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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


<花咲ける青年>

調査組織名   :草間興信所

執筆ライター  : 朧月幻尉

------<オープニング>--------------------------------------

「はァ?!」
 草間は素っ頓狂な声をあげた。

「それが依頼内容ですか?」
「そ、困ってるのよ、アタシ。もうすぐペンションの開店日だってのに、妖しげな声が聞こえたり、事故が起きたりしてるのよ。これじゃ、店始めたってお客が来なくなっちゃうわ。ねえ、お願い!貴方の貴重な人脈をちょっと貸して欲しいの!!」
「別にそれは構わないんだが・・・・・・」
「本当ォ!」
 女は草間に飛びついた。首根っこを捕まえると、ぶちゅう〜とキスをする。
「うげぇ!」
「まッ、失礼ね!・・・・・・まァ、いいわ。でもね、『いろんなモノが見えるペンション』って、麓の人が云ってるの聞いちゃったのよ。これじゃ、お客来なくなっちゃうかもしれないじゃない!」
 ある意味、繁盛するんじゃないかと草間は思ったが、いわない事にした。
 その噂で来るのは、ミステリー好きの人間か、オカルトにハマった奴だけだろう。そんな中にマトモな客がいるとは、到底思えなかった。
「『ロマンチックな夜♪』をイメージして建てたのよ!高い買い物なんだから、絶対、モトを取ってやる!」
「はァ・・・・・・商売に燃えるのはいいことですね」
 半ば呆れたように草間はいった。
「だからね、オープニングパーティーは華やかにしたいのvv」
「そうですね・・・・・・」
「だ・か・ら」
 女経営者はスタッカートのリズムで云うと、白檀の扇を広げてヒラヒラさせる。

「オープニングを飾る、素敵な男の子が必要なのよ♪ちなみに、チークタイムがあるから二人一組のチケットですからね! を〜っほほほほほほvv」
 哄笑う女の顔を、草間はげんなりと見つめた。


●出発一週間前
 オレンジ色の光が夜空にそれを映し出していた。
 東京の学校に在学中の学生ならば必ず訪れる場所。
国会議事堂である。
 堂々たる体躯のSPに傅かれ、少年は絨毯を敷き詰めた廊下を歩く。歩を進めるたびに触り心地の良さそうな黒髪が揺れた。肌は透き通るようで、薄浅黄の宮司姿の着物の上からでも、すらりとした体のラインが伺える。首から肩まで続くなで肩気味の線は少々繊細な印象を感じさせるが、均整の取れた骨格は高校生ぐらいの少年のものだ。碧々とした黒瞳と金の瞳のオッドアイが更に澄んだ美貌を際立たせていた。
 少年の名は神薙・春日(かんなぎ・はるか)といった。政治家や大企業の重役等を相手に未来を見る【先見】=予見者である。
 つと、少年が立ち止まった。
「虎兄?」
 姿も美しいが声も可憐だ。その声は壁に背を持たせかけた長身の青年に向けられていた。
 ちょっと長めのショートにカットされた黒髪は前髪を右側よりで分けている。涼やかな切れ長の目が少年を捕らえていた。
「よォ、春日」
「何者!」
 SPの一人が間に入った。SPに春日は冷たい視線を送る。
「邪魔です、消えてください」
「しかし・・・・・・」
「虎兄は何もしない!」
「わかりました」
 少年の凛とした一声にすごすごと引き下がる。
「おっ、ここじゃ怖えーのな、お前」
 虎兄と呼ばれた青年は春日を見ておどけたように言った。背が高くすらりとスマートな肢体をスーツに包んでいる青年は湖影虎之助(こかげ・とらのすけ)といい、普段は文系三流大学に通っていた。東大にも入れる頭脳の持ち主のようであるが、「面倒臭い」という極めつけの一言でさっさと近所の女生徒が多い大学へ進学したツワモノである。
 世間ではモデルとして名を馳せていた。有名メンズ雑誌の表紙を飾り、老若男女問ず人気が高い。今年中の間で複数のTVCMにも出演していた。政治を陰で操る少年と表社会で桧舞台に立つ青年との間に一体どんな接点があるというのか。
 春日を守護するSPたちには分からなかった。
「ふざけないでよ、虎兄・・・・・・何の用?」
「何の用はないだろう」
「じゃぁ、龍がいい。龍呼んできてよ」
 【龍】は虎之助の実弟で、名を龍之介といい、春日の片思いの相手である。月刊アトラス編集部の下っ端、三下にお熱を上げている弟に虎之助は呆れていたが、それに惚れるこいつもどうかと思った。
「お前、龍がいいって変わってんなあ・・・・・・それはどーでもい」
「よくないよ」
「黙っとけ・・・・・・お前さ、パーティー行かないか?」
「パーティー?」
「あぁ、ペンションのオープニングパーティーなんだが、チケット余っててな。十一月の連休だから、お前学校休みだろ?」
「ふ〜ん、ペンションのオープニングパーティーかぁ・・・・・・楽しそうじゃん、行く行く♪」
 この男の前では歳相応の喋り方になるらしい。
「そうか・・・・・・じゃあ、3日の東京駅に8時十五分前に集合だ。新幹線の改札前で待ってる」
「了解!」
 細面の美貌に少年らしい笑顔を乗せて春日は云った。
 ふと虎之助の口端に奇妙な笑みが浮かぶ。降って湧いた幸運に鼻歌を歌い、春日はあてがわれていた控えの間に向かっていった。どうやら虎之助の企みには気が付かないでいる様だった。


