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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


Stray misfortunes
〜 不幸はまるで雲霞のごとく 〜

月刊アトラスの編集部は、重苦しい雰囲気に包まれていた。

編集者の一人が、取材先で交通事故に遭ったのである。
幸い命に別状はなかったものの、車は廃車、本人も複雑骨折で当分は病室暮らしになってしまった。
おまけに、せっかく取材してきた内容まで、ノートパソコンもろとも失われてしまい、まさに踏んだり蹴ったりである。

だが、これは必ずしも「不測の事態」ではなかった。
ここ二週間ほどにわたって、月刊アトラスの編集者たちの身には、なぜか災厄が次々とふりかかっていたからだ。

空き巣に入られた者。
財布を落とした者。
下りの階段の途中でけつまずいて、下まで転がり落ちた者。
犬に噛まれた者。
痴漢にあった者。
上の部屋が火事になって、部屋中水浸しにされた者。

それこそ、まるで何かに祟られているかのように、不幸な事故が次々と編集者たちを襲っていた。

しかし。
編集部の中に、一人だけその影響を受けずに済んでいる男がいた。
そう、三下忠雄である。
普段からさんざん不幸な目に遭っている彼だけが、周囲の皆が不幸な目に遭っているときに何の不幸にも見舞われないというのは、よく考えてみるまでもなく異常であった。

「不幸の原因って、三下じゃないだろうな」
そんな噂までがささやかれるようになってきたことを受けて、ついに麗香は三下にあることを命じた。

――この相次ぐ不幸の原因をつきとめ、自らの潔白を証明することを。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜 究極!? ソロバンパワー 〜

「これはひどいざんすね。ミーの想像を遙かに超えているざんす」
編集部での聞き込みを終えて、トニー・赤木(とにー・あかぎ)は改めてその「不幸」の力に舌を巻いた。
とにかく、小さめのトラブルまで含めると、平均すると一人あたり五つ近くの「不幸な事故」に遭遇している計算になる。
「『素人不幸自慢』に団体部門があったら、かなりの評価になったはずざんす」

『素人不幸自慢』というのは、トニーが司会をしている娯楽番組で、その名の通り、一般視聴者の中から「とっておきの不幸体験」のある人を募り、その不幸さ加減を競わせるという番組である。
「人の不幸は蜜の味」という人間の本能的欲求に訴えるコンセプトのせいもあってか、なかなかの視聴率を稼いでいた。
ただ、さすがにネタが不幸だけに、それに出場したらいい線まで行く、というのは、プラスの意味にとっていいのか、マイナスの意味にとるべきなのか、ちょっと判断が難しい。
そのせいか、編集部の面々も、皆一様に複雑な表情を浮かべていた。

しかし、少なくともトニーがここに来る途中で出会った少女にとっては、その意味は明白だったようである。
「それ、ちっとも慰めになってない」
その少女――ササキビ・クミノは、トニーが一同を慰めようとしてその言葉を発したものと考えたのだ。
だが、実際の所、トニーに「慰めよう」などという意図はほとんどなかった。
それどころか、あまりの不幸さ加減に、つい『素人不幸自慢』のことが頭に浮かんで言ってしまっただけのことで、別に深い意味があったわけではない。
とはいえ、それを正直に言ってしまうのも気が引けるし、シャクでもある。
トニーは一瞬どう答えるべきか考えた後、いかにもクミノの言葉に賛同するかのようにこう返した。
「そうざんすね。今の編集部にとっては、『素人不幸自慢』に団体部門がないこと自体が不幸なんざんすから」
しかし、その気配りも、クミノにはほとんど通じなかった。
「いや、そうじゃなくて」
無愛想な彼女の様子に、トニーは危うくこう口を滑らしそうになった。
(かわいげのない子供ざんすね)

