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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


私を大阪につれてって

■仲間集め
丁度、エディーこと淡兎エディヒソイがネットカフェに入ったとき、雫が目を輝かせて抱きついてきた。
「うわ!なんや!」
「私を大阪につれてって!」
「いきなり言われても困るんやけど…うち」
「いいじゃない〜滅多に体験できない大阪都市伝説のためなら!」
「んなあほな〜!!」
「大阪弁しゃべれるなら大阪に詳しいのじゃない」
雫が屁理屈のようなことを言い始めた。
「あのな〜、いくらうちが大阪弁喋るというてもな…」
エディーの大阪弁は確かに大阪育ちの証かもしれない。しかし、彼の喋る大阪弁はどちらかというと、大阪の喜劇興業のそれに似ており根っからの大阪人とは違う。
「いきなり言われても何やから、その書き込み見せてくれへんか?」
「いいよ〜」
雫は書き込み内容をプリントアウトしている紙をエディーに渡した。
「…確かに…200km/hで走る婆さんは見たこと無いな」
妙に納得するエディー。
「しかし、うち金ないで…」
「貯金があるじゃない」
「え?」
雫の言葉でエディーは背筋が寒くなる感じを覚えた。
(うちの貯金、横浜で使うためにあるのに…)
冷や汗をかくエディー。
神の助けかどうか定かではないが、事務所の方で…
「私が、大阪まで案内させて頂きます…」
と、男の声がした。聞き慣れている声だ。
はしゃぐ雫。貯金を使わずに済む事で胸をなで下ろすエディー。
影守深澄が何かぶつぶつといいながらやってきた。
「大阪までタコヤキ買いに行くことになりまして…」
「「はぁ?」」
さすがに呆然とする雫とエディー
「冷めるんじゃないの?」
「仕方ないです。あの人のためなら」
「えらいね〜」
メンツがそろったようだが…入り口でバイクの音がした。
「あのバイク音…鳴神はんじゃ?」
エディーは入り口をみる。
入り口から入ってきたのは、間違いなく鳴神時雨だった
「こんにちは」
「「「こんにちは」」」
「雫嬢にメールで呼び出されたんだが、いったいなんだ?」
「えーと、これ」
雫は先ほどのプリントアウトした書き込みを渡す。
「時速200kmで走る「肘駆け婆」?どこかの改造人間か?しかも加速度無視となると…かなりの強敵だな?」
「改造人間じゃなく…お化けだけど?」
「いや、お化けが秘密結社に改造依頼したなら筋が通る」
どういう筋なんだろう…。
「悪の秘密結社に改造手術うけた婆さんが、暴走族狩りすることあらへんで」
エディーが大阪名物突っ込みを入れた。
「とにかく、雫を連れてこの婆さんとレースすれば良いのだな」
「うん」
時雨の問いに、にっこり微笑む雫。
「うちとしては(貯金使わない様になるから)大助かりや」
「私の車に乗っていきましょう」
エディーはホッと胸をなで下ろし、深澄は提案する。
「まぁ、俺のバイクは遠隔操作可能だから、問題ない」
時雨も了解する。
「では、雫様のご両親に挨拶してから、行くとしましょう」

