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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:占拠

■ オープニング ■

 数枚の写真。
 そこには同じ顔をした二人の少年が写っていた。
 石岡家の双子の中学生だ。
 学生証の中で無表情の顔を傾けているのは兄、悠太。『三年二組四番』。弟、玲二は『三年七組二番』。こちらは笑っていた。
 入学式や遠足、それに日常風景、どの写真を見ても、無表情と笑顔と言う対照的な表情の違いが伺えた。悠太の方は常に首を少なからず傾けている。恐らく癖なのだろう。
 草間は一枚の写真を手に取った。運動会を撮した物のようだ。ハチマキと半袖のTシャツ。ゼッケンには『4』と『2』と記されている。出席番号に違いない。しかし、何か違和感を感じた。
 この写真だけ玲二が首を傾けているのだ。
 
 依頼人──悠太は、その写真を前に溜息を落とした。
 
「僕の中に玲二がいるんです。玲二は一月前に病気で死にました。それから変な事が起きるようになったんです。駅前を歩いていたはずなのに、気が付くとデパートの中だったり……。話した記憶の無い事を友達が知っていたり。きっと玲二が僕の体を使って、やりたい事をやってるんです。最初は、玲二の為に我慢をしました。玲二が生きていけるなら、それでもいいって。でも、その時間がどんどん増えていく……。玲二はきっと僕を乗っとるつもりなんだ。前から玲二は同じ顔をした僕の出来の悪さを嫌ってた。勉強も運動も玲二の方がずっと出来て……、玲二は僕と間違えられる事にいつも腹を立てていました。きっと、死んで良かったのは僕の方だと思ってるんです。お願いです──玲二を僕の中から追い出して下さい。このままでは僕が消えてしまう!」
 悠太は真剣な顔で、草間をジッと見つめた。
 何か──何か見落としている気がする。だが、それが何なのか草間にもよく分からなかった。
「除霊だね? しかし、俺は君をよく知らない。君は本当に悠太君なんだな? 玲二君ではない証拠は?」
「証拠……ですか。急に言われても……。僕らは親も間違うくらい、よく似ていました。それほど、違いがなくて。あるとすれば性格とか、頭の出来とか」
「癖や趣味は? 君だと言う証拠だったら何でもいいんだが……」
 悠太は小首を傾げ、天上を見上げた。草間の目がチラリと悠太を見た。
「……玲二君は今どうしてる?」
「寝てます。玲二が起きてここにいる事を知ったら、きっと混乱するような事を言い出すかもしれない。僕が玲二で、玲二が僕とか。そうなったらきっと僕は負ける。僕の方が飛ばされてしまう」
「……分かった。そういう事なら彼が寝ているうちに、手を打とう」
 草間が頷くと、悠太は顔を傾け安堵の笑みを浮かべた。
 やはり奇妙な感覚は抜けなかった。
 
 
 
 ====================================================
 



 手を組み、そこへ顎を乗せ、草間は二人の陰陽師の動きをジッと見つめていた。その前には悠太が座っている。
 陰陽師達は悠太の中にある『もう一つの魂の有無』を調べていた。
 霊視を行っているのは、少年でありながら少女でもあるという複雑な事情の持ち主、朧月桜夜(おぼろづきさくや)。軽くウエーブがかった髪に、勝ち気な目をしている。
 一方、形代を使っているのは、真名神慶悟(まながみけいご)だ。洗練され尽くした伊達居と、無数に開けた両耳のピアスが、その身を軽そうに見せているが、それも闇を寄せ引く為と、気づく者は多くない。
 悠太は二人の指示に大人しく従っていた。
 慶悟の持つ形代には、悠太の名前と髪が貼り付けられている。撫で物と言われる陰陽師の呪法の一つだ。憑いてしまった呪いや災いを吸収するいわば身代わりにもなる。悠太の中に玲二がいれば、この人形にも何らかの変化が現れるはずだ。
 まもなくして──人形の胸に二つの穴が開いた。
 陰陽師達は顔を見合わせる。
「……確かに嘘じゃないわね。あたしの方もそう出たし」
「ああ。二人いる。人格障害の線も疑っていたんだが……」
 悠太は自分の言葉が実証された事に、ホッと胸を撫で下ろした。
 それを横目に慶悟は形代を内ポケットへとしまう。
 歯切れが悪い。
 草間はそう感じた。
「他に……何かあるのか?」
 二人は静かに頷いた。
「これは思う以上に厄介かもね」
「見分けが付かない。二つは同じ波動を持っている」
 
