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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


最終列車のその後に
□オープニング
 草間の前に座っているのは3人の女性だ。より正確には少女が二人と、その母親世代の婦人が一人である。
 4人の間には一枚の写真と湯のみ。少女達と同年代の明るそうな少女だ。婦人の娘だと言う。木更津美由紀(きさらず・みゆき)という都内に通う高校生だ。まあ、それから関連付ければ、婦人の苗字は少なくとも木更津と言う事は判明しているのだが。
 そろそろ季節柄と言う事で出された玄米茶はそろそろ猫舌の人間でもぬるいといいそうな温度になりつつある。
 その時間だけ婦人は黙りつづけている。
 両脇の少女たちは時折、視線を交わしあい婦人を不安そうに見上げている。彼女達は何か言いたげだが、婦人を通り越して言うつもりもないらしい。
「……娘が行方不明になりました。最初はただの家出かと思ったのですが。娘の友人達が……」
 ようやくそこまで口にすると婦人はまた押し黙る。
「友人達というのが君達だね」
 少女たちは頷くとおずおずと口を開いた。
「あの、ここって普通じゃない事で行方不明になった人って助けてくれるんですよね?」
 怪奇探偵という自分の肩書きに思い至って草間は苦笑した。
「全力で助けますよ」
「あの、N駅の事をご存知ですか?」
 彼女達がぽつりぽつりと話した事は大まかに要約すればN駅で最終列車も通り過ぎた時刻に2両編成の電車がやってくる。そしてその列車に乗っていった先には「なくしたものを見つけられる場所」があると言う。
 美由紀はそれに乗って行ってしまったのだと言う。
 何故そんな列車に乗ったのか、そう思った草間だったが婦人の言葉が謎を解く。
「死んだ夫と三人で家族旅行に行った時に買ったグラスを割ってしまって美由紀は落ち込んでいました。グラスが帰ってきてもあの子がいないなら……同じです」
 それは確かにそうだろうと草間も思う。思い出を偲ぶ品も一緒に思い出してくれる相手がいなければ寂しいものだ。
「私達も見たんです。その、美由紀の事が気になってN駅にもう一度行った時に……走ってる列車から美由紀が私達の方を見て言ってたんです」
「『助けて』って……。『列車から降りられない』って……」
「では、その列車に乗り込んで助け出すしかないわけですね」
 頷いた三人を前に草間は心当たりを数え上げていた。
 しかし、止まらない列車からどうやって降りれば良いのか、その手段が草間にはまだ見当がつかなかった――。

■下準備〜過去に向かって走るもの〜
 九尾桐伯(きゅうび・とうはく)が草間の連絡を受けたのはケイオス・シーカーでの事だ。
 何も営業時間にと思わなくもなかったが、実際まだ客が入るには早い時間だった事もあり、依頼内容をじっくりと聞く事が出来た。
 写真などの資料をメールで転送してもらい、改めて事件の概要を見直したのは次の日の朝食を食べた後である。草間興信所での顔合わせにはまだ時間があった。
 コーヒーを片手に九尾は画面に映し出された思い出の青いグラス――薩摩切子と呼ばれる独特の製法で作られるそれを九尾も持っていた――を眺めていた。
 壊れた物は二度と元に戻る事はない。それが存在するのは過去の中だけだ。
(彼女の気持ちも判らなくはないのですが……)
 誰しも思いのこもった品に対する愛着はある。それが死んだ人に対するものなら尚更だろう。
 もし、九尾にそういう品があればやはり取り戻したいと考えたかもしれない。
 ふと昔読んだ話を思い出した。人生を列車に例えた話は今回の事件を少し連想させた。
 人生を列車に例えるのなら、未来へ向かう一方通行にしかならない。
 もしも壊れたグラス――即ち、過去しか存在しないもの――を手に入れる事が出来るとするなら、それは過去に向かっているのではないだろうか。
 美由紀が列車から降りられないのは過去に囚われているからではないだろうか。
(だとしたら、彼女の気持ちを変えなければいけませんね)
 思い出の品に思い出そのものが宿るわけではない。その品は思い出を思い出す手掛かりになるものであって、思い出そのものではないのだ。
 かかってきた電話を3コール目で取るとそれは草間からだった。
 グラスを預かる為に同じく事件の解決を引き受けた龍堂玲於奈(りゅうどう・れおな)が木更津家を訪れるらしい。
 彼の自宅の近くである木更津家に龍堂の道案内をかねて同行する事を草間に告げて九尾は電話を切った。
 木更津家で何かきっかけが掴めればいいのだが、そう考えながら九尾はパソコンの電源を切った。用意をして龍堂との待ち合わせ場所に行かなければならない。

