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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


呪詛師
◆呪いかけます。
あなたは何気なく巡回していた掲示板で、奇妙な書き込みを見つけた。


【呪いかけます。】投稿者:Sleepwalker  2003/00/XX 00:00:00

 呪いをご依頼ください。
 内容・謝礼は応相談。秘密厳守。人も殺します。
 正し、呪詛返しが施された場合、依頼者に返りますのでご了承ください。


書き込みのしたには投稿者の連絡先が記されている。
冗談と言うにはあまりにも笑えないものだった。
しかし、ひどく気になる。
「・・・・」
しばし考えた末、あなたは連絡をとってみることにした。

相手を探るもよし、呪いをかけるもよし・・・?

◆呪詛を生業とするモノ
「これは間違いなく、ボクへの愛のメッセージ!!」
掲示板に書き込まれた記事を見て、水野 想司はガッツポーズを決めた。
「ナイスなお仕事だよ♪スリープウォーカー☆」
想司は愛するアリスの情報を得るために、日夜欠かすことなくネットの掲示板めぐりをしていた。
ハッカーであるアリスはよくネットに出現するからだ。
そんな掲示板めぐりの最中に、この書き込みを見つけたのだ。
Sleepwalkerが、いつもアリスと一緒にいるスリープウォーカーであることは間違い無い。
そして、スリープウォーカーの書き込みにはそっとメッセージが添えられていた。

『明日の夜、下記住所の部屋にてお待ちしております。』

そこには想司の秘密基地からそう遠くはない住所が記されていた。
「んも〜っ☆恥かしがり屋さんなんだから、スリープウォーカーも!こんな事書かなくても、僕はちゃんとキミのもとへ行くよっ♪」
そう言うと、想司はごそごそと必要装備をカバンに詰め始める。
想司のカバン・・・別名「アリス袋」にはアリスへの愛が詰め込まれている。
想司はいつもより念入りに支度を済ますと、カバンを肩にかける。
「明日なんていわずに、今すぐキミの元へ愛の逃避行さっ☆」
相手の都合はお構いなし。
とりあえず、他の人が来る前に、一番に開業祝がお約束と、ウキウキと靴をはいて、想司はそのまま夜の町へと飛び出していったのだった。

そして

もう一人、その掲示板の書き込みをチェックしている者がいた。
想司の部屋の天井にへばりついて、モニターを覗き見ていた海塚 要だ。
「はっはっはっ。やはりここに張り込んでいたのは正解であったな。」
そう言うと、海塚は天井からひらりと飛び降りる。
体のラインを際立たせるようなブルーのピッタリレオタードに、オレンジのサシェを絞めて、気分はすっかり怪盗キャッ○・アイだ。
「スリープウォーカー殿のもとへ行って、漢の素晴らしき偉業を称えるのは私の仕事!こうしてはいられん!想司の奴めに出遅れぬように、スリープウォーカー殿のもとへ参らねばっ!」
海塚は胸元から取り出した、可愛いカエル柄のメモ帳にピンクのペンで住所を書き写すと、再び天井へと飛び上がり、そのまま闇に解けるように姿を消した。

凄いんだか何なんだかよくわからない魔王様なのであった。

◆呪詛師の部屋
街灯だけがぽつんとついた人影のない夜道を歩いてゆくと、いきなりそびえるようなマンションに突き当たった。
デザイナーズマンションというのか、モダンなデザインの建物には晧々と明りが灯っているが・・・やはり人気はない。
普通ならばここで怪しさを感じる物だが、想司はまったくそう言ったことを気にせずに、どんどんマンションの中へと入っていった。
「うーん、もう少し山奥の荒れ寺とか怪しい蔦だらけの洋館をイメージしてたけど、こう言うのも悪くないねっ☆」
想司はエントランスであたりを見回す。
「でも、ここで可愛いメイドさんが「いらっしゃいませ。ご主人様♪」って迎えてくれたらパーフェクトなのになっ。」
どうしてご主人様にいらっしゃいませなのか?という突っ込みは置いておいて、想司はそう呟くと、エレベーターのボタンを押した。

地下13階

どう考え手も在り得ないだろう場所だが、想司は躊躇いもせず、到着したエレベーターに乗り込んだ。
「これからは地下だよね〜♪シェルター完備で天変地異にも即対応なのかな♪」
そんなことを考えながら、地下へとどんどん下りてゆく表示を眺めている。
「でも、窓が無いから景色とか日照権とか考えたら意外と家賃が安いのかもね。」
想司はそれで納得すると、到着したフロアへと下りる。
地下とはいっても建物の中は薄明るく、白と薄いグリーンに統一された室内は、少し病院のようなイメージだ。
エレベーターの前からは一直線に長い通路が伸びており、その両側にドアが幾つも並んでいる。
通路の奥は闇にかすんで見えないが・・・見えるだけでも相当な長さの通路だ。
「さて、スリープウォーカーの愛の劇場はどこかなっ☆」
想司はドアにつけられた表札のようなプレートの名前を一つ一つ確かめてゆく。
「手術室・・・処置室・・・解剖室・・・あ、あったここだ!霊安室!」
そして、目的のプレートを見つけると、想司はノックもせずにドアを開いて部屋の中へと飛び込んだ。

