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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


Trick? and? Treat?

☆ オープニング

「Trick and Treat!!」
 ハロウィンまであと数日という頃、ゴーストネットOFFの掲示板にそんなタイトルの書き込みが何度も。
「あれぇ〜、何だろうこれ……普通、Trick or Treatじゃなかったっけなぁ?」
 雫は、自分の知識をなんとかひっぱりだして、その英文が間違っているのに気付く。それでも事態は変わらないが……。
 そして、その書き込みには、時間と場所が書いていた。
 日付は、10/31 PM8:00〜PM12:00。都内で行われる、ハロウィンパーティーの日付と時間が書いてあった。そして
「ゴーストネットの皆様のお越しを、お待ちしています♪」
 と、ゴーストネットの皆を誘うメッセージが書かれていた。
「ふーん……面白そうだけど、誰がこの書き込みを書いたんだろう……ま、面白そうだからいいかっ♪ 皆誘って行こうっと♪」
 面白そうなこと好きの雫は、ゴーストネットの仲間を誘って、ハロウィンパーティーに行くことになるのであった。
「面白そうなことには、参加しなくちゃねっ♪ さー、行こ行こ〜♪」
 しかし、その天真爛漫娘の姿を、影から見ている人達がいた。

 少し時を前に巻き戻す。
「一緒に雫を脅かそうぜ?」
 この雫を脅かす企画を企画した一人、真名神・慶悟。雫不在のインターネットカフェ・ゴーストネットで、周りの面々に誘いをかける。
 もちろん、慶悟は特に雫に対して恨みは無いのだが、まぁ……面白いだろう、という事で。
 とても格好いい、一目見れば伊達男という風の慶悟。全ては一般諸衆の救済を続ける為と言うが……どうみても、彼の服装や立ち回りからは、陰陽師だとすぐに予測できるものは少ないだろうけれど。
 さて、本題に戻り、雫を脅かす誘いに乗ってくる面々はまばらだった。慶悟自身が、なんでこれほど集まらないんだろうと勘ぐるぐらいに集まらない。
 そして、皆が皆、驚かす対象が雫だと分かると、逃げ出す。
「……なぜか皆、雫という言葉を出すと逃げ出すが……どういうことだろうな?」
 まだ、慶悟は知らなかったのである。雫の、怖いもの無しの能天気な彼女の一面を。
「まぁ……いいか。 驚かした者勝ちだし。 誰があいつを驚かせれるか、競争だぜ?」
 慶悟と同様に、雫の恐ろしさを知らぬ者達は、慶悟に引き連れられて準備を始める。
 ゴーストネットの掲示板に書き込んで、もっともらしい事を書いて……。きっと雫が面白そうだと思って、雫は直ぐに食いついてくるだろうと。
 慶悟の予想の通りに、雫は食いつく。そして、明くる日のゴーストネットでは、一緒に行く仲間を誘う、雫の姿があった。

☆ 10月31日・午後8時〜雫式神?の誕生〜

「さてと〜、どんな事になるのか、楽しみだね〜☆」
 雫は仲間4人と一緒に、公園へと到着する。他の仲間は、皆彼女と一緒の学校に行っている、大親友だ。
 夜8時という時間なので、既に公園は結構暗くなっていて、唯立っている街灯だけが照らしていた。
「でも、この公園って大きいわよね? どこで出てくるか、予想もついたものじゃないし……」
「まぁ、いいんじゃない? 面白ければさ♪ いこいこー☆」
 そんな感じで歩いてく4人を、影から確認する一人。
 そしてその者は、トランシーバーを通じて、慶悟へと連絡する。
『慶悟さん、雫ちゃんが今、公園に入りました』
「そうか、分かった。そっちも頑張れよ?」
『ええ、そっちも頑張って脅かしてくださいよ? では……』
 そして、トランシーバーでの連絡を終えて、慶悟はベンチへと座る。
 静かに精神集中を行う慶悟、そして……。
「 我が内の理に従いて、疾く来たれ……急々 」
 印を組み、式神を何十体も召喚する。そして続けて、呪を掛ける。
「 汝が名は、瀬名・雫。 汝はかの者なり。 移ろいし姿……摩利支天の行法により、在りし姿を変え……忍べ 」
 その場に現れた式神が、次々と姿を変えていく。その姿は……。
「 ……見事なまでに、雫にそっくりだな。驚くに違いない 」
 慶悟の周りに何十人もの、雫の姿。全員が、そろいも揃って無表情であるが故、なんとも不気味だ。
「 ……だが、思ったよりも不気味だな……これは 」
 内心苦笑をする慶悟。そんな彼に、再びトランシーバーより連絡が入る。
『慶悟さん、雫ちゃんがもうそろそろそっちに行きます。 ……一人は脅かせたのですが、残り三人は手ごわいですよ。 頑張って下さいね?』
 慶悟の前に、雫達を驚かした者から連絡が入る。
「そうか、分かった」
 そう聞いてから、再び慶悟は。
『 全員、忍べ。 雫着たりし後、我の合図と共に、全て出づれ 』
 言葉と共に全部の式神が、繁みの間に隠れた。
「さてと……待つか。 どうやら一筋縄では行かないようだが……ま、息抜きみたいなものだろ。結果なんて関係ない、面白い反応が見られればそれでいい。それがどんなに豪胆な様であっても……な」
 ベンチで煙草を煙らせながら、雫達を待つ。