■木更津家にて
 龍堂は九尾と駅で待ち合わせると、彼の案内で入り組んだ道を進んでいた。
 龍堂は職業柄一度通った道を忘れない自信や、地図一つで目的地に付く自信はあったものの、これは厄介な道だと思う。
 住宅街といっても整備されて綺麗に直角に交わる道ばかりとは限らない、ややこしく入り組んだ道は、目的地が見え始めてから到着するまでにさらに10分近くを必要とした。
「歩きで来た分、ましな方なんですよ」
 とは九尾の弁だ。成程、歩く道に仕切りとある交通標識――進入禁止や一方通行、歩行者専用など――、を見れば下手に車で来た場合にどうにもならなくなるのは目に見えている。知らずに走っていると、一方通行を逆走して警官に捕まるかもしれない。
「そうだろうな。車で走るには不便すぎる」
 木更津家は分譲マンションの一室だ。部屋の窓からは公園が見えている。外からの明るい明かりを背に受けて座っている木更津美由紀の母親はそれでもどこか陰鬱に見えた。
「これが、そのグラスです」
 母親が箱の蓋を開ける。三個入るくぼみの内二つのくぼみにグラスが入っている。濃い青の表面と掘り込まれた透明な部分とのコントラストが美しいそれは、使い込んであるのかどこか古びていた。
「これ、お預かりしても良いですか?」
 龍堂の言葉に母親は頷く。九尾は空いたくぼみを見つめたまま口を開いた。
「あのつかぬ事を伺いますが、割れたグラスの破片をここにいれていたんですか?」
 九尾の目が捉えていたのは、僅かに日の光を反射する小さな欠片だった。頷いた母親は美由紀がそれを持っていったのだろうと答えた。そのどこか疲れたような口調に龍堂は口を開いた。
「ちゃんと美由紀ちゃんは帰ってきますって。だからもっとしっかりして。美由紀ちゃんが帰って来た時、お母さんが倒れる寸前だったらどうするんです?」
 叱咤する口調で言われて母親は驚いたように顔を上げた。
「美由紀ちゃんがふらふらになってたら、誰が看病するんです? 落ち込んでる場合じゃないですよ」
 龍堂の言葉に母親は何度も頷く。不安げな彼女を励ますように龍堂は笑みを浮かべた。

