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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


爆走!コスプレース!

0.オープニング

ゴーストネットオフには特別連絡BBSと言うのが存在する。
極稀にだが、イベント情報や交流会情報等が明記される特殊なBBS
である。
10月31日を目前に控えた、ある日その特別BBSに一件の書き込
みが追加されていた。内容は以下の通りである。

「ハロウィン特別イベント!コスプレレース!」

日時
10月31日

場所
○○○町

参加資格
15歳〜30歳までの男女カップル!

主旨
スタートからゴールまで、各々コスプレをしてその芸術
性と表現力そして順位を競うハロウィンならではのイベントです!

レース内容
男女カップルどちらか一方が、レース本線に出場します。
残った方は、コスチュームの準備と着替え場所の確保を担当します。
四つのチェックポイントで、それぞれに合ったコスチュームを用意し
て下さい。より素早く、より美しく着飾った方が優勢に成ります。
最終的には、ゴールでの総合成績で優勝が決まります。

レース展開及びチェックポイント
全走破距離:約10Km
町営商店街(スタート)→町立体育館(第一):自転車
町立体育館(第一)→ボート場(第二):マラソン
ボート場(第二)→町立美術館(第三):水泳
町立美術館(第三)→町立図書館(第四):キックボード
町立図書館(第四)→町役場(ゴール):※自由選択
※自由選択では、マラソン・キックボード・スケボー・ローラーブレ
ードの何れかを選択します。当然ですが、着順により選択出来る物が
無くなります。一着で有れば全て選択可能で四着であれば一つしか選
択権はありません。

○○○町役場主催
当日実況:草間武彦 解説:碇麗香
第一チェックポイント中継:草間零
第二チェックポイント中継:瀬名雫
第三チェックポイント中継:三下忠雄
第四チェックポイント中継:碧摩 蓮
ゴール中継:高峰沙耶

熱いコスプレバトルを制するのは、君だ!!

この情報を見た者は何を思うのだろう?それは、画面の前の者にしか
分らないだろう・・・

1.大会の幕開け

何時もなら、ぱっとしない町な筈のこの町が一番賑わう時がある。
それは、年に一回のハロウィンの日。この日は、何故か分らないが町が総
出でお祭り騒ぎである。兎角、キリスト教などが布教されて居る訳でもな
いのだが、まあその辺は祭り好きだからと言う所だろうか?辺りには、ハ
ロウィン用の飾り付けがなされ、まるで日本である事を感じさせない。住
人の多くが仮装で盛り上がり、子供達はお菓子をねだりに彼方此方の家を
回っている。
そんな中、異常に盛り上がりを見せているのは町営商店街だった。それも
その筈、今日は有志によるコスプレレースが開催される日だからだ。一年
間待ちに待ったこの日の為に、否応無く盛り上がる会場。その会場に響き
渡る声が有った。
「あ〜あ〜テステス……よしっと。コホン……お待たせしました!ハロウ
ィン特別イベント!!コスプレレースいよいよ開幕です!!実況は私、草
間 武彦がお送りします!!草間興信所にて依頼を何時でもお待ちしてお
ります!出来れば、余り特殊で無い依頼を何時でもお待ちしてますので、
出来たら普通の……」
ガス!!
不意に何かを殴る音が聞こえた後、草間の声は消える。代わりに聞こえる
のは女性の声だ。
「え〜実況が暴走しまして申し訳ありません。私は解説を努めさせて頂き
ます碇 麗香と申します。本日のイベントが楽しくなる事を期待していま
す。」
にっこり微笑む碇の横で、草間は頭を押さえて机に突っ伏している。会場
の彼方此方から失笑の声が聞こえる。かなり痛かったのか草間は目の端に
涙を浮かべて居たりする。
「え〜御見苦しい所を御見せしてしまって申し訳有りません。兎も角、今
日を楽しみましょう!!」
草間の張り上げた声に、会場が沸きあがる。これぞイベント!これぞハロ
ウィン!何か微妙に違うかも知れないが、まあ気にしない方が無難だろう。
「えへへ♪始まったねお兄ちゃん♪」
盛り上がる会場とは裏腹に、選手の控え室は静かな物だ。だが、石和 夏
菜(いさわ かな)はうきうきと楽しそうに隣の人物に語りかける。
「ああ。余り無茶しちゃ駄目だぞ夏菜。」
優しい笑みを夏菜に返し頭を撫でているのは、夏菜の兄の水城 司(みな
しろ つかさ)だ。本来カップルの定義は恋人同士だが、別に男女ペアで
有れば問題は無い。妹のはしゃぐ姿が可愛らしくまた、もっと見て居たか
った司はこのイベントに参加する事にしたのだ。
他の選手達は、些か緊張がある物のコスチュームの確認やコースの確認等
に余念が無い様子である。
「お兄ちゃん、絶対優勝しようね!」
「勿論だ。俺が付いてるんだからな。優勝間違いなしさ。」
夏菜と司はお互いに見詰めあい、にこっと笑い合うのだった。

