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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


アルラウネの呼び声

<序>

 その声を、聞いてはならない。
 その声は、生きしものの命を奪うもの。
 だから、決してその声を聞いてはならない。なかせてはならない。
 なかせていいのは「遮断の石英」を手にした者たちだけ。
 選ばれし「黒衣の使者」たちだけ。

          *

「その黒衣の使者たちが持っている『遮断の石英』が数個、盗まれた?」
 紡がれた言葉に碇麗香が眉宇を寄せた。その視線の先には、真紅の髪に黒ずくめの衣装で身を固めた中性的な容貌を持つ少年がいた。左耳には長いピアスがついていて、その先には銀の鈴が二つついている。
 彼は麗香の問いにこくりと頷くと、口許に手を当てて控えめに吐息を漏らした。
「それを取り戻すお手伝いをしてはいただけないかと思いまして」
「『遮断の石英』っていうのは一体何の声を遮断するの?」
 声を聞くだけで死ぬだなんて、穏やかではない。一体何物なのか。
 リン、と少年の耳元で小さく鈴が鳴る。少年が目を上げた。
「アルラウネ、ってご存知ですか?」
「アルラウネ?」
「ドイツにいるといわれる魔物なんですが」
 人根草の精霊が死刑囚の血や精液などを吸い、美しい女性へと姿を転じたものだといわれている。
「夜な夜な男をたぶらかしてはその生気を吸い取っていくという魔物なんです。……普段は黄色い花をつけた愛らしい子なのに引っ張ろうとするとどうも危険で……」
「黄色い花?」
 独り言のように付け足された言葉に、麗香が怪訝そうに顔をする。が、少年は「いえ、独り言です」と口を閉ざしてしまった。
 まあ、頭に黄色の花をつけた魔物なのだろうとあっさり割り切り、麗香はさらに問いを重ねた。
「で、そのアルラウネっていう魔物とさっきの話に出てきた『黒衣の使者』と『遮断の石英』とどういう関係があるの?」 
「黒衣の使者が持つ『遮断の石英』があれば、彼女たちの声に囚われずに済むんです。黒衣の使者たちは、いわば彼女たちを狩る者。声にとらわれてしまったら自分が危険にさらされるので」
「なるほど。ミイラ取りがミイラにならないようにするためのアイテムなのね」
 いくらアルラウネの天敵とはいえ、対抗する手段がなければタダの人、ということだろう。
 それにしても。
「誰がそんなもの盗んで行ったのか、検討はついているの?」
「おそらくは黒衣の使者たちのせいで商売上がったりになりつつある同業者か、アルラウネを手に入れたがっているマニアか、といった所です。居場所もほぼ調べてきました」
「そう、なら探す手間は省けるわね」
 そこでふと、麗香は首を傾げた。肝心なことを聞き忘れていることに気づいたのである。
「ところで、その『遮断の石英』っていうのは一体何なの? バリアか何か張れる道具?」
「耳栓です」
 紡がれたその言葉に、もっと凄いものを想像していた麗香はソファから脱力のあまり滑って落ちそうになった。
「み、耳栓?」
「もちろんただの耳栓ではありません。魔女に特別な魔力ほほどこしてもらった石英の耳栓です」
「魔女……」
 麗香はソファにきちんと座りなおすと、冷静さを取り戻すように目を閉じて一つ大きく吐息をついた。そして心を決めたように目を開くと、少年に向かって頷いた。
「いいわ、協力しましょう。ただし、うまくいったらアルラウネの事、もっとちゃんと取材させてもらうわよ」
 少年は小さく笑ってかすかに頷いた。
「かまいません。ただ、犯人は黒衣の使者の屋敷に張ってあった結界を破って入ってきていました。魔力が相当あるか、魔力のある者と手を組んでいる可能性があるので十分気をつけてください」
 言って、少年はテーブルの上に数件の住所を書いた一枚の紙切れを残して席を立った。残った麗香は紙切れに視線を落としてからソファに深く背を預けて天井を見上げる。
「それにしても、アルラウネに魔女、とはね」
 まったくもって、この世はなかなかネタがなくならない所である。
「まあそのほうがありがたいけど」
 そんなことを思いながら誰に依頼を回そうかと考えている麗香の姿を、編集部のドアの前で立ち止まった少年がじっと眺めていた。
 わずかに前髪から覗いた双眸には、猫のような金色の光が宿っていた。

