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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


天使の願い事

◆オープニング
 ある日の事であった。
 その日、白王社・月刊アトラス編集部は、何気ない午後を迎えていた。
 いつものように、いつものごとく。
 特にハプニングはなく、特に良い事もなく。
 毎日と変わらない、そんな日々。
 編集長である碇麗香からすれば、それは望むところであろう。
 いつものように取材が行われ、いつものように記事が作り出され、いつものように日々を過ぎる。
 だが確かに、ふとした瞬間にため息が出る事はあった。
 何かいい事ないのかしら・・・・。
 そんな不毛な考えに取り付かれる事はある。
 何の変哲もない毎日に退屈を覚えて、何か変わった出来事に心惹かれる瞬間は確かにある。
 こう・・・日頃思っている願い事が一気に叶ったらいいのに・・・・。
 あーでもないこーでないとか、あれが欲しいこれが欲しいとか。
 全てがぱーっと一気に叶ったら面白いのになぁ〜。
 そんな止め処もない考えにとりつかれてため息を付いた碇は、それを見た瞬間、思わず動きを止めた。
 なに・・・?あれは。
「ねぇ、一体何事?朝までは普通だった気がしたんだけど・・・・何?あれ」
 見た瞬間の不気味さに、思わず近くを通りかかった編集員に声を掛けた。
「えーっと・・・・お昼前までは普通だった気がしたんですけどねぇ・・・さぁ?」
 編集員もまた、理由が思いつかないのか、首を捻った。
 そこにいたのは三下忠雄、もちろん、アトラスの編集員である。
 だが、そのサンシタ呼ばわりされる彼の評判は押して知るべし。
 泣き虫、怖がり、情けなし。
 三拍子揃えば、彼がサンシタと呼ばれるのも頷けようもの・・・・。
「一体、なんなの・・・?」
 そんな彼が何をしているかといえば・・・・。
「えへ」
 笑っている。
 それも口元はだらしなく伸びている。
「えへへへ。ぐへへへ」
 何か楽しい事があったらしい。
 隠している気らしいが、そのだらしない笑みははっきり言って目立ちまくりであった。
 そんな様子の三下に碇は眉を潜めた。
「気持ち悪いわ・・・・」
 一体、彼に何が起きたのだろうか?
 その時、三下の椅子の下から、何事か紙切れがすべり落ちた。
「何かしら・・・?」
 それは広告のビラであった。

『貴方の願い叶えます!
 どんな願いでもOK!たった一つだけ、貴方の願いを叶えます
 無料見学有り お気軽にお越しください
 ぜひ一度、お試しあれ!』

「何これ・・・・めちゃくちゃ怪しいじゃない・・・」
 いまどき、こんなものに引っかかる人がいるのだろうか?
 そう思った碇だが、すぐに思い当たってガクッと肩を落とした。
 そう、三下忠雄。
 彼こそが・・・彼ならば。
 見よ、その証拠に、彼はだらしなく口元を歪め笑っているではないか。
 一体何を想像して、何を期待しているのだろう・・・?
 そんな三下に、碇は「はぁー」っとため息を付いた。
「情けない・・・・」
 もうその一言に尽きる。
 だが、その時碇は閃いた。
「そう・・・そうよ。面白そうじゃない」
 振り返った碇の目がキラーンっと光った。
「誰か・・・・試しにこれ、行ってみない?」
 そう言って広告のビラをヒラヒラさせる。
「勿論、お金は三下くん持ちよ。体験談、記事にしてくれないかしら?」
 そう言って、碇はにやっと笑ったのだった。