会場では、ルールとコースの説明は終わり、それぞれの中継ポイントの紹介
をして居る所だ。
「では、第一中継ポイント草間 零さん、お願いします!」
呼ばれると同時に、草間の背後のモニターに明りが燈り映し出されたのは草
間零の姿。だが、その姿は何時もと違い黒いナース服に包まれて居た。
「はい。第一中継ポイント町立体育館前の零です。こちらにも多くの方が見
えられています。このレースを待ちに待っていた方々ばかりです。今日は精
一杯中継をやらせて頂きます。皆さん〜宜しくお願いします。」
会場・中継ポイントから大歓声が沸き起こる。
「第二中継ポイント、瀬名 雫さん〜?」
続いて映し出されたのは、かぼちゃの着ぐるみを着た雫。妙に太った格好に
なってしまっているが、それはそれで愛らしい。
「は〜い!雫です〜♪ここボート場はやっぱりちょっと寒いのか人はそんな
に多くないんですけど、皆とっても元気ですよ〜♪参加される選手の方の雄
姿を今か今かと待ちわびています。皆〜応援頑張ろうね!」
再び盛り上がる会場と中継ポイント。歓声の渦の中、草間は声を張り上げる。
「第三中継ポイント〜!三下 忠雄さん!!」
映し出された映像に、思わず会場から笑い声が漏れる。三下の格好は、ピエ
ロ。派手派手な衣装にでっかい鼻、これが妙にマッチしている。碇はひたす
ら笑っていた。
「第三中継ポイント、三下です〜。余り笑わないで下さいね〜これでも恥か
しいんですから〜。こちら町立美術館は結構人が居てびっくりです〜皆さん
やっぱり楽しみ見たいですね〜僕も楽しみです〜以上〜三下でした〜」
おどおどするピエロに会場・中継ポイントは笑いに包まれる。
「第四中継ポイントは、碧摩 蓮さん〜!」
真っ赤なチャイナドレスに白のガウンを着た蓮が映し出された瞬間、会場か
らは感嘆の声が漏れる。
「第四中継ポイント図書館前の碧摩だよ。些か静かでは有るけど、ここに居
る人達も開始を待ちわびてるよ。どんなコスチュームが飛び出すかあたしも
楽しみだよ。今日は宜しく。」
会場・中継ポイントから拍手と歓声が沸き起こる。
「ゴール地点!高峰 沙耶さん!!」
皆の好奇の視線がモニターに集まる。映し出された高峰は、和服を着ていた。
それも、巫女さんの格好だ。
「ゴールの高峰よ……頑張ってね……」
薄く口の端に意味有り気な笑みを浮かべた高峰の台詞に会場・中継ポイント
からは、失笑と少なめな拍手が送られるのだった。
「コホン……では、選手の方々に入場して頂きましょう!選手入場〜〜!!」
草間の声が響き渡り、選手が控えていた部屋のドアが開く。そう、戦う場へ
の道が今開かれた。

2.スタート!