●Let‘s Go♪
 その日、東京は晴天に恵まれた。
 これから旅行に向かう家族連れが横を通り過ぎていく。彼等はそれを横目で眺め、足早に通りすぎた。
 ここは東京駅。 東京の玄関であり、東京の顔でもある。

「んで、何処なワケよ」
「軽井沢だ」
「うォう!リッチマ〜ンvv・・・・・・んで、知り合いのとこかなんか?」
「知り合いと云えばそうだな・・・・・・」
「芸能人ともなると知り合い多くていいなあ」
「荒稼ぎしてる奴が馬鹿言うな・・・・・・まぁ、お前も知ってる奴かな」
「え?そんな奴、知り合いに居たっけ?」
「草間だよ・・・依頼だ」
「げェ!草間ちんトコの依頼かよ〜。つーことはオカルト系なワケか?」
「そういうなって」
「ん〜まぁ退屈しのぎにはなるかな?・・・・・・うー、騙された」
「政治家手玉に取っても、まだお子ちゃまってこったな」
「うるせーや、ほっとけ!手玉に取られるような根性の政治家が悪い!!」
「確かに今の政治家に根性は無いな」
「だろ?教えてやっても取っ掛かるのが遅ぇ奴が居ンだよなぁ〜。こっちの予見者生命に関わるから、マジでやって欲しいよ、ホント・・・・・・そうだ、今回は俺らだけなのか?」
「いいや・・・・・・こいつ等も一緒だ」
そう云って、虎之助は写真を見せる。
「ほ〜・・・・・・あ、この子可愛いな」
「あぁ、それか?男だぞ」
「げえ!マジ?」
「何でも、相方が初対面の奴なんで秘密にしてくれと草間がいってたな・・」
「初対面?」
「その子、呪禁官なんだそうだ。秘密工作なんかもやるらしいから、情報は表に出したくないんだとさ」
「ほーお」
「おっ、居たぞ」
 そうこう云っている間に銀の鈴に着いた。

「草間さんからの依頼でご一緒します」
 野郎には笑いもしないが、女性のほうに対してニッコリと虎之助は微笑んだ。
「俺は湖影と・・・・・・・」
「知ってます」
 やんわりと男の方が言った。
―― え??
 彼が発した耳を擽る蠱惑の響きを虎之助は驚きを持って聞いた。男も女も魅了する声だ。虎之助は軽い嫉妬で胸の奥が燃え上がるのを感じた。
 草間から渡された資料には斎・悠也(いつき・ゆうや)とあった、開発技術者志望で貯金と情報網構築のために高級クラブでバイトをしているらしい。大学では理工学部を専攻し、現在3年生だそうだ。
 ・・・というのは表の顔で、本来は魔女の母が悪魔と契約して出来た人と悪魔のハーフという、色々と人離れした能力を持つ青年だ。
 白皙の美貌に漆黒の髪、金色の瞳に朱を刷いたような唇が幽玄な雰囲気と妖美を醸し出していた。
 隣の女性は羽柴・戒那(はしば・かいな)という名だ。
 背が高いせいか、腰まであるウェーブヘアが美しい。コートの中はブルーグレーのシャツとパンツスタイルいういでたちで、第二ボタンまで開け、薄紫のスカーフを首に垂らしている。開けたシャツからは豊かな胸の谷間が覗いていた。胸がデカイと阿呆に見えがちだか、鉄壁の不動心と大学助教授という高い教養がそれを払拭していた。
「『湖影・虎之助』さんですね?ご活躍は雑誌などで拝見しています。こちらの方は?」
