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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


大阪怪奇事件簿その1 大阪より愛を込めて

新大阪
草間と零、シュラインが改札から出たばかりだ。その後から宮小路皇騎と夜藤丸星威が続いて改札口から出てきた。
「すまないな、資金を出してもらって」
草間が宮小路に礼を言った。
「かまいませんよ。草間さん。近畿は私の一族の地。此処は私の実家もありますし、謎の封印石関係で、一族総出で調査をしているのですよ。地図によると和泉市ですね。宿泊等については実家の方に任して下さい」
新幹線で来た理由は、途中で彼の一族からの援助や打ち合わせもあったのだが、関西空港のルートにもなっている泉州地区には地場の狂いがあり、欠航便があるのだ。危険性は一般生活まで及んでいるようだ。
「無事ついたし、奈緒子さんに会ってから話を又進めましょう、武彦さん」
「あ、ああ」
シュラインの提案に少しどもって答える草間。実際過去に何があったかは知らないシュラインだが、あまり気にしないようにしている。零に至っては、仕事もあるのも考えているはずだが、大阪まで出かけると言うこと自体が初めてなので、おのぼりさん状態となっている。夜藤丸は黙して周りを警戒している。
数分後…
「たけひこ!」
と元気な声でデニムパンツとジャンバーの女性が走ってきた。歳はシュラインに近い。
「よかった、手紙がとどいたんやね」
「ああ、何年ぶりか」
旧友の再会を楽しむ様に会話が弾みかけるところを、シュラインと宮小路が咳をして止めた。
「おっと、おまえの住んでいた施設跡が大変になっていることは手紙で見たが…」
「私も、昔の知り合いから情報集めてるところや。とにかく現地にいかへん?」
「そのまえに、仕事を手伝ってくれる人達を紹介しよう」
宮小路と夜藤丸を紹介し、次にシュラインと零を紹介した。シュラインが挨拶をするとき奈緒子から何となく敵対心を抱いたように見えた。
草間のイヤな予感は的中した。昔から自分のことに好意を持ってくれているのは知っていたからだ。
其れと裏腹に、シュラインは草間と彼女の関係を詮索する気もない。草間を信用してこそなせる。次の問題は零である。すでに草間の過去をしっている彼女に「実は妹が居ました」なんて言う嘘など通じやしない。しかし、
「シュライン・レマの従妹、零です」
零は行儀良く、奈緒子にお辞儀した。頭の良いフォローだ。
「はい宜しく」
奈緒子は優しく微笑んだ。草間はホッとため息をつく。

車より、電車に乗っていく。大阪も渋滞が酷いし駐車禁止大国だからだ。本来なら阪神高速を使えば簡単だが、空路に大きな影響が出ているため、陸路にそのしわ寄せが来ている。
「東京でこういった事が起こると大変になるわね」
シュラインは車窓から渋滞している高速道路を眺めて呟いた。
何とか和泉府中駅までついた。霊感のある人物は周りに無害な下級霊がそこら中うろついている光景を見て、事の重大さをかんじた。そろいもそろって能力者の顔色は悪い。零はシュラインに掴まっている。
シュラインは怖がっている零を慰めるように言った。
「気分大丈夫?」
「はい」
「…まず現地を見てから、情報を集めた方が良いとおもいますが?」
無口な夜藤丸が口を開いた。
「そうね」
現場はここから歩いて20分はかかるという。表沙汰では深く埋もれた不発弾の爆発と言うことになって施設を中心に半径1kmは立ち入り禁止だそうだ。
全員が其れは不自然過ぎると感じたのは行きの途中自衛隊駐屯地があるからだ。ガス爆発にしては規模が大きかったのだろうか?監視は警察と自衛隊が共同で行っている。
特別許可をもらって、中を調べる事が出来た(宮小路の援助である)
小高い丘になっており、昔はカラスが多いことからその名が付いている町である。桜が植えてある公園があったが爆発の影響かなにかで見るも無惨な状態だった。戦死者慰霊碑が高くそびえていることも、いかにも恐ろしいことが起こると思わせてしまう。
現地は小さいクレーター状になっており、深さは8mといったところだろうか。底に写真で見た封印石がある。
「おかしいな」
皆が呟いた。
昔の鉄筋2階建てで上下水などのライフラインや基礎を建てるだけなら、此処まで深くは掘らないはずだ。
「現場の状態は分かったが…これほどとは」
皇騎と星威は驚く。
「皆で手分けして情報を集めましょう」
シュラインが提案した。
「そうですね、近くに信太森葛葉神社がある。この付近は葛の葉の白狐伝承が盛んだからね。何か聞けるかもしれない」
皇騎はそういった。
「私は図書館などで調べてみるわ。この建物についての情報と工事に携わった人を当たってみる」
シュラインと零は図書館及び、弥生文化博物館で昔の歴史を調べるとのことだ。
「俺は奈緒子と施設の知り合いを当たってみるがいいか?」
草間は恐る恐る言ってみた。
「武彦さん、いいわよ。急な事件といってもつもる話もあるでしょうから」
と、シュラインが返答した。
「すまないな」
集まる場所は、泉大津市の私鉄沿線にあるホテルということになった。

