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Brokenheart Restaurant
☆オープニング
「い、碇さんが、し、失恋したですってぇぇぇっ？」
早朝のアトラス編集部の中に、そんな叫び声が響く
もちろん声の主は、碇の悲しきかな、忠実なる僕状態に最近なってきている三下だ。
「ああ、何でも……仕事ばっかりしているから、愛想つかされたみたいだぞ」
そう聞かされる三下。それを聞いて、少し自虐感に囚われる。
（きっと……きっとボクが、碇さんに迷惑を掛けたからだ……仕事が、出来ないから……）
と、おろおろして。
（何とかして、碇さんを励まさないと……迷惑を掛けてるんだから、これ位しないと……）
そして、三下は、周りの者に、一緒に励まそうと言って回る。
もちろん皆、碇には借りがあり、快く引き受けていた。
そして１週間経過。その間も、碇はいつもと変わらず出勤し、記事を書く者達に叱咤激励を行っている。
そして……三下は、話を切り出す。
「い、碇さん、仕事が終わったら、皆で飲みにいきませんかぁぁ？」
既に、声が裏返ってる三下。周りの皆から「気づかれるだろう」とツッコミ入りそうにバレバレな声だ。
「……は？ ……まぁ、別にいいけれど、何処に行くのかしら？」
そう言われて、三下が取り出したパンフレットは、見るからに普通のレストランではなかった。
☆連れて行って欲しいっス！
（編集長が失恋って、信じられないっスよねー、どちらかといえば、編集長が仕事の邪魔になるからって捨て去る方のような気がするッスけど）
偶然その場に居合わせた、湖影・龍之助が、そんな事を思っていた。
自分の大好きな三下をいいように扱っている碇、そこから考えればまあ、至極当然に考えられる予想だが。
（まぁいいや、碇さんもそういう事があるってことッスね、三下さんのお手伝いをすることにするッス♪）
「三下さん、俺もお手伝いするっス！ 高校生だからお酒は飲めないっスけど、連れて行って欲しいっス！ お願いッス！！」
三下に対して、何度も頭を下げてお願いする龍之助。
「そ、それはもちろんですぅぅ……ボク一人じゃ不安ですしぃ、願ったりかなったりですからぁ」
傍から見た限り、なぜか龍之助の方が大人のような感覚というのも……それは気にせずに。
龍之助は満面の笑顔になって喜ぶ。
「分かったッス！ でも……なんで三下さんは、こんなレストラン選んだッスか？」
「え、えっとぉ……ボクの高校時代の友達が、失恋の悩みを打ち払うには普通のレストランじゃ駄目だって言って、ここを勧めて着たんですよぉ……」
三下の高校時代の友達にも、少し龍之助は興味を持つが……三下はその友達の事をあまり思い出したくも無いようだ。
「なんだかぁ、どんどんと話が進んで、昨日予約をしてきたんですよぉ……真っ暗で怖い店でしたぁ……」
「そうッスかぁ、分かったッス。怖がることなんて無いッスよ？ 絶対俺が守ってあげるッスから♪ じゃぁ俺、家に帰るッス、明日の集合時間には絶対に来るっスから、待っててくださいッス！」
「あ……はい、宜しくお願いしますぅぅ……」
三下が手を握ると、龍之助がぶんぶんと手を取って振った。
……どう見ても、三下が痛がっているのが見えた。
★ 到着〜俺の三下さんっ！
そして次の日。レストランのあるビル前へと到着する三下達ご一行。
予約した監獄レストランは、ビルの中になので、ここからはどんな店だかは分からないけれど……結構な歓楽街にある。
「へぇ……こんな所にあるんっスね、初めて知ったッス」
「子供があまり着ちゃいけない場所だから、ね……まぁ、行きましょ」
龍之助にも、はっきりと碇が元気が無いのが分かる。
「碇さん、元気無いッスね、本当に大丈夫ッスか？」