◆広告の正体
「終ったっスー」
 そう言って勢いよく入って来たのは、アトラスにバイトとして通っている湖影・龍之助(こかげ・りゅうのすけ)であった。
 いかにも体育会系ののりで(実際にそうなのだが)爽やかな笑顔を振り撒くその様子は、無邪気で人懐っこいく、誰の目にも好感的に映る。
 予想どおり学校では体育会系の部活に入っている彼だが、運動神経は抜群にいい。
 大会などで活躍する事もしばしば。
 となれば、そんな彼に憧れる女生徒もいることだろう。
 だがそんな彼が今まで思いを寄せたのは、なぜか男性ばかりで・・・・むろん、誰でもいいと言うわけではない。
 その証拠に、本来なら仕事の終了を報告しなければならない編集長・麗香よりも早く目に入ったのは・・・。
「あ、三下さん、何がいい事があったんっスか?」
 その笑顔が愛らしいvv
 途端、爽やかな笑顔を振り撒いていた彼の笑顔が、にへらと歪む。
 こうやって愛しの三下さんに毎日会えるなんて・・・なんてステキなバイトライフなんだ・・・!!
 龍之助は胸に手をあてて、そんな幸せを噛み締めるのだった。
「あら、ご苦労様」
 そんな龍之介を、碇が労った。
 言いながら振り返った碇の手元に、偶然龍之介の視線が落ちる。
「ん?編集長。その広告なんスか?」
 そう言って、龍之介が碇の手元を覗き込んだ。
 えーっと、どんな願いでも叶えます・・・・?
「あぁ、これ?取材しようと思って、人を探しているの所なのよ」
 何気ない、麗香の一言。
 瞬間、龍之助の頭に電流が走った。
「こ、これ!どんな願い事でも叶えてくれるんッスか!???お、俺行って来るッスよ!もちろん、お金は自腹で払うッス!」
 今にも広告・・・もとい、それを持つ麗香の手まで噛み付きかねない勢いで龍之助が叫んだ。
「あ、あら。そう?じゃ頼むわね」
 麗香が勢いに押されてそう言った言葉も、すでに龍之助の耳には届いていない。
 すでに龍之助の頭の中は妄想で一杯であった。
 ぬん!と鼻息も荒く、妄想一杯幸せ一杯の龍之助は、にやけた顔で笑う。
 そんな龍之助に、麗香は気味の悪い顔を向けた。
 また変なのが増えた・・・・・。
 顔にそう書いてある。
「別に何を願ったって構わないけど・・・くれぐれも記事を頼むわよ?」
 さすがに腐っても編集長。
 だが。
「もちろんッスよ!俺と三下さんの愛一杯のデート・・・ばっちしレポートするッス♪」
「いや、だから・・・記事を・・・」
 だから、そうではなくて・・・。
 妄想の世界に入った龍之助は、もはや何も聞いていない。
「三下さん・・・楽しそうですね♪」
 龍之助の横でそう言ったのは、髪を腰まで伸ばした小柄な少女であった。
 真新しいセーラー服がどこか初々しさを感じさせる。
 都内の私立高校に通う志神・みかね(しがみ・みかね)だ。
 にやけた三下を見る目は、微笑ましく、にっこりと笑っている。
 三下の奇行(?)も、みかねにはそう見えるらしかった。
 この二人とはどこか視線が違うのかしら・・・ちらりと思う麗香だった。
「願いが叶うなんて、すごいですよね!あの・・・私も言っていいですか?」
 叶えて欲しい事は山ほどあるが、その中でも一番強い願いがある。
 それが叶うなら・・・・ぜひ行ってみたいのだ。
 もちろん、ちゃんと記事も書くし!
「いいですか?」
「もちろん、いいわよ。良い記事を期待してるわ」
「ありがとうございます♪」
 そんなみかねに麗香は冷や汗をかきつつ答えたのだった。
「面白そうですね。私も行きましょう」
 その時、編集室のドアがかちゃりと開き、声と共に一人の青年が入ってきた。
 歳のころは20歳ばかりか。
 目元の涼やかな、品の良い青年であった。
 神秘的な光を宿す瞳は澄んだ黒で、一族の仕来りとして長く伸ばしている髪を後ろ手に結わいている。
 長身のその身を運ぶ様は堂々としていて自信に満ちていた。
 宮小路・皇騎(みやこうじ・こうき)、由緒正しい財閥の御曹司である。
 関西を本拠地とする陰陽師一族の若き跡取りでもある彼は、コンピューター関連にも精通し、家業の手伝いもしている。
「微力ながら、麗香さんのお役に立てるかもしれません」
 皇騎は、にこやかな微笑を麗香に向けた。
 宮小路財閥にとって、いまや欠かすこの出来ぬ役割を担う皇騎にしては、少々過小評価気味の答えだったと言えよう。
「あら、宮小路くんじゃない。もちろん、宮小路くんに行ってもらえれば、私も助かるわ」
 それを判っている麗香もまた、にっこりと笑顔で返した。
 これぐらいの取材、簡単よね?っという訳であろう。
「精一杯がんばらせていただきますよ」
 その笑顔には、微かな火花が散っているような気がして、みかねは首を傾げたのだった・・・・。
 ひらりと、三下の足元からチラシが舞った。


