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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡線・仮面の都 札幌>


調査コードネーム:札幌の街に雪が降る
執筆ライター  :水上雪乃
調査組織名   :界鏡線シリーズ『札幌』
募集予定人数  :1人〜3人

------<オープニング>--------------------------------------

「はぁ? 魔法使い?」
 北斗学院大学心理学研究所。
 新山綾という名を持った茶色い髪の女性が、素っ頓狂な声をあげた。
 まあ、魔法使いが現れた、などという話を聞けば、彼女でなくとも驚くだろう。
 もっとも、綾に驚く資格があるかどうかは、かなり微妙だ。
 黒い目の助教授は、物理魔法という魔法を操る魔法使いなのだから。
『どうやらロシア方面の魔術師か入り込んだらしいんだ』
 電話口の声が告げる。
「あのねぇサトル。わたしはもう内調やめたの。なんの関係もないのよ」
 氷点下一〇度の声で、綾は答える。
『それは知ってる』
「良かった。忘れてるのかと思ったわ」
『でも、今回ばかりは綾の出番だぜ。なにしろヤツらが狙ってるのはその島だ』
「北海道? なんで?」
『おいおい。長いこと現場はなれてるから鈍ったんじゃないか? この日本で独立できそうな場所はどこだよ』
 笑いを含んだ声。
 食料が自給でき、資源を産出し、しかも本土との間には津軽海峡が横たわっている。
 たしかに北海道には独立できるだけの条件が揃っているだろう。
 だが、
「そうじゃなくて。北海道を独立させたところで、ロシアに何の利益があるのよ?」
 綾が問いかける。
『日本がバラバラになることで利益を得る人間は、枚挙に暇がないな』
 示唆性の高い言葉。
 なるほど、と、綾が頷いた。
 ロシアから来た魔術師が、ロシアの飼い犬だとは限らない。
『てなわけで、こっちから何人か連れて行くから。よろしくな』
「サトルも来るの? 何人くらいになりそう? ‥‥って、ちょっと待ってよ!」
『ん?』
「わたし、まだ手伝うなんて言ってないわよ!」
『でも手伝ってくれるんだろう?』
 うっ、と言葉に詰まる助教授。
 愉快そうな笑声が、電話線を通して伝わっていた。