====== 占拠 ======
 
 ■■ 証言一『外科医 井頭』 ■■ 

 一般に一卵性双生児は互いのクローンと言われている。何故なら二人の遺伝子は全く同じ。そして同じ環境で育った一卵性の双子の場合、性格、学力など、全てに大きく差の出る事は無いと言う。
 もちろん例外はあるだろう。悠太の話を信じれば、彼らがそれに当たるかもしれない。だが、多くは最初から遺伝子に組み込まれた情報通り、『鏡に映った自分以上に似た存在』になるようだ。
 一夜明けた草間興信所。
 カチカチとマウスをクリックしていた黒髪の背中が、草間を振り返る。
 隙が無く、優しい──切れ長の瞳。恐らく惑う男は後を絶たないだろう、そんな眼差し。
「武彦さん。まだ何もしてないでしょ? 悠太君との約束の時間まで半日。出来るだけ証言を集めましょう」
 打ち出された資料を手に、シュライン・エマは探偵を軽く叱咤した。草間は小さな溜息をつき、ネット経由で落とした双子に関する情報をシュラインから受け取ると、礼代わりにもう一つ溜息をつく。迷走。
「とりあえず、私は病院へ行って、玲二君の事を聞いてくるわ。運動会が出来たわりに、病死なんていうのも妙だし……」
「ああ、頼む。どこかで彼らを見分ける証言が得られる事に、期待しているよ」
 シュラインは草間の前向きな発言に、微かな笑みを浮かべて頷いた。
「それで……違和感の原因は分かったの?」
 草間は首を横に振った。
「君が言っていた記憶障害の事だが……。ストレス、劣等感、強迫観念、それに自分が死ねばという自責の念。白鬼と慶悟も同じ事を話していた」
 サラリと流したその名前は、良く知ったものだった。
「でも、魂は二つあった。作り出された人格では無いのよね」
「ああ」
 草間は資料に目を落とした。
「その方が良かったかもしれないな」
 呟いた探偵の背に触れ、シュラインは苦笑で事務所を発った。

「貴女がシュラインさん? 随分と綺麗な方がいらっしゃいましたね」
 その病院は坂の途中に佇んでいた。かなり大きな病院で、北と南に分かれた館は渡り廊下で繋がっている。北の二階は南の三階へ結びつき、互い違いになったそれはまるで迷路のようだった。
 シュラインはその中にある診察室の一つを尋ねた。『外科3、井頭』と書いてある。ドアこそ違うが隣室とは、簡素なパーテーションで仕切られているだけだ。声の大きなお爺さんが、背中が痛いと訴えているのが聞こえてきた。
「石岡玲二君。確かに私が受け持ちましたが」
 井頭はクルリとイスを回転させた。年は四十代後半だろうか。中肉中背で髪は黒々としている。銀縁の眼鏡をかけた、いわゆる生真面目な顔つきだ。
「あれはまあ、簡単に言えばスポーツ中の突然死です。親御さんの話では、もともと不整脈を患っていたようですね。ただ、日常に差し支えないものなので、通院もクスリも必要なかったとか。引き金、というと大げさかもしれません。授業中に突然倒れたと言う事で変死扱いになりまして、ウチに運び込まれたワケですよ」
「では、『受け持った』と言うのは……」
「ええ、司法解剖です。委託で時々やってくるんです。免許を持ってて、手が空いてたのが私だった。まあ、それだけなんですがね。だから生前の彼がどんな子なのかは知りません」
 井頭は肩をすくめる。
「運動中の突然死は、ままある事なんです。年寄りに多いと思われがちですが、以外にも十代男性の方が傾向として高いんですよ。彼の場合は、マラソンの授業だったようですが、これも倒れる原因としては一番多いですね。心疾患を持っていれば、尚の事」
 玲二は運び込まれた時、体操着のままで顔全体に大きな擦過傷があったと言う。
「転んだ時に擦りむいたんでしょう。砂が傷口に埋まっていました」
 そう言って井頭は思い出したように首をひねった。何かを見ているようで、見ていない目をしている。
「あれ? 彼は確か双子……」
「ええ……弟です」
「ああ、そうだ。いや、その日迎えに来たもう一人の子も、頭に包帯を巻いてましてね。それが丁度、彼が負った怪我と同じ場所で。双子っていうのは不思議なもんですね。こればかりは医学では解明できないな」
 井頭は、ハハハと笑って机の上のカルテを手に取った。それが無意識の合図だろう。外では患者が待っているようだ。シュラインは礼を言い、診察室を後にした。