ともあれ、そこを何とか踏みとどまると、トニーは編集長の机のすぐ隣に立ち位置を移し、懐から自慢のソロバンを取り出した。
「それでは、今からこの情報をミーのそろばんにインプットしてみるざんす。
 ミーのそろばんは自立型第七世代推論チップを内蔵してるざんすから、リズムを取る以外にもスーパーコンピューターとして使えるざんすよ」
そう説明して、先ほどの聞き込みで集めた情報をそろばんにインプットする。
すると、突然そろばんの玉がひとりでに動きだし、やがてあるところでぴたりと静止した。
「な、何と出ました?」
心配そうな表情で尋ねる編集者A。
その彼を手で制しながら、トニーは編集部に集まっている面々を見渡し、おもむろにこう言った。
「やはり、三下さんが不幸をばらまいているとしか考えられないざんすが……その三下さんは今どこにいるざんすか?」

そう。
トニーたちが来たとき、編集部のメンバーはほぼ全員揃っていたが、なぜか三下の姿はなかったのである。
「あいつなら、ついさっきここに乗り込んできた蝶々みたいな格好をした男に追われて、バイトと一緒に逃げていきましたよ」
その編集者Aの言葉に、クミノがぽつりと呟いた。
「つまり、三下さんは近くの人に不幸を無差別にばらまきつつ、どこかを彷徨っている、と」
それを聞いて、一同の顔がさっと青ざめる。
このまま三下を野放しにしておいては、大変なことになりかねない。

「これは、とりあえず三下さんを探しに行くしかなさそうざんすね」
トニーは呆れたようにそう言うと、早速そろばんに三下の行方を計算させ始めた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜 道が交わると、事故が起きる 〜

(どうして、うちがこんな目に)
淡兎・エディヒソイ(あわと・えでぃひそい)は、走りながら心の中で毒づいた。
目の前には、息を切らせながら、全力疾走を続けている三下。
そして彼の背後には、魔法少女の格好をした水野想司(みずの・そうじ)が迫っていた。
想司との距離は、すでに手を伸ばせば届くかも知れないくらいにまで縮まっている。
しかし、これ以上に距離を広げる術は、今のエディヒソイにはなかった。

エディヒソイも足の遅い方ではないが、想司の足の速さは人間としては常軌を逸している。
普通に走っていては、あっという間に追いつかれてしまうことは、まず間違いなかった。
そこで、エディヒソイは、自分の重力を操る能力を使い、想司がその能力の及ぶ範囲である半径五メートル以内に入った瞬間、周囲の重力を一気に強めたのである。
そうすれば、彼のスピードも落ちるだろうと考えてのことであった。

エディヒソイの予想は、半分は正しく、また半分は間違っていた。
確かに、想司のスピードは重力の影響で大きく低下した。
しかし、低下してなお、そのスピードは三下のフルスピードとほとんど変わらなかったのである。

(ああ、もう、どないせぇっちゅうねん)
半ば絶望的な思いで、エディヒソイは三下を見た。
すでに三下はかなり疲労しているようであり、このままでは追いつかれるのも時間の問題である。
もっとも、想司の狙いが三下である以上、置いて逃げるという選択肢もないわけではないのだが、さすがにそれは寝覚めが悪い。

(誰か、誰か助けてくれへんやろか!?)
エディヒソイがそう祈った、ちょうどその時だった。
「ふはははははっ! ついに見つけたぞ!!」
高笑いをあげつつ、一対の蝶のような羽根を持った男が二人の前に立ちふさがる。
妖精の王「オベロン」に扮した魔王、海塚要(うみずか・かなめ)であった。

(あかん、絶体絶命や!)
想司と要に挟まれ、ついに逃げ場を失った三下とエディヒソイ。
ことここに至っては、エディヒソイも覚悟を決めるより他なかった。
「三下はん……もはやこれまでやな」
「そ、そんなああぁぁ! こんなところで死にたくないいぃぃ!!」
滝のような涙を流しながら、ぶんぶんと首を横に振る三下。
もちろん、エディヒソイだって、こんなところで三下を死なせたくはない。
けれども、この状況から三下が逃げ切れる確率は、限りなくゼロに近かった。