※水上雪乃の新作シナリオは、通常、毎週月曜日と木曜日にアップされます。
 受付開始は午後8時からです。


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札幌の街に雪が降る

 暁闇の空気を切り裂き、影が奔る。
 凍てついた風。
 凍てついた刻。
 眠りから醒める前の街並みを、いくつもの人影が交錯する。
 まるで夢魔の舞のように。
 だがそれは、果てしなく危険な舞踏会。
 ドレスの代わりに屍衣を纏い、ワルツの代わりに剣戟と絶鳴が流れる。
 死闘という名の舞踏会。
「ウェルザ。運べ」
 影の一つが口を開き、その身体は翼あるもののように舞い上がった。
 未だ明けやらぬ空へと。
 黒い髪、同じ色の瞳。研ぎ澄まされたサーベルのように引き締まった体躯。
 霧原鏡二という。
 この国の首都でエンジニアという職業に従事する青年だ。
 そして同時に、闇を「狩る」ものでもある。
「‥‥真なる風」
 青年の言葉とともに、左手が蠕動する。
 一瞬の後、霧原の手から数条の刃が飛んだ。
 目に見えない剣。
 真空の刃だ。
 音もなく飛来したそれは、敵対する影を切り刻む‥‥はずだった。
「ち。悪霊(キジーナ)魔術か」
 小さく舌打ちし、身を翻す霧原。
 すべてを切り裂く刃は、悪霊どもに柔らかく受け止められてしまったようだ。
 さすがは、敵も然る者といったところか。
 慎重に距離を取る。
 やはり小手先の攻撃では効果が低いようだ。
 思い切って接近戦を挑むべきか。
 黒い瞳に沈毅な光が揺れる。
 と、霧原の視界の下方を、何かが走り抜けた。
 あたかも、アスファルトのサバンナを駆ける二頭の黒豹のように。
「いったん下がれ! 霧原!!」
「ここはあたしたちにお任せ☆」
 巫灰滋と巫聖羅の兄妹だ。
 近接戦闘を最も得意とする二人である。
 奇しくも霧原と同じ事を考えたのだ。
 すなわち、敵に呪文詠唱の暇を与えない!
 獲物を一瞬で咬み裂く猛獣さながら、浄化屋と反魂屋が襲いかかった。
 紅玉のような赤い瞳が爛々と輝く。
 兄妹ゆえに、戦い方もよく似ている。
 積極的で果敢で。
 ただ、あえて分けるとするならば、剛の灰滋と柔の聖羅、ということになろうか。
 巨岩を砕く荒波のような浄化屋。
 暴風を受け流す楊のような反魂屋。
 絶妙のコンビネーションプレイで、敵を翻弄する。
 しかし、
「ヤバいわよ綾さん。敵の増援が近づいてる」
 静謐のように澄んだ蒼い瞳で、じっと戦況を見つめていた美女が口を開いた。
「もう? あいつら一体どのくらいの数、入り込んでるのよ」
 やれやれと、隣にたたずむ女性が嘆息した。
 シュライン・エマと新山綾である。
 前者は、東京のとある探偵の助手。
 後者は、札幌在住の助教授。
 あまり接点がなさそうに思えるが、幾つかの偶然と幾つかの選択が背中を蹴飛ばした結果、現在では友人といって大過ない関係である。
 奇妙な縁だ、と思いつつ、シュラインは呟く。
「‥‥もうすぐ一年になるのよね‥‥」
「そんなに経つかぁ。最初は敵味方に分かれてたわね」
「そう。あのとき綾さんったら思わせぶりなことをいうから、すいぶん心配しちゃったわよ」
「武彦のこと? ないない。なんにもないって」
 笑いを含んだ助教授の声。
「そりゃ今だから笑えるけど‥‥」
 言いかけて、口をつぐむ。
 なごんだ会話をしている場合ではないのだ。
「じゃ、不利になっちゃわないうちに、さっさと撤退しましょ」
 気配で察したのか、綾が言う。
「了解。作戦も練り直さないとね」
 頷いたシュラインが、信号弾を打ち上げた。
 内閣調査室の猛者たちと、霧原、灰滋、聖羅が退きはじめる。
 初戦は、痛み分けというところであろうか。