「あぁ、こいつは神薙・春日だ」
「はじめまして、俺、神薙・春日 です。騙されて来ましたぁ♪」
「やかましい!」
「そうじゃないかぁ!依頼なら、俺は龍之助と来たかったのに、何で虎兄となんだよ!」
「俺は龍の奴とは死んでも来たくなかったんだ!!何が哀しくて野郎とペンションに行かにゃならない。うちの弟はどう見たって男にしか見えん。なら、女顔のお前と行ったほうがマシだ。しかも、今回はカップルでという条件付で・・・・・・」
「カップル!じゃぁ、なおさらだよっ!!・・・・・・あぁ、もおー最低!」
「もう遅い!」
 などと口喧嘩をおっぱじめる。
 時間も押していることだからと悠也にたしなめられ、憮然としたまま残りの仲間と合流することにした。
 残りは三人で、春日と同い年の高校生と中学生のコンビ。もう一人は二十六歳だと虎之助は聞いていた。高校生は超能力者で、中学生の子と二十六歳の青年のほうが呪禁官だそうだ。
 呪禁官とは警視庁第99課(魔戦制圧課)の特殊呪術禁令捜査官のことで、違法呪具』や『魔法』『召喚』等を取り締まる。
 自動販売機の前で、顔を見合わせて笑いあうカップルを発見した。あれが残りのメンバーのうちの二人だ。
「何だか可愛いもんですね」
「子供って奴だな・・・・・・」
 戒那は云った。心なしか笑っているようだった。
「じゃあ、行きましょうかね」
「あぁ・・・・・・」
 そういうと後ろから『お待たせしました』と悠也が声をかけた。
他のメンバーのご登場に少年の方があんぐりと口を開けてこちらを見ている。
 少年は工藤・勇太(くどう・ゆうた)、少女モドキのほうが李・如神(りー・るーしぇん)だ。少年のほうは普通の顔立ちだが、もう一人のほうは極上の姿だった。そうはいないアルビノ(先天性白子)だったのだ。  長い睫毛は大きなアーモンド形の瞳を縁取っている。しかも瞳は深紅の色。整った鼻梁に小造りな顔。腰まである銀色の長い髪を三つ編みにしていた。
 濃い小豆色のロングコートを羽織り、中には、いわゆる巷でゴスロリ服と言われる服を彼女は着ている。黒いベストとフリル付の白いシャツにシングルのネクタイ、裾が広がり気味のロングズボンと云ういでたちだ。ベレー帽がちょこんとその小さな頭に乗っかっている。
どこから見ても真っ白なフランス人形にしか見えない子が男の子というのも、この世の七不思議かもしれない。
「さあ、時間がありませんから新幹線に乗りましょう。先は長いんですから、これからいくらでも話せるでしょう?」
 悠也が云うと、皆は頷いた。
「1,2、3と・・・・・・全部で6人。全員揃いましたね。では・・・・・・」
「待て、悠也。一人足りない」
「え?」
「俺は7人と聞いていたが」
「そうですか?」
「あのね、彼・・・・・塔乃院(とうのいん)さんは先に行ってるって・・・・・・」
 如神がおずおずと云った。
「単独行動ですか・・・・・・仕方ないですね」
 少し悠也は考えたが「まあいいでしょう」といった。今、揃っている必要も無い。
 メンバーは一路、軽井沢へと向かった。