<なぜか気乗りしない依頼>

 その日、抜剣白鬼は家の掃除をしていた。
 久々のゆっくりとした休日である。最近仕事仕事でなかなか室内を隅々まで掃除する時間に恵まれていなかった白鬼は、ここぞとばかりに大晦日なみの大掃除を決行していたのである。
 そこに、電話のベルが鳴り響いたのはつい数分前のこと。
 片手に受話器、片手にはたき、という姿のまま、相手の話にしばし耳を傾けていた白鬼はなじみのない単語を聞き、わずかに眉宇を寄せた。
「アルラウネ?」
 電話の相手は、アトラス編集部で時々カメラマンの仕事などをしている従弟である。
 従弟は楽しげに、アトラス編集部で碇麗香から聞いた事柄を白鬼に話して聞かせてくれた。電話の向こうで、まるでおもちゃを与えられた子供のように目をきらきらさせながら話す従弟の顔が容易く頭に浮かび、白鬼はわずかに笑みをこぼす。
 伝承や神話好きの彼らしい。ドイツの魔物であるアルラウネに、きっと好奇心を刺激されまくりなのだろう。
「というわけなんだ。ちょっと僕の代わりに調査に行ってみてくれないかなぁ?」
 一通り話終えると、従弟はそんなことを言い出した。やれやれと肩をすくめ、白鬼はぱたぱたと片手のはたきで電話の表面を軽く叩きながらかすかに笑う。
「なんだ、そんなに興味があるのなら自分で行けばいいだろう?」
 けれど相手はあっけらかんとした調子で言った。
「たぶらかされない自信ならあるんだけど、もしものことを考えたんだよ」
「もしものことって?」
 男をたぶらかす、というアルラウネ。それを警戒してのことなのだろうか?
 はたきを使う手を止めてわずかに首をかしげた白鬼の様子が伝わったかのように、従弟は小さく笑い声を発した。まるで面白い事を思いついたいたずらっ子のような笑声である。
「ほら、僕みたいな一人身の男よりも、もうちゃんと決まった相手のいる人の方がどっちかっていうと安心でしょ? しっかり魅了の力に抵抗できそうじゃない?」
「安心って……」
「それに、その耳栓奪っていった人たちも魔力持ってるらしいから、僕よりもそっちのほうがちゃんとそういう部分でも対抗できるだろうし。僕が行くよりきっとずっと役に立てると思うから、ね?」
 じゃあそういうことだからよろしくー結果報告楽しみにしてるよー、と言い添えて、相手はこちらの言い分も聞かず一方的に電話を切ってしまった。あ、こらっ、と慌てて声をかけるも、無論返事はない。
 ツーツーという虚しい音のみを発する受話器を握り締め、白鬼は思わず天井を見上げた。知らず、低い唸り声が口から漏れた。
「……この場合、一人身の方がいい気もするんだけどな……」
 もしもアルラウネの誘惑にのってしまった場合、特定の相手がいる方が問題だろう。
 というか。
 アルラウネ云々よりも、もしものことがあった場合の「特定の相手」のほうが数倍怖い。
「…………」
 もしも、のことを考えると、背筋に冷たいものが滑り落ちた。
 白鬼には、もう付き合って数年経つ彼女がいる。もしものことがあった場合、果たして自分に命があるのかどうか……。彼女により粛清されてしまうのではないだろうかと真剣に考えてしまう。
「……まだ死にたくないもんだ……」
 ぽとりと、白鬼の脱力加減を表すようにその手からはたきが転がり落ちた。広い背中にほんのり淡い悲哀が漂いはじめる。
 憂鬱そうな眼差しを、握り締めた受話器へと落とした。
 彼にしては珍しく、明らかに「仕事」に対して気乗りしていない様子である。
 けれど、楽しみにしている従弟からの願いをこのまま無視するわけにもいかない。無下にしてしまった時の従弟の悲しげな顔がぽやんと頭の中に浮かんでくる。
「やれやれ、どうしたものか……」
 大きくため息をつき、困った顔つきで再び天井を見上げて顎鬚を撫でた。
 そういえば、アルラウネはドイツの魔物だとさっき従弟は言っていた。なのに黒衣の使者や同業者なるものが遠く離れたこの日本にいるというのも、おかしな話である。
 麗香に依頼を持ってきた少年が言っていたという「引っ張ろうとするとどうも危険」という言葉にも引っかかりを覚える。
 もしかしたら、アルラウネとは魔物ではなく、何か別の事柄を隠すための言葉だったり、別の争いを示す隠語だったりはしないだろうか?
「……でもそれだとアトラス編集部に持って行くような依頼じゃないしなぁ……」
 受話器に視線を落としたまま、細い目をますます細める。
 まあおそらく、アトラス側から期待されているとしたら「魔力に対抗する一つの手段」としての参加だろう。
 それに応えられればいいか。
 あまりにも消極的ではあるが、とりあえずそう思い、落っこちたはたきを手にまた意欲的に大掃除へと舞い戻り、憂鬱さを払うようにぱたぱたと頭上ではたきを動かす。
 けれど、やはりその顔にはどこか浮かない色が滲んでいた。

