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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


花咲ける青年

調査組織名   :草間興信所

執筆ライター  : 朧月幻尉

------<オープニング>--------------------------------------

「はァ?!」
 草間は素っ頓狂な声をあげた。

「それが依頼内容ですか?」
「そ、困ってるのよ、アタシ。もうすぐペンションの開店日だってのに、妖しげな声が聞こえたり、事故が起きたりしてるのよ。これじゃ、店始めたってお客が来なくなっちゃうわ。ねえ、お願い!貴方の貴重な人脈をちょっと貸して欲しいの!!」
「別にそれは構わないんだが・・・・・・」
「本当ォ!」
 女は草間に飛びついた。首根っこを捕まえると、ぶちゅう〜とキスをする。
「うげぇ!」
「まッ、失礼ね!・・・・・・まァ、いいわ。でもね、『いろんなモノが見えるペンション』って、麓の人が云ってるの聞いちゃったのよ。これじゃ、お客来なくなっちゃうかもしれないじゃない!」
 ある意味、繁盛するんじゃないかと草間は思ったが、いわない事にした。
 その噂で来るのは、ミステリー好きの人間か、オカルトにハマった奴だけだろう。そんな中にマトモな客がいるとは、到底思えなかった。
「『ロマンチックな夜♪』をイメージして建てたのよ!高い買い物なんだから、絶対、モトを取ってやる!」
「はァ・・・・・・商売に燃えるのはいいことですね」
 半ば呆れたように草間はいった。
「だからね、オープニングパーティーは華やかにしたいのvv」
「そうですね・・・・・・」
「だ・か・ら」
 女経営者はスタッカートのリズムで云うと、白檀の扇を広げてヒラヒラさせる。

「オープニングを飾る、素敵な男の子が必要なのよ♪ちなみに、チークタイムがあるから二人一組のチケットですからね! を〜っほほほほほほvv」
 哄笑う女の顔を、草間はげんなりと見つめた。

●旅の始まり
 十一月の連休を利用して開かれるペンションの『オープニングパーティー&依頼』を請け負った俺は、今回の相棒になる男を東京駅で待っていた。
 ふわわあぁ〜っという欠伸を一つ吐く。朝も早よからお仕事なんて、真面目だな、俺は。
 昨夜、【ロズウェル】のビデオを5本まとめて観ていたせいか、眠くって眠くって仕方が無い。
 煙草を咥えるとベリーショートの赤毛をガシガシと掻く。自分でもそんな姿が男前だと思っっている。よくホストクラブに勧誘されるが、キョーミなぞ無い。

