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<東京怪談・PCゲームノベル>


剣客の下宿2 あやかし荘武術大会

■準備
こぢんまりとしているが、篝火の台が4つ、演舞用にあしらえた舞台と、マイクなどの器具、裏山から節を取った竹と湿らせた巻きゴザ、酒とジュースとつまみ。準備は万端だ。
エルハンドが三下と一緒に大会の設置を行った。
「こんなものだろ」
「ほんとに…やるのですか?大会」
「そうだ」
「…あまり争いは好きじゃないなぁ」
三下はまだエルハンドにかなりの恐怖を持っている。3メートルほど剣客から離れているところからそう言った。
「わかってないな。確かに『殺める』術だと思うだろうが、道さえ間違わなければ武道は良い物だぞ。偏見は行けない。ジャーナリストは偏見を持っては行けないのでは?」
「其れはそうですけど…」
「それは、演舞の全てが終わってから感想を訊くことにするよ。手伝ってくれてありがとう」
「いえ!こちらこそあまり役にはっ!」
いきなり剣客に礼を言われた三下はしどろもどろになる。滅多に礼をされるなんて無いからだ。

●時音と歌姫
「武術大会ですか?」
部屋でのんびりとソバを食べている時音に歌姫はジェスチャーで伝えた。このところ、時音と歌姫は一緒にいることが多く、彼女は時音に対して言葉でなく行動などでの意思疎通が出来るまで仲が良くなっている。唄う事もあるが、歌姫は歌よりジェスチャーでわかってくれる時音が好きだった。
「面白そうですね」
時音が笑って言うと、歌姫は参加してみれば?というジェスチャーをした。
「僕が?」
少し驚く時音に、歌姫は頷く。
しばらくの間…。時音は考えた…というより悩んだ。
このしばらく、まともに寝ることが出来るのもこう歌姫が居るからだと。しかしそれに伴い、過去の自分の弱さが後悔となって自分を責めてしまう。しかし、
「良いですね。格好いいところ見せますよ」
微笑みで返事した。

■嬉璃と三下
三下は廊下でばったり嬉璃とであった。ああ、またイヤな予感がする…お先真っ暗な顔をする三下。
「おい、三下」
嬉璃は、三下を呼び寄せた。ビクつく三下。
「な…なんでしょう?嬉璃さん」
「一つ勝負をせんか?」
「勝負?」
嬉璃はどこからか一振りのピコピコハンマーをとりだし、三下に渡した
「今大会中に儂にそれで叩くことが出来れば、もう当分はいぢめることはしない」
「え!?本当ですか!」
「嘘はつかん。やるか?」
「もちろんです!」
これを逃したら明日すらない!幸せ満点な笑みを浮かべる三下であった。張り切っている三下だが…嬉璃はニヤニヤと笑っている。
「では(幸せのために)早速、行きまっ…」
ピコピコハンマーを振り上げる三下より先に、嬉璃が彼の足を思いっきり蹴った。ちなみに相手の体勢を崩しやすいローキックで…。
「…!!」
「甘いわ、若造」
痛さのあまりはね回る三下を眺め楽しむ座敷わらしだった。

■開会式
快晴のあやかし荘に人々が集まってくる。エルハンドが在籍する道場の門下生や、口コミで広がって興味津々に集まる客。本部テントでは、満足げに見物客を眺めるエルハンドだった。
「第一段階は成功した感じか?嬉璃」
「そうぢゃな」
「ところで、おまえの企てははかどっているのか?」
剣客は座敷わらしに訪ねた
「ああ、其れは問題ないぞ」
にやりと笑う嬉璃。
「まぁ、個人的には興味はないが…。必要になったらこれでも使うが良いさ」
テーブルに、何故か白いハリセンが置かれていた。
エルハンドと門下生が開会式を滞りなくすませ、門下生の演舞と、試斬が終了する。
時音は歌姫と、撫子は本部で和菓子と甘酒で嬉璃と見物していた。
黒髪黒い服装の女性は、舞台の一番前で【自分の楽しみのチャンス】を窺っていた。