<山道をゆく>

「しかし、同業者やマニアがいるほどにアルラウネというのは需要があるものなのかねぇ?」
 うねうねとした山道を登りながら、抜剣白鬼は手にした錫杖の先を大地に押し付けながら、さらにしっかりとした足取りで申し訳程度に舗装された道を歩む。
 その傍らには間宮甲斐がいる。真紅の髪が、もうすっかり冷たくなった冬の風に揺らされる。はらりと眼前に舞い落ちてきた土くれ色した枯葉を黒皮の手袋をはめた手でいなすように払いのけた。
「どうなんでしょうね。でも、伝承どおりの能力を持つものならば手に入れたがる人間もいるとは思いますが」
「人に幸福をもたらす、という伝承かい? でも、恩恵を与える植物であるアルラウネと、男をたぶらかすっていうアルラウネが同じものなのかどうかはちょっと分からないね」
「メリットがないものを、人は手に入れたがったりしないと思いますけど」
「確かに。それはそうだ」
 人とは常に、そういったものを求めるものだから。
 苦笑をこぼしながら、白鬼は足にまとわりついてくる僧衣の裾をさばき、袂から一枚の紙を取り出した。それは麗香から渡された盗人容疑者リストなのだが、実は朝から二人で上から順に候補になっている住所を当たってきたのである。だがいずれも転居していたり、数日家に戻った形跡がなかったりした。
 ここはリストで言うと、ちょうど最後の場所になっている。「マニア」の住まいがあるらしいが……。
「まさかこんな山奥とはね」
 住所の確認するまでもなく、道は一本だけだ。おそらく、この先に住まう者以外この道を利用する者もいないのだろう。伸び放題の色の褪せた草が道の大半を覆ってしまっている。錫杖で草を横へと払いながら、白鬼は更に歩を進めた。甲斐も鬱陶しげに草を足先で払いのけながら進んで行く。
「怪しげな魔力を持つ者が隠れ住むにはちょうどいい場所なのかもしれませんね」
 かあ、とどこかでカラスが鳴いた。それに続くように何匹かのカラスが鳴き声を上げる。
 荒れ放題の山。道はあっても無きが如し。昼間でもどことなく不気味な空気が漂っている気がする。確かに、これならば怪しげな身分の者が身を潜めるにはうってつけだ。普通の人間の感覚ならばあまり近づきたくない場所だろう。
 いや。
 そういう「不気味さ」を作る結界が、隠れ住む者によりこの周辺一帯に張られているのかもしれない。そう思うと気が抜けない。
「でも、買い物なんかのために街に出るのにもちょっと一苦労しそうですね」
「ああ、それは言えてるね」
「車ではこの道を上がれそうにもないし、上がった形跡もない。アイスや冷凍物なんかは夏場だとすぐに溶けてしまいそうだし……一体どうしているんでしょうか」
 妙なことを真剣に気にかけているらしい甲斐の様に、ぷっと小さく白鬼が吹き出した。それにちらりと甲斐が真顔のまま視線を向ける。
「何か?」
「ああいや。面白いことを言うなあと思ってね。……っと、あれかな?」
 枯れた葉を申し訳程度に枝にぶら下げている木々の向こうに、今にも朽ちそうなほどに古びた洋館が建っている。白鬼の声に、甲斐も視線を持ち上げた。
 朝から続いている訪ね先全て空振り、という現状を思い、緩く頭を振る。
「今度こそ、誰かいるといいんですが」
「誰かいてもらいたいが……できればアルラウネはいてもらいたくないね」
 ぼそりとこぼされた言葉に、甲斐が不思議そうな眼差しを向ける。それに白鬼は苦笑いをこぼし「なんでもないよ」と答えて、またがさがさと草をかき分け、館に向けて歩き出す。
 館に近づくにつれて、じょじょに強く肌にぴりぴりとした感覚を覚え始めた。
 いや、「肌に」というよりは第六感に直接働きかけてくる、近づくものを激しく拒絶する感覚だ。
「……結界かな?」
 どこかのんびりとした口調で言いながらも、白鬼は目を眇めて注意深く周囲を見渡す。錫杖を握る手に自然と力がこもる。
 甲斐も、わずかばかり右目を細めて黒いジャケットの内側から抜き身のナイフを三本取り出して指に挟んだ。
「どうやら、ここには誰かがいるようですね。しかもよほど人に近づかれたくないらしい」
「とりあえず他の連中にも連絡してみるとしようか。キミ、携帯電話持ってるかい?」
「持ってますけど……こんな山奥から通じるんでしょうか?」
「そこはそれ、気合でなんとかしてみよう」
 気合でどうにかできるものではないはずなのだが、その白鬼の言葉を甲斐もすんなりと受け入れた。ポケットから銀色の携帯電話を取り出すと、周囲に注意を払いながらフリップを開き、麗香に教えられていた他の調査員たちの電話番号を呼び出す。
「……気合でどうにかできるものですね」
 アンテナレベルは限りなくゼロに近かったにも関わらずコール音が聞こえ始めた携帯電話を耳に押し当て、甲斐は薄く笑った。白鬼も、答えるように片目を閉じ、顎に片手を当ててニッと笑った。
「人間万事、何事も気合。これが人生の基本かな?」

