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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:にゃとぅ〜 踊る草間猫
執筆ライター  :水上雪乃
調査組織名   :草間興信所
募集予定人数  :1人〜6人

------<オープニング>--------------------------------------

 ある日、草間猫のところに、お姫さま猫が逃げ込んできました。
 そしてこう言うのです。
「悪い猫に追われています。助けてください」
 草間猫は困りました。
 困りましたが、ここは漢を見せるべきでしょう。
「俺に任せるにゅ。かにゃらず守ってやるにゅ」
 勇ましいことです。
 ところで、何から守ればいいのでしょうか。
「隣町の王さま猫が、わたくしをむりやり后にしようとしているのです」
 よよよ、と、泣き崩れるお姫さま猫。
 可哀想です。
「てことは、兵隊猫が攻めてくるにゃ。こっちも兵隊を集めるのにゃ!」
 高々と、草間猫が右手を振り上げました‥‥。
 ‥‥‥‥。
 ‥‥‥。
 ‥‥。
 ‥。
「‥‥いたいにゃ‥‥」
 泣いています。
 まあ、あまり猫の手は、振り上げる形にはできていませんから。
「カットにゃ!」
 監督猫が言いました。
「勝手に演技をやめちゃだめにゃ!!」
「うにゅぅ‥‥こんなベタなストーリーじゃ、お客さんは喜ばないにゃ‥‥」
 なんだか言い訳をする草間猫でした。
「うるさいにゃ。もう撮影は始まってるんだから、文句は受け付けないにゃ」
 ひどい話です。
 ノリに任せた新春映画だからって、こんなにいい加減で良いんでしょうか。
「ほれ。もっかい今のシーンからにゃ」
「にゅう‥‥」

「てことは、兵隊猫が攻めてくるにゃ。こっちも兵隊を集めるのにゃ!」
 高々と、草間猫が右手を振り上げました。
 いま、戦いの火ぶたは、切って落とされたのです。





※新春第一弾は、草間猫しりーずです。
※劇中劇みたいな感じです。
※コメディーです。念のため。
※水上雪乃の新作シナリオは、通常、毎週月曜日と木曜日にアップされます。
 受付開始は午後8時からです。


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にゃとぅ〜 踊る草間猫

 そのころ、グレートにゃりてん島は乱れに乱れていました。
 世継ぎを定めないまま、すこっとにゃんど王が亡くなったのがすべての始まりです。
 弱体化を予測したいんぐにゃんどは、さっそく侵攻を開始しました。
 ところが、すこっとにゃんどの抵抗は激しく、いんぐにゃんど軍はしばしば苦戦したのです。
 事態を重く見たいんぐにゃんど王は、王女「いにゃべる」を和平の使者として派遣しました。
 しかし、それこそが、魔王「にゃれす」のシナリオだったのです。
 いち早く陰謀に気づいた大名「上杉にゃん信」は、増援軍の派遣を送り込みます。
 その情報を掴んだ、えむにゃいしっくすの「にゃーむす・ぼんど」は、世界平和と、ついでに「いにゃべる」を手に入れるために行動を起こしました。
 それを、魔法使い「にゃんだるふ」は淡々と見つめています。
 チャンスは一度しかないのです。
 失敗は許されません。
 一方その頃、コンピュータープログラマーの「にぇお」は‥‥。