 北海道を独立させる。
 そのばかげた計画を聞かされたとき、ほとんど全員が失笑した。
 綾を心配してやってきた灰滋も、常は冷静なシュラインも、助教授とは初対面の霧原と聖羅も、夢想家の戯言に笑いを禁じえなかった。
 だが、サトルと綾の説明を聞き進むうち、笑いは凍り付いていった。
 北海道という名の島は、独立の条件をほぼ満たしている。
 まず、日本の中枢部である東京から遠く離れていること。
 陸続きでないこと。
 一つの島が一つの地方自治体になっていること。
 豊富な天然資源を産出し、それは五七〇万の人口を充分に賄えるということ。
 そしてそれ以上に、食糧自給率の高さ。
 四二〇パーセントという数値は、おそらく国として独立した際も強力な武器になる。
 これでもなお余った食料を捨てているのだ。
 本気で増産に取り組めば、数値は軽く五〇〇パーセントを超えるだろう。
 それに、土地もある。
 日本の都道府県のなかで最大の領域を誇っているのだから。
 ここに海外企業などを多く誘致できれば、経済面での不安も消える。
 まして、二一世紀に開拓すべき市場はアジアである。
 ヨーロッパの企業にしてみれば、極東における橋頭堡となる場所なのだ。
 唯一、懸念となるのが原油だが、これは日本国の備蓄原油を押さえてしまえば何とでもなる。まず三、四年は心配あるまい。
 その間に、石炭の採掘を再開するなり、食料の輸出と引き替えに燃料輸入の計画を立てればよかろう。
 アメリカの息のかかった場所との取引は難しいかもしれないが‥‥。
 そう。
 ロシアの北海油田となら、間違いなく好条件で取引ができるはずだ。
「‥‥それでロシアの魔術師か」
 苦虫を噛み潰したような顔をする霧原。
 話の内容は蓋然性に富むが、どうも図式が単純すぎるような気がする。
 北海道の食糧に目をつける国は、なにもロシアだけとは限るまい。
 たとえば北朝鮮だ。
 かの国も、慢性的で深刻な食糧難である。
 北海道が生産する食糧のうち半分、一千万人分をまわしてもらえれば、不足など一瞬で解決する。
 あるいは、属国として食糧基地にしてしまうという手もある。
「考えすぎかもしないが‥‥」
「いや。あながちそうともいえねぇぜ。北朝鮮ってのは、ちょっとアレだが」
 霧原の呟きを、笑いもせず灰滋が遮った。
「明治維新のとき、榎本武揚が北海道を独立させようとした。それは彼に先見の明ってヤツがあった証拠だが、彼を支援していた国ってのに注目すると良く事情が判るぜ」
「フランス、ロシア、オランダ。当時の列強がいくつか助力してるわね。アメリカやイギリスは官軍を支援したみたいだけど」
 冷静にシュラインが応える。
「そういうこった。当時からこの島にはすげー価値があったんだ。ついでに、第二次大戦のときも、ソ連は北海道に雪崩れ込もうと計画してるな」
 皮肉な口調を作りながら、灰滋が続けた。
 まあ、この島の価値を理解していないのは、日本国民と、それ以上に北海道在住者であろう。
 いわば、今後の国際情勢におけるジョーカーのような存在なのだ。
 使いようによっては、切り札となる。
 このあたりの灰滋の感覚は、さすがはジャーナリストである。
 ふん、と、聖羅が鼻を鳴らした。
 なかなか兄を素直には認められない女子高生だった。
 もちろん、余計な茶々を入れたりはしないが。
「なんにしても、敵がロシアだと決めつけて動くのはまずいな。足元をすくわれるかもしれない」
「そうね。かなり昔、フリーメイソンの要人が来日したとき、ロシアの魔術師が暗殺に動いたけど、後で糸を引いていたのはバチカンだったわ」
 淡々と総括するエンジニアに、婉曲的な言い方をするシュライン。
「それなんだけどね。シュラインちゃん」
 最初に説明したきり黙り込んでいた綾が告げる。
「バチカン経由とかで送り込まれる連中は、そんなに怖くないわ。正直、魔法使いくずれって一括りしてもいいくらいだもん。そういう連中」
「じゃあ、本当に恐ろしいのは?」
 問いかける蒼眸の美女。
 応えたのは、綾ではなくサトルという名の男だった。
「白ロシア系の魔術師。ようする怪僧ラスプーチン一派の生き残りだな」