<犯人宅前・合流>

 抜剣白鬼と間宮甲斐から、犯人の居場所を突き止めた旨の連絡を受けた遠野和沙、城之宮寿、鷹科碧の三人は、無事にリストの一番最後に記されていた山奥の屋敷前で合流を果たした。
 本当ならば、犯人が留守中に中に忍び込んでブツがないかどうか家捜しするつもりだった寿だが、まあ、いるならいるで直接脅しでもすればいいかと頭の中で計画を修正する。
 さて、と白鬼がとんとんと手にした錫杖の先で大地を突きながら口を開いた。
「やっかいなのは、犯人がどういう術や技を使うかがわからない点かな」
「アルラウネがどういう状態にあるかもわかりませんからね」
 和沙が、右耳のあたりに手を当てながら付け足した。
「すでに犯人の手の中にあるのか。植わったままの状態なのか。それともここにはアルラウネ自体、ないのか。いずれの可能性も捨て切れません」
 ちらりと和沙が離れた場所に立って屋敷を見ている寿へと顔を向けた。
「頭痛、しないんですか?」
 寿は、人ならぬモノの力を感じると頭痛が引き起こされるという体質の持ち主なのである。この場所からアルラウネの力を感じることができれば、その症状が出るはずだ。
 が、寿は冷めた眼差しであっさりと答えた。
「しないな」
「ということは、アルラウネがないのか、それとも城之宮さんの特異体質が役に立たないのか……どっちにしてもやはりアルラウネの有無に関しての判断はつきませんね」
「…………」
 自分としては常々厄介に思っている体質のこととはいえ正面切って役立たず呼ばわりされたことに、思わず寿の手が黒いコートの内側へと伸びかけた。そこに銃が納められている事を知っている碧は慌てて「まあまあ」となだめにかかる。仕事前にいきなり仲間割れなどされては、自分はともかく、白鬼と甲斐に申し訳ないと思ったのである。
「まあ、ここで話し込んでても仕方ないですし。だったらさっさと乗り込んで力ずくでやっちゃいません?」
「そうですね。乗り込んで吐かせたほうが早いかもしれません」
 それが彼の武器なのか――ハリセンで自分の肩を軽くトントンと叩いている碧の提案に、甲斐も頷く。
 もたもたしていたら相手に気づかれてしまうかもしれない。虚を突くのなら、こんなところで話し込んでいるよりも行動を起こしてしまったほうがいい。
(けれど、結界が張られていたということは、もうすでにここの館の主に侵入者がいるということは伝わっているかもしれない……)
 普段は金色のところ、今はカラーコンタクトを入れて黒く見せている右の浄眼を細める。少しの気の乱れも見逃さぬように。
 その甲斐の肩を傍らから軽くぽんぽんと叩き、白鬼もまた気負いない、肩の力が抜けた感じで館を見据えながら、しゃらんと一つ錫杖を鳴らした。
「じゃあ、行くとしようか」
 ここに来てもまだこの仕事に乗り気とはいえない白鬼だったが、ここまで来た以上はもうやるしかない、というのもまた事実だった。