しかしその時、事態は予期せぬ展開を見せた。
二人の前に立ちふさがった要が、突然想司を指さして叫んだのである。
「むっ、貴様は水野想司!?
 貴様も猫耳を超えると囁かれる神秘の萌え『妖精さん』を狙ってきたか!?」
それに対して、想司は想司でこう言い返す。
「ん? 何のことだか知らないけど、僕と三下さんのライバル対決の邪魔をするなら容赦しないよっ♪」
お互い、話が全くかみ合っていない。
それでも、とりあえず利害が対立している(?)ということだけは通じたらしく、二人はお互いを牽制するかのようににらみ合いを始めた。

と、そこへ、さらにこの事態をややこしくする人物が現れた。
「三下さぁぁん! 大丈夫っスかぁぁ!?」
三下の名を呼びながら真っ直ぐに駆け寄ってきたのは、湖影龍之助(こかげ・りゅうのすけ)である。
張りつめた空気も、想司と要のにらみ合いも、すでに今の龍之助にとっては意識の外らしい。
彼は最短距離で三下のところまで来ると、すぐに三下の手をとって言った。
「さぁ、今のうちに早く逃げるっス!」
「え!? あ、は、はい!」
そう答えて、促されるままに立ち上がる三下。
だが、その前後を想司と要の二人が塞いだ。
「むっ!? おのれ、抜け駆けは許さんっ!」
「三下さんっ! 逃げるとは卑怯だよっ☆」

先ほどにも輪をかけて緊迫した空気が漂い、事態はまさに一触即発といった様相を呈している。
想司、要、そして龍之助。
三人の間の緊張は、今や極限状態に達していた。
何か一つでもきっかけがあれば、おそらくその瞬間が開戦の時となる。
(なんとかして、戦いを回避できる方法は……)
祈るような気持ちで、あちこちを見回すエディヒソイ。
その彼の目に、彼らの方に駆け寄ってくる中学生くらいの少女の姿が映った。
(このままこっちに来たら、あの子まで巻き込まれる)
そう感じて、エディヒソイはあらん限りの声で叫んだ。
「お嬢ちゃん! こっちに来たらあかん!!」
そのエディヒソイの叫び声が、皮肉にも、三人の探していた開戦のきっかけとなった。
(やってもうた!!)
自分の迂闊さを呪いながら、エディヒソイはぎゅっと目を閉じた。

いつまで待っても、悲鳴も、破壊音も、衝撃も、エディヒソイには届かなかった。
(…………?)
不審に思ってエディヒソイが目を開けると、想司も、要も、しりもちをついてぽかんとした顔をしている。
その視線の先に目をやると、そこには、先ほどの少女の姿があった。
その少女――ササキビ・クミノは、安心したように一度大きく息を吐くと、三下の方を向いてこう尋ねた。
「一体、何がどうしてどうなってるの?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜 犯人はお前だ 〜

全員の話を聞き、「とりあえず、一致団結して三下及び編集部に何が起こっているかを突き止める」と言う方向で、何とか話をまとめた後。
クミノは、一同に向けてこう言った。
「まず、編集部の不幸のことだけど。
 やっぱり、三下さんが周囲に不幸をばらまいていたことは間違いないみたい」
その言葉に、龍之助が感情的に反発する。
「そんな! そんなこと、あるはずないっス!」
「ミーのそろばんがそうはじき出した以上、そう考えるより他にないざんす」
冷静にそう主張するトニーに、龍之助はなおもかみつく。
「そんなそろばんで何がわかるって言うんスか!」
「何でもわかるざんすよ。ミーのそろばんは自立型第七世代推論チップ内蔵ざんすからね」

龍之助とトニーがそんなことを言い争っている一方で、残りの三人は「三下が不幸をばらまいている原因」について、お互いの主張を戦わせていた。
「やっぱり、貧乏神やったんか?」
「いや、これこそ『妖精さん』の力に間違いない!」
「違うよっ☆ やっぱり、三下さんは殺れば出来る子だったんだよっ♪」
どれも、嘘臭いと言えば嘘臭いが、絶対にないとは言いきれない程度の信憑性はある。
けれども、クミノにはどうもしっくりこなかった。
そもそも、三下にはちょっとした不幸すらもない、というのが、どうもひっかかる。
三下は不幸になるどころか、不幸を免れている、とすれば……。
そこまで考えて、クミノはあることに気がついた。