●△うそだろ?
この祭りを頼む傍ら、〈あやかし荘〉の守護をしている時音は巡回をする。刀剣類など貴重品もあるし、間違って〈あやかし荘〉に入って迷われると困ったことになるからだ。あらかじめ、〈あやかし荘〉の住民と空間干渉術に長けているエルハンドが手伝って結界を張り(カナリア役は三下君ということは変わりない)、管理人室と食堂、一番近くて安心な共同トイレなどのみにしているから大丈夫なのだが、この建物自体のひねくれ度合いはどこかの誰かさん並(嬉璃「へっくし!」)なので、用心に越したことはないのだ。
一通り、巡回を終えた彼だが…どうも気になる気配を感じる。人が多いので全く分からない。懐かしいが、苦痛と悲しみを忘れさせない…。一緒にいる歌姫は彼の顔色が変わっている事に心配している。
「すみません」
ある女性が、時音に話しかけてきた。黒ずくめの服装でおとなしい感じの少女である。
「どうかされまし…!?」
時音は返事しようとするが…言葉を失った。
自分の未来で退魔剣を教えてくれた少女…弓原詩織が目の前にいる…。師匠であり、姉としたっていた女性…。
「あの〜トイレどこかしら?」
女性は恥ずかしい顔をしながら時音に訊いた。
「あ、はい…この中の突き当たりから…右です。迷わないため…誘導線など設置していますので…許可されているところ以外は入らないようにしてください」
他人のそら似だろうと頭の中で思いこんで返答する時音。
「ありがとう」
女性は会釈して〈あやかし荘〉に入っていった。
時音は…忌まわしい記憶を思い出し、
「うそだ…。あの人はもう…居ないはずだ」
と呟いた。
先進的に不安定な彼に、詩織の姿をしている訃時を見破ることは出来なかった。
訃時に至っては…角から彼の苦悩する姿を見て、揺さぶりをかけるに十分な効果と満足げであった。

■試斬で盛り上がり
エルハンドは巻きゴザを台座に固定してから、マイクで喋った。
「今から、物体を実際斬る試斬を行います。刃筋が正しく通れば、どんな人でもこの湿らせたゴザを斬る事が出来ます。ではお手本を天薙撫子さんどうぞ」
「わ…わたくしからですか?!」
「ええ、もちろん」
いきなりの紹介で戸惑う撫子であるが、エルハンドは当たり前かのように彼女を舞台に呼ぶ。
見物客がパチパチと拍手をする。ココまで来るとするしかない。
「わかりました、わたくしがさきに試斬させて頂きます」
彼女は御神刀『神斬』を袋から取り出し、剣術を身につける者が習う特有の作法を一通り行う。そして腰に刀を腰にさした。いかにも現代によみがえった女性剣客、皆が礼儀良さと力強さに感嘆のあまり沈黙する。撫子はゆっくりと抜刀し、自分の剣術の型から入る。そして、正眼の構えで巻きゴザに向かい…右ケサで綺麗に目標を斬った。
見物客は拍手喝采、撫子は血ぶりをして納刀、そして皆に礼をする。
巻きゴザの切れ目は綺麗であり、エルハンドも拍手をしている。
「ほかにも竹や兜などを斬る…大げさな話、何でも斬れる(注:幽霊などは別)事が出来れば其れは立派な刀です。撫子さん、良い刀をお持ちですね」
「ありがとうございます、エルハンド様」
深々とお辞儀をする撫子。
「では次に…試斬をしたい方は…」
エルハンドは周りを見渡した。
「はーい!やりたーい!」
柚葉は元気な声で手を挙げる。
「じゃあこっちにおいで、柚葉ちゃん」
元気に舞台にやってくる柚葉。エルハンドは彼女の身長に合う長さの刀を選んで、丁寧に渡した。
「どうするの?」
「ゆっくり刀を抜いて…こう構えて…」
エルハンドは細心の注意を払い、優しく柚葉に剣の持ち方を手取り足取りで教えて、構えが出来たら直ぐに間合いから離れる。
「今だよ」
「えい!」
剣客の声に合わせ、柚葉の気合い一閃。綺麗に巻きゴザが斬れる。
「わぁすごぉい!」
「危ないから斬る前の構えに戻すのですよ」
うれしさのあまりにはしゃごうとする柚葉を撫子が優しく諭す。
「っとっと、うん」
直ぐに、柚葉は構え直す。その後ゆっくりと刀を返してもらうエルハンド。
「すごいよ!こんなに簡単に斬れるなんて!」
周りから感嘆の声が聞こえ、其れが拍手にかわる。
柚葉は拍手の中で照れくさそうに笑っていた。
「次は…様々な実戦経験のある風野時音君」
何となく国会の議長が答弁する人を呼ぶような感じで時音を呼んだ。
「はい」
ゆっくりとやる気満々で舞台に上がる時音。しかし、
「原子分解系はNGだから気をつけるように」
「え?」
エルハンドの忠告にギクッとする時音。
「神秘能力を披露するわけではないのだ。まさか退魔能力でやるつもりでいたのか?」
「実は…そうです…」
顔を真っ赤にする少年。エルハンドは苦笑しながら、身長にあう近代刀を鞘ごと渡す。
「其れはだめ。はたからみたら、曲芸になる。普通に物体を斬りましょう。某有名超常現象否定学者の格好の的になるからね」
「わ…わかりました」
歌姫が笑っていることで更に赤面する時音。
本部(テント)で嬉璃が和菓子のきんつばをおいしそうに食べながら撫子に尋ねた。
「あれも青春という物ぢゃろか?」
「う〜ん、どうなのでしょう…」
返答に困る天薙撫子であった。