勢い良くスカートの裾を持って飛び出して来たのは夏菜である。
水色の洋服に水色のリボンがマッチして、その愛らしさを幾分にも発揮して
いた。そんな妹の姿を、どう見てもプロ使用のカメラでパシャパシャ撮って
現れたのは司だ。
「まずは、石和 夏菜さんと水城 司さん!二人は兄妹での参加です。今日
のテーマは、『リズニー〜夢を忘れない〜』だそうです!」
「可愛らしいですね。リボンが良いアクセントに成ってますね。」
草間の説明を受けた碇の解説が余程嬉しかったのか夏菜は照れて顔を真っ赤
にして居る。司はそんな夏菜の頭を優しく撫でていた。
続いて現れたのは、黒のメイド服に身を包んだ女性だ。気恥ずかしそうに下
を見ながらの登場である。パートナーと思われる男性も一緒になって恥かし
がっているのが何とも面白い。
「続いては、飯村 加奈さんと中里 伊織さんです!大学のコスチューム研
究会に所属して居るとの事!これは期待が持てそうです!今日のテーマは、
『萌え!』だそうです!」
「確かにメイド服は一部マニアの方に人気ですからね。掴みは良い感じでは
ないでしょうか?」
何とも分り易い説明である。
続いて出て来たのは、赤い軍服に身を包んだ男性だ。凛と前を見、ピシッと
した感じがとても凛々しい。一緒に出てきた女性も、その姿に惚れ惚れして
居るようである。
「続いては、新見 孝也さんと新見 沙奈さん!新婚ほやほやだそうです。
テーマは、『男らしさ』だそうです!」
「カッコいいですね。奥さんが惚れるのが分る気がしますね。」
笑顔で言い切る碇を草間は珍しく擬視していた。
最後に出て来たのは、ギリシャ彫刻に良くあるような衣装に身を包んだ男性
だ。余りにも薄手であった為寒いのか震えている。その様子を横目で見てい
たパートナーの女性から溜息が漏れた。
「最後は、長峰 孝治さんと高山 美穂さんです!幼馴染と言う事ですがそ
の気心知れた関係は何処まで有効なのでしょう!テーマは、『なんだか歴史
風』だそうです。」
「寒そうですね。見ているだけで寒くなってきそうです。」
碇の台詞に、会場からも同意の声が幾つか上がった。
「選手が揃いました!それでは、各自準備をして下さい!」
特設ステージの傍に、四台の自転車が置かれている。コスチュームに身を包
んだ者は、各々自分が気に入った自転車にまたがる。ちなみに自転車はママ
チャリだ。性能はどれも一緒で、色だけ違う。夏菜は、自分の服と合う水色
の自転車にまたがった。
「夏菜〜!こっち向いて!」
その声に視線をやると、強烈なフラッシュが目を焼く。どうやら司は今日の
記念に写真を取り捲るつもりらしい。場所を変え、視点を変えパシャパシャ
と撮り続ける。そんな兄の姿に幾分恥かしさも感じるが、やはり嬉しいのか
笑顔がこぼれる。
「お兄ちゃん、そろそろ開始みたいだからポイントではお願いね♪」
「ああ!任せろ!あれで良いんだな?」
「うん♪あれで!」
見詰めあい、にこりと笑う二人。ひたすらに仲の良い兄妹である。
「準備が整ったようです!それでは、町長!スタートの合図をお願いしま
す!」
草間の台詞に後押しされて、町長と呼ばれた男性が競技用ピストルを持っ
てやって来た。すっと腕を天に向け、引き金を持つ指に力を込める。
緊張が高まる中、何時しか会場も静まり返り……そして……
パーーーーーーーーーン!
ピストルの音が木霊する。沸き起こる歓声の中、レースは始まった。

3.コスプレース!

