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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


きらら騒動記


------<オープニング>--------------------------------------


[123] さあ! 投稿者:選ばれし愛と青春の戦士きらら
 わたくしは選ばれし愛と青春の戦士きらら。邪悪な生命体が地球に迫っています。眠れる戦士たちよ、立ち上がりなさい。
 1月○日10:00に、遊園地「ねずみの王国」の近くの海辺にある地球儀の浮かぶ噴水の前に集合すること。

[124] Re:さあ! 投稿者:雫
 えーと、何をするんでしょうか?

[125] Re:さあ! 投稿者:選ばれし愛と青春の戦士きらら
 もちろん、邪悪な生命体を倒すのです。

[126] Re:さあ! 投稿者:雫
 なにが邪悪な生命体なんですか?

[127] Re:さあ! 投稿者:選ばれし愛と青春の戦士きらら
 選ばれし戦士たちなら見れば分かります。
 これは急を要する問題なのです。早く目覚めてください。



「……そんな無茶な。」
 瀬名雫は呆れてそれ以上の書き込みを放棄した。
「これ、本当に集まる人いるのかしらね。」
 集まるとしたら一体どんな人たちが集まるのか。雫はなんだか薄ら寒い思いに囚われた。
「ってか、邪悪な生命体が地球に迫っているのに、遊園地で倒すの? アトラクション? 突っ込んじゃダメなところなのかな。」
 雫は触らぬ神に祟りなし、とばかりに見なかったことにした。



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 けたたましい携帯電話の着信音で叩き起こされ、レイベル・ラブは寝ぼけ眼で通話ボタンを押して耳元にあてて相手の話を聞くが、頭が働いてないせいなのか相手の言い方が悪いのか、初めのうちは何を言っているのかさっぱり理解できなくて性急に自らの覚醒を促そうとする。
「すいません、もう一度。」
 少しはっきりしてきた頭で再び同じ話を聞いていると、向こうも冷静になったのか、さっきよりは分かりやすい内容になっている気がして、趣旨の見当がつくと、これと同様の依頼の電話がこれより先に3件かかってきたことを思い出した。
「分かりました。任せて下さい。」
 ラブは軽く頷いて通話を終えると、まだ眠気の残る目を擦って一つ欠伸をしつつ身体を伸ばして本格的に覚醒モードに入る。
「邪悪な生命体がねずみの海辺で暴れているのを止めればいいのね。」
 ラブは依頼内容を誤解している(実はあまり大差がないのだが)ことに全く気付いていなかった。



 以前、依頼の報酬として金の代わりに手に入れたネットカフェ無料回数券を使い、件の掲示板を覗いてきたラブはこれ以上膨らみようがないほど膨らんだ借金を増やし、海下のチケットを手に入れ、目的地へとやってきた。
 噴水の中で大きい地球儀がぐるぐる回っているのを見ていると、もしやこれを地球自身に見立てて呪術でも行うつもりかもしれないと思い立った。
 ふむ、どうしよう、助っ人を呼んでおくべきだろうか、とラブが携帯電話を手にしたところで後ろから声をかけられて、相手に気付かなかったことに驚いた様子を悟られないように振り返る。
「愛と青春の戦士ですわね。」
「は?」
 惚けた声を出しながら、ラブは頭脳を高速回転させることにより相手が誰だか分かった。
「きらら?」
「愛と青春の戦士きららですわ。一緒に戦いましょう!」
 前半部分もきらら名前の一部であるときっちりと訂正してきた。きららは邪悪な生命体らしく(勘違い)怪しい格好をしていた。人間に化けそこなったのかきらきら光る宇宙服(だとラブは思った)を身につけ、手には変な杖を持っていた。分厚い黒縁の眼鏡がひどく浮いている。
 きららの格好はいくらテーマパークでも浮くものであるように思えたが、誰も気にしてこないのでそういうものかとラブは自分を納得させた。
 よし、なんだか知らないが敵は私を味方だと誤解した、巣に潜入して一気に殲滅すべし、と意識を新たに内心ほくそ笑んでいた。
 ラブは一応友好的な姿勢を見せようと握手のために手を差し伸ばすと、きららは白い手袋をした手でそれに応えたので、もしかして同じ生命体だと思っていても直接触らないほど神経過敏なのだろうかとずれたことを考えてしまった。
「それでは、邪悪な生命体を探しましょう!」
「そうですね。」
 邪悪な生命体がたくさん増えたところで一網打尽にすればいい、とラブは心の中で喝采をあげつつ、外見では曖昧な笑顔を浮かべて頷いたが、これは自分ではどれが邪悪な生命体であるのか判別できないためである。