「ええ……別に大丈夫よ？ 龍之助君、心配してくれてありがと」
「そうッスかぁ……本当に、しつ……」
咄嗟に龍之助の口を封じる。失恋と言われたら、この計画はおじゃんだから。
「しつ……？ 何、私に隠し事？」
「な、な、なんでもないですぅぅぅ、き、気にしないで下さいぃぃぃ」
見るからに”私は隠しててます”と言っている、慌てふためく態度。
「まぁ……いいわ。ほら、三下、そろそろ行かないと時間に遅れるわよ」
「あ、そうでしたぁぁ……皆さんこっちですぅぅ……」
そう言って、走っていく三下だった。
店のある階へと、エレベーターで上がる、ドアが開く。
「……真っ暗ね」
「や、やっぱり怖いですぅぅぅーーーーー」
店のある階は、ブラックライトに灯され、僅かに１ｍ先が見える程度の明るさしかない。
三下は途端にパニックになり、エレベーターから降りようとしないが、それを龍之助がエレベータから引き摺り下ろす。
「こんなんで怖がってちゃ駄目ッス！ 大丈夫っス！」
龍之助が励ますので、何とか頑張り立ち上がる三下だが、足ががくがく震えていた。
そんな彼らに、突然話しかけてくる声。
『ご予約のお名前は、どちらさまでしょうか？』
再び横でパニックになる三下にかわり、編集部員が名を告げる。
『分かりました……こちらへお進みください。足元暗いですので、お気をつけ下さいませね』
と言われる。予約した幹事の三下を先頭にして、そのまま暗い道を進んでいく。
途中につり橋や、でこぼこしている道等があったりして、それら一つ一つに驚く三下ではあったりするが。
そして……目の前に一人の、ミニスカート＆警官服の女性が現れる。藤咲・愛だ。
鋭い顔で、愛は三下達を見る。そして。
「幹事様の、三下さんはどちらですか？」
「は、はいぃ、ボクですぅぅぅ」
おどおどとした感じで、三下が一歩前に出る。既に店の雰囲気にびびりきっている居るようだ。
「了解しました、では……逮捕します」
三下の両手に、遠慮なしに即座に嵌められる手錠。落ち着いてみればおもちゃだと分かるだろうが、現在の三下はそんな事を考えられる余裕がある筈無い。
「ぇ……ひぃぃぃぃっ！ ぼ、ボク、何もしてないですよぉぉぉ？」
「な、何するッスか！ すぐ外してッス！！」
悲鳴を出す三下。そして外そうとする龍之助。
飛び出そうとした龍之助は、直ぐに編集部員に抑えられる。
「龍之助君、大丈夫よ。 監獄に着いたら、ちゃんと外されるから……」
碇の声に不服ながらも、泣く泣く納得する龍之助。編集部員に降ろされ。
「三下さん、大丈夫っス、連れて行かれるだけの辛抱ッスから！」
そんな二人のやりとりを横目に愛は。内心苦笑をしながら。
「三下様一行、３２番房に連行します」
と、店内に声を掛ける。三下を先頭に、編集部員達は着いていく。
そして、奥の三下達の客席に到着する。監獄のドアを開け、三下の手錠を外し、全員を中に入れる。
おどおどしながら中に入る三下を、後ろから龍之助が。
「ほら、早く座んないと、あとの人が支えて座れないッスよ！」
と、ほいほいと奥に押し込む。もちろん三下の隣に座るのは龍之助自身である。
（一番怖がりそうなのは三下さんッスね……しっかりと守ってあげるッスから♪）
他の人が座れない以外にも、何だか下心が思いっきり入っているが……、それはいいとして。
「では、順次料理を持ってきますので、ごゆっくりとお楽しみください……あと、そこの女性の方」
もちろん、女性とは碇の事。
「私？ 何かしら？」
振り返る碇に渡される一つの包み。
「これは、店からのプレゼント、受け取って下さい」
と、包みを渡される。その中には。
「……何よこれ……？」
小さめの鞭が一つと、そして手紙が一つ入っていた。