☆ 10月31日・午後9時:瀬名到着

 とことこと歩いてくる雫達ご一行。そんな彼女たちが、街灯の下で煙草をふかす慶悟の姿を見つける。
 街灯で照らされるベンチ。まるでどこかの舞台のワンシーンのようだ。
 これに雨でも降っていれば、更に映画のワンシーン。それ程に慶悟の今の状態は、どこかの俳優のように格好よい。
「あれぇ……慶悟君、こんなところでどうしたの〜?」
 しかし、そんな舞台の雰囲気をぶち壊すような、夜の公園に似合わない、能天気な声の雫である。
 それはいいとして、慶悟は雫達に手を上げた。
「よう。 こんな夜に逢うなんて、奇遇だな」
 と、何気ない、暢気な風に装っていた。
 そんな慶悟を見て、何も恐れずに近づく雫と、雫のその友人。
 やっぱり夜という時間、周りは真っ暗な状態、そしてこれより前に、何名かの者達が続けて彼女たちを脅かしていたのだから、心境的には不安なのだろう。
 そんな彼女たちが、至近距離まで近づいてくると、慶悟は再度印を組み、小さな声で呪を掛ける。
『 ……現れよ、全ての式神。 目前の瀬名・雫を取り囲むのだ 』
 その印と呪によって、周囲の繁みから次々と出現する雫の姿をした式神達。
『 ……疾く、散れ 』
 言葉と共に、人間とは思えないスピードで近づく雫の式神。
「え……きゃっ!」
 雫の隣にいた女友達が、疾風のごとく走る雫の式神に驚き、その場にへたり込む。
 その後も式神達は、雫の周囲を取り囲んだり、取り囲んだままぐるぐると回ったり、大きく散ったり、戻ったりと……。
 これは、雫も驚くだろう、そう予測している慶悟。しかし……。
「あ、私が一杯〜☆ みんな揃って仮装してきたの〜♪」
 約一名、全然効いていないのが雫だったり。
「ねーねー、これって慶悟君の式神でしょー? どうして私の姿をしているの☆」
 逆に呆気に取られたのが、慶悟だったりする。驚かない雫に、慶悟は内心汗をかきながら。
「……あ、ああ……まぁ、雫を驚かそうと思って、な……?」
「あはは、こんなんじゃ私、驚かないよ〜☆ だって、伊達にゴーストネットに出入りしてないし♪ 自分の顔を見たことが無いから、逆に自分の顔が見れて面白いー♪」
 恐るべし、超能天気娘・雫。
「そ、そうか……まぁ、面白ければいいか……」
 驚かれないのに、ちょっとショックを受けながら……。
「ま……お後が宜しいようで、いいかな?」
 微笑の裏に、他の者達が何故来なかったのかが、分かったような気がした。

☆ 10月31日・午後10時

「へ〜、今回のは、皆が企画したんだぁ。 うん、すっごく面白かったよ?」
 慶悟と共に、彼女を驚かそうとしていた面々が集まって、公園の外にあったファミレスで食事中。
「だって、慧なんて、一番最初に気絶してたしね〜☆」
 雫の友達の一人、慧を見てそう言ったりする、どこにでもある雑談の風景だ。
「でも、あえてあのなかで一番怖かったのを言えば、やっぱり慶悟君のあの子達かなぁ〜。 だって、私が一杯いるんだもん♪」
「そうか……まぁ、楽しんでもらえてよかったよ。 そういえば、他の奴らはどんな事をして、彼らを驚かしたんだ?」
「俺は、俗に言う火の玉を使ったぜ?」
 とか。
「白い布をかぶって、その姿で後ろから追いかけた」
 とか。口々に自分の驚かせた方法を告げていく面々。しかし。
「あれ……足の見えない幽霊をやったのは誰〜?」
 雫達の友人の一人、慧を気絶させた、足の見えない幽霊。
 しかし、その場に居た全員は、そんな事をやっていないと言う。
「……もしかして、本当の幽霊も、出ていたのか?」
 その真相は、闇の中のまま、夜は更けていった。

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  ■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【 0389 / 真名神・慶悟 / 男 / 20歳 / 陰陽師 】

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■   ライター通信          ■
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どうも、雫ちゃんを脅かそう企画、Trick? and? Treat?にご参加いただき、どうもありがとうございます。
ライターの燕と言う者です。今後宜しくお願いします。m(_ _)m

今回の依頼は、ハロウィンというイベントを基にしています。ジャック・オー・ランタンとかで有名な。
「Trick and Treat」として作りましたが、正しいのは「Trick or Treat」ですので、お間違えなく(^^;)

さて、今回は真名神様1名のご参加でしたので、ちょっと雫ちゃんを驚かす事は難しいと考えました。
なので、雫ちゃんが泣き出すとか言うことはありませんでした……雫ちゃんの勝ち、なのでしょうか?(^-^;
ある意味、真名神様は、驚くべき雫ちゃんの能天気な性格を知ったでしょう。
でも、これに懲りずに、雫ちゃんを見捨てないで上げて下さいませね。