「ひょっとして……二週間前、また変なお守りでもつかまされてないか?」
クミノがそう尋ねると、三下は少し考えた後、ぽんと手を打った。
「そういえば……これをもらったのが、ちょうど二週間くらい前だった気がします」





三下が取り出したのは、「厄除守」という文字と、唐傘のようなものをかたどった印がついた紫色のお守りだった。
「これは、この前会った昔の友達にもらったんです。
 なんでも、古今東西の魔術及び宗教儀式、錬金術の類に、厄除本舗秘伝の術をミックスして作った天下無双のお守りだとか」
その説明に、要が一同を代表してツッコミを入れる。
「どこからどう聞いても思い切り怪しいな」
確かに、古今東西の魔術や宗教儀式をごちゃ混ぜになどしたら、それぞれが干渉しあってとんでもないことになりかねない。
だが、ツッコミの内容自体は至極もっともでも、相変わらず怪しげな「自称・妖精」の格好をした要が言うと、説得力はガタ落ちである。
「今のあんたの格好よりは、怪しくないんちゃうか」
エディヒソイが小声でそう呟いたのも、ある意味仕方がないと言えば、仕方がないのかも知れない。

しかし、その言葉が要の耳に入ってしまうと、仕方がないではすまされない。
「何だと! 貴様にはこの『萌え』がわからんのか!?」
憤慨する要に、今度は想司が追い打ちをかける。
「ん〜……要っちのは、やっぱり『萌え』とはちょっと違うんじゃないかなっ☆」
「同感やな」
その的確なツッコミに、歯ぎしりして悔しがる要。
「むむ……やはり、まだまだ『萌え』の研究が足りないということか……!?」
そこに、トニーがとどめを刺した。
「研究云々以前に、何か根本的なところが間違っている気もするざんすね」
「ぐぬぬ……!!」
要の顔が、怒りのあまり真っ赤に染まる。
それを見て、クミノはさっさとまとめに入った。
「ここでいつまでもそんなことを言っていても始まらない。
 とにかく、まずはそのお守りをくれた友達に会ってみよう」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜 決断 〜

三下に案内されたのは、都内某所にある賃貸マンションだった。
よくテレビなどで宣伝している、家賃の計算が一週間単位というやつだ。
「確か、当分はここの三階に住んでいると言ってました」
「当分って?」
三下の言葉に、想司が不思議そうな顔をする。
「ああ、大宮くんは自称トレジャーハンターで、いつも旅をしているんだよ」
「ふーん☆ その人強いかな?」
「それなりには強いんじゃないかな。昔からケンカは強かったはずだし」
そんなことを懐かしそうに話す三下を見ながら、龍之助は複雑な気持ちで後に続いた。





「よぉ、三下! どうだ、あれから?」
大宮と名乗るその人物は、日焼けした肌のやや大柄な男だった。
ひょうきんそうな顔をしており、年齢も三下より多少若く見える。

中に通されると、龍之助は開口一番こう尋ねてみた。
「あの、三下さんとは、どういう関係なんスか?」
その唐突な問いに、大宮は笑いながら答える。
「あぁ、中学ン時のダチだよ。
 親友って程じゃなかったし、卒業後はあんまり連絡取り合うこともなかったんだが、こいつが怪奇雑誌の編集者始めたって聞いてさ」
「そうだったんスか」
その答えを聞いて、龍之助はほっと胸をなで下ろした。
それに気づいているのかいないのか、楽しそうな笑みを浮かべて、大宮が尋ね返してくる。
「で? おそらく、本題はそれじゃないだろ?」
その様子に何か怪しいものを感じつつも、龍之助は例のお守りを取り出してこう切り出した。
「今日は、このお守りのことについて聞きに来たんスけど」





「なるほど、やっぱりそういうことか」
龍之助たちが事情を説明すると、大宮は満足そうに頷いた。
「そういうことって……どういうこと?」
そんな彼をいかにも不審そうに見ながら、クミノが聞き返す。
だが、大宮はそれには答えず、にやりと笑ってこう言った。
「そういうことなら話は早い。
 このお守りを編集者みんなが持てば不幸は退散、作業も今まで以上にはかどること間違いなしだ。
 本来ならば一つ税込みで千九百八十円のところ、ダチのよしみで特別に千四百八十円にまけといてやるよ」
「話が、よう見えへんのやけど……?」
エディヒソイがとぼけて聞き返すと、大宮は得意そうにこのお守りの効果を説明し始めた。