 ■■ 追跡 ■■
  
 二台の高級車。四人という家族には、少し大きすぎる一戸建て。
 悠太の部屋は、その家に二階にあった。周囲が暗くなり、明かりを灯す時間になっても、彼の部屋以外にそれが灯る事は無かった。
 やっと居間に電気が点いたのは、午前十二時を過ぎた頃だ。母親が仕事から帰ってきたのだ。その頃には悠太の部屋の電気が消えていた。
 父親は海外赴任で留守。母も家を空けがちのようだ。近所では『しっかりした良く出来た兄弟』と彼らは呼ばれていた。
 朝は母親の方が悠太よりも先に外出していった。そして残された悠太は学校へは行かなかった。
 家を出た悠太は肩からカバンをさげ、漫画喫茶へと向かった。店に入る悠太に手慣れた所はない。どこかぎこちなくて辿々しい。さぼると言う事が常では無さそうだ。キョロキョロと辺りを見回すと、窓から一番遠い席に腰を据えた。
「彼は本当に悠太なのか……?」
 シルバ・J・レインマンは眉根を寄せた。
 銀髪に金の瞳。超一級の賞金首ばかりを狙って追う、ブラックリストハンターの肩書きを持っているシルバは、そのジャケットの内側に、仕事の相棒と言っても過言ではない『コルトパイソン』を忍ばせていた。
 ザッと店内を見渡す。シルバは数冊の雑誌を無造作に選んだ。悠太がよく見える席を選んで腰掛け、ゆったりとコーヒーを飲む。くつろいだ姿勢から、日頃の鋭い気は消した。
 悠太はコミックを一山持ち出し、表情の無いままにそれを読み終えた。シルバはそれとない素振りで、悠太の様子を伺っていた。
 あの無表情。
 やはり悠太なのだろうか。
 彼が席を立ち店の外へ消えると、シルバも静かに席を立った。
 次に彼が向かったのは、レンタルビデオ店だった。最新作と書かれたコーナーで、アクション物を物色している。
 シルバは店に入らず、店の外からそれを見つめていた。
 今のところ、おかしな様子は見られない。ごく普通の少年だ。
 まもなくビデオを借りて出てきた悠太は、ブラリと宛てもなく雑踏を彷徨った。シルバも人混みに紛れてその後を追う。
 大きな交差点に差しかかった。信号が赤に変わる。
 シルバは交差点に近い、ペットショップのウィンドーを覗き込んだ。映り込んだ雑踏に彼が見える。店の中では愛らしい子猫や子犬が、シルバの前で欠伸をしていた。
 青に変わり、人が流れ出す。悠太はスーツ姿の会社員とぶつかり、肩のカバンを落とした。拾い上げようと身をかがめた一瞬、シルバは彼と目があったような気がした。
 悠太が少し早足になった。
 気づかれたのだろうか。
 曲がり角を曲がる。
 追って曲がった。
 シルバはハッとして立ち止まりかけた。
 悠太がこちらを振り返って立っていたのだ。
(しくじったか)
 シルバは何喰わぬ顔で悠太の横を通りすぎた。
 突然の絶叫。
「まただ! もう止めてくれ!」
 シルバは悠太を振り返った。
 彼は頭を抱え、地に突っ伏して泣き叫んでいた。

 ■■ 証言三 『母』 ■■

 双子の母は、奈津子と言った。
 良く時計を気にする女だ。
 時間が惜しいのか。それとも錫杖を持った顎髭の大塊に、落ち着かない思いなのか。
 抜剣白鬼には分かっていた。
 どちらも、なのだ。チラチラと時計ばかりを気にしている。
「あの子が何かしたんでしょうか?」
 タイトから覗く白い足。香水や化粧には余念が無く、態度は事務的かつ威圧的。ダーク系のスーツを着こなし、キビキビとした動作からは、かなりのやり手を思わせる。二人の母は、小さな外資系会社の社長だった。
「いや。『した』と言うより、『されている』になるかな」
 その声。まるで浮き雲のように掴み所が無い。
 まだ三十路に届いたばかりの白鬼の落ち着きは、三十も半ばの奈津子を遙か上回っていた。全ての経験を比べても、恐らく白鬼に勝てないだろう。それを気取っているのか、飄々とした白鬼の態度に、少なからず対抗心を燃やしているようだった。
「されてる? あの子、イジメにでもあってるんですか?」
 「いいや」と首を振った後、白鬼は二人の部屋をグルリと見渡した。
 まるで線対称だ。デスク、ベッド、タンス。二つずつある物は、全て左右の同じ場所に配置されている。どれもきちんと整頓され、無機質な感じがした。
 白鬼は左の机に移動した。ノートと教科書が数冊づつ上に置いてある。教科書は『数学。』。裏返したそこには『石岡玲二』と書かれていた。
「その教科書、玲二があんな事になった後、学校から引き取ってきて、私が置いたままなの」
 と、なるとこちらが玲二の机だろう。
 白鬼はなるほどと頷いた。
「ところでこの部屋に何か問題が?」
「いや、大した事は無いんだが、『物の怪が出る』と聞いてね」
 サラリと言う。もちろん嘘だ。
「『モノノケ?』」
 奈津子はイライラとした反応を見せた。そして時計を見る。
 白鬼は全く気にした風もなく、机の上のブックエンドに並ぶ教科書を一冊抜いて、パラパラとそれをめくった。
「だが、どうやら気のせいだったようだね。『静かで何もない』」
 手にした物を元に戻す。
「当たり前です。馬鹿馬鹿しい。あの子が本気でそんな事を?」
 その脇にある教科書に目が止まった。白鬼はそれを引き抜く。『数学。』。裏には『石岡悠太』と書かれている。
「……この机は誰の机かな?」
「玲二よ」
 白鬼は机の横の壁を見た。貼ってある時間割りは『三年二組』とある。悠太のものだ。
 右の机に移動した。
 同じようにブックエンドから数冊引き出しそれを裏返す。玲二の名前が書かれていた。
 奈津子は嘘をついているのだろうか。置かれている物から考えれば、こちらが玲二の机になる。
「もう一度確認したいんだが、向こうが悠太君で、こっちが玲二君で間違いないんだね?」
「ええ。幼稚園の頃からずっと、右が悠太、左が玲二って決まっているわ」
 幼稚園の頃から──
 背中で聞いた声に、白鬼の表情が一瞬消えた。
 奈津子は子供達のしていた事に気づいていない。
 クルリと振り向き、白鬼は言った。
「二人の特徴、それに違いを聞かせてくれないかな」
 声音こそ優しいが、視線は厳しい。
 奈津子は気圧された様にたじろいだ。
「違いと言っても、あの子達は双子です。大きな差なんてないわ。ただ」
「ただ、なんだね?」
「ケンカをした時だけ『悠太の方が明るい』とか、『玲二の方が頭がいい』とか、そう言った事を言っていたかも。恐らく本人達の中ではそうだったんでしょう。私には同じに見えましたけど」
 白鬼は草間の話を思い出した。確かに、悠太は玲二の事をそんな風に言っていたようだ。
「隣の芝生は青い──きっとそれよ。同じ顔だから余計に気になったんじゃないかしら」
 奈津子はまた時計を見る。終始一貫して、まるで他人事のような話ぶりだ。
「申し訳ないんですけど、そろそろ会議の時間なんです。主人から紹介してもらった会社だし、遅れるわけにはいかないの」
 半ば呆れる白鬼に、奈津子は言った。
「そう言えば、悠太にはおでこにホクロがあるの」
「それで見分けていたと?」
「ええ」
 もはや、何も言うべき事は無かった。