●えぶりばでぃ・かも〜ん!
「いらっしゃぁ〜〜い。ウッワァーォ!なんて素敵な子達なのォ!!」
 ペンションに到着し、瀟洒な造りの階段を皆が見上げていた時、その声はやって来た。ズダダッともドダダダダッともつかぬ地響きが轟く。
 準備に忙しいスタッフの間を縫って、緑の巨大な旋風が目の前で止まる。それはエメラルドグリーンのパンツスタイルでやって来た。皆はオーナーを初めて見たが、彼女(?)がオカマだとはっきりわかった。
 それはそうだ。
 ゴッつい顎に彫りの深い顔。ジャイアント馬場に引けを取らない長身ときたら、オカマだと思わないほうがおかしい。
 自分たちの登場にオーナーは、目に涙さえ浮かべていた。
「嬉しいわ・・・・・・よく来たわねvv・・・・・・」
「この度はペンションのオープンパーティに招いて下さって有難う御座います」
 戒那はそういって、オーナーに鮮やかな花束を渡す。ピンクの薔薇と白ユリの花束だ。アクセントに小さな青い花が入っていた。
「アタシ、この組み合わせが好きなのよォ」
 オーナーはニコニコだ。
「だけど、よくわかったわね」
 そこに悠也の必殺のトークが入る。スムーズで嫌味の無いリズムだった。さすがはナンバーワンホストなだけある。
「はい。草間さんのところにお見えになった時に、着ていらしたスーツの配色を伺ったんです。白地に金のウール地だったと・・・・・・シャネルですね?」
 悠也は優雅そのものという感じに笑って云った。背が高くて、スマートで賢そうで、惚れ惚れする姿だ。
戒那はクスリと笑う。虎之助も笑ったが、目は笑っていなかった。悠也をライバルと認めたらしい。
「それだけでわかったの?」
「はい」
「最高のプレゼントよ・・・・・・草間ちゃんに感謝しなくっちゃ・・・・・まあ!」
「はじめまして、マダム」
 これまたナイスな微笑で虎之助は応えた。
 虎之助はオカマなんぞに興味は無いが、悠也の独壇場になってゆくのが我慢ならないらしい。余裕有りげに微笑む虎之助を春日は横目で見た。「おーおー張り合っちゃってらぁ」というとこだろう。
「ンンまぁ、本物?」
「はい・・・・・・マダム」
 相手が男だろうが何だろうが、芸能人根性は負けを認めない。虎之助は男としては最高のボディーとルックスとおまけに良く通るバリトンヴォイス。ナイスな青年の登場にオーナーは更にご機嫌になった。
「あら?おチビちゃんもいるのね」
 オーナーは隣に立ってる勇太のことは無視して如神に笑いかける。
「こ・・・・・・・こんにちは」
 如神はおずおずと花束を渡した。
 如神のは白い薔薇に赤く丸い花とミントの葉が入ったミニブーケだ。(如神曰く、赤い花はストロベリーキャンドルと云うんだそうだ)
 如神はオーナーの頬っぺたにキスをした。
「可愛いわね・・・・・・いくつ?」
「13歳」
「そォ・・・・・・いいわぁ、一番輝いてる時期ね」
 ほうとオーナーは溜息をついた。
「あの・・・・・・調査のほうはオープンパーティが始まるまでさせて頂いてもよろしいですか?」
「え・・・・・・えぇ、勿論よ。但し、私の部屋には入っちゃダメよ」
「ありがとうございます」
「お部屋はニ階の隅から4つまでスイートルームになってるから、そこから二番目までの三部屋を使って頂戴ね・・・・・・はい、これが鍵」
「あの・・・・・・もう一人・・・・・・・」
 如神は勇太の影に隠れて言った。
「もう一人って、塔乃院さん?」
「はい」
「彼なら買出しに行ってくれたわ。何だか悪いわぁ、手伝わせちゃって・・・・・・あ、帰って来たみたいね」
 後ろのほうで、カタンと音がした。
 ドアの前にバケットを詰め込んだ麻袋を抱え、黒ずくめの男が立っていた。身長は虎之助と変わらないぐらい、いや、それ以上にデカかった。2メートル近いのではないだろうか。
 長い長髪が腰まであっても、どことなくひ弱な感じがしないのは身長のせいだけではなさそうだ。
一言でいうと、野獣。そんな感じである。目が笑ってないからわかった。
「マダム、お待たせしましたね」
「悪いわね・・・・・・・買い物行かせちゃって」
「いいえ」
 穏やかそのものというふうに塔乃院は笑った。
「そうそう、この子が塔乃院さんを探してたのよ」
「あぁ・・・・・・如神か。そいつが今回のお前のパートナーか?」
 いわれて、如神はちょっと俯いた。
「この人は・・・・・・同じ職場の・・・呪禁官の塔乃院・影盛(かげもり)さんです」
「警視庁第99課の塔乃院・影盛です。よろしく・・・・・・」
 塔乃院さんはふっと頭を下げた。
 勇太のコートを握り締める如神の手に力が入っている。
 ちょっと勇太は不安になったのか声をかけた。
「どうした?」
「何でも無いの・・・・・・は、早く行こう、勇太。調査しなくっちゃ・・・・・・」
 そう云うと如神は勇太の腕を引っ張る。勇太は慌ててオーナーから鍵を受け取り、引っ張られるまんま、二階に上がってしまった。
 虎之助は塔乃院をちらっと見た。
―― 無表情の仮面の下には嫉妬の素顔か・・・・・・
調査を早めに仕上げるために、虎之助たちは各々の部屋に行き、荷物を置くと調査を始めた。