 さて、不本意な撤退戦を演じることになった内調と能力者たちだが、むろんこのまま引き下がるつもりはなかった。
 一度矛を交えたことにより、敵の戦術能力も、ほぼ判明している。
 どんな状態でも無駄に戦わない。それが、能力者たちの流儀である。
 実戦に投入された敵の兵力。援軍を送るまでのレスポンス。そういったものを詳細に分析することにより、情報基盤や人員規模、さらには指揮官の能力まで知ることができるのだ。
 ただ、それは常に諸刃の剣であろう。
 味方の能力もまた、敵に知られるのは必然といえる。
「で、どうする? これから」
 なんとはなしに左手の手袋を触りながら、霧原が問う。
 さしたる戦果を得られぬまま後退したのは不本意であるが、いずれにしても今後の方針を立てておかなくてはならない。
 このあたりは、なかなか霧原も冷静である。
「各個撃破しかないでしょうね。大々的に動くことはできないもの。どっちも」
 さらに冷静な声でシュラインが応える。
 今回のような派手な戦い方は、本来スパイの戦闘法ではない。
 わざわざ口に出すのも奇妙な話だが、闇に隠れ影に潜むのがスパイの本領だ。
 派手なことをすればするほど、動きは取りづらくなるものである。
 まして、敵の魔法使いの意図が北海道の独立にある以上、現時点で目立つのは幾重にも好ましくなかろう。
「となれば、アジトを見つけて急襲ってわけにはいかねぇか。やっぱり」
 やや残念そうに言ったのは灰滋だ。
 積極攻撃型に属する青年としては、待ちの一手は、どうも苦手だ。
「仕方ないわよハイジ。今のところ、彼らを拘束する法的根拠がないもん」
 なだめるような綾。
「判ってるって」
 叱られたいたずら小僧のように首をすくめる浄化屋。
「‥‥やっぱり敷かれてる‥‥」
 ぼそりと聖羅が呟いた。
 もしこの場に彼が‥‥貞秀がいれば、熱心に頷いたことだろう。
『さすが我が孫娘じゃ』と。
 だが、貞秀はもういない。
 兄の愛刀だったインテリジェンスソードは、もう一言も発することはない。
 嘘八百屋が提供する他の武器と同じように、単純な霊刀となってしまった。
「それはあたしのせい‥‥ビビっちゃったあたしの‥‥」
 内心の声が聖羅を責める。
 嘘八百屋も、灰滋も、聖羅を責めるようなことは一言も口にしなかった。
 それどころか、勇戦を讃え労をねぎらってくれた。
 だからこそ、忸怩たる思いが聖羅を苛む。
 今度は‥‥今度、意志ある品物(ウィルアイテム)を手にしたときは、もっと上手く戦ってみせる。
 それは決意。
 紅い瞳の女子高生にできる、たった一つの死者への手向け。
 固い意志を体外に見せることなく、聖羅は黙って仲間たちの話に聞き入っていた。
「どっちにしても、今日明日に決着するって問題じゃないわね。気長にいきましょ」
 そう言ったシュラインが、臨時の本部であるホテルの部屋を出ようとする。
 長丁場になるのは仕方がない。
 態度が、そう語っていた。
 仲間たちも、それぞれに割り当たられた個室へと向かう
 ところが、
「そんな余裕はなさそうだ。たったいま、道議の鉢炉氏が誘拐されたらしい」
 と、無線機を持ったサトルが全員を呼び止めた。
 どうやら敵は、能力者たちより勤勉らしい。
 霧原がわずかに右眉を動かし、灰滋が両手を打ち合わせる。
 やれやれと肩をすくめたシュラインの視線が、似たような仕草をしている聖羅のそれとぶつかった。
 二人が同心であったとは限らないが、なんとなく苦笑を交わし合う。
 解決までのタイムリミットは三時間弱。
 警察が動き出すより前に、すべてを終わらせなくてはいけない。
 たとえていうなら、枝の一本、葉の一枚すら揺らしてはならないのだ。
 それが、この国を陰から支えるものたちの使命である。