 ■■ 証言四 『二組担任』 ■■

 授業中ともあって、校内は静かだった。
 慶悟は悠太の担任である『丸山』のいる職員室へと向かった。
 廊下の窓から見える校庭に、同行者の桜夜の姿が見える。七組担任『茂井』は体育の教師だ。彼女は彼に玲二の話を聞きに行っていた。
 職員室は階段を登って、直ぐ左にあった。『挨拶を忘れずに』と張り紙された、ドアの中へと入る。
 部屋の中の人気はまばらで、探すまでもなく丸山は知れた。奥の窓際で初老の男性が立ち上がり、慶悟に頭を下げたのだ。
「あの説明で迷わず来れましたか」
 ニコリと笑う白髪と顔の皺。少し曲がりかけた背中は、やけに小さかった。丸山は隣の教員のイスを慶悟に勧めると、自分も腰を下ろした。
「さて……石岡悠太君がどうしましたか?」
「ああ。早速で悪いんだが」
 慶悟は草間から借りてきた運動会の写真を差し出した。丸山は、うんうんと頷いて遠い目をする。
「今年の五月の写真ですね。こうして二人が並ぶ事はもう無いんだと思うと、寂しい気持ちになりますよ。彼らは同じ顔をしていますから、忘れる日というものがありませんし……。もう独りになってしまったというのに、未だにどちらか迷う事があるんです」
 丸山は寂しげに笑う。
「双子だからなんでしょうか。彼らはとても不思議な子でした」
「例えば?」
「ええ。片方が具合が悪いと訴えると、もう片方も早退する、と言った感じで。玲二君が亡くなった日は特に……。あの日は私が受け持っている国語の授業でしたので、良く覚えています。水曜日の四時間目。突然、石岡君がイスから転げ落ちましてね」
 慶悟は目を細めた。
「原因は何だ?」
「さあ。てんかんの発作のような……。とにかく突然気を失って倒れたんです。教室の中が大騒ぎになりました。落ちた時に額をどこかにぶつけたようで、もの凄くたくさんの血を出しましてね。生徒達から悲鳴が上がる程でした」
 そして同じ頃、校庭でも玲二が倒れたと大騒ぎがあった。二人は同じ救急車で同じ病院に運ばれ、その後、玲二だけが別の病院へと移されたという。
 確かに、別の場所で動いていた二人が、同時刻に揃って倒れるというのは不思議な話だが……。
 問題はこの一枚。運動会の写真。つまり『入れ替え』について、だ。
「この写真に戻るが……これを見ておかしいと感じる事があれば言って欲しい」
「はて……。出席番号は間違っていないし、ハチマキもちゃんと付けているし……」
 写真に顔を近づける。
「そう言えば、これは玲二君が顔を傾げていますねえ。悠太君も授業中にこうしているのを、よく見かけましたが……癖まで一緒だったんでしょうか」
 丸山は手の平でゼッケンを隠し、ホラと言って慶悟にそれを見せた。
「こうすると、どちらか本当に見分けが付かないでしょう? こちらが──」
 ニコリと笑った丸山は、首を曲げていない彼を指さした。
「悠太君です。このゼッケンだけが唯一の違いですよ」
 慶悟は丸山の顔を見る。
 疑う事など知らない老人の顔がそこにあった。
「彼らが入れ替わっていると言う事は?」
「まさか! そんな事をして一体何になると言うんです? 入れ替わるなんて、絶対にありえません」
 丸山にとって二人は『可愛い生徒』達以外の何者でもないのだろう。どこまでも人の良さそうな瞳は、慶悟の言葉に傷ついたようだ。
 慶悟が立ち上がりかけると、丸山は寂しそうに目を細めた。
「一人ぼっちになって寂しいでしょうね」
 ヒトリジャナイサ
 そんな皮肉めいた言葉が慶悟の脳裏に浮かんで消えた。
 