●犯人の影
 周囲の目を気にし、7人は散策と見せかけて調査を始めた。勇太と如神、斎と羽柴、湖影と神薙の三手に分かれ、風水関係と霊的磁場に異常が無いかを斎さんが調べた。その間、霊の仕業である可能性の高さを考慮して、虎之助と春日グループは周囲の霊が関係していないかどうかを調べることになった。護符が必要だと、如神がそれぞれの力に合わせた神符を手渡した。
「はい、春日♪危なくなったら投げつけてね。真言は唱えなくてもいいように、簡略化してあるからね♪」
「おっ、サンキュ、如神」
「どうもいたしましてvv」
「春日、行くぞ」
「あいよ・・・・・・じゃな」
「またね♪」
 何時の間にか仲良くなったらしい春日と如神を虎之助は見た。お子様はお子様同士、気が合うというやつだなと思ったが、口に出しはしなかった。春日がふくれて機嫌を直すのに厄介だからだった。
 虎之助×春日グループは目ぼしい所をチェックして廻った。
「どう、虎兄?」
「・・・・・・何だこれは」
「え?何かあったの」
「いいや・・・・・・あるも何も。霊的には何も無いな・・・・・・」
「マジ??」
 虎之助たちはペンションに霊がいるかを確認していたが、まったくもって手ごたえが無い。磁場も悪くないし、遺恨を残しているような残留思念すら感じないのだ。
 負の気が溜まりやすい水場にも何も無く、お手上げ状態だった。
「他の連中の情報を待ったほうがいいな」
「なんかつまんないなぁ・・・・・・」
「あるより無いほうがいいだろうに」
「そうなんだけどさ・・・・・・ん?」
「どうした?」
「何だろう・・・・・・」
 そう云うと春日はきらっと光った石みたいなものを見つけた。
 それは碧色の勾玉だった。白い斑が奇妙にうねっている模様の珍しい石だが、見たことも無いものだ。
「翡翠かなぁ・・・・・・」
 退屈したのか欠伸をしていた春日は何の気なしにそれを拾った。こめかみにしい痛みを感じた時には、手が離せず、身体にいうことをきかすには手遅れだった。
「おい、あんまり変なものは拾・・・・・・・」
「うわあああっ!」
「どうした、春日!!」
 咄嗟に春日は気力を振り絞り、勾玉を投げ捨てた。・・・・・・はずだった。手の中でゴォッと蒼い火焔が吹き上がり春日を包んだ。
「うがあぁぁ!!」
 春日はのた打ち回る。息が出来ないらしい。
 助けようと虎之助は近づこうとしたが、火は益々春日を飲み込んでゆく。それは春日の生気を吸って人型に変化しつつあった。
「春日、春日ッ!!畜生・・・・・・死霊の火、鬼哭火かッ!」
「くッ・・・・・・虎・・・兄・・・・・・苦し・・・」
「待ってろ!・・・・・・これでも喰らえッ!!」
 投げつけた神符は眩い光の軌跡となって突き刺さったように見えたがそれは通り抜けてしまった。
 ふらりとよろめくと春日は前のめりに倒れる。
 人型に変化しつつあった鬼哭火は苦悶の表情を浮かべ、ニイッと笑って・・・・・・霧散した。
「春日!大丈夫か?」
「・・・・・・と・・・ら兄・・・?」
「喋らなくていい・・・・・・」
 鬼哭火が仕掛けられていた石を見た。予見者の春日が気が付かない程巧妙な手口だというのに、鬼哭火はあっけなく消え失せてしまった。虎之助には何故かそれが腑に落ちなかった。さっきの鬼哭火の行動がどうも自滅に見えてしかたがない。
 虎之助は勾玉を拾い上げた。かすかに【呪】の痕が馨っている。アンモニア臭に近い腐臭は術者の気だろう。気の波紋からすると古代霊に近い。多分、自我を忘れているほどに古い霊を使役したのは、扱いやすいからだろうか。・・・・・・にしてはあっけなさすぎた。
「虎兄・・・・・・」
「何だ、春日」
「それ・・・・・・を・・・」
 春日は勾玉に手を伸ばそうとした。
「これをどうする気だ?」
「人じゃ・・・ないけど・・・・・・予見してみる・・・・・」
 いつもなら愛くるしいはずの瞳を、今は吊り上げていた。瞳の奥で怒りの炎が燃えている。それは術者にではなく、自分に向けられた怒りだ。余程悔しかったらしい。
 虎之助は春日に渡してやった。
 春日が意識を集中する。春日の掌に黒い瘴気が噴きつけた。汗が珠になって滴り落ち、春日の頬を伝う。荒くなる呼吸を押さえ、更に意識を集中するが正気を保つのも困難だった。
「・・・は・・・・・・ぐっ・・・うあぁ・・・・・・」
「無理をするな!」
「ま・・・負けない・・・・・・」
 脳裏に黒くうねる闇を見た。
 僅かに残る意識までも、春日の手からもぎ取ろうと暗黒の意志は襲い掛かる。
 暗い部屋で独り狂う男。明け透けな狂喜は腐臭を放っていた。だらりと外れたように落ちた顎の中では死霊の欠片と・・・・・・
「う・・・うあ・・・・」
 見開かれた春日の瞳。
「どうした、春日!!」
 春日が見たものは、正気も気力も搾り取る最悪な暴力だった。
「あ・・・うわ・・・あああぁぁぁぁ!!!!!!!」
「おい、しっかりしろッ!」
「・・・ヤダ・・・嫌だ!・・・・・・嫌だ見たくないッ!!」
「何を見たんだ」
「見た・・・・・・俺は・・・いいや、見てない、見てない。でも・・・・・助け・・・虎兄・・・・・・見たくないッ!」
 暴れる春日を虎之助は抱きしめる。春日は子供のように泣き叫んでいた。
「虎兄!!助けてッ!」
「俺はここにいる、大丈夫だ」
「・・・・・・っく・・・・・・」
 虎兄に春日は縋り付いて震え、歯の根が合わなくなっている。浅い呼吸に反して心の臓は速鳴りを止めない。それは耳の奥で鼓動がガンガンと響いた。
「部屋に帰ろう・・・・・・これ以上は無理だ」
「・・・・・・と・・・・ら・・兄・・・・・・」
「何だ?」
「・・・・・・く・・・・やしい・・・・・・」
「馬鹿!リベンジすればいいだろ」
「・・・・・・ありがと・・・・・・・」
 泣き顔の春日を見つめた。
 虎之助は春日の身体を支え、心の中で誓った。
―― こんな目に会わせた野郎をいつかブチのめす!!
しかしこれ以上情報を集めることもできず、他のメンバーと合流することにした。