「待つにゃ」
 草間猫が言いました。
「なんにゃり?」
 監督猫が応えます。
「この話のどこに、俺の出番があるにゃ?」
「えーと‥‥」
「えーとじゃにゃい! この映画のタイトルは、『にゃとぅー』にゃ!! 俺が主役なのにゃ!!」
「ふに」
「ふにでもにゃい! 予告編と全然違うにゃ!!」
「ま、よくあることだにゃ」
「よくあってたまるかにゃ! そんなのは『おにぇあみにゅの翼』だけで沢山だにゃ!!」
 興奮しています。
「そういわれても困るにゃあ」
 くしくしと手を舐める監督猫。
「うにゅう」
 黒っぽい毛並みを逆立てて、草間猫が怒っています。
「まあまあ。武彦にゃん」
 まるで平和主義者のように、シュライン猫が窘めました。
 白い毛並みと青い瞳。
 キラキラのドレスを着て尻尾を振っています。
 ご機嫌のようです。
「シュラインは良いにゃ。王女さま役だし」
 なんだか、拗ねたように草間猫が言いました。
 というより、拗ねています。ものすごく。
「そんなに目立ちたいにょか?」
「困ったモンだにゃ」
 魔法使いのローブを着たはちわれの猫と、鎧兜をつけたトラ猫が歩み寄ってきました。
 武神猫と灰滋猫です。
 えらくアンバランスなコンビですが、まあ、撮影用の衣装ですから。
「いい加減にして欲しいにゃ。草間が駄々をこねるたびに撮影が遅れるにゃ」
「まったくですにぇ」
 上からも、非難の声が聞こえます。
 撮影用ワイヤーで宙づりになっている、北斗猫と悠也猫です。
 けっこうしんどい体勢なのです。これでも。
 ちなみに、北斗猫はロングコート、悠也猫はスーツを身にまとっています。
 いったい時代設定はどうなっているのでしょう?
 ‥‥いまさら、そんな細かいことを気にしても仕方ないですね。
「どっちでも良いからはやくしにょー! こっちは朝から四時間も待機しっぱなしにゃんだぞー」
 無線機から聞こえる不機嫌な声は、かなめ猫のものです。
 まあ、この寒空の下、朝から出番待ちでは機嫌だって悪くなるでしょう。
「とにかく! ちゃんと草間猫の出番もあるにゃ。文句を言わないでつづけるにゃ」
「うにゅう」
 監督猫の鶴の一声で、草間猫も不承不承ひきさがりました。
 まったく、それでなくても時間が押しているというのに。
「じゃ、まいていくにょー☆」
 シュライン猫が気合いの声を上げ、他の猫たちが唱和しました。


 地軸を揺らすような勢いで、上杉の騎犬隊が突撃を開始しました。
 軍団は、黒一色に統一されています。
 精悍な犬にまたがった、大陸に誇る騎犬隊です。
 朱の甲冑で身を固めたにゃれすの軍勢が、切り裂かれるように左右に別れてゆきます。
 士気の上では、上杉軍の分があるようです。
 炸裂する猫パンチ。唸りをあげる猫キック。
 やはり、合戦シーンは盛り上がります。
「おにょれ上杉め。じつに良いタイミングで突撃してくるわ!」
 舌打ち混じり賞賛をするにゃれす。
 初手において後れを取ったのは事実です。
 それは認めないわけにはいきません。
 とはいえ、このままぼーっとしていては、戦局は不利になるばかりです。
「上杉の尻に食いつくのにゃ。後方を遮断して袋だたきにしてやにぇ」
 数舜の熟考の後、にゃれすが指示とを飛ばしました。
 朱の軍勢が、一糸の乱れもなく動きます。
「うにゅ。さすがにゃれすにゃ。一筋縄ではいかにゃいか」
 包囲される形になった上杉軍。
 鞍上、上杉にゃん信が息を吐き出しました。
 毘の旗が翻っています。
 義を重んじる上杉軍は、いままで何度も強大な敵と戦ってきました。
 弱きを助け強きをくじく。
 それが、上杉家の面目です。
 だからこそ、いにゃべるとにゃとぅーを助けるために、兵を動かしたのです。
 でも、これでは助けるどころか、自軍が壊滅してしまいそうです。
「さて、どうしたものかにゃ‥‥」
「俺に考えがあるにゃり」
「にゃんだるふか。どうするつもりにゃ?」
「あそこにゃ。右翼と本隊を結合させてるあの部分を突けば、間違いなく敵陣を突破できるにゃ」
「ふにゅ‥‥」
「いずれにしても、このままでは殲滅されるのを待つだけにゃ」
「そう。その通りにゃ」
 上杉にゃん信の迷いは、長くありませんでした。
 はちわれの魔法使いが指摘したとおり、他に選択肢がないからです。
「いくにょ! 上杉の戦いぶり、見せてやるにゃ!!」
 大陸最強を誇る騎犬隊が、猛然と襲いかかります。