□草間興信所にて
 草間興信所に今回の事件に当たる全員が集まったのは午後二時を回った頃だった。
 一番早い時間に来たのは忌引弔爾(きびき・ちょうじ)だったが、昨日の無理な動きのせいか多少の筋肉痛が残っているようで、不機嫌そうに体のあちこちを動かしていた。
「まったく、これだから貴様は鍛え方がなっとらんと言うのだ!」
 忌引自身の口から飛び出すのは彼への説教である。説教の主は妖刀の弔丸(ちょうまる)、彼は逆にあの僅かな動きで忌引が筋肉痛なのが気に食わないらしい。
「うるせぇよ」
 不満げな声も忌引自身の口から漏れるのだから、不思議ではある。
 鉄枷をした髪の長い女性はその様子を半ば笑いながら眺めている。
 龍堂玲於奈という名の彼女は鍛えるという点では弔丸と意見が合うがその反動が辛いという点では忌引に同情する点が大いにあるらしい。
「まあ、必要な時は惜しみなく使うもんだが、後が辛いってのも本当だからねえ」
 一応そう口出しはしたものの、それ以上は二人の言い合いを観戦する方に回ったらしく、零の入れてくれたコーヒーとお茶請けのクッキーに舌鼓をうっている。
 龍堂と同時刻についたものの、忌引と弔丸の言い争いには関わらず、改めて資料に目を通しているのは九尾桐伯だ。
 彼はメールに添付された資料に目を通してはいたものの、草間から詳しく話を聞く機会を逸していた為に、草間の書いたメモを片手に不明な点を聞いていた。
 聞き終わり改めてじっくりと書類に目を通している彼の雰囲気は独特で、どこか退廃的でもある。緩いウェーブの長髪を簡単にまとめた髪型と服装や浮かべる表情のせいだろうか。
「シュラインさん遅いですね」
 零が時計を見てそう言うのとほぼ同時に草間興信所のドアが開き、一人の女性が入ってくる。シュライン・エマは集まっている三人に目を留めると目の前に手を置いて見せた。
「ごめんなさい。少し遅くなっちゃったかしら?」
 細身の背の高い女性だ。長い髪を綺麗にまとめた髪形にもその姿勢にも隙がない。浮かべる表情が友好的なものでなければ、なまじ美人なだけに近寄りがたいものを感じてしまうかもしれない。
 肩から下げた大きな荷物を彼女専用の机に置くとお茶をいれようと席を立った零に笑顔を送って、自分でコーヒーを用意すると必要な書類を手にとって3人の前に座った。
 三人の前に広げられたのは写真と、それからどこかのサイトの記事の印刷物だった。
「昨日忌引さんに付き合ってもらってN駅に行って来たの」
「あれだな、駅内にでも隠れてなきゃ、あのタイミングは下手すると間に合わねぇぞ」
「そうね。あ、これがその列車を撮った写真よ」
 車両の全形が写っている写真をエマは龍堂と九尾に渡す。忌引は他の写真を手にとって何かを探しているようだ。
「この車両、昭和の一時期に実際にこの沿線で走っていたものなんですって」
 エマは軽く肩を竦めてプリントアウトした紙を見せた。『幻の車両シリーズ』と題されたその記事に配置された車両の一台は、確かに問題の列車と同じ型の車両だった。
「実際に走っていた列車がまた走っているという事なんですね」
 九尾の言葉に龍堂は軽く肩を竦めた。まいったねといった風情だ。
 忌引は探していた何かを見つけたようで一枚の写真を全員の前に引っ張り出した。
「俺の見間違いじゃなかったようだ。こいつを見てくれ」
 それは乗客が写りこんだ一枚だった。何が写っているのかと早速写真を手に取った龍堂は、忌引きが言わんとしている事を悟るまでしばしの時間を必要とした。
「これ……、客と列車が混じってないか?」
 言われてエマが慌てて写真を覗き込む。
 中年の男性が大切そうに壷を抱いている。その背中はどこからが椅子なのかわからない。グレーのコートと椅子のクッションの紺色が交じり合っていた。
「俺が見たのは手すりと手が混じってる男だった」
「そやつが持っておったのはプラモデルの飛行機であったぞ」
「だからあの時足を止めたのね」
 エマが納得の表情で頷く。九尾は考えながら口を開いた。
「乗客が作り物なのか、車両が乗客を取り込んだのか、どちらかかもしれませんね」
「だが、木更津美由紀は降りてこなかった。N駅に列車は停止したのに」
「『列車から降りられない』と美由紀さんの友人も言っていましたね」
「なくした物を取り返せても、降りられずに列車に乗客として取り込まれているのかもしれないわね」
「N駅に停まるんならその間に列車に乗り込んで美由紀ちゃんを連れ出すしかないね。……時間はあたしが稼ぐよ。列車に人が乗れるんなら、列車に触れるって事だしね」
 レールを外す暇はなくても、止まっているのを押し止めるのなら、美由紀を連れ出す位の時間なら何とか持つ筈だと龍堂は請け負った。
「あ、これ、渡しとくよ。美由紀ちゃんのお母さんから預かってきたんだ」
 箱に入った二個のグラスを龍堂は引っ張り出した。龍堂自身は列車を止めて置くので説得に参加する事は出来ない。なので、彼女が持っていても仕方がないのだ。
 九尾がそう言えばと箱を開けて空いたくぼみに落ちた欠片をエマと忌引に示した。
「どうやら割れたグラスの欠片は美由紀さんが持って行ったみたいですよ」
「そう、……じゃあ、列車の力でグラスは元に戻ったのかしら?」
「それなら、この割れた欠片もなくなるような気もするね」
「別に実際に直す必要はないんじゃねぇの? 実際会ってみなきゃわかんねぇけどよ」
 忌引の言葉に、それもそうだと頷いた三人だった。