 仲間の情報に期待したが、やはりこちらも変わらずだった。勇太たちなんぞは警護と散策って感じだったらしい。勇太がサイコキネシスとか物理的な力のほうが強かったので、如神の足を引っ張る形になったからだった。
 再び虎之助たち7人が集まったのはパーティーが始まる一時間前。
 さっきの捜査で春日の気分が倒れたのが理由で、虎之助たちは休憩をしていた。皆の前に姿を現した時も春日の顔色はまだすぐれなかった。
「そっちはどうでした?」
 悠也は勇太に尋ねた。それに対して勇太は「別に」とだけ答えた。
「別に?とは・・・・・・責任感の無い返事だね」
 ちょっとムッとし、軽い怒りを含んだ声で悠也はいう。春日のことがあったから、少々過敏になっているらしい。
「す、すみません・・・・・・」
「まあいいでしょう・・・・・・それでは情報交換といきましょうか」
 おもむろに悠也はいった。
「まず、俺たちは使役霊を発見した」
 そう云ったのは虎之助だ。
「そうは強くないが・・・・・・どうも・・・・・・」
「どうも?」
 勇太は混ぜっ返した。勇太を無視して虎之助は続ける。
「手ごたえが無い」
「抵抗が無いってことですか?」
 悠也は眉をひそめた。
「そうだ」
「じゃあ、何で神薙さんは・・・・・・」
「使役霊が拘束者を吐く前に滅しちまったもんで、春日の『予見』を行なった・・・・そうしたらこうだ」
「神薙さん、何を見たんですか?」
 春日はかぶりを振った。
「・・・・・・思い出せない」
「思い出せない?」
「見たくない・・・・・・」
「神薙さん?」
「いやだ・・・・・・・思い出したくないんだ!!」
 見えない何かに怯えるような仕草で春日はいった。うつむき、身体を強張らせる。
「思い出したくないほどのもの・・・・・・一体何なんでしょうかね」
 悠也の金の瞳に妖しい光が灯った。
「俺としては不本意ですが、ここは戒那さんに推理の協力してもらいましょう」
「俺は構わないが・・・・・・記憶を拒否するほどのものとは何なんだろうな」
 戒那は腕を組んだ。腰まであるウェーブヘアが揺れる。
「納得いかないことがまだある・・・・・・使用人のことだ」
「使用人?」
「あぁ、おかしいじゃないか・・・・・・何かあったなら普通スタッフたちが逃げ出すだろうに。しかも、工事現場のおっちゃんたちは『変な声』なんか聞いてないって云っていた」
「え・・・・・・あっ!」
「わかったか、少年?」
「つまり、犯人にとっては計算の内ということさ」
 今までずっと黙っていた塔乃院が口をきいた。相変わらずの無表情だ。
「建築会社に昨日行って来たが、事故のあったショベルカーに細工痕あった。ちょっとしたものだ、だが工事現場の人間ではわからないものだな・・・・・・ついでに」
「ついでに?」
「ツクモガミが憑いていた」
 ツクモガミは愛着を持って使ってやった物たちが命を得た霊の総称だ。
「本来なら百年は使ってやらないとそうはならない。今度の相手はそういう相手らしいな」
「つまり、霊を作り上げ、変化させると・・・・・・それは違法ですね、塔乃院さん」
 悠也は感慨深そうに云った。
 勇太はこんがらがった頭を整理しようと試みている。
「えぇと、使役霊が拘束者を吐く前に自滅、オマケにそうは強くなくて、使用人も逃げ出さない。工事現場に見えない細工とツクモガミときたら・・・・・・」
「犯人はオーナーだね、勇太」
 見上げて如神が云った。
「まさか・・・・・・」
 それは自分のペンションに火を放つような行為に等しい。自分が稼いだ金で作り上げた夢の御殿をぶち壊すことは無いのではと思えるが、一つ理由が無いわけでもなかった。
 ふと、虎之助は暗い目をした。報復の相手はあのオカマ野郎かと思うとはらわたが煮え繰り返りそうだった。
「何で、如神はオーナーを犯人だと思うんだ?」
「他に喜ぶ人がいないから」
「え??」
「俺も如神ちゃんの意見に賛成ですね」
 といったのは、悠也だ。
「草間さんに何て依頼してました?オーナーは・・・・・」
「変な声が聞こえて・・・・・・」
「違いますよ、その後です」
「『オープニングを飾る素敵な男の子が必要』だっけ・・・・・・あっ!」
「そうです。少なくともオーナーは喜びますよ、お客もでしょうけどね。オーナーは男にしか興味が無いんですから」
「そうか・・・・・・」
 気がついて、勇太は脱力した。オーナーは『男に来て欲しかった』だけなのだ。
 つまり、信用させるために、事故(重機が倒れただけだが)を起こした。変な声が聞こえると云ったのは、オーナーの口から聞いた事で、使用人は否定してる。勿論、事故は起きてる。でも、ちょっとした細工だったし、オーナーが術者としての能力があるなら、ツクモガミだって使役できるだろう。
「ったく、一体全体何考えてんだ、あのオーナーは!」
「まぁ、詳しい話は後で本人の口から聞くとして、もう時間だから、ホールへ行くか」
 虎之助が提案した。
 皆はもその意見には賛成した
 とっちめるにしても、このペンションにいる限りオーナーもは逃げられないだろう。その前にとっ捕まえてやろうと虎之助は思った。
 
