思い、何を見たかは分からない。分かったのは、あそこがあまりいい場所では無い事」
「じゃあ、どうすればいいんだ」
「水道業者を呼んで、水漏れを直せばいい。後は、蛍光灯を替えて」
「冗談だろ」
 笑う孝太郎。
 それに倣う残りの二人。
 事務的な内容を告げたレイベルは、くすりともせず医務室から出て行った。
 孝太郎はなおも釈然としない様子で、彼女に質問を投げ掛けながら付いていく。
 彼等を見送った葵は、大吾の頭を撫でて優しく微笑んだ。
「大丈夫?」
「え、まあ。あんたこそ」
「そうだね。僕も少し休もうかな」
 頭から頬を滑り、肩へと回る葵の手。
 思わずといった具合に身を震わせる大吾。
「あ、あの」
「添い寝だよ、添い寝。それとも、そういう趣味でも?」
「ば、馬鹿かっ」
「大声出さない。頭が痛くなるよ……。って、遅いか」
 後頭部を押さえる大吾と、彼の肩に手を回しそっと寝かす葵。
 傍目には、誤解されかねない光景。
 つい先程までは、お互いの命すら掛かった戦いをした二人の。
 おかしくも、暖かい……。  
 
 頭を抑え、ベッドから降りる大吾。
 まず手にしたのは、真剣の入った木刀入れ。
 本人すら意識しない程の、自然な動きで。
「結局、俺は頭を打っただけじゃないか」
 思わず漏れる文句。
 おぼつかない足取りで、ドアへと向かう。
 だがその足は、廊下に一歩出た所で止まってしまう。
「ここって、女子校だよな。という事は、普段ここで寝てるのも」
 何となく赤らむ顔。
 しかしそこに、下品さはない。
 明るく、少し照れ気味の。
 素直な笑顔しか。
「まあ、このくらいの役得はないと」
 軽快な足取り。
 勢いよく振られる木刀入れ。
 鋭く。
 そして爽やかに……。  

                                     了
  
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1048/北波・大吾/男/15/高校生
0606/レイベル・ラブ/女/395(外見は20代)/ストリートドクター
1072/相生・葵/男/22/ホスト
1064/鋼・孝太郎/23/警察官

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■         ライター通信          ■
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ご依頼頂き、ありがとうございました。
他の方とは本文が共通で、OPとEDが各キャラ別となっています。
またの機会がありましたら、よろしくお願いします。