◆拾い物
 それは偶然、水野想司(みずの・そうじ)がアトラス編集室の前を通りかかった時であった。
 一見少女と見まごう姿の少年である想司は、鼻歌を歌いながら歩いていた。
 その様子はまさに、無邪気で純粋。
 中では何事か相談しているようだが、立ち止まる事なく想司は通り過ぎようとした。
 その時、目の前を一枚の紙が飛来する。
「ん?」
 ゴミかと払おうとしたが、その広告の内容が目に入った。
 常人より遥かにいい視力が、その内容を捕らえる。
 願い事・・・・?
 狙い違わず、想司はそれを手に取った。
「これは・・・・・」
 その文面を見た想司の眼が、次第に輝きを増した。
「ふふ☆三下さんも水臭いな・・・こんな事、僕に言ってくれればいいのに」
 僕なら一発OKっさ♪
 想司は、にやりを笑うと、広告を懐にしまった。
 そして、嬉しそうに去って行った・・・・。


◆天使の願い事
 皇騎は、みかねと龍之助に遅れる事一日、次の日そこに立っていた。
 横には三下が。
 先日麗香にさんざんいびられていた三下は、がっくりと肩を落しヘロヘロであった。
「いいんだ・・・どうせ。どうせどうせ・・・」
 何か呟いているのが聞こえる。
 まぁ三下の望む願いは、三下には過ぎた願いだった・・・という事であろうか。
 というより、あそこであっさりと言ってしまう辺り、やはり三下というか・・・・。
 皇騎はそんな三下に苦笑しつつ、ビルのエレベーターのボタンを押した。
 そこはいたって普通のビルだった。
 普通すぎて、そのお店が前からここにあったかと問われれば、記憶が曖昧で判らない。
 都心の街中に佇む一見のビル。
 そのビルの三階に、妖しげな広告のお店はあった。
 やがてエレベーターが到着し、ドアが開いた。
『天使の願い事』
 ガラス張りのドアに張られている綺麗なテープで書かれている文字。
 これがお店の名前なのだろう。
 さして広くないビルの三階であると言うことから、店内はそんなに広くはなかった。
 ガラス張りのドアは、狭い空間を実際よりも広めに見せ、明るい照明が清潔感を与えている。
「ここが・・・広告のお店なんですかねぇ・・・」
 三下が心配そうに呟く。
 コラコラ・・・事の始めはあなたでしょう・・・・。
 皇騎はこめかみに手を当てながら、心の中で突っ込んだ―。
 一歩踏み込むと、自動ドアが開き、二人が中に入る。
 その時だった。
 突然大音量で音楽が鳴り響いた・・・・!!
 重々しく響き渡る曲。
 皇騎と三下は、何事かと辺りを見回した。
 まさか、特別なイベント・・・・?
 そう思ったものの、店内にいる店員たちも訳がわからぬ様子であった。
 皇騎はキョロキョロする三下を尻目に、油断なく構えた。
 ふと、殺気。
 幼い頃より北辰一刀流を学んでいる皇騎だ。
 自覚する前に、反射的に体が動いている。
 避ける皇騎の目の端に光るものが映った。
「うわぁ!(汗)」
 三下らしき声。
 パッと振り返った皇騎が見たものは、床に転がる三下と、光る剣を持つ少女のごとき少年であった。
 その少年、水野・想司は「ふふ」と笑って、光る剣を構えた。