「オーナーをとっちめるのは俺にやらせてもらおう」
 戒那はどこか嬉しそうに言った。さすが、女だてらに大学の助教授やってるわけではない。度胸も知性も一級品だ。心なしかうっとりと悠也は見つめた。
「俺がやるんじゃないのか?」
 憮然として虎之助は云った。
「証拠物件を発見したんだ」
 大学助教授センセイはそういって口角の端を上げた。
「うおっ、やった!」
「でも、このことはどうぞ御内密に・・・・・・・」
「なんでだよ」
「折角のパーティーが台無しになってしまっては、来た意味がないからな。どうも引っかかることがあるし」
「楽しみは後でにしましょう・・・・・・時間も無いですしね」
 悠也は云った。
「ちぇっ!おあずけかよ・・・・・まぁ、いいや、期待してるよセンセイ」
「任せておけ」
 戒那の一言でミーティングは終わった。


●パーティーナイト
 パーティーは大盛況だというべきだろう。虎之助の周りには女の子が群がっている。勿論、目当ては一夜の恋人の座だ。長い髪なのにしっかり男に間違えられている戒那は嫌がりもせずに女の子と踊っている。服装は胸元が開いたライトグレーのインナーに黒のパンツスーツだ。さっきまで気分がすぐれなかった神薙・春日も、今は元気そうだ。
 虎之助はほっと胸を撫で下ろした。
 勇太たちはずっと年少であったせいもあって、お姉さん方の声は掛からずにいた。会場のあっちこっちと皿とフォークを持って移動し、オードブルの皿を如神と一緒に二人で突付き回し、普段はお目にかかることの無いご馳走に舌鼓を打っている。まさに似たもの同士の二人だ。
 悠也はオーナーの趣旨通りに他の女性とも歓談し、ダンスもしてやっていた。サービス業が天職の魔族の青年というのも変わっているなと虎之助は思った。
 悠也はチェーンアクセサリー付の紅茶色のお洒落なブランドのスーツを着こなしていた。
 反対に虎之助はブルーのスーツに白いスタンドネックのシャツという服装だ。雰囲気も服装も正反対な二人は凡庸そのものといった客の中では、その姿は十分に映えた。
一通り女性群とのダンスを終えた時にはいいタイミングでモーツァルトの【二台のピアノのためのソナタ ニ長調、K448:第一楽章】が終わった。
「虎兄〜♪」
「春日か・・・・・・お前大丈夫か、はしゃいで・・・・・・」
「平気平気!それより何か飲まない?」
「そうだな・・・・・・」
 虎之助が春日に近づいたところで【青き美しきドナウ】が始まってしまった。チークタイムの合図らしい。
「お、チークタイムだ♪」
「げ!!」
 何ぞと云っている間にあたりはダンスを始めてしまっている。このままでは会場で浮いてしまうぞと思っていたあたりで「湖影さんとあの子、お似合いね」とか「美男と美少年のカップルってドラマよね」とか聞こえてきた。ちゃんと女性と踊るってのを切実に希望したい虎之助は溜息を吐いた。なんと神様は不公平なのだろうか。
 戒那をエスコートした悠也を羨ましげな目で虎之助は見た。
「うわォ、斎さんたちやるう!俺たちも踊ろう」
「げぇ、冗談じゃない!」
「いいじゃん、さあさあ・・・・・・・」
 春日のへったくっそなダンスにつき合わされ、散々好き勝手なことを云われ、虎之助は至極不機嫌になった。春日は気にしないようで虎之助を振り回し、一頻り踊ると会場の端の椅子に座り、グースカ寝てしまった。どうやら相当のお酒が入っていたらしい。
―― 酔っ払うなら酒なんか飲むな!!
 いくら怒りを覚えても春日は起きてはくれず、仕方なく虎之助は春日をおぶって部屋へ戻った。こいつを連れてきたのは間違いじゃなかったのかと思ってみたが、それは後の祭りというものだろう。
 虎之助にとって、全くツイていない一日が終わろうとしていた。


●使役者の結末
 翌日になって、容疑者こと、オーナーの【申し開き審議】(命名:羽柴さん)を開催をすることになった。如神が気分が悪いといったので、午後から始める事にした。