 ■■ 証言その五 『七組担任』 ■■
  
「探偵? 卒業生かと思ったよ」
 茂井は引き締まった体に、上背もある若い体育教師だった。
 年は二十代後半だろうか。生徒達に動いているよう指示を出し、向き直ったその顔は、桜夜の出した名前に暗く沈んでいた。
「玲二の事か。あまり話したくないな。亡くしたばかりで、俺も辛いんだ。それに俺に聞くより、悠太やご家族に聞くのが手っ取り早いんじゃないのかい?」
「色々事情があって」
「事情ねえ」
 茂井は困った顔で頭を掻く。
「俺の受け持ちの生徒で、しかも俺の授業中。走ってたと思ったら、倒れてそれっきりだ。人間なんて呆気ないもんだな」
「玲二君は倒れるような病気を持っていたの?」
「春の検査で『不整脈』とか何とか……。でも運動会もプールも普通に参加してたから、大した事無かったんだろう? おい、そこ!」
 休憩している生徒に向かって、茂井は声を荒げた。
「困ったもんだ。目を離すとすぐにサボる」
 ブツブツと愚痴をこぼす茂井に、桜夜は肩をすくめた。
「それで……その運動会で何か気が付いた事は?」
「いや。俺は運営の方に回ってて、生徒達の傍にはいなかった」
「そう」
「アイツらで印象深いのは……同じ春にやった歯の検査だな」
 桜夜は眉間に皺を寄せる。
「は?」
「ああ、『歯の健康優良児』って事で二人揃って表彰されたんだ。今まで歯医者に通った事が無いらしい。スゴイ事だと思うだろう?」
 茂井は校庭を走る生徒を見つめている。
 二チームに分かれた少年達は、ボールを追って走り回っていた。今日の授業はサッカーのようだ。細めた目は、そこにいない『彼』を追っているのだろうか。小さくついた溜息は微かに白かった。
「他に覚えてる事は……?」
「他に……いや、普通の子さ。それに一クラス四十人もいるし、全員を細かく見てはいられないからな」
 それはそうだろう。担任と言っても四六時中一緒にいるわけではない。ホームルームに専門課程。それ以外の時間は、受け持ちから離れている。
「俺よりアイツらの方が知ってるんじゃないか?」
 茂井はそう言って生徒達を呼び寄せた。集まってくる顔は、どれも面倒臭そうな極みだ。
「玲二の事を聞きたいそうだ」
 生徒達の目が一斉に桜夜へ向く。
「玲二? おネエさん、一体何?」
 ゴホン、と茂井は咳払いをした。
「余計な事は気にするな。お前達、何か玲二と悠太について知ってる事はないか?」
 生徒達は互いの顔を見合わせ、口ごもっている。その中の何人かが、ニヤニヤと薄笑いを浮かべた。
「えー……。言っていいのかな」
 茂井は話せと顎で促した。
「アイツらさあ、よく分かんないんだ。話が合わない時があるんだよ。入れ替わってたりとかしてたんじゃないの? 面倒だから、俺はあまり遊ばなかった」
「あ、俺も。絶対、ヤツら入れ替わってたよ。今日は機嫌いいなあ、とか思うと、飯の後に突然仏頂面になってたりさあ。なんか信用できないっていうか」
「そうそう。例え本人だったとしても証拠が無いし、騙されてるみたいで感じ悪いじゃん」
「言えてる。結局どっちがどっちなんだか、本当のところ誰もわかんないよな」
 生徒達の話は尽きそうにない。茂井は眉根を寄せ、口元をギュッと引き締めた。
「お前達、バカな事を言うもんじゃない」
「だって、話せって言ったのは先生じゃん」
「もういい! 散れ! 走ってろ」
 来た時のように、舌打ちして校庭に散らばっていく生徒達を、茂井は鼻息も荒く見つめている。
「子供の考える事は分からないな」
 やれやれと首を振った。
「そう言えば、玲二君の方が出来が良かったって聞いたんだけど」
 桜夜の問いに、茂井は顔をしかめる。
「誰から聞いたんだい? まあ、確かに玲二の方が少しだけ出来たかもしれないが、レベル的に見てそう大差は無かったよ。丸山先生──悠太の担任の先生と話した事があったが、二人の志望校は一緒だったし」
「本当?」
「ああ、見てみるかい? 調査票」
 桜夜が頷いた所で、授業の終了を告げるチャイムが鳴った。
  