◆死遭わせ
「三下さん☆水臭いじゃないか♪」
 BGMも高らかに突然現れた想司は、にっこり笑うと言った。
「え?え?一体何の事だい?想司くん。それよりも、なんで想司くんが・・・・」
 混乱する三下に、想司はチッチッチッと人差し指を左右に振ってみせる。
 それは少女のような外見とあいまって、想司という人となりを知らなければ微笑ましく映ったかもしれない。
 だが、外見からは計り知れないのがこの少年だった。
「判ってるんだよ♪三下さん。君の願い事はなんて。とっくにおみとうしさ☆」
「え!?そうなのかい!??」
 驚く三下に、想司はにっこりと笑った。
 水野くん・・・君は判ってくれるのかい!??
 僕のこの気持ちを・・・・なんて、いい子なんだ・・・・!!
 三下は感動していた。
 今まで散々馬鹿にされ、踏みつけられ、縛り上げられ・・・・誰も理解してくれなかった。
 だけど・・だけど・・・!
 今ここに、とうとう理解者が・・・!!
 三下は大感激していた。
「むろん、それは僕の願いでもあるんだよ☆さぁ、三下さん、今こそ『死遭わせ』となるための大いなる変貌を遂げる時だよ☆」
 ・・・・・・。
 はい?
 三下の思考は一瞬止まった。
 今、なんて?
「あの・・・今、なんて・・・・?」
 嬉々として語る想司に、三下はおそるおそる問い掛ける。
「何を言っているんだい☆『死遭わせ』だよ。三下さんがそう望んだのだろう?」
 にっこりと笑った想司は、得意の獲物、ライトセーバーをチャキッと取り出した。
「死遭わせとは、好敵手に対し『貴様を確実に死に合わせてやる!』という必殺宣言だよ☆本気を出せば僕を超える修羅であろう三下さんなら、確実にOKさ☆」
 一体何がOKなのか・・・・。
 はたから見ている者の大いなる疑問であろう。
「あ・・・あの。僕、そんなこと・・・」
「さぁ、このベイター水野が三下さんの願いをかなえよう・・・・。目覚めるんだ!三下さん!」
 想司はにこやかな顔そのままで、ぶんっ!と剣を振り上げた。
 光る剣は、ブォンっという微かな唸り声を上げて振り下ろされる。
「ひぃー!!!」
 間一髪で三下が避けた。
「なにを遠慮するんだい?三下さん」
 想司がライトセーバーを構えたまま、三下ににじり寄る。
 いや、本人いたって本気で、にっこりと微笑んで言った。
「僕のお願い・・・それは、三下さんと同じ。三下さんを『死遭わせ』にすることさ!さぁ、遠慮しなくてもいいんだよ☆」
「え、遠慮とか、そ、そういう・・・・問題じゃぁぁーー!!!」
 三下の声の後半が叫び声なのは、三下が大きく動いたからである。
 つまり、再び想司の剣が三下を襲ったのだ。
「うわーーー!!」
「恥らう必要なんかないんだよ☆三下さんを『死遭わせ』に出来るのは永遠の好敵手である僕以外にはいないのだからっ♪さぁ、僕のセイバーやら拳を味わって『死遭わせ』になるがいいさ!三下さん(はあと)」
 疾風のように剣の合間から銀のナイフが繰り出された!
 ダンッダンッダンッ!
「ひぃ〜!!!」
 壁にへばりついた三下の周りを綺麗にナイフが刺さっている。
「さすがだよ☆三下さん・・・この僕のナイフを避けるだなんて・・・感激さ☆」
 だたの偶然・・・という言葉は想司にない。
 そして微笑む想司。
 迫りくるライトセーバー。
 今度こそ・・・避けられない!
 そう感じた三下は、目の前に居た人の腕を掴むと、その後ろにまわり込んだ。
 こんな所に救世主が!
 藁をも掴む気持ちで、その人の影に逃げ込む。
「た、たすけてください〜〜!!!」
 そう叫んでパッと、メシアの顔を見上げた。
「へ・・・・?」
 だが、見上げた三下は唖然とした。
 そこにいたのは金髪碧眼、けぶるような巻き毛に、白い翼・・・そう、それは決してニセモノではなく・・・。
 その証拠にその人が微かに首をかしげると、ばさりと羽が動き、風が舞う。
 その背には、まるで天使のような羽があったのだった。
「え?え?え?」
 三下は、訳がわからず首を傾げたのだった。