<ケンカするほど……?>

 館内への侵入は、案外あっさりと果たされた。
 もっと入り口でなんらかの抵抗にあうかと思ったのだが、扉の鍵は開きっぱなしだったし、何かのトラップがあるわけでもなかった。扉は古びていて、たとえ鍵がかかっていたとしても蹴りの一発でも食らわせればすぐさま除去できただろう。
 入り口には呼び鈴がついていたにも関わらず、思い切りそれを無視して無断で洋館に侵入した五人は、周囲への注意を怠らず、一室一室一階をしらみつぶしに当たってみた。
 だが、アルラウネらしきものも遮断の石英らしきものも見当たらなかった。
 しかし、こうして侵入して来ているにもかかわらず、犯人側から何の抵抗もないのは、奇妙と言えば奇妙だった。まだ自分たちの存在を察知していないのだろうか?
「……一か八か、二手くらいに分かれて調査してみますか?」
 和沙が二階への階段を上がる途中で、そう提案した。それに白鬼が口許に手を当てて考え込むような眼差しになる。慎重に提案を吟味しているらしい。
「しかし、相手の力量が不明な時に戦力を分けるのは危険じゃないかな?」
「相手の戦力が私たち五人そろえたものよりも低かったとしたら、このままこっそり逃げられる可能性もあると思うんですが」
 無論、その時犯人は遮断の石英を持って逃げるだろう。アルラウネは、石英さえあればいくらでも手に入れることができる。わざわざ持って行くとは思えない。
 ふむ、と白鬼は頷く。和沙の弁にも一理あると思ったのだ。
「キミたちはどう思う?」
 他の三人に話を振る。甲斐は手にしたナイフへと視線を落とした。銀色の鋭い刃が窓から差し込んでくるわずかな光を鈍く反射している。
「そのほうが手っ取り早いかもしれませんね。相手の力が自分たちよりも上だと感じた場合、声を上げれば助けに向かうこともできるでしょうし」
「キミたちは?」
 言葉をかけられ、碧がちらりと傍らにいる寿の方を伺う。今のところ寿に頭痛の兆候は見られない。とすれば、この先にもアルラウネはいないのかもしれない。ならば。
「オレも別にいいですよ。って言っても、オレは寿と行かせてもらいますけど」
「じゃあ私も城之宮さんとこのボーヤと一緒に行きましょうか」
 穏やかな微笑を浮かべながら右手を軽く持ち上げて言う和沙に、ジロリと寿が丸いレンズのサングラス越しに冷凍ビームのような視線を向ける。
「なんで貴様が一緒に来るんだ」
「もしもアルラウネがいた場合、頭痛でダウンした貴方のフォローをボーヤ一人でするのは大変でしょう? 安全のため、しいては顔見知りのよしみということですね」
「ふん。貴様がいる方がよっぽど危険だ。後ろから攻撃されないとも限らないからな」
「お望みとあらば今ここでそうしてあげても構いませんよ?」
「……やるのか?」
「やりますか?」
「……鷹科くん、キミ、本当にこんな二人と一緒でいいのかい?」
 臨戦態勢に入る寿と和沙を見、白鬼が碧に苦笑いを浮かべて問いかける。それに、碧もやや呆れたような顔をして肩を小さくすくめた。
「まあ、抜剣さんと間宮さんにご迷惑かけるよりはマシだと思いますし」
 それに、確かに自分一人では寿が頭痛に苛まれた時にフォローしきれるかどうか心配ではあった。性格はともかく、確かに和沙がいてくれるのは有難い。
「何かあった時には助け呼びますからお願いしますね」
「苦労するね、キミも……」
 同情的な眼差しを向けてくれる白鬼と甲斐にぺこりと頭を下げる。そして頭を上げるとブンブンとハリセンを振り回し、二人の腕を引いて階段を上がって行く。
「ほらっ、そんなとこでじゃれてないでさっさと行きますよ!」
「じゃれてるって……碧、お前な……」
「……ボーヤの発言には気力をそがれますね……」
 ぎゃあぎゃあと、敵の懐に飛び込んでいるにも関わらず余裕げな三人を見送り、白鬼と甲斐は思わず顔を見合わせた。
「……大丈夫なんでしょうか、あの人たち……」
 甲斐でなくても思わず心配したくなるメンバーである。
 とりあえず白鬼もなんと答えていいものかよくわからなかったので、顎ひげを手で撫でて吐息を漏らした。
「まあ、碇さんが依頼を回すくらいだから、能力的には問題ないと思うんだけどね」
 ただ少し、人間関係面からの人選にミスがあっただけである。