 ■■ 混乱 ■■
  
「つまり、どういう事か……一度整理してみよう。もし、俺の言う事が間違っていたら訂正してくれ」
 草間は五人の顔を見回した。話を寄せ集めては見たものの、そこに生まれたのは雲霧。どの表情も厳しい。
「まず、君から行こう。シュライン」
 シュラインが、先を促すように頷いた。
「君が病院で聞いてきた内容は、『玲二は心疾患を患っていたが、日常生活に支障は無かった。死因は『突然死』であり、その病気が引き金になる事はあっても、それ自体が原因とは言えない……』」
「ええ」
「当日、玲二は顔に大きな擦り傷があり──」
「悠太君も同じ部分に怪我をしていた」
「それで慶悟の話に繋がるわけだな」
 草間はシュラインから慶悟へと視線を移す。
「ああ。玲二が倒れた時間に、悠太はイスから転落した。その時に怪我を負ったらしいが……ここに問題が一つ」
「負った傷の状況次第では、ここへ来たのが『悠太』だという確証が得られなくなる、か」
「当日に『入れ替わり』が無かったとは言えない。もし、その怪我で身体的特徴が消えているとしたら……」
「ここへ来たのが誰かもハッキリしなくなってくるわね」
 たくさんの写真を前に、シュラインはそれを指でずらした。どれを繰っても、同じ顔が現れる。シルバはそれを目でなぞっていた。
「玲二が既に悠太の躯を乗っ取っているのか、それとも本当に死んだのは悠太の方で、玲二の躯を乗っ取ろうとしているのか」
 桜夜が首を振る。
「個人を特定する歯の治療痕も存在しないし。どこで見分けたらいいって言うの?」
 打開策を探して一同は黙り込む。ふと、白鬼に薄い笑いが貼り付いた。
「どうかしたのか?」
「いや。我々がここで悩むのは当然なんだがね。玲二が生きていたら、彼女達はもっと大変だったんじゃないかな」
 双子の母親──奈津子とその夫の事だ。仕事に明け暮れ、自分達の子供が部屋の中で居場所を変えた事にすら気づいていない。
 奈津子が玲二の机だと言った場所は、悠太が使っていた。
「死後に入れ替えたと言えばそれまでだが、だとすればあの教科書。他の荷物と一緒に移動させるはずだとは思わないかい? 『入れ替わり』のきっかけが、家の中にあったような気がしてならないよ」
 桜夜が静かに溜息をつく。
「ひどい話ね」
「二人の担任も母親同様、全く『入れ替わり』に気が付いていない」
 慶悟も呟く。
 そして、友達は彼らを信用していなかった。
 一体、どこに真実を求めたらいいのだろう。
 霧だ。
 全てを覆い尽くす霧。混乱と迷走はどこまでも続く。
「君が逢っていたのは、『悠太君』だったそうだが」
 白鬼はシルバを見た。シルバは、やはり首を振る。
「話を聞く限り、だ……。家を出ていたのが『玲二』で、その後が『悠太』だったようだ。戻った直後は、一人で歩けない程に取り乱していた。草間の『手』だと伝えると、安心したようだが……」
「演技かもしれないと?」
「そうは見えなかったが、そうではないと断言も出来ない」
 深い溜息が全員から漏れる。
 慶悟はタバコに火を付けると、ソファーに深くもたれかかった。銜えただけの『それ』から煙が天井に立ち上っていく。
「確か、入れ替わっている間は記憶が無いんだったな」
 シルバは眉を寄せて腕を組んだ。
「そうか。だとすれば、草間の名が分かった『悠太』は、少なくともここへ来た『悠太』と同一人物になるな。同様にこれから来る彼が、俺を知らなければ──」
 シュラインが頷く。
「もう一人の彼、って事になるわね」
「それと……これが切り札になるかもしれない」
 草間はヒラリと一枚の書類を手にした。文字で記した道しるべ。それは弟の名前で書き込まれた『進路調査票』だった。