■護身術
「さて、今度は護身術を教えます」
マイクを使ってエルハンドは言った。
「護身術は様々ありますが、体がその行動を覚えないことには何も意味をなしません。10分でもいいです、毎日その訓練をしましょう。…今回は代表的な護身術を教えます」
後ろから襲われたときや、大声を出す心構え、先ほどの手之内の簡単な使い方を教えた。結構人気があり、それだけで時間が経っていく。
「お、護身術を身につければ、大助かりになる場面が起こるそうです」
撫子や、エルハンドが参加者や見学者に教えていく。
其れは、三下はまたもピコピコハンマーで、護身術を習っている嬉璃に攻撃を仕掛けるが、軽く身をかわされ、足をひっかけられる。そのままつんのめった三下は歌姫に向かっている。歌姫は気がついていない。
時音は歌姫に危ないと叫ぼうとしたが、
「大丈夫ですよ」
撫子は笑いながら彼を制した。
三下はそのまま歌姫に抱きついてしまった。
「ああっ!」
時音は叫ぶ。
「あああ!す、すみませんっ…って?」
三下が謝ろうとするか否や、歌姫は彼の力を利用し流れるような動作で彼の抱きつきから離れ、時音にむかって三下を押した。
三下はその先にある恐怖で気を失う。幸いなのは、風野時音が光刃で迎え撃とうとしていない事だけだ。彼が手にしていたのは本部に置いていたハリセンだったからだ…(彼にハリセンを持たせたのは嬉璃ではなく、意外なことに因幡恵美さんだったりする)。
ハリセンの心地よい音が〈あやかし荘〉に響いた。
「練習の賜だろ?お嬢さん」
エルハンドは、黒ずくめの女性に護身術の型を教えながら歌姫に言った。にっこりと微笑む歌姫。
彼女は一礼して複雑な顔持ちで困り果てている時音の方に向かっていった。
嬉璃は鼻血をだしてのびている三下を見下ろし、
「そこまでの執念があれば良い物をのう…しかし無駄な努力ぢゃ」
と、笑う。
「ハリセンも役に立ったからの」
ふてくされ気味の恵美をみて、さらに満足げな笑みを浮かべる嬉璃だった。

■最終演舞
武術大会は主催者エルハンドの演舞が始まった。それは、礼から型演舞、基本試斬、巻きゴザをツバメ返しで斬り、そこから竹5本を右ケサから左ケサ、水平斬りの3回切りで終わる。皆の拍手の中、ゆっくりと礼をした。
「皆さんお忙しい中、あやかし荘武術大会に参加、見学ありがとう。日も暮れてきたことですが、若干ゴザも残っております。試斬を試みたい方は、前に来て下さい。どうもありがとうございました」
その宣言で幕を閉じ、武芸に興味ある人達やたしなむ人はエルハンドや撫子、時音に様々な会話を持ち出してそのまま宴会という流れになった。
結局三下は嬉璃に一撃もピコピコハンマーを当てることが出来ず、大泣きしている。
子供達にピコピコハンマーを奪われ、あげくに逆に叩かれている姿には情けなさのほかに同情するしかない。