草:「各車一斉にスタートしました!絶妙なスタートダッシュが効いたの
  か、石和さんがまず躍り出ました!続いて飯村さん・長峰さん・新見
  さんの順位です!」
碇:「意外でしたね。スカートがスタートダッシュには不利かと思ってい
  たんですが、1位・2位とスカート着用である女性が来ていますね。
  これは男性の方は頑張らないと、結構響いてしまいますよ。」
草:「この辺りは若さが物を言ったのかも知れませんね!しかし、メイド
  服の女性が立ち漕ぎして居る姿ってのも確かに萌えを意識しますね〜
  碇さん」
碇:「そうですね。しかし、私的には愛らしい石和さんの方がお気に入り
  ですけどね。」
草:「おや?てっきり新見さんの軍服姿がお気に入りかと思っていたんで
  すが?」
碇:「確かにあれはあれで良いですけど、何を視点に置くかでコスチュー
  ムの見方は変わって来ますからね。」
草:「なるほど!順位は未だ変わらず、商店街を抜けてこれから公道に出
  ようとしています!あっ!ここで、最初のコスチューム評価が出た模
  様です!審査員は五名!各10点が最高得点で、一回の最高得点は5
  0点です!」
碇:「かなり厳しい採点になっているらしいですね。どのような結果か楽
  しみです。」
草:「え〜石和さんのコスチューム評価は35ポイント!飯村さんは、3
  0ポイント!新見さんは、36ポイント!長峰さんは、40ポイント!
  何と!長峰さんのギリシャ風の衣装が一番評価が高かった模様です!」
碇:「これは予想してませんでしたね。寒さの中での努力も評価されたの
  かもしれませんね。」
草:「その辺はどうか分りませんが、今後の結果も重要です!あっと!公
  道に出てからの最初のコーナーで石和さんと飯村さんが並んでいます!
  新見さんが必死に後を追う形です。長峰さんがかなり後方に居ます!」
碇:「長峰さんは、やはり寒さの所為で体が固まっているんでしょうね。
  もう少しすれば、まだましに成るのでしょうけど。」
草:「そうですね〜しかし、意外な展開になってますね。やはり若さの勝
  利と言った所でしょうか?」
碇:「まだこれから先は分りませんよ。」
零:「草間さん草間さん!」
草:「はい?第一中継ポイントの零さんどうぞ!」
零:「え〜こちら第一中継ポイントの零です。今、それぞれのパートナー
  の方々がお着きになりました。それぞれの順位をモニターで確認して
  次のコスチュームの準備をして居る模様です。」
草:「なるほど。見た感じでコスチュームの内容などは分りますか?」
零:「いえ、ちょっと確認出来ません。ただ、水城さんはなんだか奇妙な
  物を持って待っている位ですね。後の方々は、着替え場所を確保して
  居る模様です。」
草:「分りました。そろそろ、そちらに到着のようですので、その際にま
  たお願いします。」
零:「はい、分りました。」
草:「さ〜レースの方は、体育館に続くコーナーに差し掛かった所です。
  ここに来て、飯村さんがスピードダウン!石和さんがスパートを掛け
  るかの様に引き離していきます!飯村さんの後方50メートル位には
  新見さん!その後方、遥か彼方に長峰さんです!」
碇:「石和さん頑張ってますね。飯村さんは流石にあの服ではきつかった
  かも知れませんね。もう少し、ヒラヒラが抑えて有ったら良かったの
  ですけど。」
草:「しかし、本人が選んだ物ですからこればかりは仕方が無いですよね
  碇さん。」
碇:「そうですね。次のコスチュームに期待しましょう。」
草:「さ〜今、石和さんが一着で第一中継ポイントに入りました!」
零:「草間さん!第一中継ポイント零です!」
草:「はい、どうぞ!」
零:「一着で到着しました、石和さんですが、何と!次のコスチュームを
  下に着ていたらしく、あっと言う間に着替え終わってしまいました!」
草:「えっ!?もうですか!?どの様なコスチュームなのでしょう?」
零:「どうやら妖精のコスチュームのようです!今、水城さんが背中に羽
  を取り付け終わりました。ちょっと余裕があるのか、写真も撮ってい
  ます。」
碇:「早着替えとは考えましたね。これはかなり時間のロスが少ないです
  よ。若いながらもしっかりしたコンセプトですね。」
零:「そうですね!あっ、今石和さんが出走しました。と、同時に飯村さ
  んが到着です!やや遅れて、新見さんの到着です!長嶺さんの姿はま
  だ目視出来ません!」
草:「飯村さんと、新見さんのコスチュームはどんな感じなのでしょう?」