<思いがけない遭遇>

「そういえば」
 ほこりがうっすらとたまった廊下を歩きながら、甲斐はふと隣を歩いている白鬼へと顔を向けた。首を傾げるようにして問いかける。
「アルラウネに遭遇するのをひどく嫌がっておられたようですが……何か理由でも?」
「あー……いや、理由というかねー」
 かりかりと頭をかき、幅の広い肩をひょいとすくめてみせる。
「なんだかイヤーな予感がするんだよ。アルラウネが男をたぶらかすとはいえ、まあ俺もそう簡単にたぶらかされない自信くらいはあるんだが」
 ならばどうして嫌な予感など感じるのだろうかと甲斐はさらに首を傾げる。それに答えあぐねるように困ったような笑みを向けると、さて、と気を取り直すように声を上げた。
 調査対象三室目のドアの前に辿り着いたのである。先に入った二つの部屋には、使った様子もないほこりをかぶった古い調度品が置かれていただけだった。
 とことん、今日は空振りに見舞われる日だなと二人してと同じ事を思う。
「次は何かあるかな?」
 貼り付けられた金がはげかけたノブに手をかける。そして、音を立てないようにゆっくりとノブを回してドアを開く――。
 途端。
 ふわっと目の前に白い煙のようなものが漂った。
「何だ?!」
 驚いて咄嗟に身を引いたが、煙はまるで生き物のようにするすると伸びてきて、白鬼の体に絡みつく。獲物を逃がすまいとするように。
 と。
 その煙が、徐々に人の形を成し始めた。二人の人間の形へと変化していく。
 人ならざるモノの気を感じ取り、すぐさま右手で印を結ぼうとした白鬼は、けれども目の前に現れた二人の人物の顔にギョッと目を見開き、動きを止めた。
 一人は自分の彼女である、紗希だった。一糸も纏わぬ姿で、細く白い腕を伸ばして白鬼の頬に触れてくる。
 そしてもう一人は。
(紗希はまだわかるっ。けど、なんで……?!)
 驚愕する白鬼の目の前に手を伸ばしてきたのは、顔見知りの青年だった。だが、顔は彼なのに、体は女性のものである。しかも、いわゆるナイスバディーというヤツだった。
 青年は、普段は優しげな面差しに今はひどく妖艶な微笑を浮かべている。黒々とした瞳は熱を帯びたように潤んでいた。
 激しく頭を振ってその手を拒絶し、白鬼は青年に向かって叫ぶ。
「なんでキミが出てくるんだ鶴来くん!」
 むろん、その叫びに青年――白鬼が今まで何回か草間興信所で依頼を請けて顔を合わせてきた鶴来那王は、答えない。代わりに、するりと白鬼の頬を白い掌で撫でた。
 寒気がするほどに、紗希も鶴来も艶っぽかった。
 これがつまり、「アルラウネの能力」なのだろう。こうして男をたぶらかし、精気を奪って行くに違いない。
 だが、やはり、どうして彼女らが鶴来那王に姿を転じたのかがわからない。なぜ紗希だけでなく、彼が出てくるのか?!
 いや。
 もしかしたら、白鬼の磨き抜かれた第六感がこんな事態を予測し、この依頼に向かうことを渋らせていたのかもしれない。
 ……そう考えたところで、どちらにしても、鶴来に姿を転じたアルラウネの意図を知る事はできないが。
 考えている間に、紗希と女バージョンの鶴来が裸体を白鬼の体に摺り寄せてくる。わわわ、と白鬼らしくもない取り乱した声が漏れた時だった。
 スパーン! という小気味のいい音がどこからともなく鳴り響いた。
 とたん、白鬼の目の前に派手に白い火花が散る。
「……っ!」
 それにコンマ数秒遅れて、なにやら壮絶な痛みが後頭部から襲ってきた。目の前がくらりと眩み、意識が一瞬飛びそうになるが、ふと、それまで自分に絡んでいた紗希と鶴来も一瞬怯んだ事に気づく。
 その怯んだ瞬間、紗希と鶴来のふくよかな胸と胸の間に、光の尾を引いて白く煙る空気を切り裂いてどこからか飛んで来た矢が突き刺さった。
『―――ッッ!!』
 声にならない悲鳴をあげ、二体の魔物は矢が刺さった部分からするすると煙の如く溶けて行く。さほど間を置くこともなく、跡形もなくその場から消え去った。
「抜剣さん!」
 すぐさま甲斐は光の弓を手にしたまま白鬼の方へと駆け寄った。
 その時、白鬼の傍にもう一人誰かが立っている事に気づいた。一瞬、二手に分かれた別チームの内の誰かかと思ったが、そうではない。
 甲斐の見知らぬ者だった。
「あいたたた……」
 白鬼は、後頭部の辺りを手で押さえながら伏せていた顔を上げた。そこでようやく、周囲にあった白い煙がすっかり消え、さっきまで目の前にいた二人の姿も消えていることに気づく。代わりに、眩い光を放つ弓を手にした甲斐が目の前に立っていた。
「……すまない、キミが片付けてくれたんだね?」
「大丈夫ですか? アルラウネに絡まれていたようですが……なんともありませんか」
「ああ、なんとか。それにしても……あれは一体……」
 なにやら釈然としない顔で頭を押さえている白鬼に、甲斐はひょいと弓ごと手を持ち上げ、白鬼の背後を指差した。
「どなたですか?」
「え?」
 言われて、白鬼もようやく自分の後ろに誰かが居ることに気づいた。
 振り返った視線の先。
 いたのは、黒いスーツの青年だった。優しげな面差しは、ついさっきアルラウネが化けていた人物、だった。
「つ、鶴来くん?! どうしてここに?!」
 驚きのあまり大声を上げる白鬼に答えず、青年は甲斐へと視線を向け、静かに会釈した。その手にはしっかりとハリセンが握られている。どうやらさっき甲斐が弓を放ったときに聞こえた「スパーン!」という音は、これだったらしい。おそらく、白鬼の頭を後ろからコレで張り倒したのだろうと甲斐は察する。
「事情は後でお話しします。それよりも先にやらなければならないことがあるでしょう?」
 言われて、はっと白鬼と甲斐は顔を見合わせた。
 そうだ。
 ここにアルラウネが仕掛けられていたということは、向こうのメンバーも危険にさらされているかもしれない。
「悪い、鶴来くん。頭叩いてくれて助かったよ」
 ひょいと手を上げて口早に言いながら、白鬼は部屋から駆け出して行く。甲斐も、青年の横を通り過ぎざまにぺこりと小さく会釈して、駆け抜けていった。

