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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


蒼緑祭のハロウィンパーティ
●祭りの前の胸騒ぎ
 今年、蒼緑学園高等部にて、開催される蒼緑祭‥‥またの名を学園祭は、11月初めに行われることにより、今回は特例として夜に、ハロウィンの仮装パレードを行うこととなっていた。
「ハロウィンなんて初めて!!」
「あたしは久しぶりだな☆ とても楽しみだよね!」
 しかし、開催間近になって‥‥ある問題が起きたのである。
 パレードを行うコースに入っている、とある公園。夜、そこで白い人影を見るというのである。それも一件や二件ではない‥‥既に十数件もの報告が出ている。
 もちろん、ゴーストネットOFFの掲示板でもその噂で持ちきりだ。
「‥‥もしかすると、前回会った人影さんと関係があるのかも‥‥」
 深月明(ふかづき・あきら)は掲示板の書き込みを見つめながら呟いた。
「ともかく、一度、行ってみましょうか」
 明は立ち上がり、噂の公園へと向かったのであった。
 果たして‥‥無事、パレードを行うことが出来るのであろうか?

●雫と明の秘密の花園 ぱーと2
「今日はどうしたんですか? 私を訪ねてくるなんて」
 明は目の前にいる月杜雫(つきもり・しずく)の姿をじっと見つめながら、尋ねた。
「ちょっと気になったことがあったから‥‥いけませんか?」
「そ、そんなこと‥‥ないです。ただ、ちょっと驚いただけで‥‥あっと、そういえば、気になったことって?」
「先日出会った、あの白い影さん達は元気にしています?」
 その言葉に明は思わず、笑みを零した。
「なんだ、それですか。私、てっきり力の使い方とかで悪い使い方しちゃったから怒られるかと‥‥」
 今度は雫が眉を潜める番だった。
「悪い使い方って、何をしたんです?」
 口元に笑みを浮かべながら、その瞳は真剣だ。
「た、たい、大したことないんです‥‥ただ、その‥‥高いところに置いているボウルを力で引き寄せて運んだとか、お父さん起こすためにいつも使っているフライパン、自分の腕で叩くと疲れるから、力を使って叩いているとか‥‥‥‥ごめんなさい」
 どうやら、明はちょっとものぐさなようだ。犯罪に使ったというわけではないことに、雫はほっと胸をなで下ろした。
「気を付けて下さいね。その力は悪いことに使うと必ず、自分に返ってきますから。それから‥‥白い影さんのこと‥‥どうなってます?」
「え、あ‥‥はい、元気です!! ちょっとお父さんに勝手なことするなって怒られましたけど、アパートにルー君とリー君を居させてあげてもいいって了承貰えました。だから、元気にしていますよ。皆にもまた会いたいって言っていました」
「そうですか。それを聞いて安心しました」
 雫はもう一度、微笑み、そして思い出した。
「あっと、そうそう、忘れるところでした」
「?」
 雫はポケットから朱色のお守りを取り出した。何故か金の糸で『安全祈願』と刺繍が施されていた。
「これって、お守り?」
「明さんに差し上げます。私お手製のお守りです。大事にして下さいね‥‥お友達の証として」
 そういって渡されたお守りを目を丸くして明は見ていた。どうやら、驚いているようだ。
「私‥‥その、友達からプレゼントなんて‥‥初めてです」
 ぽつり、呟くように。
「とっても嬉しいです、ありがとうございます、雫さん」
 嬉しそうに笑う明。その瞳には涙を滲ませているようだ。
「泣くことありませんよ。でも、そんなに喜んで貰えると私も嬉しいです。それと‥‥」
 雫は瞳を細めながら、続ける。
「笑っていた方が可愛いですよ、明さん」
 その言葉に笑みを浮かべていた明は、とたんに頬を真っ赤に染める。
「あ、そうそう、さっき言っていたルー君とリー君ってあの影さん達の名前ですか?」
 明は雫の言葉に真っ赤になったまま頷いたのであった。