零:「え〜飯村さんの方は、体操服です!しかも、ブ○マーですね!これ
  またコンセプトを意識した、絶妙なコスチュームと言えると思います。
  新見さんは、サッカーユニフォームの様です!背番号が10番、キャ
  プテン仕様ですね!」
碇:「良いですね。それぞれコンセプトにあった絶妙なコスチュームだと
  思いますよ。種目にも適していますしね。」
零:「私もそう思います!あっ、飯村さん新見さんスタートです!と同時
  に長峰さん到着です!やはり寒いのか震え続けています!」
草:「随分掛かってしまってますね。体調の方も心配ですが、コスチュー
  ムの方はどんな感じでしょう?」
零:「随分と時間が掛かっています。恐らく体がまともに動いてくれない
  のでしょう。あっ、今出てきました!どうやら、飛脚の格好ですね!
  ちゃんと、鬘も被ってます!」
碇:「凝ったのは良いですけど、この時間的ロスは大きいですね。」
零:「そうですね。今、スタートです!一位の石和さんから遅れる事、1
  0分弱この差を何とか詰めて欲しい所です。以上、第一中継ポイント
  でした!」
草:「有難う御座います!さ〜レースの方を見てみましょう!お〜っと!
  何と、飯村さんが石和さんに追い付いております!!これは意外な展
  開だ!」
碇:「恥かしいんでしょうね。如何に、『萌え!』をテーマにして居ると
  は言え、これだけの観衆の目の前であの格好ですからね。」
草:「それは有るかも知れませんね。私がやったら恥かしくてレース所じ
  ゃないですからね。」
碇:「貴方がやったら、ただの変態ですけどね。」
草:「ぐっ!?いっいや、おっ!?何と!!長峰さんが新見さんに追い付
  いてます!流石飛脚か!長距離に長けている!!」
碇:「凄い奮闘振りですね!まさか、あの距離を一気に縮めるとは思いま
  せんでした。」
草:「波乱含みの展開になってまいりました今回のレース!現在、一位は
  石和さん!ダントツかと思われましたが、飯村さんの奮闘によりまだ
  分らない展開です!三位と四位は新見さんと長峰さんの男二人で争っ
  ています!」
碇:「まだまだ、先は分りませんね。」
草:「さ〜ここで……二回目のコスチュームの評価が出た模様です。石和
  さんは、36ポイント!飯村さんが、22ポイント!新見さんが、3
  9ポイント!長峰さんが、21ポイントとなっております!」
碇:「かなり厳しい採点ですね。飯村さん長峰さんがかなり低めの評価で
  すね。」
草:「審査員の中で、何かがあったのかも知れませんね。え〜只今の順位
  は、石和さんが何とか飯村さんを振り切り再び一位です!なっ何と、
  新見さんが長峰さんに抜かれてしまった模様です!」
雫:「草間さん草間さん〜」
草:「はい、第二中継ポイントの瀬名雫さん!」
雫:「こちらに到着した長峰さんのパートナー高山さんがかなり喜んでい
  ます〜♪やはり、飛脚効果は高かったと仰っています♪」
碇:「飛脚効果?精神効果をも利用したコスチュームと言う訳ですね。な
  かなか考えてますね。」
雫:「そうみたいですね♪先程早着替えを実行された石和さんのパートナ
  ーの水城さんですが、今回はちゃんと準備をしてますね。もう間も無
  く姿が確認出来る所まで来ていると言う事なのですが……あっ今目視
  出来ました〜♪石和さんの姿が確認出来ます♪」
草:「もうそこまで来てるんですね!早いですね彼女は!」
碇:「驚異的と言っても良いでしょうね。あの小柄な体から、どこにその
  パワーが有るのか信じられませんね。」
草:「おっと!直線で一気に引き離しにかかったか、石和さん速い!飯村
  さんが必死にその後を追うが、追い付けない!長峰さんが再びペース
  ダウンで新見さんが三位に浮上しております!」
雫:「その石和さんがチェックポイントに到着です♪水城さんが抱き抱え
  コスチュームチェンジ場所まで連れて行っています。流石に疲れてい
  るみたいです。しかし、観衆からの声に笑顔で手を振っていますね♪」
碇:「ギャラリーに対する配慮も忘れない。彼女は良いですね。」
雫:「早くもコスチュームを着替え始めた石和さんに続いて、今、飯村さ
  んが到着です♪こちらも多少疲労の色が見えますが、パートナーに支
  えられコスチュームチェンジを行っています。」
草:「さ〜レースも中盤!未だ到着しない新見さんと長峰さんですが今後
  どの様な展開になるのか!最後まで目が離せません!しかしながら、
  ここで一旦CMです!」