 俺は深奈・南美(みな・みなみ)。勿論、女だ。
 取立てに命賭けてるクレジット会社のOLだ。誕生日プレゼントは前後6ヶ月受け付けてるからな。あァ、ついでに言っとくが、俺に関わったら『財務整理』なんてさせないから覚えておくように。
 カップルが条件だと言う依頼の為でもあるが、気合の入ったパンツスーツの姿は他所行き用だ。なんせ、軽井沢のペンションでのパーティーと云ったらご馳走と酒だからな。高級避暑地だからチーズとワイン、パンや惣菜はまず美味い筈だから期待はしている。
 草間がいうには『美形』が条件だという依頼だから、相手の顔はかなりイケルと見た。できれば可愛いほうが俺的には好みなんだが。
「あー・・・・・・隣ンちの隼人みたいな子だったらいいのにな・・・・・」
 つい、俺は呟いてしまった。
 隼人は隣に住む5歳児だ。ぷっくぷくの頬が食いつきたくなるぐらい可愛い。よく隼人の母親と一緒にディズニ―ランドやらサンリオピュ―ロランドに行くことがあったのだ。
 うー・・・イカン、涎が・・・・・・
 手の甲で涎を拭いた。ついでに時計を見るとまだ十分はあるようだった。弁当でも買おうかと思って振り返ると、背の高い青年が立っていた。
 「綺麗な男だなぁ〜」などど、俺はボンヤリ考えてしまった。俺らしくもない。
 俺と身長は20センチ差はあるだろうか。細い顎のラインは完璧で、肌も透けるように白く、これを白皙というんだなと思った。頬にかかる黒髪はさらさらとしていて触りごこちが良さそうだ。襟足の毛を長く伸ばし、細い組紐で結わいていた。年の頃は十六やそこらだろう。
 俺を覗き込んだ瞳はどうやら金色のようだ。・・・というのは影になると薄茶に見えなくも無いからだ。我ながら貧相な観察眼だと思うが、俺の『可愛いと形容できる対象以外のモノ』に対する、美的センスなぞこんなものだ。
「おはよう」
 厚くもなく薄くもない唇から蠱惑が零れ落ちたと俺は思った。惹きつけて止まぬ声音。天の御使いが現代人の服を着て立っている。
 それなら、これは夢の続きだろうと俺は思った。
「あのう・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「もしもし?」
 俺はその声で現実に引き戻された。
「あ・・・・・・何?」
 天雅な声に対して、あぁ・・・・・・俺の返事はなんと間抜けなんだろうか。悔しいが、こいつは美しい。対象外のクセして、俺を白昼夢に引き込みやがった。
「草間さんの・・・・・・」
「あ、あぁ・・・それ、俺ね」
「よかった・・・・・・相手を間違えてしまったかと思ったぞ・・・・・・俺は七継・虎太郎(ななつぐ・こたろう)という」
「俺・・・深奈・南美。・・・よろしく」
「こちらこそ」
 神の寵児が破顔した。どことなく危うく脆い少年時代の真っ只中にいる者だけが持ち得る笑みだ。そのくせ表情が酷く幼くてキュゥっと抱きしめたくなる。
― うぐぅ・・・・・・か、可愛い・・・・・・
 僭越にも俺は端正と野生を併せ持つ稀なる美青年に愛しさを感じてしまった。
 整った顔立ちにぶっきらぼうな口の利き方が人を遠ざけそうな雰囲気を醸し出しているくせに、屈託無い微笑なぞしてくる。無防備なんだか、馬鹿なんだか・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・」
「深奈さん?」
「・・・・・・・・・・・・」
「深奈さん」
「あ・・・・・・・すまん」
「新幹線出ちまうぞ」
「そうか」
「深奈さんが居なくちゃ、俺は軽井沢まで行けないんだからな・・・・・・迷子になったらどうしてくれるんだ」
「迷子?」
 虎太郎はつんと口を尖らせた。
「俺は東京(こっち)に来てからそんなに経ってないんでな」
「ほお・・・・・・何処の田舎から来たんだ」
 そう俺は云ってやった。
 この青年に田舎と言う言葉ほど似合わないものは無い。自分でいっておきながら違和感を感じざるえなかった。
「魔法界だ・・・・・・確かにこちらの感覚で云う『Country』に近いとは思うが、都会的である必要も無い。ようは好みの問題で・・・・・・」
 口元をへの字にした。どうやら、俺にからかわれたと感じたらしい。上背もある美青年が顎を引いて上目づかいをすると、何とも年相応に見えて俺は燃えた。いや、かなり『萌え』かもしれん。
 うぅむ・・・・・・マジでやばい。く、口元が・・・・・・
 ふと口元に手をやってしまう。頬を触ると口角筋に微量の震えを感じた。俺は無意識の内にニヤケていたらしかった。
 これが今回の相棒と思うと、この先がとても楽しく感じられる。
 俺たちは新幹線へ乗り込み、弁当を買った。食事が終わると、遼は座席でうとうとし始める。瞬く間に眠りについたところを横目で見、俺は突き上げる衝動を「公衆の面前だ!」という言葉でストッパーをかけた。