葛葉神社〜
白狐の石の前に皇騎は座っていた。呪を唱え安倍晴明の母・白狐に接触を試みる。
「何か用ですか?…貴方も私の息子のように陰陽師のようですね」
姿は伝承に伝わるように綺麗な女性で、白狐は現れた。すでに魂となっている彼女なのでその姿は幽霊に近い。
「初めてお目にかかります、私は宮小路皇騎と申します。すでに今この地で異常な事態が発生しているとご存じでしょうか?」
「ええ、かなりの冥府の力を感じます。私が知る限りのことは教えましょう」
長く眠っていた晴明の母は、過去に息子が帰郷したさい、あの山にあった冥府への門を封じたことを思い出した…。其れが、この数ヶ月前に何故か割れていることに気付いていた事を伝えた。
「どうもありがとうございます」
深くお辞儀をしてその場を跡にした。
外で待っていた星威は、宮司に許可を得て過去の伝承の巻物を読んで其れをまとめていたのだ。
「どうでした?」
「一応、接触して重大な事は聞き出せた。そちらは?」
「まとめてみましたが、これといったことは書かれていないようです」
「人には伝わっていない封印か…」
移動しながら、皇騎と星威は情報交換をした。
「もし、そうだとすれば…」
「はやく私たちは合流しないと大変になる」
丁度そのとき、携帯電話が鳴った。着メロからしてシュライン組からだ。
「もしもし」
「草間さんが危ないんです!」
焦った声の零の声がした。

シュラインの勘
施設の建造物が大阪府管轄と言うことから、かなり手間取った。役所での許可が降りないと過去の建築資料を見ることが出来ない。大きな壁に当たっていた。
「困ったわね…」
「せめて過去の業者さんがわかればいいのに」
シュラインは和泉市全体の地図をみてため息をつく。位置的には完全に山のようで、和泉中央付近と、泉大津にかけて平地やため池がある。また、歴史文書からの由来からでは、歴史上あの山に住む生き物はカラスぐらいだ。
「もう何十年も前の話よ。今の不景気でその建築業者があるのかしら?」
何かに引っかかるシュライン…。
少しひらめいた。
「この数年の工事の履歴ぐらいは閲覧可能のはず。少し探してみましょう。零ちゃん」
「はい」
小1時間たった。
「解体時の状態を大体分かっている業者から話が聞けたわ!」
簡単な地図をもって駆けてくるシュラインだった。
地図を調べ…シュライン自分の勘が当たっていた…。
「工事中に壊れたわけではない…。武彦さんが危ない…」
急いで、シュラインは草間に電話するが繋がらない…。零は皇騎達に電話を入れる。

合流
「しまったわ…。…私がああ言わなかったら…」
シュラインは自分を責めていた。
「違います。草間さんのことを思ってあの旧友の方と二人きりにしたのでしょう? 自分を責めないでください。それに…」
「彼女を信用しきっていた私たちも責任ある…」
皆でシュラインを慰める。
皆で何とか連絡が付かないか電話を入れてみようとするが繋がらない。当然奈緒子の自宅と携帯に入れてみても無理だ。
「くっ!ひょっとすると妨害されている可能性もあるな…」
皇騎は舌打ちする。
「しかし、どうして草間さんが危険だと?それに事故ではないと?」
星威がシュラインに訊いた
「写真と、現場をみて…工事履歴などみてよ。工事するときには絶対に見えないほど深く埋もれていた。多分、あの封印石自身の結界が弱まって開いたのではと…」
「確か、葛の葉の白狐も原因は不明で割れていたって…」
皇騎が言った
「あの女の人が嘘をついているってことですか?」
零が心配そうに訊く
「そうとしか考えられないですね」
星威が答える。
「草間さんを見つけるには…ダイブして居所を突き止めた方が良いな」
「どうするの?」
シュラインは尋ねた。
「草間さんも、相当の修羅場をくぐっているから、彼の機転を信じて待つ」
端末PCに電源を入れた皇騎はネットダイブした。
しばらくして…皇騎はダイブから戻ってきた。
「丁度サーバーで待機していたら草間さん、携帯メールをうってきたよ」
「ね!場所は?」
「あの封印石に向かえば全て分かると」
と、皇騎は教えた。
「急ぎましょう!」