♪タラッタッタッタ〜♪

碇:「何でCMがあるのよ。」
草:「だって、書いてあるんだからしょうがないだろ?」

4.勝利の栄冠

正しく人魚……そう思わざるを得ない夏菜のコスチューム、司はひたすら
シャッターを押し続けた。肌色のレオタード状の衣装の上からではあるが
貝の胸当てやロングパレオで作った人魚の尻尾が完璧にはまっていた。
「お兄ちゃん、もう行くね!早く行かないと、追いつかれちゃうから!」
「ああ、そうだな。水は結構冷たいみたいだ。第三中継地点で熱いお茶用
意して待ってるな。」
「うん♪宜しくね♪」
そう言うと、着替え用のカーテンから一気に駆け出し、水辺で多少体に水
をかけた後そのまま池に入り泳ぎ出す。そんな夏菜を見送った後、司は着
替えポイントの撤収を開始した。周囲を見渡せば、熱狂した観衆と他の参
加者が到着した様が目に付いた。
「随分かかったな。夏菜はそれだけ速かったと言う事か?」
その言葉を受けてか、二位の者が後を追い泳ぎ始める。それと同時に、最
後の参加者が到着、パートナーに怒られていた。その様子を苦笑いを浮か
べて見詰める司。だが、手は止まっておらずそのままテキパキと片付けを
続けていた。
第三中継ポイントは町立美術館。昼間、夏菜と一緒に下見をした段階であ
る程度着替え場所は決まっている。荷物を入れたバックの中の、その服を
一番上に持って来て、司はふっと笑みを漏らした。
一方、夏菜は必死で泳いでいた。10月も終わりになれば当然水温も低い。
泳いでいる内に、体温が奪われだんだんと速度が落ちていく。多少のリー
ドが有るものの、油断は出来ない状況の中で泳ぐ。背後を気にして居る余
裕は無かった。兎も角、早く水から上がりたい……そんな一心で手と足を
動かし続けるのだった。
中継ポイントに移動の車内の中で、順位やコスチューム評価を聞いていた
司はほっと胸を撫で下ろす。どうやら、三位と四位の入れ替わりは多い様
だが一位と二位に関しては然程差は詰まってない様である。コスチューム
評価はかなり厳しい採点になっている様で、夏菜は24ポイントだった。
飯村がスクール水着で26ポイント、新見がウエットスーツで29ポイン
ト、長峰がふんどしで23ポイントと言う結果だった。中継ポイントに到
着後は準備が忙しい、夏菜の為にと熱いココアの準備。お湯を沸かしてい
る合間に着替え用のカーテンの準備と、その中にコスチュームを用意する。
そして、カメラも勿論忘れず準備。今日は撮影も目的の一つなのでこれは
外せない。ある程度の準備が終われば、後は待つだけ……司は夏菜の為に
バスタオルと毛布を手にボート乗り場に移動した。
岸が見えた、夏菜はラストスパートを掛け一気に岸まで辿り着いた。
「夏菜!大丈夫か!?」
兄である司がバスタオルと毛布を持ってやって来る。
「おっお兄ちゃん……寒いよ……」
顔面蒼白、唇は紫色に変色して何時も元気な夏菜とは思えない位憔悴して
いる。司はバスタオルを夏菜の頭に乗せ、毛布でその体を包むと抱えて着
替え場所まで連れて行った。取り敢えず、多少なりとも体力の回復が必要
である。服を替えさせ、暖かいココアを夏菜に飲ませる。
「あったかい……お兄ちゃん有難う♪」
未だ精彩の欠いた笑顔だが、それでもさっきよりは幾分マシな雰囲気を感
じ取り司はほっと胸を撫で下ろした。他の選手達も遅れて到着して居るよ
うだが、やはり消耗が激しいのか若干の体力回復をして居るようである。
冷え切った体にココアの温もりが、染み渡る様に広がって行く。毛布を羽
織った夏菜は、ほぅっと息を吐く。少しでも体温を戻す様にと、司が足や
腕をマッサージしてくれている為、夏菜はとても心地よかった。
「大丈夫か?後、二つだけど頑張れるか?」
「うん、大丈夫!一番辛いのは、水泳だと思ってたから、後は何とかなる
よ!大分暖まったし、そろそろ行くね!」
「分った。その前に、一枚だけ……」
パシャ!
小気味のいい音と、まばゆいフラッシュがカーテンの中から発光する。夏
菜は、カーテンから飛び出し一直線にキックボードへと向かった。薄い水
色の豪奢なドレス、はっきり言って可愛すぎる。観衆からも盛大な拍手が
送られ、ピエロの格好の三下もその愛らしさに思わず見惚れていたほどで
ある。
「じゃ〜お兄ちゃん、行って来るね〜♪」
「ああ!気を付けてな!」
元気良く地面を蹴りつければ、キックボードは動き出す。ヒラヒラとドレ
スの裾をはためかせ、夏菜は走り去って行った。
この第三中継ポイントで、レース展開的には振り出しに戻ったと言っても
過言ではない。だが、総合的な得点で優勝が決まるこのレースに於いて夏
菜は群を抜いてトップ確実である。カーテンの外から聞こえた声に、慌て
て他三組が動き出す。
「ふっ……ちょっと遅かったかもな。」
そんな三組を尻目に、司は夏菜の飲みかけのココアに口を付けた。