「大丈夫か、如神」
「う、うん・・・・・・気にしないで・・・・・・」
「声、枯れてるみたいだな」
「風邪だよ、きっと」
 如神がそういって笑ったが、どうも気になるらしく、勇太が休めといってきかない。しょちゅう吐く、如神の溜息が気になるらしい。そうこうしてる間にオーナーがニコニコしながら登場した。
 これから吊るし上げをくうってのに呑気だと皆は思ったが、まぁ、オーナーは安心しきってるのだろう。バレてないという思い込みがそうさせているのかとも思える。
「・・・・・・原因はわかったの?」
「ええ・・・・・・」
 戒那は微笑んだ。
「犯人は貴方です」
「そうよ」
 あっさりオーナーは認めた。
「何故ですか?」
「ごめんなさい、アタシ。成功させたかったのよ・・・・・・ちょっと嘘でも云って、綺麗な子借りて、アタシが男の子が好きってのもあるけどね、成功したら万万歳だもの。だから、声が聞こえるとか嘘云ったの」
 オーナーはそういうと肩をすくめた。
「大掛かりなお芝居だって思うでしょうけど・・・・・・」
「それだけじゃないですよね?」
「え?」
「あなた・・・・・・もしかして【アニマル・テイラー】(動物操者)じゃないですか?・・・・・・昨日、これを発見したんです」
 虫の入った瓶を悠也は見せた。アニマル・テイラーとは動物を自分の一部のように扱える術に長けた人間のことだ。しかし、人間のような複雑な思考を持つ存在は扱えず、使えてもその動物に認識できる範囲しか行動できない。【アニマルテイラー】は警視庁魔導防犯課にその旨を登録せねばならないことになっている。
「それは・・・・・・」
「しかも、霊まで使役出来ますね」
「わ、私が【アニマル・テイラー】なのは認めるわ・・・・・・でもそれしか出来ないわよ!」
「それは嘘です」
「嘘なんかついてないわよ!!」
 オーナーは叫んだ。
「そりゃ、アタシは未登録の【アニマル・テイラー】よ。そんでもって、オカマよ!・・・・・・でもね、そこまでしてアタシが自分のお金無駄にしようと思うわけないじゃないのよう!」
「・・・・・では、あの使役霊は誰が・・・・・・」
「知らないわよ」
「じゃあ、俺と如神が倒した集団霊は?」
「え、何かあったのか?」
 虎之助は勇太のほうを振り返った。
「昨日、パーティーの後で・・・・・・全然大丈夫だったんだけど・・・」
「そうか・・・・・・」
「磁場が悪いわけでもないのにそんなのが現れるっていったら、誰かがやったとしか・・・・・・」
「アタシじゃないわ。魔法学校じゃ術なんて殆ど出来ないオチコボレだったんだから・・・・・・そのことは草間ちゃんが証明してくれるわよ」
 皆は黙ってしまった。再度調査をしたものの、証拠になりそうなものは発見できるわけも無く、使役霊と集団霊に対する疑問が残ったが、調べることも出来なかった。草間に電話をしたが、やはりオーナーがいう通り、オーナーは筋金入りのオチコボレで有名だったそうだ。就職先のないオーナーは仕方なく新宿のオカマバーで働いていたらしい。
 草間は「パーティーが成功したんだったらそれでいい」といってくれたが、悠也たちは釈然としなかった。
 謎を残したまま、依頼は終わった。
 これから先は呪禁官の仕事だそうで、再調査となったがそれは塔乃院が請け負うこととなった。
 電話で草間が依頼終了と告げ、悠也たちはフリーになり、それぞれに休暇を楽しみんで東京に帰ることにした。勇太は如神に付き合い、大量の買い物(これがまた凄い量だった)を済ませ、東京行きの新幹線に乗って帰ってきた。

「虎兄・・・・・・」
 どこか頼りなげで子供みたいに春日は言った。拳を握り締めた春日は耐えているように見える。じっと見る目には哀しみの色が踊っていた。
「どうした、春日・・・」
「・・・・・・悔しいんだ」

―― あぁ、そうか腹が立ってるんだな、お前・・・・・・

 強く怒りを噛み締めた横顔を虎之助は見た。
 普段は大人しい少年に受け取られる春日は自分自身に絶対の自信を置いている。それを知るが故に、虎之助は決してひ弱に受け取ったことは無かった。
 こうしている間にも東京では次々と事件が起きる。
 解決の糸口が見つかるもの、迷宮から抜け出せずにいつか時の中に消えるもの、今回は後者になってしまうのが春日には悔しくて仕方ないのだろう。こんな形での【敗北】はあってならなかったのだから。
 【見る】ことを拒絶する程の存在を実感し、虎之助と春日は家路についた・・・・・・


   END
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0164  / 斎・悠也  /  男 / 21 / 大学生・バイトでホスト-
0867 / 神薙・春日 / 男 / 17 / 高校生/予見者
1122  / 工藤・勇太 /  男 / 17 / 超能力高校生
0689 / 湖影・虎之助/ 男 / 21 / クラス 大学生(副業にモデル)
0121 / 羽柴・戒那 /  女 / 35 /  大学助教授
(PC名五十音順)
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■         ライター通信          ■
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 はじめまして、朧月幻尉(ろうげつ・げんのじょう)と申します。この度は依頼に参加いただきまして有り難うございます。
 
 俺の勘違いなだけでちゃんと女性と踊るってのを切実に希望…(笑)【PL:根本的に勘違いしてたらすみません:爆】

 ・・・・・・とありましたが、勘違いではなかったのでありますよ(^_^)ノシ
 虎之助君は面白可笑しい人だなあと思ってからは、ずっと朧月のお気に入りでございましたvv
 本当に良いです。漫画にしたいぐらいでした。
 私信にて感想等をいただけますと、今後の参考にもなりますので、宜しかったらフォームにてメールをお願い致します。
 発注を戴き、誠に有り難う御座いました。