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<東京怪談・PCゲームノベル>


あやかし荘TV取材

■会議なんですけど…
こまった顔している、恵美さん。
「はい、困ってます」
寂しい顔をして食堂を眺める恵美さんです。昼間なので人がいないのです。
「だよねー」
柚葉ちゃんも退屈気味。
頭の切り替えで、のんびりとお茶を啜る。
「大変なことになってますね」
稽古から戻ってきた剣客エルハンドが入り口から現れる。
「おかえりなさい」
「たしかTV取材とかって聞きましたけど」
「ええ…でもこの状態では」
「まぁ、仕方ないですね…お昼ですし」
「ええ、もう少し待ってみます。頼りになる人が来るのを」
エルハンドにもお茶をすすめた。快諾するエルハンド。

◎時音君は布団のなかです
風野時音は、TV取材と聞いたとたん過去の忌まわしい思い出が走馬燈に様にめぐり布団に身をくるまって震えている。心が徐々に癒される中、自分でも感情コントロールできない様だ。
歌姫はちょこんと座りその姿を眺めている。
「僕だってイヤな物ありますよ」
其れもそうである。彼は人間に裏切られて、マスコミからのプロパガンダで大変な目にあったからだ。
可哀相な面持ちで見ている歌姫。布団をぽんぽんと軽く叩き「皆待っている」事を訴えている。
「貴女も映りたくないんじゃ?歌姫さん」
時音の問いに、頷くがそれでも皆で話し合わないと行けない事をジェスチャーで伝えるのだった。
此処で拒めば男が廃る。
「分かりました、行きましょう」
その返事で歌姫は微笑む。かといって…
「あの…着替えますので」
彼の言葉に歌姫は頬を赤くして部屋を出た。
食堂に向かう時音と歌姫は、数人お茶を啜って談話している恵美達の姿があった。

■順調な会議?
遮那と恵美、時音と歌姫、ゆゆと柚葉、エルハンドが食堂にあつまったが…
「もう少し待っていたいけど」
あまり困ってないように…いや半ば諦め口調の恵美が呟いた
「では、僕たちだけで話をして見るのはどうでしょう?」
遮那が提案する。
「そうですね…。もう嬉璃ちゃん達の一通りの意見は聞いているし」
恵美が遮那の提案に賛同した。
「僕と歌姫さんは映りたくないから。映りたくない人をどうするかを決めましょう」
時音はあらかじめ自分の意志を伝えた。
「じゃあ管理人室に移りますか?」
皆は食堂を後にしたとき、
「ただいまですぅ…」
丁度、管理人室に向かう一行の目の前に、惨敗兵の姿をした三下が帰ってきた。
生傷があるところを見ると…またやっかいな事件に巻き込まれたようだ。
「大丈夫ですか?」
恵美が事情を聞くとたんに、鼻水を垂らしながら大泣きで
「管理人さぁん!聞いて下さいよ〜」
と、子供のように駆け寄る三下。
だが、素早く時音と遮那が回り込み、三下をひっつかみ、
「「仕事がうまくいかないと言うのは、いつものことではないですか?」」
と同時に喋った。
「ひいいい」
彼の姿はもう、有名な写真『発見された宇宙人』に見える。
「三下さん、今から大事な話があるのですよ」
遮那がいった。
「「TVがくるんだよ!」」
ゆゆと柚葉が付け加えた。
「なので、色々お話しする事がありますし。ジャーナリストの三下さんなら良いアドバイスが聞けると思うのですが」
恵美が更に三下に言った。
三下自身はTV局の者ではないが、ジャーナリストの端くれ(一応、あくまで一応)。碇編集長に雑用など任されている中でも様々な裏事情などは、今のメンバーの中でも詳しいはずだ。
「わかりました!が・頑張ります!」
何を頑張るというのだろう。もしや中継車でも押して進めるとでも言うのだろうか?
「決まりですね」
誰が言うともなく、管理人室に集まっていく。三下は捕獲状態のまま引きずられていく。
「自分で歩けます〜〜〜」
管理人室には、TVショッピングを眺めていた嬉璃が
「お、首尾はどうぢゃ?」
「お話しできる方が集まって下さいました」
「ふむそれはよかったの」
ピッっとTVの電源を切り、嬉璃が中にはいるよう示唆した。
「「「おじゃまします」」」
コタツは4人しか座れないので嬉璃は恵美の膝にすわり、時計回りで恵美、ゆゆ、歌姫、遮那と言った具合に座る。柚葉と時音とほか二名は壁にもたれ、座ることにした。三下は猛者2人に挟まれている状態だ。