慌てて出た後続の三組であったが熾烈なまでのスピードで、飯村と長峰が
夏菜に肉薄したのを聞いたのは、移動中の車内での事だ。
各コスチュームの評価が、夏菜が40ポイント、飯村がセーラー服に眼鏡
装備で25ポイント、新見がレースジョッキーで18ポイント、長峰がネ
イティブアメリカンで35ポイントとの実況が有った直後の事である。
驚異的なスピードで長峰が肉薄し、夏菜が必死に逃げる展開になっている
との事だった。ちなみに新見はその容姿とは裏腹に、大きく水を開けられ
た様である。少々予想外の展開に、司は思わず舌打ちして長峰の相棒高山
に視線を向ける。今まで大きな差を付けられていただけに、高山の喜びも
かなり大きいのか目に涙が浮かんでいた。変わりに、新見のパートナーで
ある沙奈が悲しそうに俯いていた。参加する事に意義があると言って居た
中里はその言の如く、平静そのものだ。
第四中継ポイント、ここが最後のポイント……車から降りた各人は急ぎ場
所の確保に走る。機先を制して、司は場所的に一番ベストと思われる箇所
を確保。すかさずカーテンや服を揃え何時でも行ける様に準備する。草間
の実況で、後数分後にはやって来るであろう夏菜の姿を確認する為に図書
館前にて待つ。そして、その姿が見えた時夏菜と併走する長峰の姿を確認
した。今までは体力の温存だったのか、はたまた底力か!ここまで来ると
は正直思って居なかった。中継の碧摩もこの状況にかなり興奮しているよ
うで普段では見れない位、顔を高潮させている。後数メーター!夏菜と長
峰が中継ポイントに入ってきた瞬間!碧摩により判定が下された!
「一位通過!石和夏菜さん!」
観衆から大歓声が沸き起こる!息を乱しながらも夏菜の顔には笑みが零れ
司に抱きつく。
「お兄ちゃん〜危なかったよ〜負けたかと思ったよ〜」
「ああ。危なかったな。だが、夏菜の勝ちだ!さ〜最後だ!行くぞ!」
「うん!もうちょっとだね!」
嬉々とする二人に、やはり悔しかったのか長峰と高山は俯く。だが、その
瞳は死んではいない。遅れて到着した飯村もまた最後に向けて意欲を燃や
していた。ちなみに、新見は三組が出発した後に到着したらしい。
「どう?これ似合ってる?」
「ああ、似合ってるさ。と言う訳で、一枚。」
青い大きなリボンと青を基調としたエプロンドレス。これが似合わない訳
がない。司は一枚とか言いながらも、立て続けに三枚は撮った。
「さっ!最後!行って来るね!」
ローラーブレードを装着し終えて、夏菜は徐に立ち上がる。静かに優しい
笑みを見せ司は頷くとカーテンを開けた。勢い良く滑り出す夏菜、盛り上
がる観衆。後はゴールまで突っ切るだけだ!同時に、長峰が出てくる。規
定により、長峰がキックボード、飯村がスケボーだ。残す力の全てをかけ
て、それぞれのスタートを切る。
「夏菜……ゴールで待ってるよ。」
そして、司ははやる気持ちを抑えながら片付けを始めたのだった。