■道中です
雫の両親に簡単な事情を説明すると、大阪旅行の為にお小遣いをもらった雫は大喜びだ。
深澄達にも何かしらお礼がもらえた。
それからしばらく…。
「こまりましたねー」
深澄は渋滞に巻き込まれてしまった。
「日帰りのつもりでいたのに」
「車で、東京〜大阪を日帰りって無茶やで」
「新幹線か飛行機使わないことには無理と思うよ」
「まぁ大阪で1〜2泊は覚悟ですね」
のんびりと始まった車の旅。
「さて、誰が先に婆とレースするかが問題や」
エディーが切り出した。
「単車は時雨はん、車は深澄はんがいるから、うちは一緒に乗るつもりやけど?」
「問題は…音速を超える場合…命の保証はしかねるが?」
「幾ら何でもそれは…ありえ…」
時雨の言葉にエディーは言葉を詰まらせた。音速の世界だと自分が死ぬ。
「そのつもりならうちは時雨はんの単車には乗りません…」
「良い判断だ」
「私は現地でゼロヨン車でも借ります。これはレース仕様じゃないので」
深澄は運転士ながら車の手配のことを告げた
「ところで場所ってどこや?」
エディーは雫に尋ねた。
「確か、婆さんが出る地域は堺南部から岸和田沿岸部って」
「岸和田って言ったら…だんじりで有名なところや」
「時期のがしたな」
「待って下さいよ、もしそんな時期に重なったら店長見に行くっていいますよ…」
深澄が困った顔をする。
会議はこのだんじり話で脱線し、大阪の食べ物や観光名所、造幣局の桜の話しになっていった。
「まって、まって、今何話していたんや?観光しにいくんやないで?」
「「「え?観光じゃないの?」」」
エディーの突っ込みに、3人は思いっきりぼけた(確信犯)。
「まってーな…」
椅子からずれ落ちるエディー17歳だった。

■雫にとっての大阪
夜に難波に着く一行。雫はすやすやと眠っている。時間が時間なので仕方ない。
「近くのビジネスホテルで一泊しよう」
時雨が提案した。
「これで日帰りは無茶やで」
「確かに…」
深澄はあらかじめ、渋滞時を見越し、近場のホテルを予約していた。
「まさか、タコヤキ買うためにホテルに止まるなんて」
溜息混じりに彼は呟く。
ホテルの部屋を借りて、一息つく一行。
いきなり目を覚ました雫は…
「大阪って、お好み焼きにご飯がつくって本当?」
「はいー?」
目覚めての一声がそれか?と皆はずっこける。
「確かそういうことあるなぁ」
大阪ではお好み焼き定食や焼きそば定食にご飯は付く。これは大阪では常識レベルだったりする。
蛇足ではあるが、普通の家庭に一台はタコヤキ器があるというのもあながち嘘ではない。
「なんでだろー?」
寝ぼけ眼の雫は呟いた。
彼女にとって、大阪全体が怪奇スポットと見えるようだ。
大阪のうどんだしは薄いとか、有名ハンバーガーショップの略称はリンゴ印パソコンと区別つけるように違うとか。何故か肘駆け婆の話は出てこなかった。エスカレートして、大阪固有地名&駅名クイズまで発展する。

「明日は早いから、もう寝ましょう」
深澄が消灯する宣言する。
「じゃ〜おやすみ〜」
「おやすみなさ〜い」
二部屋借りて、雫と深澄、エディーと時雨という自然と部屋割りが決まっていた。

■深夜の沿岸道路
肘駆け婆が出没する夜の時間までは難波を中心に観光を楽しむ一行。
「泊まって正解やろか?」
「おいしいタコヤキ屋の屋台も見つけましたし。ほら雫さんも楽しんでいます」
道頓堀の名物人形をみて感激している雫。こういうときだけは普通の女の子に見える。
ボディーガードとして時雨がいるから問題はなかった。
深澄は、走り屋などに連絡を取り、路上レース用の車を一台用意してくるといってその場を去った。
観光では無く、婆さんとレースするという事はわかっているので、皆はそんなに遊ばなかった。深澄が大阪の沿岸部に詳しい道路地図を手に入れて戻ってきてから出発することになった。