 石狩川流域の河川敷。
 その一角に、忘れ去られたような倉庫群がある。
 所用者はすでに倒産し、買い手のつかぬまま放置されているのだ。
「‥‥時間は、あとどのくらい残っている?」
 誰にともなく尋ねる霧原。
 解答は、聞かずとも判っていた。
 この場所を特定するまで、すでに二時間以上が経過している。
 移動時間を合すれば二時間半を越えよう。
 もうほとんど猶予はないはずであった。
 それでも、この短時間でここまで辿り着いたのだから、内調の諜報力は特筆に値する。
 残留熱量の測定から、スーパーコンピュータによる類推。果ては監視衛星からの情報までリンクさせて、正解を導いたのだ。
 ただし、誘拐された道議の救出に成功しなくては、作戦としては失敗である。
 警察が動くより前に、もちろんマスコミに嗅ぎ付けられてもならない。
 情報部の活動は、過程が考慮されることはない。
 結果だけがすべてであり、それが対外的に報道されることも、喝采を浴びることもない。
 影道。
 時代を主導する人々の影となって動いてきた彼らは、いつしか、そう称されるようになった。
 けっして表にはあらわれない、正道でも王道でもない。影の道。
「さてと、行くとするかねぇ」
 貞秀を肩に担ぎ、灰滋が歩き出す。
 その姿には、ピクニックに出かける以上の緊張感は含まれていなかった。
 しかめ面をした妹と、苦笑を浮かべた青い目の美女が続く。
「‥‥ウェルザ」
 使役する風の精霊を呼び出し、霧原の身体が宙に舞う。
 そしてそのまま、倉庫の屋根に張り付いた。
 そっと天窓をずらし、内部を確認する。
 縛られている中年男が一人。おそらく誘拐犯であろう男たちが四人‥‥。
 全員が術士であろうか。
 だとすれば、まともに戦った場合、こちらにも損害が出るかもしれない。
 ごく短い思考の後、黒髪のエンジニアは仲間たちに合図を送った。
 すでに作戦は何パターンか立案されている。
 潜入の基本に基づいて。
 曰く、
「できるなら隠密裡に。それが不可能な場合には、なるべく現場を混乱させる」
 屋根から手を振る霧原の応じるように、浄化屋と反魂屋が走る。
 数舜の後、倉庫の扉が音高く蹴り破られた
 誰何の声を出すことすらなく、巫兄妹にむけて銃弾と魔法が飛ぶ。
 が、それは結局、二人の身体を捉えることができなかった。
 悪霊どもは、灰滋の浄化術によって昇天し、銃弾は‥‥
「あんまり使いたくないんだけどね。これ」
 嫣然たるシュラインの声とともに、乾いた音を立てて床に散らばる。
 物理魔法である。
 音を見る興信所事務員のもう一つの技。
 大気摩擦を操り、銃弾すらも無力化する。
「だが、これだけが物理魔法じゃないぜ!!」
 灰滋が咆吼し、ロシア人魔術師たちが炎に包まれた。
 かつて、この国に対する外敵の侵攻を阻み続けた謎の力。
 バチカン、CIA、MI6、その他大勢が目にした物理法の威力を、ロシアの魔術師たちもまた身体に刻み込む。
 やや呆れて兄の奮戦を見守る聖羅。
 いつの間に、こんなすごい技を身につけたのだろう。
 というより、実家に内緒で習っていいんだろうか?
 わりとどうでも良い疑問がわき上がる。
 まあ、どうみても圧倒的な人生の先輩ふたりに、なんとなく安堵感を抱いてしまったのかもしれない。
 ただ、三人のうちの一人が呆然としたことによって、わずかな隙が生まれた。
 その隙をついて、ロシア人魔術師どもが議員を盾にしようとする。
 考えてみれば、最初からそうすれば良かったという気がするが、やはり自分たちの力に自信を持っていたのだろう。
「遅いうえに、無駄だと思うなぁ」
 聖羅が嘲笑する。
 その通りだった。
 魔術師たちが人質にしようとした人物は、忽然と姿を消していたのだから。
 むろんこれは、霧原の仕業である。
 シュラインと巫兄妹が注意を引きつけている間に、まんまと議員を救出したのだ。
「そしてこれが、代金だ」
 天井から声が響き、圧縮された空気の塊が降り注ぐ。
 たまらず倒れ伏す魔術師ども。
 前回の戦いとは比べものにならないほど、圧倒的な勝利である。
 結局、能力がほとんど同じならば、機先を制したものが勝利する。
 その好例であろう。
 倒れた魔術師に駆け寄ったシュラインと灰滋が、手錠と口枷で拘束していった。

 こうして、ロシア人魔術師たちが起こした事件はあっけなく幕を閉じる。
「はじまりのおわり、だな」
 ウィンストン・チャーチルの言葉を借り、霧原が告げた。
 まだなにも終わっていない。
 つまり、そういうことだ。
 低く立ちこめる雲から舞い落ちる雪が、四人の肩を白く飾っていった。
 札幌の街も同様に‥‥。




                           終わり


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0143/ 巫・灰慈     /男  / 26 / フリーライター 浄化屋
  (かんなぎ・はいじ)       with貞秀
0086/ シュライン・エマ /女  / 26 / 翻訳家 興信所事務員
  (しゅらいん・えま)
1087/ 巫・聖羅     /女  / 17 / 高校生 反魂屋
  (かんなぎ・せいら)
1074/ 霧原・鏡二    /男  / 25 / エンジニア
  (きりはら・きょうじ)


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■         ライター通信          ■
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お待たせいたしました。
「札幌の街に雪が降る」お届けいたします。
ス○イ大作戦か、はたまたエ○パイか(笑)
北海道で繰り広げられるサイキックウォーズです。
いやぁ、魔法大戦ですかねぇ☆
幻○大戦じゃないですよ。
あ、今回は描写に普段と異なる点があります。
通常、男性は姓で女性は名で表記するわたしですが、今回、同じ姓のキャラクターが2名おりますので、どちらも名で表記しております。
どうかご理解のほど、よろしくお願いいたします、
なんかこれもシリーズ化しそうです♪
今度は個人戦闘を主体としたアクションものになりそうですね☆
楽しんでいただけたら幸いです。


それでは、またお会いできることを祈って。