□深夜のN駅
 N駅の終電の時刻は午後11時54分だ。終電の前の便に乗り込んだ四人はホームの影に身を潜めた。
 見回る駅員や通りがかる乗客達、列車等は九尾がその聴覚で予め察知して先に別の場所に隠れるという手段で避けた。
 エマと龍堂はなんだか、学校をエスケープするみたいだとこっそりと視線で笑いあい、忌引は半ば面倒臭げだったが、それを注意しようとする弔丸の言葉は他の三人によって止められた。見付かるわけにはいかない。
「駅員が駅舎を出たようですよ」
 九尾の言葉通り程なく車が発進していった。龍堂は列車を止める為の位置を確保する為一人ホームの影に立ち、残った三人はホームに立った。
 N駅にはホームは一つしかない為、列車が違うホームに止まる心配だけはない。
「来たわ!」
 エマが声をあげる。忌引は弔丸を持ち直し、九尾はそれが唐突に現れた事に驚いていた。
 龍堂は彼女の力を抑える為の鉄枷を外し、ポケットに突っ込んで軽く身体をほぐした。
 列車はN駅に近付くにつれ速度を落としていった。四人の待つホームに止まる。
 開いたドアの向うには美由紀と十数人の乗客達。
 最初に動いたのは忌引だ、弔丸を片手に車内に飛び込む、それに遅れてエマが飛び込む。九尾も飛び込もうとして足を止めた。龍堂の声が聞こえたからだ。
 龍堂は運転席が見える位置に飛び出していた。列車をおさえようとして、運転手と目が合い小さく驚きの声を漏らしていた。
「人間じゃない……」
 制服と制帽を律儀に被った運転手は顔がなかった。なのに目が合ったと感じたのはそこに虚ろな輝きがあったからだ。嗤ったと龍堂は感じた。同時に闘争心が彼女の心に湧きあがる。列車の前に手をつき宣言する。
「やってやろうじゃないか。あたしにけんか売ったのを後悔したって知らないよ!」
 九尾は懐から鋼糸を取り出した。軽く手を振ってホームの柱と列車の手すりの間を結ぶと中に入り込んだ。
「おぬしら! ここでこのまま朽ち果てたいのか!」
 忌引は――いや、弔丸は苛立たしげに乗客に叫んでいた。弔丸が一閃し、砕いた壷は一瞬の後修復される。
「ここにいれば、これがある……売り払わないで済む」
「ばかか、てめえら。思い出に縋って何になんだよ。今だって価値がねえかも知れねぇけど、なくなっちまったもんに縋りついててどうしたいんだよ。……お前もだよ、木更津美由紀! お前が欲しいのはグラスだけか?」
「だって! このグラスは大事なものなの! パパの形見のグラスが、これがないと駄目だよ。パパのグラスだけないなんて嫌……」
 睨みつけられて怯みながらも美由紀は叫んだ。その手には新品同然のグラスがある。九尾は美由紀に歩み寄った。
「物はいつか壊れます、人もいつかは死にます。でも想いと言うものは残された人々の心の中にこそ在るのだと想いますよ」
 九尾の言葉に頷いてエマが龍堂から預かったグラスを美由紀に差し出した。食い入るようにそのグラスを見つめる美由紀に九尾は言葉を続ける。
「品物など思い出す助け程度にしかならないのですから。過去にだけ囚われて生きるには早過ぎるでしょう?」
「だって……ママが悲しそうにしてた。私も悲しかった。グラスがなくても思い出せるけど、でも……」
「美由紀さん、それは本当に欲しかったグラス?」
 エマは美由紀に問い掛けた。美由紀の手に在るのは新品同然のグラスだ。傷一つないグラスとどこか古ぼけたグラス。
 いつのまにか、列車に入り込んできた彼らに乗客の視線は集中していた。
「そういや、俺、背中の部分の接着間違っちゃって不恰好にしちまったんだよな……」
 乗客達は口々に彼らの思い出の道具と手にしたものの違いを口にした。その度に品物は消え、乗客達は列車と交じり合っていた部分を取り戻していく。
「パパ、ママの誕生日だからって張り切って慣れない食器洗いして、口の所ちょっとだけ欠けさせちゃったんですよね……」
 美由紀の手からグラスが消える。
「帰りましょう」
 エマの言葉に美由紀や乗客達が頷く。その時警笛が鳴った。ドアが閉まる。
 九尾が鋼糸を張っていなければ全てのドアが閉まっていた事だろう。
 舌打ちして忌引が力づくでさらにドアを開く。
「おい! 急げ!」
 強引に走り出そうとした列車を押しとめた者がいる。
 龍堂は持ち前の力を余さず使い切る勢いで列車を押し止めていた。彼女が足場にしていた枕木が今にも割れそうに軋んだ。
「まだ、中に連中がいるんだ! 連れて行かせるもんかよ!」
 龍堂は押し返しながら声をあげた。
 乗客達が慌てて出て行く中、エマは列車に向かって声をかけた。彼女は肩に下げたバッグから人形を取り出した。
「あんたも捜していたんじゃないの? 失ってしまったものを。乗客を。……代わりにならないかもしれないけど」
 座席に人形を置いていく、袋に詰めた人形は様々な姿をしていた。それを列車は取り込んで乗客として再現していく。
 全て置き終わる頃には列車には囚われた乗客の姿はなくなっていた。忌引がじれったそうに叫ぶ。
「おい、急いで出るぞ!」
「然り、龍堂殿にこれ以上負担を掛ける訳には参らんぞ、エマ殿」
 頷いてエマは列車から飛び出した。九尾が鋼糸を外しながら前方に向かって叫んだ。
「龍堂さん! もう大丈夫です!」
 龍堂はその声を聞いて列車から飛ぶように離れた。龍堂の脇をかすめるように列車が走り去る。その窓に乗客の姿を見たと龍堂は思った。
 ホームから心配そうにこちらを見ている三人に龍堂は手を振って大丈夫だと知らせた。もっとも、声を出すのも億劫な程消耗していた。