「こんばんは〜っ!呪ってもらいに来たようっ♪」
どこかちょっと微妙な勘違いを含ませた挨拶をしながら、想司は元気よく部屋の中へと入る。
明りがついているので明るい部屋の中は、家具などがまったく無いのでがらーんと広く、部屋の中央に一台のベッドが置かれているだけだ。
そのベッドに腰掛けた男が、想司の顔をみてにこやかに挨拶する。
「やぁ、久し振りだね。」
スリープウォーカーはそう言うと、想司を手招きした。
「BBS見たよ〜っ♪今日は飛びっきりの呪詛を君にかけてもらいたいんだっ☆」
想司はそう言いながらスリープウォーカーの方へと歩み寄る。
しかし、後少しでベッドの前というところで、想司の足元にぽっかりと暗い穴が口をあけた!
「うわぁっ!」
流石の想司も避けようがなく、穴の中へ真っ逆さまに落ちてゆく。
叫び声だけが長く尾を引いて、やがてそれも聞こえなくなった。
スリープウォーカーはひょいっとベッドから飛び降りると、その穴の淵に立って中を覗きこむ。
「ふむ。彼も流石にこれではダメかな?」
笑顔の間までつまらなそうに呟く。
「このくらいで死んでしまうなんて、僕の見込み違いだったかな・・・」
そう言って、穴から離れようとした時、穴の底にちらりと何か動く物が見えた。
「え?」
スリープウォーカーの作ったこの穴は異界へと通じている。
そこは人ならざるモノの世界。
闇に満ち、瘴気に溢れ、命ある者は全てを奪われる死の世界だ。
しかし、底でちらりと動いた物が、見る間に大きくなってくる。
そして、白と朱色の衣装を身にまとった大男に担がれた想司が、穴の中から飛び出してきた。
「ああっビックリしたぁ☆いきなり穴があくなんて、手抜き工事じゃないの?欠陥住宅で報道番組にチェキ☆されちゃうよっ。」
想司は大男の肩から飛び降りると、小石でつまづいた位の感じでいった。
「いきなり我が家の屋根を破って落ちてくるとは、さすがライバル。」
大男はそう言うとむんっと胸を張った。
よく見れば、それは巫女服に猫みみスタイルの海塚だった。
「お陰で、メイクが途中なのだ。しばし時間をもらうぞ。」
そう言ってこれまた何事も無かったように、部屋の隅に持っていたメイクボックスを置いてメイクを再会した。
スリープウォーカーは珍しくその顔から笑顔を消し、驚きに目を見開いていた。
「やっぱり、面白いねぇ・・・キミたちは。」
そう言うと、想司に向かって椅子を勧めた。
どこから取り出したのか、学校の教室にあるような木の椅子だ。
「で、今日は何のようだい?」
スリープウォーカーの問に、今度は想司が目を丸くしていった。
「今日は呪詛を頼みにきたのさっ☆新装開店のお祝いだよっ♪」
「へぇ、いいよ。サービスしよう。」
スリープウォーカーはそう言うと指をパチンと鳴らして、空中から一枚の書類を取り出した。
「ここに呪詛の内容を書いてサインしてね。受付は3番窓口だから。」
想司は役所の窓口みたいな口調でいうスリープウォーカーから書類を受け取り、床において何事か書き始める。
それと同時に、今度は海塚のメイクが終了したようだ。
「では、登場シーンからやり直しだ。」
そう言うと、海塚は床の穴に自ら飛び込んだ。
スリープウォーカーはそれも愉快そうにベッドの上から眺めていた。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーーンッ!!」
海塚はそれまでの事は何事もなかったかのように、穴の中から飛び出してきた。
今度はきちんとカエルの使い魔たちも連れての登場だ。
「ウォーカー氏よ!キミからの熱いメッセージは確かにこの胸をズギューンと打ち抜いてくれた!気持ちは嬉しい!嬉しいがダメなのだっ!!」
海塚は男泣きに涙を流しながらスリープウォーカーの肩をガッシと抱きしめた。
「嬉しいが我が永遠の宿敵・水野を燃えないゴミの日にポイして、アリアリ様を有明晴海のご本尊として理想国家を現実するという野望は、我輩でなくては達成不可能なのだ!幾らキミの呪詛が素晴らしくともこればかりは不可能な事なのだよっ!!」
「・・・確かにそれは無理かもねぇ・・・」
自分のことを抱きしめてウオウオと泣く海塚を物珍しげに眺めながら、スリープウォーカーは言った。
「だがしかし!キミの行為を無駄にはしない!これだっ!!」
海塚は巫女服の胸元から悩ましげに一枚の紙を取り出す。
そこには見覚えのあるHappy Lucky Horoscope.の文字があった。