<明かされる真実>

 再び五人が合流したのは、階段の正面にあった部屋だった。
 丁度階段を上がったところから左右に廊下が伸びていたため、それぞれ二手に分かれて奥から順に部屋を調べてきたのである。
 お互いのメンツの無事を確認し、そして一斉にその視線を最後のドアに向ける。
「ここがラストですね」
「さっさと片付けようか」
 和沙の言葉に頷き、白鬼がドアを慎重に開いた。
 と、その部屋の奥にある窓の枠に、一人の黒いローブを着た男が足をかけているのが目に入った。はっと男が振り返り、慌ててそこから飛び降りようとする。
 無論、そう容易く逃がすわけがない。
 素早く甲斐が手に光の鞭「穂月」を呼び出す。窓枠を乗り越えようとした男に向けて、手首をしならせて鞭を走らせる。
 その間に、白鬼と碧も取り押さえる気マンマンで室内に駆け込んだ。しゅるりと体に鞭を巻きつけられた男は、ぐいと鞭ごと体を引っ張られて床の上に無様にごろりと転がった。それを左右から見下ろすように白鬼と碧が取り囲む。その二人の後に、ゆったりとした足取りで寿と和沙が続いた。
「さて。それでは遮断の石英を渡してもらいましょうか?」
 片膝を落とし、男に目線を近づけて和沙が穏やかな笑みを浮かべて言う。けれどもその言葉には、微笑とは裏腹に、嫌と言えば容赦しないという言外の声が含まれていた。
 部屋にトラップの如く置いていたアルラウネもことごとく撃破された後である。すっかり戦意喪失して逃げようとしていた男が、この脅しに抵抗できるはずもなく。
 力なくうなだれてうめくような声をもらした。
「私のローブの中にある。持って行きたいならば持っていけ」
「お前、一体アルラウネをどうするつもりだったんだ?」
 実は、ずっとマニアに会うことがあれば聞いてみたいと思っていたのである。それを口にし、寿は軽く靴先で男の足を蹴る。
「いろいろと恩恵をもたらしてくれるらしいが、それが目当てだったのか? ご高説、賜りたいね」
「……アルラウネを狩るのが我らの仕事だ」
 紡がれた言葉に、白鬼が眉宇をひそめた。
「どういうことだい? キミたちがその遮断の石英を奪った相手こそが『黒衣の使者』で、彼らこそアルラウネを狩る事を仕事とした者たちではないのか?」
「黒衣の使者とは私のことだ」
 ほこりっぽい床の上に転がされたまま、黒いローブが白く汚れることも気に留めず、男は頭を必死にもたげる。
「貴様らは魔女の使いなんだろう? 石英を我らに授けた者が、今更手のひら返してアルラウネ狩りをやめて石英を返せなどと……」
 男から紡がれる言葉に、面々は顔を見合わせる。
 ということは、依頼を持ってきた少年は一体何者なのだろう?
 あれこそが、実は魔女の使いだったということだろうか。
 ただ一人、甲斐だけが「ああ、やはり」という表情だった。彼は少年を一目見た時から魔女の使い魔ではないかと考えていたのだ。
 左手を右腕の肘に沿え、右手を口許に当てて和沙が目を細めた。
「アルラウネ狩りをやめろ、とはどういうことなんでしょう?」
「自分と同じ、『魔力を持つ女』という点で、狩られるアルラウネに同情したんだろう。魔女自身、魔女狩りと称して過去何度も人間に狩られそうになったことがあるからな」
 諦めにも似た笑みを口許に浮かべ、男は顔を上げた。
「魔女にとっては、アルラウネにたぶらかされる人間の男たちの方に落ち度があるとしか思えないんだろう。他の黒衣の使者は皆上手く逃れたようだが……私だけがヘマをしたというわけか」
 少し鞭を緩めてローブの中を探り、透明な石の欠片を数個取り出した甲斐は、それを自分の手のひらの上に乗せた。一対ではなくいくつか石があるのは、おそらくはスペアの分だろう。
「とりあえずこれは依頼主に渡します」
 男は無言で、ただ頭をうなだれた。
 しかし、男をたぶらかして精気を奪っていくアルラウネと、それを狩るもの。
 どちらが悪いかといえば……どうなのだろう?
 魔女の気持ちも、そして黒衣の使者たちの方の気持ちも分からないではないのだ。どちらが悪いとは、彼らには言い切れなかった。
「まあ、とりあえずはこれで依頼完了……かな?」
 いまいち釈然としないものはあったが、少年からの依頼であった「石英を取り戻して欲しい」という部分はクリアされているので、このまま麗香と少年に報告を行えば問題はないだろう。
 白鬼の言葉に頷き、黒衣の使者を縛り上げていた鞭を光へと戻すと、甲斐は石英をジャケットのポケットに入れた。