有志での会議は滞りなく進む。
簡単に〈あやかし荘〉の庭と管理人室、一般の人の住居部屋を撮影してもらえばいい。
ただ、この建物についての資料などを引っ張り出して、再編集し、TV局に渡さなければならない。
遮那は、逆に危険なのはTV局の人たちだと言った。
「やはり、〈あやかし荘〉は色々でますから、危険地区を絞って行かないと思います」
「確かにそうぢゃ」
「心霊スポットにはしたくないからね〜」
嬉璃とゆゆ、柚葉は同意した。嬉璃は恵美の意見を尊重する事に心がけている。
「問題は、この建物の歴史の書物を探さないと」
「…大掃除することになりそう」
時音が呟く
「大掃除というなら、三下さんの部屋の方と思いますけど…」
遮那が時音に突っ込みを入れた。
「ぼ…僕の部屋そんなに汚いですか?」
「「「「うん」」」」
「うわーん!」
三下はまた滝のように涙を流しながら泣く。
「こやつの部屋掃除は後にして資料を探さないことには…遮那、文献の場所を突き止めてくれぬか?」
「え?あ、はいかまいませんよ。直ぐに見つかると思います」
嬉璃は遮那に占いで探して欲しいということだ。
「場所がわかったら、空間干渉を用いて素早くとればいいのですね」
「そういうことぢゃ」
時音が嬉璃に尋ね、嬉璃は頷く。
携帯用の水晶玉を取り出し、念じる遮那…。〈あやかし荘〉全体を見るかのように文献の有可を探す。
「見つかりましたが。やっかいなことに奥の倉にあるようです」
「確かにやっかいぢゃ」
「大丈夫ですよ。僕が行きますから」
時音は立ち上がり、
「地図を書いてださい」
時音の指示に遮那は従う。書き終わった地図を時音は受け取り、そこに小さい針のような光刃で発見場所を突き刺した。
「これでよし」
小さい光刃で空間を斬り、小さな空間亀裂に手を伸ばす。
古ぼけた本がでてきた。3冊ぐらいある。そこには光刃の針が刺さっていた。
『あやかし荘の間取りと歴史』と書かれたものだ。
「ほうほう」
嬉璃は感心する。
「じゃー…三下さんに編集してもらう!」
ゆゆが大声で提案した
「え!僕ですか!」
しかし、今自分が抗議しても…通らないし、ヒョッとすると自分に期待されている事もあるので。
「わかりました!頑張って編集して見せます!」
胸を叩いて快諾する。が思いっきり叩いたので咳き込んでしまった。
「あーあ、一寸格好良かったのに〜」
残念がるゆゆだが。
(それは無茶な注文でしょう)
「それもそうね♪」

◎嬉璃の怖いもの
「打ち合わせの時でもカメラは向けない方にすべきと思います」
時音は映りたくない人物の対処法を考えていた。
「確かに、ぷらいばしーというやつぢゃな?」
「はい」
「もう一つ問題があると思うのですが」
三下が意見を述べた。
「なんぢゃ?」
「僕たちは、様々な怪奇現象に慣れていますが、普通ではそうでありませんし…」
「…そうですね」
三下の意見は筋が通っている。
「なので、早速実験したいので…しばらく待って下さい」
三下は管理人室から出て、ものの数分で、各種カメラを持ってきた。
嬉璃はカメラを見て青ざめた…。
「さて、嬉璃さんが本当に写真に撮れるか確認しないことには」
時音がカメラを手に取った。
「ちゃんと手入れしてますね、三下さん」
「え、そうですよ。うちの会社は殆ど単独か少数取材が多いんです」
三下は答えた。
二人の話の隙に嬉璃は、忍び足で逃げようとするが…
「待って下さい、嬉璃さん」
時音が止めた。
「写真撮りますよ」
「や、やめろ〜!写さないでくれ〜!」
嬉璃は大きな声で叫んだ。
「え?」
「写真を撮られると、魂が盗まれると言うではないか!儂を殺す気か〜」
管理人室から慌てて逃げようとする嬉璃。しかし足がもつれてこける。
嬉璃の異常な恐がり様は、二人を吃驚させた。
可哀相なのだが嬉璃に頼むしかない…しかし、もう彼女は涙声で
「い…いじめないで…おにいちゃんたち…」
恐怖で子供口調になって泣いている。
これでは実験は出来ない。溜息をつく時音だった。
一番驚愕しているのは…三下だった。
「部屋に戻してきます…」
三下はそう言い残して、カメラを持って立ち去った。