「碇さんへ、こうやって貴方を励ましてくれる仲間が居ていいわね？ 皆、碇さんを励まそうとこんな企画をしてくれたのよ？ だから、さ。早く立ち直んなさい。失恋も辛いだろうけどさ、一度で落ち込んでたら、女としてまだまだよ？ きっと貴方なら好きになってくれる人が出てくるはずだからさ。これでも使って、ストレス発散でもしなさい、ね」
碇は、その手紙を読み……その袋の中に再びしまう。
（……全く、また三下が勝手に思い違いをしたのね……ただちょっと風邪を引いただけなのに。ま、皆の厚意を無駄にするより、このままそうした事にしておきましょうか）
この場に居る編集部員の思いやりの心、それを嬉しく思いながら。
「じゃ、みんな、まずはお疲れ様。 今日一日、たっぷり飲みましょう」
と、顔に出さずに振舞うのだった。
★ 脱獄囚？〜俺が守るっス！
普通のレストランと変わらない、色々と美味しい料理が次々と運ばれてくる。ただ一つ違うのは、運んでくる人の姿が看守服だったり、囚人服だったり、そして個室が牢屋になっているだけだ。
そんな事で、食も進み、酒を互いに酌み交わしたり……わいわいと楽しい時間が過ぎていく。
「三下さん、楽しんでるッスか？ 碇さんもこういう時は盛り上がって一杯笑って、嫌な事は水に流すっスよ！」
そういって、三下に酒を注いだり、碇に酒を注いだり……もちろん、自分はコーラやオレンジジュース等、ソフトドリンクしか飲んでいない。
碇も、周りの者から酒を勧められ、一杯だけといいながらどんどんと飲んでいくと、いつもと変わらない碇が見え始める。
隣の編集部員を労いながら駄目なところを指摘したり、三下に飲み物の注文を命じたり……。
そんな暫く料理と酒を楽しむ、のんびりとした時間が流れた。
そんな中に、突然、サイレンが全員の耳に鳴り響いき、パトランプがぐるぐると回り始めた。
『囚人が脱獄しました！ 看守は各監獄を見回れ！』
監獄に響き渡る声。それと共ににせわしなく動き始める看守達。
「全員居る？」
看守の一人が、三下達の部屋を確認する。
「だ、大丈夫、ですぅ……」
またも、見るからに怯えている三下。対しての碇は、慣れているようだ。
「……ご苦労様ね……（前と、ぜんぜん変わってないのね……）」
「３２号房確認！ 絶対にここから出ないように！」
きびきびとした看守の声。各部屋を見回り終わり、そして、サイレンが鳴り終わると……。
『きゃぁぁぁっ！！』
周囲から悲鳴が聞こえ始める。もちろん作り物の声ではなく、本当の悲鳴。
「ひ、ひ、悲鳴ですぅぅぅ！！」
「大丈夫っス、俺がしっかり抱きしめてあげるッスから♪」
耳を押さえて怯えて震える三下を、嬉々とした感じで抱きしめるのは、もちろん龍之助である。
「入り口付近の人、殴られるかもしれないッスけど、気をつけてッス！」
すると、隣で悲鳴のする声。そして、その音源がやって来て……。
『フガァァァッ！！！』
ジェイソンのような被り物をかぶった者が、牢獄のドアをがちゃがちゃと揺らす。
「……」
黙っている碇。そうしていると、後ろから……。
「ほらほらぁ、囚人は大人しく牢獄の中に入っていろって言うのよっ！」
鞭を振り下ろす音。”ピシャリ”という破裂音がその被り物の者にクリーンヒットする。
『ぐ……痛っ！』
素の声が、三下達にそのまま聞こえる。囚人役の店員も、愛の鞭が放たれるとは思っていなかったらしく。
「ほほほ、貴方達は逃げられないのよっ♪ ほら、大人しく付いて来なさい！」
ずりずりと連れて行かれる店員。それを見ながら龍之助が。
「うわぁ……すごいッス！ 何だかあの人、正義の味方みたいッス！！」
本当は違う手段で終わるはずなのだが、愛が張り切ってしまい……囚人役の店員は皆、一人、二人と倒れていった。
そして、パトランプが停止する。そして場内に響き渡る愛の声。
「ほほ、囚人達がはむかおうだなんて、十年早いのよ♪ 脱獄囚は皆お縄についたわ、さぁ、他の囚人達は残りの懲役をしっかり過ごすのよ！」