<終――師走の雪>

「で。どうしてキミがここにいるんだい?」
 洋館の外。肌寒い風がはげた木々の枝を撫でて行く。
 そのはげ木の幹に背を預けるようにして鉛色の空をぼんやりと見上げていた黒スーツの青年――鶴来那王に歩み寄ると、白鬼は問いかけた。
 今回の依頼は彼の回してきたものではない。
 とすると、彼がここに現れるのは偶然か、はたまた何かのめぐり合わせか?
 だが、そのどちらをも否定するように優美な笑みを浮かべると、鶴来はスーツの上着の胸ポケットから小さなキーホルダーを取り出した。
「今朝からずっと呼ばれているような気がしたので、辿ってきてみたんです」
 彼の手にあるのは、小さな瓢箪のキーホルダーだった。ああ、と白鬼も僧衣の合わせに手を突っ込み、中から鶴来の持つものとまったく同じ瓢箪型のキーホルダーを取り出した。
 鶴来の持つ瓢箪を呼ぶ能力を持つ、白鬼の持つ瓢箪。それは初めて鶴来の依頼を受けた時に、鶴来から渡されたものだった。
 苦く笑う。
「もしかして、キミにはあの二匹のアルラウネが誰の姿を取っていたか、視えていたんじゃないのかい?」
 人ならざるものを視る能力にはひどく長けている青年である。あの時白鬼が見ていたものを、そのまま彼が視ていた可能性もある。
 けれど、鶴来は変わらぬ笑みを浮かべたまま緩く頭を振った。
「俺には緑色の髪の女性の姿に見えました。特に誰というわけではなく」
「本当に? 本当に、かい?」
 少し身を乗り出して顔を覗き込むようにして問いかける。それに、鶴来はわずかに首をかしげた。
「なんだか念入りにお聞きになるんですね。もしかして」
 くすりと彼にしては珍しく、悪戯っぽい笑みを浮かべて白鬼の顔を覗き込み返し。
「俺のようにでも見えたんですか?」
「…………」
 やはり視えていたのではないかと疑いの眼差しを向ける。
 大体、アルラウネの呪縛から目を覚まさせるにしては、あまりにもあのハリセンチョップには威力がありすぎた気がするのだ。もしあの時のアルラウネが自分の顔をした女に視えていたとしたら、それは確かに鶴来でなくてもいい気はしないだろう。それが自分のヴィジョンだと感知されてしまったのなら、思い切り頭を張り倒されても仕方ないと思う。
「……まあいいけどね」
 ひょいと肩をすくめ、手にした錫杖を軽く振る。
「それにしても今回はほとんど役に立たなかったなぁ」
 能力をふるうにしても、アルラウネの呪縛にかかってしまったため、結局は甲斐に助けられた形になってしまった。
 だがまあ、従弟への土産話はしっかりできた。とりあえずはそれでいいだろう。きっとおとぎ話を聞く子供のような顔で従弟は話を聞くに違いない。
 ……もちろん、自分が見たアルラウネの姿だけは、死んでも口にする気はなかったが。
「さて。せっかく仕事以外のところで会ったんだ、なにかあったかいものでも食べに行こうか?」
 両腕を空へ向けて持ち上げて軽く伸びをすると、ポン、と鶴来の肩を叩く。
「頭はたいて助けてくれたお礼だ。何かおごるよ」
「いいんですか? ……実はあまり手加減せずに殴ってしまったんですが」
「あれくらいの威力がなきゃあ、そうそう簡単に呪縛なんて解けやしなかったさ」
「後で怒られるかと思ったんですが」
「なんだ、俺のこと、そんなに心が狭い男だと思ってたのかい?」
「いえ、そうではなくて」
 苦笑をこぼし、それではお言葉に甘えます、と告げる鶴来の頭を大きな手でわしゃわしゃと撫で、山道を歩き出す。
 その鼻先に、ふわりふわりと白いものが落ちてきた。
 雪だ。
「どうりで冷えると思ったら」
「もうそんな季節なんですね」
「師も走る師走だ。もうすぐ今年が終わるな」
 思えば、今年の最初から彼との付き合いも始まったのである。そう考えると、一年が過ぎ行くのをやけに早いと思ってしまう。
 はらはらと桜の花弁のように舞い落ちてくる雪を見上げて目を細めている鶴来を見、ぽんとその背中を叩く。
「さ、行こうか」
「そうですね」
「何か食べたいもののリクエストはないのかい?」
「……そうですね。おしることかぜんざいとか……?」
「ああ、キミ、甘党だったっけ。栗入り希望かな?」
「そうですね。入っていると嬉しいです」
 他愛もない会話をかわしながら、白い冬の精霊が舞い降りてくる中を肩を並べて歩いていく。

 二人の頭上には、重い鉛色の空がどこまでも広がっている。
 冬はこれから、本番を迎えるのである。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0065/抜剣・白鬼(ぬぼこ・びゃっき) /男/30/僧侶(退魔僧)】
【0454/鷹科・碧(たかしな・みどり)  /男/16/高校生】
【0751/遠野・和沙(とおの・かずさ)  /男/22/掃除屋(なんでも屋)】
【0763/城之宮・寿(しろのみや・ひさし)/男/21/スナイパー 】
【0803/間宮・甲斐(まみや・かい)   /男/22/陰陽師兼暗殺者(バイトでカメラマン)】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは。ライターの逢咲 琳(おうさき・りん)です。
 この度は依頼をお請けいただいて、どうもありがとうございました。少しでも楽しんでいただけましたでしょうか?

 抜剣白鬼さん。またまたまた(以下略/笑)お会いすることができてとてもうれしいです。
 今回も参加、どうもありがとうございました。
 プレイングの着眼点がとても面白かったです。
 そして、なにやら不安を抱きつつ消極的に依頼に参加されていたのですが、理由はあんな感じでよかったでしょうか?(笑)<やけに恐ろしい理由になっていますが(笑)。
 なるべくあの部分では笑っていただければいいなー…と思いつつ(汗)。
 少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 よろしければ、お手隙の時にでもこの作品についての感想などいただけるととても嬉しいです。
 それでは、また会えることを祈りつつ。
 今回はシナリオお買い上げ、本当にありがとうございました。