ゴール地点役場前は、人だかりで溢れ返っている。壇上付近にパートナー
が集まり、今か今かと待ちわびる中、実況草間の声が響き渡る。
「来ました!一位で町役場内に入って来たのは石和さんです!何と、彼女
は全中継ポイントを一位で通過、そして輝かしいゴールもまた一位で到着
となります!」
ゴールテープまで後50メートル。歓声が沸き起こる中、エプロンドレス
姿の夏菜は回りに手を振りながら徐々に近づく。そして……その胸でゴー
ルのテープを切ったのだった。
「夏菜!」
「お兄ちゃん!」
喜びに抱き合う二人!その小さな体で、へとへとになりながら頑張った夏
菜を思いっ切り抱き締め、司は頭を撫でてやる。余程嬉しいのか、夏菜の
瞳からは涙が溢れていた。
「おめでとう……感想を聞かせて欲しいのだけど……?」
高峰の言葉に、二人は反応する事無く二人の世界に突入していた。そんな
中、残りの三組もゴールテープを切った。
そして、表彰式……最後のコスチュームの評価がここで発表された。
夏菜は34ポイント、飯村はミニスカ魔女で31ポイント、新見はガード
マンで30ポイント、長峰はアイヌ装束で32ポイントだった。
碇が壇上に立ち総合成績を発表する。
「皆さん大変お疲れ様でした。様々なコンセプトの元に、様々なコスチュ
ームを見させて頂いて、本当に楽しかったです。では、全総合評価を発表
いたします。」
静まり返った会場に、碇の声だけが響き渡る。
「第四位!長峰・高山ペア!序盤のレース展開が厳しかったですね。第三
位!飯村・中里ペア!レース運びは良かったのですが、コスチュームの評
価が余り芳しくなかったですね。第二位!新見夫妻!スタンダードであり
ながら着こなしが良かったですね。そして、第一位は!石和・水城ペア!
可愛らしくそして夢を見させてくれる様なコスチュームに加え、その若さ
溢れるレース展開には言葉も有りません!」
一際大きな歓声が会場を包み込む。夏菜は照れた様に司を見上げ、司は優
しい笑みでその視線に応えた。
町長からトロフィーと記念品を受け取り、夏菜は高々と掲げる。大きな拍
手と歓声の中、司のカメラが絶えずフラッシュを浴びせていたのは言うま
でもない。

5.祭り終わって

賑やかな祭りは何時までも続いていた。今日はハロウィンだ、夜遅くまで
その賑わいが消える事はないだろう。
「ねぇお兄ちゃん。私が優勝したのまぐれかな?」
手を繋いで歩いていた夏菜が不意にそんな事を聞いてくる。一瞬何を言わ
れたのか目をぱちぱちさせていた司だが、ふっと唇に笑みを作りすっと何
かの紙を夏菜の前に差し出した。
「お兄ちゃん?これは?」
「見てみれば分るよ。」
その紙には、総合成績のポイントが書いてあった。

石和・水城ペア 219ポイント
飯村・中里ペア 167ポイント
新見夫妻ペア  176ポイント
長峰・高山ペア 160ポイント

それを見ても、まだピンと来ないのか司を見上げる夏菜。その視線を受け
て司は説明する。
「200ポイント取れるって言うのは凄い事なんだってさ。コスチューム
にかなり五月蝿い人達が審査をやったみたいで、200ポイントなんて絶
対出ないだろうって言われてたんだって。」
その言葉を聞いて、しげしげと手元の紙を見詰める夏菜。しばらく眺めて
いたが「うん!」と頷くと笑顔で司の手を引っ張り駆け出す。
「やったね♪お兄ちゃん♪」
「ああ、お疲れ様。」
二人は人込みの中に消えていった……後日、司が撮った写真には可愛らし
くコスチュームを着こなす夏菜の他に、今回参加した参加者と、このレー
スの関係者と一緒に撮った写真も入っていた。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0922 / 水城 司 / 男 / 23 / トラブル・コンサルタント

0921 / 石和 夏菜 / 女 / 17 / 高校生

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■         ライター通信          ■
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初めまして、凪 蒼真と申します。

まず最初にお詫び申し上げます。
この度のご依頼、締め切りぎりぎりになってしまいました。
深く反省しております。今後、書かせて頂く事がありましたら、二度と
無いように努力致しますのでどうか、宜しくお願いします。

コスプレレース如何だったでしょう?全ての判定はダイスロールによって
なされています。総合成績やコスプレ評価数値も全てダイスロールです。
しかしながら、夏菜さんの時は結構良い数値が出てびっくりです。(笑)
また、実況の描写と通常の描写とが入り混じって居りますが、それぞれの
描写によってそれぞれの裏描写を意識して書いたつもりです。
三下や碧摩辺りの中継は想像しながら読むと楽しいと思ったりしてます♪

それでは、またご依頼頂ける機会が有りましたら宜しくお願いします(礼)