●えぶりばでぃ・かも〜ん!
「いらっしゃぁ〜〜い。ウッワァーォ!なんて素敵な子なのォ!!」
 ペンションに到着し、瀟洒な造りの階段を俺たちが見上げていた時、その声はやって来た。ズダダッともドダダダダッともつかぬ地響きが轟く。
 準備に忙しいスタッフの間を縫って、緑の巨大な旋風が目の前で止まる。 それはエメラルドグリーンのパンツスタイルでやって来た。
 俺はオーナーを初めて見たが、彼女(?)がオカマだとはっきりわかった。
 それはそうだ。ゴッツイ顎に彫りの深い顔。ジャイアント馬場に引けを取らない長身ときたら、オカマだと思わないほうがおかしい。
 俺たちの登場にオーナーは、目に涙さえ浮かべていた。
「嬉しいわ・・・・・・よく来たわねvv・・・・・・ん?あら・・・女??」
『ちょっとオ、アンタなんでこんなとこに居んのよゥ!』とでも云いたそうな顔でそいつは俺を見た。・・・・・・いや、『見た』というだけならまだいい。それは『睨付ける』というべき視線だ。
 俺はちょっとした報復を試みた。
「そうとも俺は女だ」
「アタシは男限定って言っといたはずよ」
「知るか。文句があるなら草間に云え・・・・・・俺を選んだのは、あいつだ。遠路はるばる軽井沢に来てやったんだから、もてなしの心ぐらいは見せといたほうがアンタの今後の為になるだろうな。もっとも、オカマがオーナーじゃ客層は知れてるがな」
「何ですって!」
「金が足りなくなったらウチへ来い、担当になってやる。だが・・・・・・・俺は『財務整理』は赦さんから覚えとけ」
「行かないわよ!」
「ほほう・・・・・・後が楽しみだな」
 俺はオーナーが持っていた鍵をふんだくった。かすかに虎太郎の瞳に怯えの色が走る。
「 まずは、何処からともなく聞こえる声を探ろうと思うんだが、ペンションの見取り図を見せてもらえるか?」
「見取り図なら後で部屋に届けてあげるわよ。一体何に使う気?」
「構造的におかしな所が無いかチェックするだけさ、たとえば1部屋足りないとかな・・・・・・」
「そんなの無いわよ」
「それは俺たちが判断することだ」
 そう言い捨てて俺は部屋へと向かう。後を追うように虎太郎が走ってきた。
「深奈さん!」
「行くぞ、虎太郎!」
「あんなことしていいのか?」
「構わん・・・・・・何か頭に来たからな、合法的手段に乗っ取って、事件を解決してやろう・・・・・・」
 ニタリと俺はほくそえんだ。
「依頼を果たすのに合法も何も無いだろう?」
「いや・・・・・・俺を敵に回したらどうなるか教えてやろうと思ってな。まあ、見ていろ」

トゥルルルル!