●月がとっても綺麗だから
 秋の夜空は少し肌寒い。しかし、その肌寒さが逆に心地いい。澄んだ空は暗闇の中から月と星を浮かび上がらせていた。
「うーん、こういう日は散歩に限る!」
 ふわりと少年、卯月智哉(うづき・ともや)は楽しそうに口ずさみながら、公園を歩いていた。体があるというのに、向こう側の風景が見えるところを見ると、今は実体化していないようだ。透明な体でふわりふわりと楽しそうに歩いていく。
「? 何?」
 きょとんとした目で目の前のものを見た。
 光。
 それも一つではない、大きな光の珠が二つだ。それが智哉の方へと近づいてきている。
「ぼ、ぼ、僕に何か用!?」
 思わず声が震える。
『よかった、話の出きる方で』
 光の一つが淡い光を点滅させながら、話しかけた。いや、頭に直接、テレパシーのようなもので語っているといった方がいいか。
『あなたのような方を探していたんです』
『私達の子供を見ませんでしたか? 私達よりも一回り小さい光で、二人います。どんなことでも構いません。もし、知っているのでしたら教えて下さい!』
「そ、そんなこと言われても‥‥残念だけど僕は知らないよ」
『ですが、私達と同じようなあなたなら‥‥何かご存じではありませんか?』
「そんなことないよ。勝手に決めつけないで欲しいな」
 困惑しながらも智哉はそう答えるのであった。

●再会のとき、そして‥‥
 夜の公園。智哉が困惑している一方で、この公園を訪れる者達がいた。
「やはり、ここには何かがいるようだ」
 真名神慶悟(まながみ・けいご)はその肩に白い鳥を留まらせていた。それはただの鳥ではない。鳥の形をした式神、慶悟の作り出した忠実なしもべでもある。ここを暫くこの鳥に見張らせていた。そして、幾度かその光を確認した。幽霊ではないようだが‥‥。
「もしかしたら、あいつらの両親とか?」
 降野碕(こうの・さき)が腕を組みながら、そう告げる。慶悟と碕、そして明に雫は噂の真相を確かめるため、この公園に来ていた。碕の言う通り、先日出会った月の住人ルーとリーの探していた両親なのかもしれない、そう思っているのだ。
「可能性はあるが、今は断言は出来ないな。直接、確認してみないことには‥‥」
 慶悟がそう告げたとき。
「皆さん、気を付けて!! 奇妙な気配が‥‥三つ‥‥」
 雫の右の瞳が、黒から鮮やかな朱へと変化する。能力を発動させ、もしものために備えているのだ。
「三つ? しゃあねーな」
 碕はグーンという低い音と共に、その右手から漆黒の剣を作り出した。
「さ、碕さん!?」
 明がそれに驚く。
「こんなのたいしたことねーぜ。ちょっくら、そこらへんに漂っている霊力を分けて貰っただけだ。ま、もしもの備えってやつだな‥‥もしかして、あれか?」
 目の前に現れたのは。
「間違いないな‥‥あの光と同じ‥‥いや、少し大きいな」
 しかし、慶悟は警戒を解くことが出来なかった。なぜなら。
「誰だ? お前は」
 札を片手に慶悟は二つの光の他にあるもう一つの影‥‥智哉に話しかけた。
「あれ? 明? それにキミはあのときの‥‥」
「? 俺はお前を知らないが?」
「ちょ、ちょっと待って!! 彼は私の知り合いで、敵じゃないわ」
 明が驚き、慶悟と智哉の間に入る。
「明さん‥‥変わった知り合いさんがいるんですね」
「まあ、いろいろあって‥‥」
 そういって明は苦笑した。
『あの‥‥あなた方も私達のことが見えるのですか? 私達の声が聞こえますか?』
 あのときと同じ話し方。慶悟と碕、そして雫はこれで確信した。
「あの、もしかしてルー君とリー君のご両親さん?」
『子供達を知っているのですかっ!!』
 話が早かった。まさしく、その光はルーとリーの両親だったのだ。明の家がこの公園の近所だということもあり、急遽、子供達を呼んで、無事、彼らは再会を果たすことが出来たのであった。