 
 テーマパークは平日であるのにかなり混雑していて歩くのが早いきららに、ともすれば置いていかれそうになりながら、それでも服装のおかげでことなきを得ていたので、そういう狙いがあるのかと納得してみていたラブは耐えきれずにきららに尋ねた。
「どこにいるんですか?」
「邪悪な生命体は地下に潜んでいるものです。」
 きららがそうきっぱり言うのでラブは曖昧に頷いて、その後を大人しくついていくことにして、余計なことは考えても仕方がないのでなるべく意識の端から追い払おうと努めた。
 それにしてもきららの頭の中は一体どうなっているんだろうと興味が湧いた、脳味噌を鼻から引きずり出して覗いてみたい。
 何をもってして邪悪と認めるのだろう、何か別のものが見えるなら眼球も抉り出す必要があるだろうか、依頼では生け捕りにしなきゃいけなかっただろうか。
 とりとめもなくそんなことを考えていると、きららが立ち止まったが、長蛇の列に並ぶのかと思いきや、きららはじっと様子を見ているだけなので、ラブは退屈さを隠すようにきょろきょろと周囲を見回しながら何も言わなかった。
「いましたわ。あれが邪悪な生命体です!」
 どれだろうと指差す方を見たが、きららのようにおかしな服を着た同類と認められるような人はいない。
「どれですか?」
「あの悪趣味にお揃いな緑のジャケットを着たカップルの男性の方ですわ。」
 細かいなとか悪趣味はあんただろとか思わないでもなかったが、ラブがとりあえずその生命体の行動を観察しているうちに、一体どうやったのかきららはいつの間にかその男性に近づいていたので慌てて追いかけた、まとめて逃げられたら困るし。
「邪悪な生命体観念しなさい!」
 きららが持っていた杖を突き出してきたので、男性は胡散臭そうに振り返ってきたその目の冷たいこと、流氷のごとしで、ラブは少し焦ってきららの袖を引いてみたが効果はなく、逆に火に油を注ぐ結果になってしまったようだ。
「さあ、愛の鉄槌を喰らいなさい!」
 そのまま杖を振りかぶったので人目もあることだし、ってかなんで仲間に鉄槌を喰らわせようとしているんだろうとかぼんやり思いながら、一応押さえつけてみたら、きららにものすごい勢いで睨みつけられた。
「おいこいつらおかしいぜ、行こう。」
 彼女を連れて男は列を出てそそくさと逃げようとする。ここまで並んでおいて抜けるなんて何かやましいことがあるからに違いないなんて、自分たちの怪しさはすっかり棚上げしてラブは疑った、ラブが仲間ではないとばれてしまったのだろうか。
「逃がすもんですか!」
 きららが走り出すが明らかに遅れを取ってしまっているし、人込みが邪魔で追いつけそうもない。ラブは天井を支えている鉄の棒を途中から折り曲げ、引き抜いて、男の背中に投げつけた。
「きゃああ!」
 傍らを通り過ぎていった凶器にきららが悲鳴をあげ、命中した男がもんどり打って倒れ込んだ、ああ阿鼻叫喚。
「死んじゃうわよ!」
 倒れたまま動かない彼に泣き出す彼女に笑顔をひとつ、何を心配することがあろうか、いやない。(反語)
「安心して私はドクターだし。生命体である限り死んでなきゃ治すわ。それより先に、さあ、正体を現しなさい。仲間がどうなってもいいの?」
 ラブが途中から彼女からきららに向き直って叫ぶと、きららのラブに対する恐怖と怪訝そうな瞳に出会う。そんな部外者みたいな顔しても騙されるわけないじゃないかと笑うと、きららはあっという間に逃げ出した。
 仲間を見捨てて逃げるなんてなんて邪悪なんだろう、しかしここで逃がしてしまっては依頼が完了しない、イコール報酬がもらえないということで、ラブは悶絶している男性を放って立ち上がった。
 追いかけようとして、周囲がかなりうるさくなって、ラブは制服の一団に取り囲まれていた、逃げた奴が首謀者だと告げたが聞く耳もなくラブを両側から拘束してくる。
 きららを追わなければと抵抗して、大混乱の末、ラブは逃げれたが同じくきららと男も見失ってしまった。
 報酬は出るのか疑問なところだが、とりあえず暴れているのは止めたし(結局暴れていたのはラブの方だったが)、なんだか周囲がラブに対してうるさいし、もうこれで帰ってもいいかな。



[150] 無力 投稿者:選ばれし愛と青春の戦士きらら
 この世には邪悪な生命体よりも恐ろしいものがいます……。


 ラブはきららの敗北の書き込みを見ることはなかった。



*END*


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0606 / レイベル・ラブ / 女 / 395歳 / ストリートドクター】


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■         ライター通信          ■
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こんにちは、龍牙 凌です。
この度はご参加いただきましてありがとうございます。
ごちゃごちゃと文章を書く書き方をしてみたのですが如何でしたしょうか?
お気に召したら幸いです。
それでは、また機会があったらお目にかかりたいです。