 ふいに携帯が鳴った。
「深奈さん、電話だぞ」
「あぁ・・・・・・・うむ、おかしいな」
「何がだ?」
「いや、これは霊波探知ができるんだ・・・・・・勝手に作動するなんて」
「故障か?」
「そんなことはあるわけがない」
 俺は気配を探ったが霊は居なさそうだと感じ、警戒を解く。何かあったらまた携帯が知らせるだろう。俺は様子を見ることにし、虎太郎との会話に戻った。
「お前は如何思う?」
「そうだな。まずは妖しげな声が聞こえたり、事故が起きたりしてるそうだから犯人が霊であると仮定したいな」
 虎太郎は言った。
 まぁ、それが妥当だろう。
「深奈さんはどういうふうにするつもりだ?」
「俺か?・・・・・・・まず建物自体のチェックと波動チェックを進めるね。あとはおかしな構造などを発見したらそこを破壊する」
「破壊!?オーヴェンヴァッハ校長の紹介で来たんだからな、大事は困る」
「誰だ、それは」
「恩師で俺の上司だ」
「お前は教師なのか?」
「そうだ。魔法学校で教鞭を取ってる」
「お前の年で教師というのは早い出世なんじゃないのか?」
 俺は虎太郎をよいしょしてやった。口があまり軽くない奴はこうして煽ててやるとほんの少し饒舌になる。酸いも甘いも噛み分けた大人の社交術とでもいおうか。それを証明するかのように虎太郎は形のいい小鼻をフクッとさせて云った。
「十代で本校の教師になったのは、俺と俺の友人しかいない。魔法界数万年の歴史上初の快挙だ」
「それはすごい」
 俺はニッコリ笑い、手放しで言ってやった。思ったとおりに乗ってくるとは、魔法界きってのエリートだろうがなんだろうが、やはり子供は子供。
― 煽てに乗りおって、こいつめ・・・・・・
「大丈夫だ任しとけ。何とか校長って奴に迷惑がかからなければいいのだろう?」
「ま・・・・・・まあな・・・・・・」
 と云ってみたものの、内心困ってしまっているらしい虎太郎は眉根を寄せてこちらを伺っている。その仕草が堪らなく可愛らしく、俺は抱きしめたい衝動に駆られた。それをきっかけに、俺の中で虎太郎をちょっとからかってやろうという意地の悪い虫が騒ぎ出す。
「何かあったらどうする?」
「え・・・・・・」
 虎太郎は何が何だかわからないという顔をした。
「俺はこんなことができる」
 そう云うと俺は聞き手の指を突き出した。指を銃の形にして撃つと、衝撃波を発生させることが出来るのだ。
「BANG!・・・・・・だよ」
指から衝撃が飛び出て、ビリッと言う振動が鼓膜と壁を打った。ごく小さい範囲での圧力だったため、壁に0,26BB弾で狙ったくらいの穴が空いただけだ。深さは2,67センチほど。3センチを目安に打ち込んだから、まあまあという所だろうか。
「どうだい、虎太郎クン?」
「公共物破損は・・・・・・」
「どうしようかなァ〜♪このまま暴走したら・・・・・・」
「何を」
「ストップ!俺たちの依頼内容はパーティーの出席と事件解決だ。建物を死守しろとは聞いてないな」
「・・・・・・・・・・・・」
 虎太郎は恐い顔で俺を見た。
 俺は冗談だと言ってやろうとした。・・・・・・したが、俺の舌がそう言葉を紡ぐ前にそれは落ちてきた。
 ミシッと音を立て壁が衝き崩れると、俺たちの頭上目掛けて落ちてきた。すんでのところで俺は避け、手銃で破壊する。
 ふいに虎太郎のことを思い出し振り返ると、そっちは魔法で難なく回避していた。
 普通ならこんな穴一つでここまで亀裂が入ることはありえない。不審に思って俺は壁を見た。
「何だこれは」
 ぐにゃりと溶けかけた生き物のレリーフを俺は見た。いや、俺たちは見た。内壁の有様に流石の俺も目が離せなくなっていた。だから、虎太郎が近くに歩み寄ったのも気が付かないでいた。
「これは深奈さんがやったのか?」
「違う」
 こんな『モノ』、俺がどうこうできるもんじゃない。
 いや、どうこうできるもんじゃなかったんだ!
 レリーフだと思ったそれは生き埋めになった人間だった。造作は申し分無いほど美しい男達が無数に埋め込まれていた。
「まさか・・・・・・」
「アタシのコレクションに何の用?」
「何いっ!」
 声のしたほうを向くと、そこにはオーナーが立っていた。ごつい顔に笑みが浮かぶと更に醜悪に見える。
「それ、アタシがやったのよ」
 肩の上には二股に分かれた首の上に凶がしい双貌が乗っていた。下顎はだらりと下がり、口の中はあるはずの舌が刳り貫かれていた。
 片方は醜く捩れた老婆の顔だ。
 老婆のほうの顔が言った。
「綺麗でしょ・・・・・・アタシが欲しいものを全部持った男達よ。アタシのものになったら出してやるって言ってんのになかなか首を縦に振らなくってね」
「お仕置きってワケか?」
 俺は吐き気を押さえていった。
「そうよォ♪・・・・・・でも、もういらないわ」
 云うとオーナーは壁の中の少年の腕を引き千切った。劈くような悲鳴が辺りを包む。
「だって、この子達よりアンタのほうが綺麗だもの・・・・・・こんな風になりたくないならアタシのものにおなりよ。いい目みせてあげるわよ」
 オーナーは虎太郎にいった。
 虎太郎のほうはというと、悪びれもせず淡々と返した。
「結構だ。オカマは嫌いだし、俺は俺以外のものにはならない。どうしてもというのなら手加減はしない」
「そう・・・・・・残念ね」
「残念がられても嬉しくは無い。はっきり言って気味が悪い。用が無いなら消えてくれ」
「じゃぁ、その反抗的な言葉も言えないようにしてあげるわヨ♪・・・・・・後で泣いて許しを請うのね!」
 オーナーの手から爆音と共に火焔が噴出した。炎はその灼熱の舌を伸ばし、こちらに襲い掛かってきた。
 俺は猛攻を避けながら手銃を打ちまくった。オーナーの数センチ横の壁を剥ぎ取る。さすがの相手もすばしっこくて、足止めするのが精一杯だった。
 優雅な仕草でかわしていた虎太郎は杖を出すと軽く振った。見えない壁が俺たちの前に立ちふさがり、互いの攻撃を緩和した。
「これじゃ、こっちだって攻撃できないだろうに!」
「・・・・・・すまん」
「はぁ・・・・・・」
 のんびりと謝った虎太郎の真顔をマジマジと見てしまった。
「ったく・・・・・・」
 俺は頭を抱えた。壁はこっちの攻撃を押さえてしまっている。手も足も出ないとは正にこのことだった。
まったくどうしろって言うんだ。これでは依頼が完了できない。
「ええい、ちくしょう!」
「では、これを取り払うか?」
「うわあ!だっ、ダメだ!!」
「一体、どっちがいいんだ・・・・・・」
「もっと物事を考えろ!・・・・・・いや・・・いい手がある。こうするんだ・・・・・」
 俺は虎太郎に耳打ちした。
 方法は一つ。魔法壁を解除する瞬間に攻撃を仕掛ければいい。威力なんて無くても十分な方法だった。
 ただし、チャンスは一回のみ。二度目は警戒されるからまずダメだろう。運が良かったのは虎太郎が魔法の呪文の詠唱に時間を使わないほどの実力だったことだ。失敗したら壁に飲み込まれた人間は助けられないかもしれないが、自分たちは助かる可能性がある。自分の身が危ないのに、依頼がどうこうとは流石に言っていられなかった。
 すまん。・・・・・・では済まされないが、自分たちが死んだら元も子もない。
 まあ、虎太郎のことだ。死んだりはしないだろう。俺だって死ぬ気は無い。とはいえ、どちらにしろ危険な状態だった。
「準備は良いか?」
「あぁ・・・・・・」
 俺は答えた。
 化け物の眉間に狙いを定め、手銃を使う意識を散弾銃タイプに切り替えた。手加減は無しだ。
「いくぞ!!」
 虎太郎の掛け声に俺は手銃を撃った。頭蓋骨が砕け脳漿が飛び散るイメージを作り上げ、それを化け物に叩き込む。魔法壁はぐにゃりとたわむと、そのエネルギーが手銃の弾に纏わりついた。
 魔法をまとって、弾はオーナーに身体にめり込んだ。
「ば・・・・・・かな・・・・・・」
「消えろ化け物!!」
「ぐおおおっ!!・・・」
 何事かを呟き、化け物は倒れた。ゆらりとその身体は形を変え、びくびくっと痙攣を起こして・・・・・・止まった。