 ■■ 最後の証言 ■■
    
 悠太がやってきたのは、午後七時を回った頃だった。重そうな表情に、赤い目をしている。
 シルバを見ると、ペコリと頭を下げた。
 聞くまでも無い。
 彼は同一人物と言う事になる。
 草間は悠太をソファーに座らせると、最後の確認を取った。
「君は本当に『悠太君』で間違いないね?」
 悠太は不安そうに一同の顔を見る。
「はい」
「君の中に『玲二君』がいて、君の体を乗っ取ろうとしている」
「はい。玲二は死にたくないんです。代わりに僕が死ねばいいと思ってる」
 視線を机に落とし、悠太は小首を傾げた。草間は続ける。
「しかし、君が言うような出来の違いは、無かったと聞いたが」
 悠太の表情に険が走った。
「ここにいる皆さんに、同じ顔をしている僕達の気持ちが分かりますか? テストだって十点違うだけで、走るのだって少し遅いだけで……それだけで、優劣をつけられる僕達の気持ちが分かりますか?」
 一つ一つの顔をゆっくりと見渡し、そして目を伏せる。
「玲二が運動会で二位を取った時、僕は四位でした。それを間違われた時、玲二はすごく怒ってました」
 シルバの厳しい声。
「しかし、二人は頻繁に入れ替わっていた。間違われて当然じゃないのか?」
「入れ替わらなくても、見抜けるヤツなんていなかった。僕達の親でさえ、僕達が入れ替わっている事に気が付かなかったんです。気づいて欲しくても、誰も気づかない。ただそういう時だけ、区別されるんだ」
「それがイヤで入れ替わりを?」
 シュラインの言葉に、悠太はコクリと頷いた。認めて欲しいという気持ちと、優劣を付けられる事への反発。
「母さんは、まだ気が付かない」
 そして寂しさ。
 俯いた悠太を、桜夜はジッと見つめる。
「あの日、亡くなったのは確かに弟の方なのよね? あなたの体には額にホクロがあるって聞いたけど」
「まだ疑うんですか? あなた達もこれを見せなきゃ納得しないんですか?」
 悠太も必死だった。半ば叫びながら、前髪をあげる。
 あの日負った怪我と思われる白く浮いた皮膚と、小さな黒い点。
 体は確かに悠太のものだった。
 ボロボロと涙をこぼす姿を見ても、草間は考えあぐねている。
 しばらくして、一枚の紙とボールペンを悠太の前に置いた。
「すまないが、ここに名前を書いてもらえるかい」
「はい」
「できれば、二人の名前を二回ずつ書いて欲しい」
「僕と玲二のですか?」
 そうだ、と草間は頷いた。
 六つの視線が、悠太の手元に注がれる。横、縦、斜め。悠太の文字は払うような線で綴られていく。書き終わった後、悠太は首を傾げた。
 草間は手にした紙と取り出した調査票とを見比べ、それを全員に回した。
 静けさの中、最後の白鬼から草間に戻る。
「違う『筆(て)』のようだね」
 他の顔も頷いた。
 二枚の紙に書かれた『玲二』の文字。その筆跡は一致しなかった。調査書の文字には払いと留めの区別がついているが、それが、今書いたばかりの紙には見られない。線の終わりが走り抜けているのだ。
 悠太は比べられる事を知らずに名前を書いている。真似る事は不可能だろう。だとすれば、これが偽りのない本人の筆跡ということになる。
「どうするね」
 白鬼の言葉に、草間は黙り込んだ。
 今ならば、このまま帰してしまう事も出来る。そうすれば、万が一にも『間違い』というものを起こさずに済むのだ。だが、果たして本当にそれでいいのだろうか。悠太の中に玲二がいると知っていて帰せば、助けを求めに来た者をみすみす見殺しにしてしまう事になる。
 身体的特徴、筆跡、癖。それは悠太を指していた。
「彼の言う事を信じるしかない。慶悟、桜夜」
 白鬼を見る。
「頼む」
 それは苦肉の策とも取れる、草間の決断だった。