●時音と歌姫の危機
今回、気になることもあるが、充実した日であった。自分を想い支えてくれる歌姫と一緒にいることが緊張をといてくれる。今までの疲れが体と心に襲い、長椅子に座ってそのまま眠った。歌姫は彼が風邪を引かないよう、毛布を掛けてあげる。座りながらの睡眠はつらいので、彼女は彼に膝枕をしてあげた。
(かぜひくよ)
歌姫はそう呟くよう彼の頭をなでた。
遠くの方では、嬉璃一同、お邪魔しないことに話が落ち着き、見て知らぬ振りをしていた。
しかし…時音は光刃による空間破壊の気配を知って飛び起きた。
(!?)
「しまった!僕としたことが!」
彼らの周りに、ナイフ並みの光刃が突き刺さり、魔法陣が浮かび上がる。
その平安を破るかのように、空間に亀裂が入り、その渦に二人は飲み込まれてしまった。
ある二人だけ除き、〈あやかし荘〉のメンバーは驚きを隠せなかった。

●△悲しき戦い。
空間は暗闇であった。時音は光刃を召還し、歌姫を庇う。
闇の中から、あのときの女性が現れた
「貴方は血の海の宿命から逃げられない…もう忘れてしまったの?」
「詩織さん!いや偽物!師は訃時に殺されている!訃時だろう!」
正眼の構えで間合いをとって正体を見破った。
詩織の姿をした訃時の表情は残念そうだった。
「あら、かなり察しが良いのね。すこしつまらなくなるけど話が早いわ。ふふ。ちなみにこの空間に「距離」はないのよ…」
「ならば、そのまま斬るまで!」
光刃を振りかざすが、訃時も光刃で受け止める。退魔剣術の原子分解要素で二人共はじかれる。お互いの顔が苦痛に歪んだ。光刃のエネルギーは精神力。同種の能力を持つ存在は、鍔迫り合いだけでも精神をむしばむのだ。
「そうよ、これなのよ…貴方が欲しているのは。自分の崩壊よ…ふふふ」
すでに「狂気」を持つ訃時にとって、精神殺傷など無意味に近い。
「光刃同士の接触はさけて何とか訃時を刺さないと」
構えて隙を窺うが、相手は自分より上…全てにおいてだ。何せ、自分の未来を破壊した本人だからだ。
今の世界に来た時音にとって、倒しておくべき敵。
容赦なく攻撃してくる訃時の光刃をかろうじて交わしていくが、体力的にも精神的にも限界が来ている。
さらに訃時は煽り立てた。
「貴方の想い人も殺しちゃおうかしら」
「其れは止めろ!」
激情して、訃時の死点に一撃をあてる。しかし…
寸止めで止まった。
「やっぱり…師匠であり姉と慕っている私は斬れないのね。嬉しいわ」
「う…」
「終わりよ坊や」
訃時の目が血のように深紅に染まり、時音の首をつかんだ。大柄な時音を持ち上げ、心臓めがけて光刃を突き刺そうとした。
しかし、光刃は空を突く。
「時間停止!エルハンド!邪魔したのか?!」
訃時は辺りを見渡した。撫子と時音、歌姫が居た。エルハンドの姿はない。
その後ろは光刃による空間破壊の切り目がしっかり残っている。歌姫の手には…光刃が構えられていた。