三下達の牢獄の横を、手錠を掛けられた囚人店員が看守に引き回される。
今日のイベントは、最終的に愛の思い通りのイベントとなってしまっていたが……店としては、結果オーライという事だったようだ。
★ 終了〜勘違い？
そうして、約２時間の、監獄レストランでの一夜が終わる。
外に出てきて、店の前で三下達が立ち止まっていると。
「ふぅ、ちょっとまって！」
ビルの中から出てきたのは、先ほど看守の姿をしていた愛。
店長に言って、ちょっとだけ出させてもらうことになり、看守服の上にジャンパーを着込んだ姿。
「あら……やっぱり、愛さんだったのね？ 看守姿をしているから何でかな、って思ったけれど」
碇が、愛を見て微笑む。既に愛とは気づいていたが、何も言わずにしておいた。
何故愛をしっているかは、誰も聞けなかった。もちろん、愛もどうして知っているかは言っていない。
「あら、気づかれちゃったのね……まぁいいわ。 そう、碇さん。あの手紙読んでくれた？」
「ええ……ちゃんと読んだわよ」
「それなら話が早いわ。 碇さん、失恋も辛いだろうけど、貴方にはこんなに心強い仲間たちが居るんだから、皆の為にも、早く立ち直ってあげなさいね？」
にっこりと微笑む愛。ちょっと困ったようにしながら碇は。
「……全く、また三下の勘違いに皆踊らされたのね？ 私は失恋も何もしてないわよ。 ただ、ちょっと風邪をこじらせてただけ。 まぁ……皆の思いやりは感じれたから、嬉しいけどね」
と告げる。
「へ……い、碇さん、失恋じゃなかったんですかぁぁ？」
「ぇ、碇さん、失恋じゃなかったんスか？」
「ええ。 そう知ったのは愛さんからの手紙だけどね。まぁ……皆、ありがと」
龍之助と三下の言葉に対し、嬉しそうに微笑み碇。
「んー、まぁ良く分からないッスけど、でも碇さんに笑顔が戻ってよかったッス！ 元気になってよかったッス！ 気にしない気にしないッスよ♪」
無垢な龍之助の明るい声に、その場の誰もが頷いて、家路へと就いた。
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
【 0218 ／ 湖影・龍之助 ／ 男 ／ １７歳 ／ 高校生 】
【 0830 ／ 藤咲・愛 ／ 女 ／ ２６歳 ／ 歌舞伎町の女王 】
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■ ライター通信 ■
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どうも、今回はご参加いただき、どうもありがとうございます。ライターの燕です。
お待たせいたしました。「Brokenheart Reastaurant」お届けします。
今回は、基本的にただの三下君の勘違いシナリオなので、
失敗は最初から考えていませんでした。
結果は見ての通り、碇さんはただ風邪を引き気味だったという事が判明しました。
でも、見事に、愛様の大活躍（大暴走かもしれませんね（汗））です。
龍之助さんも、三下君と存分に楽しんでるとおもいます。（笑）
監獄レストランには、私も一度しか行った事が無いので、
細部までは明記しきれなかったと思います。
その辺は、ご了承くださいませ。（汗）
意見等は、フォームもしくは直接お寄せください。
今後の参考にさせて頂きますので♪
では……また再び、東京怪談の世界で逢える事を……。
龍之介様＞三下君とのラブラブ、書かせていただきました。^^;
ラブラブでも、煮え切らないラブラブで執筆しています。
二人きりになれたらもちろん、書かせていただきます♪
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