曰く。
人間の運、不運は、運気の流れによって左右される。
運気が落ち込んでいると、不幸な目に遭いやすくなる。
そこで、このお守りは、所有者の運気が落ち込んでいるのを感知すると、自動的に周囲の運気をかき集めて「運気のバリア」を形成し、所有者の運気を常に平均以上に保つ。

「まぁ、今回は慢性不幸人間の三下が持ったせいで、常に周囲の運気を吸い取り続けたんだろうな。普通の人間が持つ分には、そんなにひどいことにはならないから安心しろ」
そう言って楽しそうに笑う大宮に、トニーが苦言を呈する。
「そんな、周りの人間を身代わりにするようなお守りなんて、邪道なんじゃないざんすか?」
けれども、大宮はきっぱりこう反論した。
「ンなこと言ったら、金運のお守りなんかみんなそうだろ?
 自分の分のパイをどれだけ増やすか、ってことなんだから」





静寂を破って言葉を発したのは、何と三下だった。
「大宮くん」
「何だ?」
「僕には、君がやっていることが正しいのかどうかはわからない」
真剣な表情でそう語りながら、三下はテーブルの上に置かれていたお守りをそっと大宮の方に押しやった。
「けど、僕は、これは受け取れない」
その言葉に、全員が驚いて三下を見る。
迷いはあったはずだし、実際にかなり迷っているのが見て取れた。
それでも、三下はこう決断した。
「僕は、周りのみんなを不幸にしてまで、幸せになんかなりたくない」





「そう、か」
しばしの沈黙の後、大宮は苦笑しながらお守りを受け取った。
「そうだな。これはお前にはいらない物だよな」
「え?」
怪訝そうな顔で、大宮を見つめる三下。
大宮はその三下に背を向けると、そっとお守りを自分の懐に忍ばせてこう続けた。
「これは、オレみたいに孤独な人間が持つモンだ。
 お前みたいに、そんな立派な仲間がいるヤツには……こんなモンは、百害あって一利ない、か」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

〜 その後 〜

三下たちと別れて、自分のネットカフェに戻った後。

クミノは、ふとあのお守りについて考えていた。

「自分のように孤独な人間が持つものだ」。
大宮という男は、返されたお守りを受け取ってそう言った。
その言葉が、何とはなしに引っかかっていたのである。

(もし、自分があのお守りを持ったらどうなるんだろう)
お守りは、お守りの所有者の運気が落ちたことを感知して、周囲の運気をかき集めてくる、といっていた。
ならば、周囲に誰もいないクミノが持った場合は、一体どうなるのだろうか?

(あの子たちにも、運気はあるのかな)
明日の開店に備えてお店を掃除しているモナとリナを見ながら、クミノはそんなことを考えてみた。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0218 /  湖影・龍之助   / 男性 /  17 / 高校生
1207 / 淡兎・エディヒソイ / 男性 /  17 / 高校生
1333 /  トニー・赤木   / 男性 /  36 / コメディアン
0424 /   水野・想司   / 男性 /  14 / 吸血鬼ハンター
0759 /   海塚・要    / 男性 / 999 / 魔王
1166 / ササキビ・クミノ  / 女性 /  13 / 殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない

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■         ライター通信          ■
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・このノベルの構成について
このノベルは全部で六つのパートに分かれています。
このうち二番目のパートにつきましては三つのパターンがございますので、もしよろしければ他の方の分のノベルにも目を通していただければ幸いです。

・個別通信(ササキビ・クミノ様)
二度目のご参加ありがとうございます。
今回は暴走しがちな方々が多かったこともあり、プレイングがドンピシャリだったこともあり、クミノさんには全員集合後のまとめ役をお任せしましたが、いかがでしたでしょうか?
もし何かありましたら、遠慮なくお知らせいただけると幸いです。