「にゃとぅー‥‥」
「大丈夫にゃ。いにゃべる」
 身を寄せた王女さまを抱きしめ、にゃとぅーがささやきました。
 彼が不安になっては、いにゃべるを守ることなどできません。
 なんだか甘いムードがただよっています。
 戦場では血生臭さたけなわだというのに。
「にゃん信とにゃんだるふを信じるんにゃ」
「うにゅ‥‥」
 と、そのとき、爆音が大気を引き裂きます。
 ヘリコプターです。
 時代考証を完全に無視したヘリコプターが、黒と青の瞳のなかでどんどん大きさを増してゆきます。
「なんにゃ?」
「にゃとぅー。怖いにゃ」
 ベタな演技をしながら見上げるふたり。
 ヘリコプターからダイブする黒い影。
 黄金の瞳。黒い被毛。
 きっちり着こなしたオシャレなスーツ。
 そんな格好で飛び降りるとは、なかなかのつわものです。
「あるまーににゃ☆」
 ほえっとした顔で、いにゃべるが言いました。
 この際、スーツのブランドはどうでも良いような気がします。
 パラシュートすら使わず。黒い猫は地表に降り立ちました。
 より正確には、にゃとぅーの上に、ですが。
「Q〜〜〜」
 つぶされて、情けない悲鳴をあげているにゃとぅー。
 もちろん、一顧だにされません。
「王女殿下。女王陛下の命でお迎えにあがりましたにゃ」
「あにゃたは?」
「にゃーむす・ぼんどと申しますにゃ」
 応えてから、王女の前足に口づけるにゃーむす・ぼんど。
 完璧です。
 完璧なプレイボーイです。
 毎回、ぼんどがーるをものにしちゃってるという噂は、本当でした。
 しかも、一輪の花を取り出したりしています。
「一緒にまいりましょうにゃ。姫」
「いやです。私はにゃとぅーとともにいるにゃ」
「姫。わがままを言ってはいけませんにゃ」
 なんか、無意味に白い歯が輝いてます。
「いやにゃ」
 お姫さま然とした仕草で、身をよじるいにゃべる。
 無視されまくるにゃとぅー。
 ちょっと可哀想です。
「お母上も心配しておりますにゃ」
「でも‥‥」
「嫌がってるにゃないか。放してやれにょ」
 唐突に声が響き、空間に歪みが生じます。
 そして、そこから現れたのは、黒のロングコートをまとった猫。
 にぇおです。
「何者にゃ!?」
「にゃのるほど者にゃない」
 ポーズを決めるにぇお。
 格好いいことは格好いいのですが、どうして空間が‥‥。
 いえ、なんでもないです‥‥。


 戦況は、一進一退を繰り返していました。
 数において勝るにゃれすの軍勢。
 士気と勇気において勝る上杉軍。
 どちらが有利とは言えません。
 どちらにも、負けられない事情があるのです。
「このままでは、双方ともに地上から消えてしまうかもしれにゅな‥‥」
 上杉にゃん信が呟きます。
「そんにゃことはさせんよ」
 静かな声で、にゃんだるふが応えました。
 はちわれの顔には、湖水をたたえたように決意が広がっています。
「なにをするつもりにゃ?」
「最後の賭けにゃ」
 とっても真面目なふたりでした。
 いえ、けっして、にゃれすが不真面目なわけじゃないですけど。
「にゃんかにゃとぅーたちの方が良い雰囲気になってるにゃ。我が輩は、こんなところでもたついてるわけにはいかんにゃ。猫大砲の準備にゃ」
 にゃれすの言葉です。
 猫大砲‥‥。
 それは、禁断の兵器。
 大砲のなかに入り、己が身体を砲弾として敵陣に撃ち込む。
 あまりに危険な技のため、魔王にしか使えないのです。
 そして、見た目が派手な割にはチープな技なのです。
「いくにょ!」
 砲身に収まったにゃれすが叫びます。
 一瞬の後。
 音速を超える速度で、魔王が撃ち出されました。
 にゃとぅーといにゃべるのもとへ。
 むろん、その姿は、上杉軍からも見えます。
「チャンスにゃ!」
「よし。車懸にゃ!!」
 将軍と軍師の声で、上杉軍が陣形を再編されました。
 上杉軍の戦法です。
 これで幾度も、強大な敵軍を破ってきたのです。
 騎犬隊をいくつかに分け、それがあたかも回転するように、無限連鎖で敵に襲いかかります。
 弱点は、計り知れない疲労の蓄積ですが、いまはそんなことにかまってはいられません。
 ここで敗北すれば、どちらにしても未来はないのですから。
「あの世で会おうにゃ!」
「そんときは、また一緒に鰹節をかじろうにゃ!」
 シニカルに笑い合った、にゃんだるふと上杉にゃん信は、それぞれ隊を率いて突入していきました。
 そしてそれが、ふたりが交わした最後の会話だったのです。
 激烈なる戦闘中、崖から転落したにゃんだるふは、そのまま行方不明になり二度と上杉にゃん信と会うことはありませんでした。
 ですが、彼らの奮戦によって、かろうじて魔王軍は撃退されました。
 ところで、戦場のどこに崖があったのかというと、それは永遠の謎です。