 ■■ 悠太と玲二 ■■
    
 全て終わった。
 除霊という名の浄化は済み、玲二は抗いも弱く上へ昇った。
「本当にありがとうございました」
 深く頭を垂れた悠太に、だが草間の視線はどこか厳しかった。目を細め、出て行こうとする背中を見つめている。
 シュラインは草間の態度が気になった。声をかけようと口を開いた矢先──
「玲二君!」
 草間は強い口調で彼を呼び止めた。ハッとした五人の目が、草間から悠太へと移動する。まるでスローモーションのように緩慢な動作で、悠太はゆっくりと振り返った。
 微かに傾げた首。
 草間の寄せた眉根が戻る事は無かった。
「いや、すまない。『悠太』君だったね。気を付けて帰ってくれ」
 裕太は頷くと、静かに戸を開け出ていった。
 残された者達の間に、嫌な空気が流れている。草間は視線を落としたまま、何かを考えているようだ。全ての視線を受けたシュラインが、たまりかねて草間の袖に触れた。
「……どうしたって言うの? 武彦さん」
「悠太君で納得したはずじゃなかったのかね?」
 重い白鬼の言葉に、草間は顔を上げる。
「あの癖さ」
 ワケが分からず五人は顔を見合わせた。
「公式の物に偽りは無いという先入観に邪魔をされたか……。あの学生証に入れ替えが無かったと誰が言い切れる?」
 慶悟の顔つきが変わった。
「まさか……」
「いや、憶測に過ぎない。だが、無かったとも言い切れない。入学当初なら、入れ替えに慣れた二人が周囲を騙す事は容易だったはずだ。それは単純にイタズラだったかもしれない」
 思い出すような目で、白鬼は草間を見た。
「だとすれば……勝手に思いこんだ他の写真は意味を為さない。運動会の写真には、入れ替えが無かった事になるな」
「悠太君の担任は、あの癖について話していたわよね。私達も同じように騙されたって事? 首を傾げる癖があるのは……」
 玲二だったのだろうか。
 口を噤んだシュラインの横で、シルバは愕然としている。
「しかし、あの筆跡は調査票の文字と一致しなかった」
「ああ、だがあれを玲二が書いたと誰が証明する?」
 もしあの紙に書かれた『玲二』の名が、悠太の書いたものだとしたら、ここへ来た『玲二』の筆跡とは一致しないのは当然だ。草間はユルユルと首を振った。
「彼らに取っては、それも『入れ替わり』の一部だったのかもしれない」
「そんな……。だとするとやっぱり……」
 桜夜の視線が床に落ちた。
 最初からここへ来ていた彼は『玲二』だったのだろうか。シルバが見たビデオを貸りていた彼こそが、もしかすると本当の体の持ち主だったのかもしれない。
「いや、断定は難しい。本人が嘘を付き、周囲が騙されていた以上、真実を知る事はもはや出来ない。あるいは、今こうして話している事は取り越し苦労で、彼は『本当に』悠太君なのかもしれないんだ」 
 誰も口を利く者はいなかった。
 ただジッと彼が出ていった扉を見つめていた。
 彼──
 あれは一体誰だったのか。
 草間は五つの顔を見回し、重そうな口を開いた。
「この件は終了だ。依頼人が誰であれ、俺達は頼まれた事を忠実にこなしたに過ぎない。後は彼が『悠太君である事』を祈ろう」
 十二月の冷たい風が、部屋の窓を叩いていった。






                        終




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 (年齢) > 性別 / 職業 】
     
【0086 / シュライン・エマ(26)】
     女 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト
     
     
【0065 / 抜剣・白鬼 / ぬぼこ・びゃっき(30)】
     男 / 僧侶(退魔僧)
     
【0389 / 真名神・慶悟 / まながみ・けいご(20)】
     男 / 陰陽師
     
【0444 / 朧月・桜夜 / おぼろづき・さくや(16)】
     女 / 陰陽師
     
【0900 / シルバ・J・レインマン(35)】
     男 / ブラックリストハンター

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■          あとがき           ■
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 こんにちわ、紺野です。
 大変遅くなりましたが、『占拠』をお届けします。
 ギリギリで納品させて頂いたと思いましたら、
 訂正箇所を発見し……結果、一日が過ぎてしまいました!
 大変大変申し訳ございませんでした!!
 
 さて、混乱をコンセプトに書かせて頂きましたが、
 いかがでしたでしょうか。
 後は皆様のご想像にお任せ致しましてf(^ー^;
 少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

== シルバ様 ==
   初めまして。
   この度は当依頼へのご参加ありがとうございました。

== シュライン様、慶悟様 ==
   いつもありがとうございます。
   
 ==白鬼様、桜夜様 ==
   二度目のご参加ありがとうございました。
   
 ああ、相変わらずコメント下手ですいません……(滝汗)
 
 それから『年内』はすでに受付をうち切らせて頂きました、
 『呪われた七つ道具』で怪談の方は終了とさせて頂きます。
 (多分ですが……)
 まだ早いご挨拶となりますが皆様、
 どうか楽しいクリスマスとお正月をお過ごし下さいませ。
 インフルエンザなども流行る時期ですので、
 体調などにも気を付けて下さいね。
 
 新年第一弾は『鬼奇譚 その弐』となります。
 少しネタバレになりますが、鬼奇譚には一つの謎が隠されています。
 それは話数にも関係してくる事なのですが、
 今後はぜひ地図を片手に、オープニングだけでも
 お付き合い頂ければな、と思います。
 一話はオムニバスなので、話自体の繋がりはありませんが、
 とある何かが、どこかに隠されています。
 誰かにそれをご指摘頂いた時点で、最終章へと突入します。
 これから確実にやってくる四月朔日への不幸も、
 防ぐ事ができるかもしれません。
 皆様のご参戦、心よりお待ちしております。
 
 それでは今後ますますの皆様のご活躍を祈りながら、
 またお逢いできますよう……
 
                紺野ふずき 灰(色々な意味で)