『大魔界イヌ座でB型のキミは、巫女服とプリティー☆猫みみであの子に急接近。ちょっと怪しい呪詛師をチェックよ☆』

「B型なんだ・・・」
スリープウォーカーはその紙を眺めて呟く。
「そうなのだっ!そこで私とあの子を急接近させてはくれないかねっ!」
海塚はスリープウォーカーの手をガッチリと握りしめて言った。
「ちょっと待ったあぁぁっ!!」
そこに想司の声が割って入る。
想司は願い事を書き終えた紙を手に、海塚を押し退けスリープウォーカーの前に立った。
「僕が先だよっ☆はい。お願い事♪」
想司の願いは、素敵なあの子を攻撃力三倍電撃娘に変身大作戦。
「可愛い電撃鬼っ娘に変身すればこれだけでご飯も三倍OKさっ☆」
「うーん、まぁ、二人一緒でも良いけど。」
そう言うとスリープウォーカーは、海塚に想司に渡したのと同じ紙を渡す。
「これに願い事書いてね。」
「うむっ!」
海塚はものすごい勢いで紙に願い事を三回書いた。
・・・やはりどこか間違ってるかもしれない。

◆呪詛師の素顔?
「じゃあ、二人同時にいくよ。」
二人から紙を受け取ったスリープウォーカーは、静かに印を切ると口の中で何事か呟く。
すると、たちまち足元から青白い光が光だし、その光は円を描き、文字を書き、やがて魔法陣を形作った。
「おおお・・・さすがプロ。」
海塚は自分が魔王であることを忘れて思わず呟く。
魔方陣はみるまに完成し、スリープウォーカーは言った。

「魔界樹、召喚」

言葉と共に魔法陣の中央からザワザワと葉を鳴らしながら、黒い影が伸び上がる。
「これが・・・魔界樹・・・」
想司も真剣な眼差しでそれを見つめる。
すらりと伸びた一本の幹から細い枝が伸び、サラサラとアーモンド形の葉を鳴らすその姿は・・・人間世界で言うところの「笹」にそっくりだった。
「これにこの紙を下げれば願い事は叶うよ。」
スリープウォーカーは二人から受け取った紙・・・短冊を、笹型魔界樹に結びつけた。
「ううむ。こうしてみると七夕飾りもなにやら荘厳であるな。」
海塚が再び感心してそう呟いた瞬間。
魔界樹に願いが届いたのか、二人に変化が現れた。
「うわわわわっ☆」
「むむむむむっ☆」
怪しい光が二人を包み込み、まるで溶けるように服が消え去り・・・そして・・・
「こ、これは・・・」
想司は自分の変わり果てた姿を見て、言葉を失う。
赤いチェックのスカートにセーラ服、髪を赤いリボンで結い上げたこの姿は・・・忘れもしない、いつも行くネットカフェの常連・瀬名 雫の格好だった。
「これは、なんだっちゃ?ウチはどうしたっちゃ?」
一方、海塚は髪は長く緑色になり、トラ縞ビキニに身を包み、頭に生えた2本の角を抑えながら、自分の変身姿を楽しんでいる。
「これであの子と急接近っ!!」
そして、隣りを見れば、セーラー服姿のあの少女・・・
「し、雫さまぁぁあっ!」
「え?え?えっ???」
想司は慌てて逃げようとするが、運動能力は海塚の方が勝っているらしい。
寸前のところで捕らえられ、その腕に熱く抱擁されてしまった。
「急接近〜〜〜っ!!」
「ちがう〜〜っ!」
流石の想司も、海塚の怪力に抱きしめられ、急接近どころか急昇天してしまいそうな勢いだ。
「・・・異界は平気なのに、これはダメなのか・・・」
スリープウォーカーはニコニコ笑顔のままそう呟くと、ふぅっと溜息を一つついた。
「やっぱり面白い生き物だなぁ。」
抱擁から逃れられず悶える想司と萌える海塚を見つめながら、スリープウォーカーは満足そうに呟くのだった。

さて、願いが叶ったのは誰だったのしょう?

The end ?
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0424 / 水野・想司 / 男 / 14 / 吸血鬼ハンター
0795 / 海塚・要 / 男 / 999 / 魔王

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■         ライター通信          ■
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今日は、遅くなってしまってごめんなさいです。
今回も私の依頼をお引き受けくださり、ありがとうございました。
スリープウォーカーの一番の常連さんのお二人には、こんなお話をお届けしましたが如何でしたでしょうか?

実は、非常に個人的なお話なんですけど、東京怪談最強のキャラは海塚氏ではないかと、心密かに思っている毎日なのです。
結構、スリープウォーカーは遠慮なく人を殺してしまうのですが、海塚氏と想司クンだけは何をやっても殺せないなぁと物騒な事を考えてしまいました。多分何事があっても元気に乗り越えてこられちゃうというか・・・スリープウォーカーもどこかそんな存在を望んでいるのかもなどとも考えてしまったり。
いろいろ考えながら、またも楽しく書かせていただきました。またよろしくお願いします。

では、またどこかでお会いいたしましょう。
お疲れ様でした。