■エピローグ
 九尾は昼前に起き出して遅い朝食――むしろブランチをとっていた。昨日が遅かったと言うわけではなく、いつも通りの時間である。
 コーヒーを飲みながら、窓を開いて空を眺める。高く澄んだ空には雲ひとつない。
(あの人たち、家に帰ってうまくやれてますかね……)
 列車からホームに降り立った美由紀以外の人達に九尾は思いを馳せていた。
(まあ、過去に囚われる事をやめたんですから、きっと大丈夫ですよね)
 あの列車は未だに過去に向かって走っているのだろうか、失った乗客を人形と言う形で得て、あの車両はどこへ行ったのだろう。
(できる事なら、もうN駅に止まって誰かを過去に連れ去らないように)
 また同じように過去を懐かしむ人間を捕まえて、自分の無くした乗客にしたりしていない事を願い、九尾は窓を閉めた。

fin.

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
 0332/九尾・桐伯(きゅうび・とうはく)/男性/27/バーテンダー
 0081/シュライン・エマ/女性/26/翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト
 0669/龍堂・玲於奈(りゅうどう・れおな)/女性/26/探偵
 0845/忌引・弔爾(きびき・弔爾)/男性/25/無職

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■         ライター通信          ■
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 依頼に応えていただいて、ありがとうございました。
 小夜曲と申します。
 今回のお話はいかがでしたでしょうか?
 もしご不満な点などございましたら、どんどんご指導くださいませ。
 まず、一つ謝罪を。
 依頼文中で木更津の母が言っていた「グラスが帰ってきてもあの子がいないなら……同じです」と言う言葉ですが
 私の方ではあくまでも例え話だったのですが、実際にグラスが帰ってきてると誤解を招く表現でした。
 混乱させて大変申し訳ありませんでした。
 九尾さま、三度目のご参加ありがとうございます。
 実は毎回私のプロットにさくっとくるプレイングでドキドキさせていただいています。
 それだけに、実際書く段ではプレイングに負けないようにと思っているのですが、うまく反映できているのかどうか。
 美由紀への説得の言葉はすごく素敵だなと思いました。ほぼそのままの形で使わせていただきました。
 思い出は人の心に残り、思い出の品はそれを手助けするものだと私も思います。
 各キャラで個別のパートもございます(■が個別パートです)。
 興味がございましたら目を通していただけると光栄です。
 では、今後の九尾さまの活躍を期待しております。
 いずれまたどこかの依頼で再会できると幸いでございます。