「うにゃははは! 我が輩を置き去りにして話を進めようとしても、そうはいかにゅ!!」
 にゃれすが笑います。
「もうやめてにゃ!」
 いにゃべるの嘆き。
「ふふ‥‥にゃかにゃかやりますにぇ」
「そっちこそ。やるにゃ」
 スーツの猫と、ロングコートの猫が、にらみ合っています。
 もちろん、にゃれすは素敵に無視されました。
 にゃーむす・ぼんどの拳銃が連続して火を吹き、にぇおが、のけぞって回避します。
 どこかで見たことのあるシーンです。
 まあ、それはともかくとして、
「我が輩を無視するにゃ〜〜」
「喧嘩を止めて〜〜」
「Q〜〜」
 置き去りにされている三匹は、どうしたら良いでしょう?
「ふ‥‥仕方がありません。この技だけは使いたくにゃかったですが‥‥」
「オレも奥の手を出すにゃ‥‥」
 スーツとコートのポケットに、同時に手を入れるふたり!
「魅了の術!」
「忍法! みゃたたび!!」
 台詞は違っても、やることは一緒です。
 風に乗ったパウダーマタタビが、広がっていきました。
 どこまでもどこまでも。

 目を覚ましたにゃとぅーは、とっても良い気分でした。
 なんだか踊り出したい感じです。
 見ると、いにゃべるも、にゃーむす・ぼんども、にゃれすも、にぇおも、上杉にゃん信も踊っています。
 兵隊猫たちも踊っています。
 それどころか、行方不明になったはずのにゃんだるふも踊っているではないですか。
「俺も踊るにゃ!!」
 輪に飛び込んだにゃとぅーが踊り始めました。
 飛び、回り、転がり。
 皆、愉快そうに踊っています。
 戦いなど、つまりません。
 歌えば楽し。
 踊れば楽し。
 明るい笑いとともに、カメラが遠景になっていきます。
 そして、完という文字が、スクリーンに映し出されました。


「かんぱいにゃー♪」
 シュライン猫が音頭を取って、みんなの鰹節がぶつかります。
 打ち上げ会場です。
 まあ、出来はともかくとして、クランクアップしたのですから。
「けっこー疲れたにゃあ」
「俺と灰滋猫は、犬に乗るシーンが多かったからにゃり」
「オレらもしんどかったにゃ」
「空中アクションがあったですからにぇ」
「猫大砲に入った我が輩が、一番きつかったにゃろ?」
 灰滋猫。武神猫。北斗猫。悠也猫。かなめ猫の順で、口を開きます。
 苦労自慢でしょうか?
「私は、悠也にゃんにキスされたとき、どうしようと思ったにゃん」
 ちょっと拗ねたようなシュライン猫。
「にゃははは良いじゃにゃいですか。役得ということで」
「ダメにゃ。シュラインは俺のだにゃ」
 仏頂面の草間猫がいいます。
「悠也にゃんは、あとでお仕置きにゃ☆」
 馬鹿な話ができるのも、一仕事終えたからでしょう。
 出演料の鰹節三〇本は、みんなの機嫌を充分に良くしてくれました。
 あとは興行収入に応じて、ボーナスが入ることになっています。
「でも、当たると思うにゃ? これ」
 胡乱げな声で、草間猫が言いました。
 心配なのは判りますが、いまさら言っても手遅れです。
「楽しければ、問題なしにゃ」
 武神猫が笑いました。
「そうにゃ☆」
 シュライン猫も笑い、笑いの輪が広がっていきました。
 キネマの天地の夜は、賑やかに更けていきます。
 宴会場の外では、昇ったばかりの月も、にこにこと笑っていました。








                          おしまい


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0086/ シュライン・エマ /女  / 26 / 翻訳家 興信所事務員
  (しゅらいん・えま)
0173/ 武神・一樹    /男  / 30 / 骨董屋『櫻月堂』店主
  (たけがみ・かずき)
0143/ 巫・灰慈     /男  / 26 / フリーライター 浄化屋
  (かんなぎ・はいじ)
0759/ 海塚・要     /男  /999 / 魔王
  (うみずか・かなめ)
0164/ 斎・悠也     /男  / 21 / 大学生 ホスト
  (いつき・ゆうや)
0568/ 守崎・北斗    /男  / 17 / 高校生
  (もりさき・ほくと)

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■         ライター通信          ■
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監督猫:以下は、配役にゃり☆

いんぐにゃんど王女「いにゃべる」 as シュライン猫
魔法使い「にゃんだるふ」     as 武神猫
戦国大名「上杉にゃん信」     as 灰滋猫
魔王「にゃれす」         as かなめ猫
スパイ「にゃーむす・ぼんど」   as 悠也猫
プログラマー「にぇお」      as 北斗猫
にゃとぅー            as 草間猫


お待たせいたしました。
「おどる草間猫」お届けいたします。
えーと、壊れきってます。
たのしんでいただけたら幸いです(汗)

それでは、またお会いできることを祈って。