「無事に再会できて良かったですね」
 嬉しそうに雫は言う。
 しかし、ここで問題が一つ。
『ですが、月には帰れません』
 大きな光が切なげに点滅した。
「おい、ちょっと待て! それはどういうことだっ!? せっかく会えたって言うのに、帰れないとはどういうことだ!?」
 碕の言葉に光は続ける。
『我々の乗ってきた宇宙船が壊れてしまったのです。これでは‥‥』
『僕たち、お家には帰れないの?』
 不安そうにルーとリーが両親の光にくっついた。
「宇宙船‥‥我々の手に余るものだな‥‥」
 むうっと眉を潜めるのは慶悟。
「そうだね。さすがの僕にも修理は無理そう‥‥」
 智哉もそういう。ちなみに今は周りに気を使ってか実体化しており、服もきちんと来ていた。
「私達の力では修理は無理なんですか?」
 明が確かめるように尋ねる。
『ここには宇宙船の部品も燃料もありません』
 ここで幸せな気持ちになっていた彼らは、一気に重苦しい気持ちへと変わりつつあった。
 絶望。
 なんとか月の住人達を月へと帰してあげたいが、そのための術がないこと。
 それだけが、問題だった。
「どうやら困っているようだな」
 音もなくその者は現れた。まるで歌舞伎にでも出てきそうなボリュームのある長い銀髪を靡かせて現れた青年。その肌の異様な白さが彼らの目に焼き付いた。
『あなたは?』
 光が尋ねた。
「ただの通りすがりではダメか?」
 青年はおどけたように笑う。
「一体、なんのつもりだ?」
 警戒しながら慶悟は青年に問う。
「彼らを月に帰したいのだろう? その願いを私が叶えてやろうと思ってな」
『!!!!』
 その青年の言葉にその場にいた者達が凍りつく。
「ここには宇宙船の部品も、燃料もないんですよ?」
 驚いたように雫が彼にそう言うが。
「ないなら作ればいい。いや、それよりも早い方法がある。壊れる前に戻せばいいのだよ」
 にっと笑みを浮かべ、青年はぱちんと指を弾いた。
 するとどうだろう!! 夜空に突然、大きな円盤‥‥いや、宇宙船が浮かんでいるではないか!!
『どなたか知りませんが、ありがとうございます。このご恩、決して忘れはしません』
「ご恩なんて飛んでもない。ただの気まぐれだ。気にするな」
 青年はそう言って、宇宙船に吸い込まれるように乗り込む彼らを見送った。明達もそれを呆然と眺めていた。まるで夢をみているかのように。
 そして、彼らが宇宙船に乗り込んだとき。ゆっくりと公園を旋回すると、宇宙船はすぐさま月の方向へと飛び去ってしまった。残されたのは明達と、不思議な青年のみ。
「あのっ!! あなたは誰なんですかっ!!」
 怒ったように明が尋ねた。青年は口元に笑みを残しながら言う。
「我が名はガリューン」
 そして、智哉の方を見つめた。何故か優しそうな眼差しで。
「君にはまた何処かで会えると嬉しい」
 そう、青年‥‥いやガリューンは言った。
「では、用事も済んだことだし‥‥また会おう、諸君」
 そう言って、また指を鳴らす。
 ぱちん。
 後に残ったのは明達のみ。ガリューンはまた、現れたときと同じく、音もなく消えていったのであった。
 こうして、月の住人達を月へと見送った彼ら。しかし、その他にも何か言いしれぬ謎を知ることとなったのであった。