■ぺんぺん草の間大掃除作戦
「三下さんの部屋は正直〈魔界〉です」
遮那は断言した。
「先ほど、僕も見ましたが…確かに掃除しないことには」
時音が同意する。
「酷い〜」
三下は抗議するが事実そうだ。
「私の部屋も汚いことになるのだが…」
「エルハンドさんは魔法使いでもあるし、あの状況が普通じゃないですか?少し整頓するだけで十分と思います」
遮那がフォローに入った。
「三下さん部屋は…歯ブラシが汚い洗濯物の中に…、飲みかけの牛乳がチーズになっているのですよ。布団の下は…キノコが生えているのではと…」
「もういいよ…ききたくない」
ゆゆは聞いただけでおぞましく、耳をふさいだ。
「早速、男達だけで大掃除に取りかかりたいと思います」
遮那と時音が三下の部屋に向かった。
「あまり使いたくないけど…」
時音は光刃を召還し…
「汚いと判断した物を片端から原子分解した方が楽かも。でも…汚い物を斬るのはいやだなぁ」
「『つまらぬ物を斬ってしまった』とかいって、うやむやにしてしまいましょう」
時音と遮那は互いを見て笑った。
「さてはじめますか」
「まってくださ〜い!」
三下が制止するが、時すでに遅し。
時音は光刃を振るって、あらゆる「ゴミとして認識された」物を塵にした。
そのあとに、業務用掃除機で、塵を吸い取る遮那。
うぃぃんと、掃除機の音が虚しく聞こえる。
とりあえず、見た目は綺麗になった。家具もあるし仕事用の道具や書類もある。
「ましになりましたね、さぁ行きましょう」
二人は何事もなかったように立ち去った。
「ああ〜布団〜背広が〜」
三下の声が廊下でこだました。
「どう…なったの?」
ゆゆが恐る恐る尋ねる
「もう問題ないですよ」
二人はさわやかに答えた。
教訓:整理整頓はきっちりと。

■打ち合わせ
三下が〈あやかし荘〉の草稿を仕上げてまもなく、佐伯とTV局員がやってきた。
恵美の側に遮那がおり、嬉璃は怖さのあまりどこかに身を隠している。
時音と歌姫はというと、柚葉とゆゆのお守りをしている。
「えーと、この背景と、廊下ですね。あと、事情で危ないところもあると言うことも了解しました。実際の放映時間よりかなりかかりますが、草稿の出来がいいのでこちらとも大助かりです」
「ありがとうございます。ではまず…」
打ち合わせが始まった。

◎歌姫救出(告白)大作戦
時音は休憩時に、自分の部屋に戻り気をためて綺麗な指輪を作り出した。
「完成…どうやって渡そうかな…」
時音は悩んだ。
大事に、指輪箱に入れ懐にしまう。
撮影現場にいくと、歌姫と恵美と遮那が佐伯と話をしている。
「そこを何とか…」
「言われましても本人の意思を尊重しないことには」
3人は困った顔をしている。歌姫は悲しそうな顔をしている。
どうやら、歌姫の美しさと〈あやかし荘〉が合うようなので、写真に納めたいようだ。
しかし、彼女は映ることを拒んで泣きそうになっている。
時音は、このままでは駄目だとおもい、
時音は佐伯にむかって
「すみません、歌姫さんは少し具合が悪いみたいですので」
と、彼女の額に手を当てる。
「あ、熱があるみたいです。これ以上外にいると…」
「そうですか…残念です」
佐伯はがっかりする。
「では彼女は僕にお任せ下さい」
時音は、歌姫を横抱きにして、その場を立ち去った。
時音は2階まで登っていて人影がいないことを確認してから、歌姫をおろす。
歌姫は深々とお辞儀をした。
「いえいえ、当然の事をしただけです」
にこやかに笑う時音。しかし直ぐに真剣な顔になる。
「歌姫さん…これ受け取ってもらえますか?」
時音は懐から、指輪箱を取り出し…歌姫に渡した。驚く歌姫。
「これからも…一緒にいてくれます?」
時音は、勇気を出して歌姫に告白した。
歌姫はうれしさのあまり、時音の胸に飛び込んで抱きついた。