◆共に
「だれだい君は?」
 想司は、突然現れた謎の人に首を傾げた。
 それを見上げる三下も、唖然としている。
 澄んだ蒼の瞳は美しく、日本人にはあり得ない陶器人形のように白く透き通った肌。
 なによりも、毛ぶるような金髪がまるで作り物のように儚くて、どこか人形を思わせた。
 そして、その背には大きな翼。
 純白の翼は、ニセモノではない証拠に、青年の意思で動いているようであった。
 時折パサリと動き、羽を撒き散らす。
 幾重にも纏ったローブは、青年の全身を隠し、身長さえ判らない。
 黙っていれば立派な美形だが、何かずれているような気がする。
「はい。私は見習い天使のアシャと申します♪」
 にっこりと微笑んで、アシャと名乗るその人は言った。
 その笑顔にはあくまで無邪気で、あっけらかんとしている。
「争い事はいけません。剣を納めてください」
 アシャは、さも痛ましいと言わんばかりに、眉を潜めて言った。
 だが想司は、懇願するように言われてキョトンとアシャと見返す。
「争い事?まさか☆そんな無粋な事を僕がするはずがないだろう?これは、三下さんを『死遭わせ』にするための重要な修行だよ☆」
 想司は、親指をピッと立てて、宣言する。
 そう、すべては三下のためなのだ。
 三下自ら望んだ事なのだから!
「すべては三下さんの為なのさ♪」
「三下さん・・・とおっしゃいますと、この方ですよね?」
 アシャは、自分の影に隠れる三下を見て言う。
「もちろん☆最高の修羅道を行く男、三下さんだよ☆」
「では・・・・これは、三下様の為になることなのですか?」
 アシャはあくまで無邪気であった。
 そして、想司もまた無邪気だった。
 だた一人、三下だけが首をブンブン振っている。
「そのとおりさ☆」
 にっこりと、想司は宣言した。
 だから・・・!違うのに!
 三下の叫びはもはや二人には届かなかった。
 想司の言葉を聞いた途端、アシャの顔が輝き出したのだ。
「あ・・・じゃ!私もお手伝いします!」
 何を思ったのか、アシャは嬉しそうに想司の手を取った。
「いえ、ぜひ、お手伝いさせてください!!人の役と立つというのが、私の仕事なんです♪」
「いや、それはどうかな。三下さんを死遭わせに出来るのは僕だけさ☆」
 無邪気に、あくまで無邪気に想司はいう。
「そうなのですか・・・水野様は、立派に人の役に立つ事が出来るのですね・・・お羨ましい・・・・」
 殊勝に言ったアシャもまた限りなく純粋だった。
「あ、あの・・・!じゃ、僕はこのへんで・・・」
 そんな二人の様子に、三下はこっそりと動き出した。
 帰るのなら今のうちだ。
 そろり、そろりと歩きだす。
 だが、何かに当たって、顔をあげた。
 顔をあげた三下が見たものは、にっこりと笑ったアシャであった。
「どこに行かれるのですか?まだ修行は終っていないのでしょう?」
 その言葉は、無邪気だった。
 あまりにも無邪気だった。
「私には三下様をその死遭わせとやらにする事は出来ませんが、せめてご協力しますね♪」
 アシャは、ガチッと顔には似合わぬ怪力で三下を掴む。
「え?え?え・・・・?」
 想司の前に捧げられた三下。
「さぁ、いくよ♪三下さん☆」
 三下の上に、影がかかった。
「う・・・ぎゃぁ〜〜〜〜〜!!!」


◆その後
「あと一歩だったね☆残念だよ。三下さん☆」
 今一歩で三下を『死遭わせ』にしそこなった想司は、残念そうに首をすくめた。
 床には気絶した三下が伸びている。
 想司の一撃を喰らった三下は、そのまま気絶してしまったのだ。
「あ、でも。結構効いたようでしたよ♪」
 楽しそうに言うのは、見習い天使のアシャである。
 一体何が効いたのか・・・・。
 確かにダメージはあったようではるが、それで三下が『死遭わせ』になったかは謎であった。
「では・・・次こそは」
「もちろんさ☆それが三下さんの願いだからね☆」
 そんな二人を横目に、森里しのぶは立ち尽くしていた。
「一体、なんなの・・・・?この人」
 ヘンな人・・・。
 そんな声が今にも聞こえてきそうであった。
「水野くん・・・また、何かしたんじゃないでしょうね・・・?」
 じとーっと、想司を見つめるしのぶ。
「何か?何かってなんだい?僕は三下さんの願いをかなえるためにベイダー水野となって参上しただけさ☆」
 だから・・・・それってなんなの?
「さぁ、次こそは、念願の死遭わせに☆」
「水野くん?それってなんなの???」
「だから、死遭わせさ☆」
「だから・・・!!それってなに!???」
「がんばってくださいね♪」
 想司としのぶとアシャと、噛み合わない会話はしばらく続いた。
「それってなにー!???」
 伸びた三下は、しばらく目を覚ます様子はなかった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 0218/湖影・龍之助/男/17/高校生
 0249/志神・みかね/女/15/学生
 0424/水野・想司 /男/14/吸血鬼ハンター
 0461/宮小路・皇騎/男/20/大学生(財閥御曹司・陰陽師)

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■         ライター通信          ■
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 ども、こんにちは。ライターのしょうです。
 今回大変遅くなりまして申し訳ありませんでした。
 『天使の願い事』、お届けしたいと思います。

 みかねさんは四回目、想司くん二回目、そして龍之助さん、皇騎さんは始めまして。
 数ある依頼の中から選んでいただき、ありがとうございました。
 今回、結末はこんな感じになっておりますが・・・いかがでしたでしょうか?おちこぼれ天使のアシャは、皆様の役に立てたでしょうか・・・・?
 ちなみにNPCである天使のアシャは、また機会があったら出してやりたいなっと思っておりますので、皆様に呼んで頂ければ喜んで参上してくれると思います。
 ただ、おちこぼれなので、なにをやらかすか判りませんが・・・・(^^;

 ご感想等、ここが違うなどでもOKですので、今後の参考にも気軽にご意見いただければ幸いです。
 では、また別に依頼でお会い出来る事を祈って・・・・。