●着ぐるみとハロウィン
 蒼緑祭の当日。
「まあ、明さん、可愛いです!」
 雫が歓声をあげた。
「そ、そうですか?」
 明は照れくさそうに言う。
「ああ、どちらかといったら似合っている方だろう」
 慶悟もそういう。
「違うよ、こういうときはとっても可愛いって言わないと!!」
 智哉が慶悟を肘で小突いた。
 彼らの目の前にいる明は、魔法使いの格好をしていた。これが仮装パレードの服である。この魔法使いの服は現代版にアレンジされており、可愛いデザインになっていた。
「私も着てみたいです‥‥」
「だったら、後で着てみます?」
「え? いいんですか? もちろん、着させて貰います!!」
 明と雫が盛り上がっているところで。
「そういえば、碕が見あたらないね。お祭りに来るって言っていたのに」
 智哉がぱくんとたこ焼きを頬張りながら言った。
「ああ、そういえば‥‥」
 きょろきょろと慶悟も当たりを見渡した。
『はうああああ!! 迷子になったぁ〜!!』
 ぼてぼてとやってくるのは。
「あああああああ!!!」
「きゃああああああ!!!!」
 明と雫は顔を火照らせ、大興奮。やって来たのは愛らしい猫の着ぐるみさんだった。くるくると帽子が回る仕掛けにもなっているらしい。それがまた、可愛らしさに磨きがかかっている。しかも変声機がついているらしく、可愛らしい声でもある。
「ふ、ふわふわ‥‥か、かわいい‥‥」
 思わず、明はぎゅむっと抱きしめる。
『なっなっ‥‥』
「ずるいです! 明さん!! 私も!!」
 雫もぎゅむっと抱きしめた。
『俺、このまま死んでもいいかも‥‥』
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
 四人はぴたりと体が止まった。
「‥‥もしかして、碕‥‥か?」
『おお兄ちゃん、よく分かったな』
「ええええええ!!!」
「もしまして、これって碕さんが入ってるんですか!!」
 ばこっと顔を外した。そこに現れたのは紛れもなくあの碕。
「いやあ、イイ思いをさせて貰った。感無量だねぇ〜」
「‥‥なんかそう思うとちょっとむかっと来ますね」
「同感です」
 明と雫は頷いた。
 と、遠くできゃっきゃという可愛らしい声(?)が聞こえてきた。
 明と雫、そして慶悟と智哉も顔を見合わせ、こくりと頷いた。
「何だ?」
「元気な子供達に夢を見させてあげて下さいね」
 にっこりと雫がそう告げ。
「僕たちが」
「顔をきちんと付けてやろう」
 智哉と慶悟がご丁寧に再び、猫の頭を碕の頭に被せた。
「皆〜、猫の魔法使いさんが手品を見せてくれるって♪」
『なにいいいいぃぃぃぃぃ!!!!!???』
 その後、子供達に散々、弄ばれた碕は以前以上にへろへろになって、帰っていったのは言うまでもない。
 こうして、楽しい蒼緑祭は無事、幕を下ろすことが出来たのである。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0516/卯月・智哉/男/240/古木の精】
【1026/月杜・雫/女/17/明のお友達☆】
【1088/降野・碕/男/19/着ぐるみお兄さん☆】
【0389/真名神・慶悟/20/陰陽師】

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■         ライター通信          ■
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 どうも、相原きさです。今回も参加していただき、ありがとうございました☆ 今回のノベルはいかがでしたか? 今回もまた、驚いたのではないでしょうか? もし、気に入っていただけたのでしたら、ファンレターにて感想をお聞かせ下さると嬉しいです☆ 次回の東京怪談は少しお休みをいただいてから、また新しい依頼をUPしたいと思います。また明や明の父である徹、そして今回出てきた謎の青年、ガリューンも出てくる予定ですので、お楽しみに☆ あっと、その前にソーンの方で依頼をUPするかもしれません。良ければそちらも見ていて下さると嬉しいです。それではまた、お会いできる日を楽しみに待っています♪