■リハーサル〜
佐伯が恵美にある男を紹介した。
「リポーターをつとめるタレントの葛城輝さんです」
「葛城です、宜しくお願いします」
「あ…あの、こちらこそ…よ、よろしくお願いします」
恵美は緊張のあまり、ぎこちない挨拶をしてしまう。
遮那もゆゆも彼の登場は驚いた。
かなり人気タレントである。昼のドラマのほか、夜の人気ドラマでも引っ張りだこの実力派男優だ。
恵美は実は彼のファンであり、ゆゆも柚葉も「サインちょーだい!」と駆け寄りたい気分。
遮那の心理は『顎が外れて口が閉じない』といったところだ。
俳優のことには疎い時音にはどうでも良いことだが、有名人が来ていることで興味は少なからずある。この風景を歌姫と2階で眺めている。
恵美はドギマギしていたが…ふと遮那がくれたお守りの香りがした…。気分が楽になる
(ありがとう遮那くん)
感謝一杯の気持ちで遮那を見つめる恵美であった。
リハーサル前の打ち合わせは何のトラブルもなく、スムーズにすすんだ。
佐伯が大声で叫ぶ。
「リハーサル行きます!」

「良き建物を探そう!第一回目は、東京●◎にある〈あやかし荘〉です」
葛城のトークが冴える。
案内役として、恵美が登場し、葛城といろいろな会話をしながら、庭や建物内を案内していく。
途中で出会う住人達もカンペ使用のもと、会話が進む。
三下の草稿の効果もさることながら、その場にいる参加者はなかなかの演技であった。
リハーサルは無事終了した。
「では20分休憩の後、本番行きます〜」
佐伯の合図で、緊張の糸は切れた。
この合図の元、恵美とゆゆ、そして柚葉は葛城にサインをねだりに行く。
三下にとって、独占インタビュー出来る格好のチャンスなので飛び出していった。

■後日談
放映日、食堂に大型スクリーンが設置され、皆が集まった。
練りに練って計画していたおかげで、編集処理も良かった。
皆は番組が終わると、皆は拍手喝采した。

数日後、見物客がぞろぞろ来るわけだが…その4割が恵美目当ての男だ。
遮那の不安は的中した。
「どうしよう!どうしよう!」
心配になって来ている遮那はあわてふためいている。
「まぁこうなってしまっては仕方あるまい落ち着くのぢゃ」
嬉璃がたしなめる。
正門から入れないので、時音の空間移動で帰ってきた恵美とゆゆ。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないよ〜!!」
「此処まで反響があるとは…」
皆でう〜んと悩む。
「あ、そうだ!」
ゆゆが、何かひらめいたようだ。
しばらくすると、人混みにもまれて、へとへとであるが、嬉しい顔をした三下が帰ってきた。
「特ダネつかんだので、編集長から褒められました〜!」
彼の勤めるアトラス出版社で葛城の独占インタビューが載ったからだ。実は、葛城はどのインタビュー取材にもでていなかったのだ。常に拒否していたが三下の熱意に負けたのだ。
「良かったですね!」
皆は三下を褒めた。
ゆゆは、ドアの向こうにいる男性陣を見てから、
「良かったついでに、人助け行ってらっしゃい〜」
「え??」
彼女に玄関から放り出された三下…。
「何したの?」
恵美が尋ねた。
「秘密♪ゆっくりとお茶でもしましょ★」
何のことが分からないが、恵美以外は「いつものこと」だろうと気にしないようにした。
恵美達は管理人室に向かった。

じつは、ゆゆは待ち伏せしている男性陣に三下が恵美に見える幻影をかけたのだ。
三下の断末魔ともいえる悲鳴が聞こえたのは言うまでもない。


End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0428/鈴代・ゆゆ/女/15(10)/高校生(鈴蘭の精)】
【0506/奉丈・遮那/男/17/占い師】
【1219/風野・時音/男/17/時空跳躍者】
※番号順です。
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■         ライター通信          ■
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あやかし荘TV取材に参加して頂きありがとうございます。
ゆゆ様と時音様は私のシナリオに良く参加して下さりいつもありがとうございます。
遮那様お久しぶりです。今回は如何でしたでしょうか。
エルハンドについてですが、私のあやかし荘では補助NPCとして存在しております。
あやかし荘用サンプルに記載されておりますのでご参考の程宜しくお願いします。

では、また機会があればお会い出来れば幸いです。

滝照直樹拝
20030310