封印石
現地にタクシーでむかう一行は信じられない光景を見た。
あの封印石の地点から、肉眼でも見えるように灰色の竜巻が発生しているのだ。
「まさか、封印が完全に解けている?」
「タクシーのおじさん此処までで良いわ。ありがとう」
途中でタクシーを降り、走っていった。
(武彦さん無事でいて…)
シュラインは必死に走った。
周りに冥府からの妖怪が具現化しておそってくる。自衛隊も警察も手が終えない状態だ。
皇騎は術を使い、式鬼と剣を召還しシュラインをまもり、星威は青白い焔で焼き尽くす。零も滅多に戦うことはしないが参戦し、素手で妖怪を始末していく。
クレーターに近づいたとき、草間と奈緒子が一緒にいた。クレーターは灰色の渦を作り出し、冥府の生き物を限度無くはき出している。
「武彦さん!」
シュラインが叫ぶ。
「さあ、貴女。武彦さんを放して」
「それは…無理よ」
「どういうこと?」
「これから一緒に冥府で暮らすから…」
奈緒子の声には生気がない…。草間はというと目がうつろだ。
「そうはさせない!」
「無茶は行けません!」
皇騎が割り込む。
「今、あの場所に行けば…冥府の力に毒されます」
「しかし!」
「私たちが何とかします。なので、この結界からでないで下さい」
皇騎は魔法陣を描き、呪符で結界を張った。その前に零が立ち彼女を守る。
奈緒子には霊気がないと分かった陰陽師と巫女守は、彼女は残留思念だと気付く。
残留思念は霊力を発散出来ないタイプもあるからだ。
次々と襲ってくる妖怪をなぎ倒していき、奈緒子のところまでたどり着く。
「事情を説明してもらおうか」
皇騎は残留思念の奈緒子に『髭切』を向けた。
星威が草間を引きずって門から離れさせ、邪魔しようとする冥府の妖怪を始末していく。
奈緒子は諦めたように涙しながら語り始めた。
「私はたけひこが好き。でも、知り合っていたときから私は…死んでいたの。ずっと残留思念でいたわ…。でもたけひこは優しくしてくれた。いなくなったとき寂しかった。でも、仕方ないよね…」
「そこで、冥府からのささやきか?」
皇騎の問いに奈緒子は頷く。
「徐々に薄れていく体…。せめて消える前にたけひこに会いたかった…でも冥府は私の心を利用していたの…たけひこの魂に、封印した憎き相手の力が宿っていたから」
「…安倍晴明…」
「そう、でも…いいわ…向こうにいらっしゃるあの人達が悲しむ顔を見せたら…たけひこ怒るから…」
奈緒子はシュラインと零の方を向いて言った。
「…」
シュラインはどう彼女に言ってあげれば良いのか思いつかなかった。
「いまなら冥府の奥までは開いてないわ、いまなら再封印できる。私を使って」
「え?」
いきなりの奈緒子の発言に吃驚する皇騎。まるで我に返ったような口調だ。
「私にもひとかけらあるのよ。2つあれば封印は完全に解けるけど、1つだけなら十分に封印し直せる…」
彼女の胸から死ぬ前に自ら抜き取った「霊力のかけら」が皇騎に渡された。米一粒並でも恐ろしい程の霊力を持っている。其れと同時に、奈緒子の体の消滅が加速し始めた。
皇騎は、本家からの情報を元に安倍晴明の封印呪を行使する。
かけらが光り、渦は徐々に小さくなり消える。最後に残ったのは、傷一つ無い封印石がクレーターの底にあるだけだ。
「注意して…ほかに封印が解け始めている。「忘却」と「奈落」の封印石が…この大阪に…急いで再封印をしないと…恐ろしいことになるわ。場所は私も分からないけど」
消えゆく奈緒子は皆に言った。
「何故知っているのだ?」
皇騎は尋ねた。
「冥府が教えてくれた…。先に封印が解かれた門…が大阪…いえこの世界自体を支配するという賭をしたようなの」
もう奈緒子時間が無い事を悟り、
「ごめんなさい…シュラインさん。あなたとたけひこに迷惑かけちゃった。これじゃたけひこに嫌われちゃうよね…」
シュラインはゆっくりと奈緒子に近づいて優しく抱きしめてあげた。
「そんなことで嫌う人じゃないわ、武彦さんは」
「ありがとう…たけひこをよろしくおねがいします…」
そう言い残し、彼女は消えた。
「残る2つの封印石を探さないと…」
シュラインの言葉に皆は頷いた。

大阪怪奇事件簿その1 大阪より愛を込めてEnd

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0461 / 宮小路・皇騎 / 男 / 20 / 大学生(財閥御曹司・陰陽師)】
【1153 / 夜藤丸・星威 / 男 / 20 / 大学生兼姫巫女護(ひめみこもり)】
※50音順
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■         ライター通信          ■
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初めまして、滝照です。大阪怪奇事件簿に参加していただきありがとうございます
しかも、皆様が初参加、来て頂きたかった方なので作者冥利に尽きます。ただ、今回あまり活躍できなかった夜藤丸様には申し訳ありません。
実は、この近辺はかなり伝承が多く特に「葛の葉」については有名で、しかも安倍晴明が関わっていることも資料検索などで驚きを隠せませんでした(ぇぇぇ

では次回も宜しくお願いします。

滝照直樹拝
20030306