●呆気ない結末
 俺たちは壁に埋め込まれた男達を解放し、腕を千切られた少年の腕を虎太郎の回復魔法で癒した。
 オーナーの消えたペンションは閑散とし、スタッフの姿は無い。多分、オーナーの幻惑術だったのだろうと虎太郎は仮定していたが、「魔法界のエリート様であるお前が何故、気が付かない」と突っ込みを入れてやると憮然としたまま奴は黙っていた。
「ったく・・・・・・これでパーティーはおじゃんだな」
「もうすぐ日が暮れるぞ、深奈さん」
「はぁ・・・・・・まだ飯さえ食ってないのに・・・・・・」
「今夜の止まる場所はどうするんだ?」
「仕方ない、ここに泊まろう」
「何処の誰の建物かわからないのにいいのか?」
「他にどうしろっていう!」
 俺はぶち切れて怒鳴った。
 ここに来る前に買い込んだ、夜食用の乾き物と土産物屋で買ったワイン三本と缶詰があるだけだ。
 今夜のオカズは虎太郎の晩酌と乾き物だけだが仕方ない。この際、食べれるだけマシだ。
 早速、俺は準備に掛かった。
 部屋を探すと布団類はあったのでここで泊まることにした。眺めのいい最上階に陣取って、荷物を運び込む。
 介抱した男達を建物の管理人や警察に見られると厄介だ。
 そいつらは虎太郎がまとめて草間の事務所に転送してやった。さぞ慌てることだろうが、こっちの知ったこっちゃない。一切無視だ。
 虎太郎はめっちゃくちゃ嫌そうだったがそれをあえてねじ伏せさせ、虎太郎の魔法で実行させた。
 宴会準備が整い、俺は窓の前に陣取った。
 藍色の宙はすっかり冬色で、月並みな表現だが星は手に届きそうな程近く感じられた。
 俺たちはキッチンからぶん取ってきたグラスにワインを注ぎ、これからの自分たちと大量の美形の男達を送りつけられた草間興信所所長クンに祝杯を上げた。
 ペンションの窓から見える星たちは期待していたとおりに綺麗だった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1121  / 深奈・南美/ 女 /  25  / 金融業者


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■         ライター通信          ■
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 はじめましてこんにちは、朧月幻尉です。
 この度は発注ありがとうございました。このお話は別バージョンがあるのですが、今回はオーナーが犯人になりました。いかがだったでしょうか?
 折角だから一人称でと思いまして、書かせていただきましたがどうでしょう?
 深奈さんのイメージが他のライターさんのお書きになったものとは違ってくると思います。しかし、これも一つの形と思っていただけたら幸いです。
 今後の参考とさせていただきますので、もしよろしければ私信にて感想、ご意見等をいただければいいなぁと思っています。
 それでは誠にありがとうございました。