■訃時の最期。
「馬鹿な!詩織がまだ存在しているの!」
訃時は撫子の干渉と目の前にいる残留思念ではあるが本物の詩織をみて焦りを隠せない。なおのこと自分以上の力を持つエルハンドが、どこに隠れていることが分からない状況も恐怖である。能力ともに匹敵するが、相手は…神格者…。己も神格まで高めた魔であるが、正当な神格保持者とは格差が違う。
「ありがとう、撫子さん助かりました」
「わたくしも、助けることが出来て安心しました。エルハンド様はあなた達が危機になるまで何もしなかったのですから…怖かったです」
「あの人は、そう言う人ですよ気にしないで下さいね。」
注意を払いながらも、時音と撫子は会話しながら剣を構え直した。
「歌姫さん…ありがとう。詩織さん…」
「いいのよ…私が出来なかったことをこの子に託したの。自分で全てを背負わないで」
残留思念の師は優しく答えた。光刃を構えた歌姫も涙目で頷く。自分も戦うというのだ。
「くさい仲間意識や師弟愛、恋人同士の惚気など見たくもないわ!」
訃時は光刃を6尺までのばし、怒りに身を任せ4人に襲いかかった。
光刃の分解と反発効果を半減する術を施すため「詩織」がサポートにまわり、時音と撫子は訃時に斬りつける。歌姫は光刃を構えていてもその戦いに目を背ける事はしなかった。
【魔】という存在は【結束をもった人々】の力の前では無力である。だから、人間の不安定な心につけ込み退魔剣士達を窮地に追いやったのだ。
じょじょに、光刃の力を失いつつあり、血を吐き跪く訃時。すでに「詩織」の姿を維持しきれないほど衰弱している。魔の特有の姿に変わろうとしているのだ。
「時音…私の光刃をもって…」
詩織が時音に言った。歌姫はゆっくりと光刃を差し出した。
「訃時…最期だ」
「起きたことは必ず起きる…時間がずれるだけよ。今此処で私を倒しても…ね」
「何もしないことより、【ここ】に来てやれる事をする。撫子さん達の様に助けてくれる人々が居る。過去を引きずって悔やむより、今禍根を断つ!」
「ひっぃい!」
二振りの光刃が重なり、いっそう光がました。
「退魔剣真陰流奥義、鳳凰飛翔閃」
光刃が鳳凰の姿になり、訃時の魂もろとも焼き払う。
「まさか…この…じだい…人のこころが…わたし…」
塵となる訃時の最期の言葉だった。
空間が安定し〈あやかし荘〉の庭に戻ってきた。心配していた嬉璃達が駆け寄ってきた。

■戦い終わり
残留思念の詩織が訃時の事と自分の最期を話した。魔物との戦争の時に訃時などの高等な魔に心を操られ人が裏切り、最悪な事態になっていたことを。何とか訃時を窮地に追い込んだ事もあったのだが、結束のない人の力では神並みの力を持つ訃時にはかなわなく、人間の裏切りとともに死んでしまったのだ。
残留思念の「詩織」は時音に
「私はずっと貴方の側にいるわ…姉さんと呼んでくれていたこと…嬉しかったわ…」
「詩織姉さん…」
「でも大丈夫よね、ちゃんと人を信用して皆と仲良くするのよ」
「大丈夫ですよ詩織様、時音様にはいい人が居ますから」
撫子がくすくすと笑う。時音と歌姫は頬を染める。詩織も優しい笑みを浮かべる
「皆さん、時音のことよろしくお願いしますね…」
「「はい」」
あやかし荘の皆の返事に安堵して、笑顔のまま詩織は消えていった。
涙をこらえる時音。
詩織の魂の平安に祈りを捧げる撫子。
「ところで…エルハンドさんは?」
時音が剣客をさがす。空間内に閉じこめられた訳でもない。どこに行ったのだろう?
「分かりません…わたくしは貴方を助けるのに精一杯でしたから」
撫子も首を振る。
歌姫が、筆記用具をもってきて何か書き始める。
「空間干渉者としての仕事をしているとおもうわ」
と…。
時音と撫子は思い出した。彼は、手助けはするが実際決断し行動するのはその世界の住人ということいつも言っていた事を。
二人とも安堵する。
「でも、良い所取りは好きなんですよね、エルハンドさんは」
時音は苦笑いして言う。その言葉で皆が笑った。
そのまま、皆は宴会に戻っていった。

End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1219 / 風野・時音 / 男 / 17 / 時空跳躍者】
【0328 / 天薙・撫子 / 女 / 18 / 大学生(巫女)】
【1136 / 訃・時 / 女 / 17 / 未来世界を崩壊させた魔】

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■         ライター通信          ■
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どうも滝照です。
剣客商(ごほごほ)『剣客の下宿2 あやかし荘武術大会』に参加して頂きありがとうございます。
手短ですが、又機会がありましたら宜しくお願いします。

滝照直樹拝
20030306