暴走族が爆音を鳴らして迷惑走行している。其れを反対斜線から見つけた一行。車はまだ東京から使ってきた物だ。
「時代錯誤感じるわ」
エディーは溜息混じりで呟く
「何が楽しいのかな?」
「其れは分からないなぁ」
雫の疑問には誰も答えることは出来ない。
港に通じる道に入って、集会中のある暴走族グループに接触を試みる事にした。
「えーこわいよー」
雫は車の中で震える。
「大丈夫だ、エディーは彼女を守ってやれ。俺が話しつけてくる」
「待った方が良いとちゃう?此処はうちがしますさかい」
大阪人は標準語を嫌う質がある。下手に関わるようなら喧嘩は間違いない。
エディーは、1人1人に声をかけて、喧嘩も起こさずリーダー格の人物とコンタクトがとれるようになった。
「いきなりで済んません、リーダー」
「あぁかまわん。肘駆け婆で他の走り仲間を病院送りされてん。俺らがあの婆を返り討ちに会わせるのを見学するちゅーんなら、あんたらには危害くわえん。安心しろ」
この暴走族は、肘駆け婆を退治する目的で集会しに来たようだ。
出発する暴走族。その後をつけるように深澄の車もついていく。
大通りに入って、一変、暴走族は、爆音を鳴らし、スピードを出して行く。
「ついていったら、大事になるなぁ」
「ですね」
「偵察にはすでに俺のバイクが紛れているから問題ない」
「ナイス!」
時雨はすでにバイクを族の走行グループの中に潜ませていた。高性能小型カメラで周りを写しているモニタを取り出す。
後ろからパトカー2台が、一行の車を追い抜いていった。
「いざこざおこりそうや」
エディーは遠くとモニタを見つめながら呟く。
「ちょっと、なんかいる!」
「これか?」
族のバイクをなぎ倒して行く勢いで、小さい物体が、暴れまくっている。小型マイクで爆音の中、何か騒いでいる。
「いそごう!」

■婆さんと交渉
事故現場と化した、道路には、廃車確定のバイクなどが倒れており、族の何人かも、かなりの怪我を負っている。救急車や、パトカーがぞろぞろ集まっている。
「まったく…また族狩りか…」
「それにしても酷いな…。まだ死者が出ないことは良いことだが」
「それに、又、肘駆け婆を退治すると族は言ってるな…何者や…」
「本当にそいつの仕業なんか?」
警察の会話を耳にしながら、その場を過ぎ去った。
時雨のバイクは、緊急回避で空に飛んでおり。今も目標を追跡している。
[れーすできるやつはおれんか〜]
「相手さがしてたんかい、あの婆さん」
エディーはマイクから聞こえる婆の声を聞いて、突っ込みを入れた。
「バイクから、通告するか?」
時雨が提案する。
「そうしましょう」
「わくわく♪」
深澄と雫は同意した。

時雨の声が遠隔バイクから交渉を呼びかけた。
向こうは理解したようなので、ついてこいと命じた。
肘駆け婆が案内するときのスピード…時速750km…。
「かてるんかいな…」
「彼女の願いを叶えないと…恐ろしいことになりかねませんし」
エディーや深澄は深く溜息をついた。
静かな港…
そこに例の婆さんが、腕立て伏せをして待っている。
「遅いぞ、人間」
「私たちは安全運転してきましたから」
「人間はくろうするの」
雫がうきうきと婆さんのところに近づく。
「婆さん、はじめまして」
「ん?なんや?子供はもう寝る時間やで?」
「そんな言いかたないんじゃない?せっかく東京まできたのに〜」
「江戸からか!ようきたな。まぁ用事はさっき上にいたからくりから聞いたから分かるが、詳しく話してくれへんか?」
(江戸って…)
この婆さん何年生きてるんだろう…と一行は思った。
深澄が走り屋から車を送って欲しいという電話をしている間に、残る者が事情を説明した。
「わかった、しかし負けたらこっちの言いなりになってもらうで…当然、道路のみ。それに空に逃げたらあかんで」
交渉成立と言ったところだろうか?

■極めし者
まず誰が対決するか…
「すでにゼロヨン車では無理だと思います…」
深澄は試乗して最高速度を憶測で測ってみたのだが、肘駆け婆の潜在能力を予想した上で不可能と読んだ。
「では、俺しかいないって訳か?」
時雨が自分を指さした。勝つ見込みのある選手は彼しかいない。
「うちらは、スタートラインとゴールで待ってますんで、よろしゅうたのんます」
エディーが補足する。
雫と婆さんの方は、昔の遊びをしている。
「「「はじめますよー」」」
「「はーい」」
公道では無理があるので、港の全長5kmの直線道路を使うことになった。
バイクに乗る時雨、隣にそしてやる気満々の婆さん。
スタートラインに、エディーが銃を持っている。本物の銃だが中は空砲である。
ゴール先には、雫と深澄が待っている。
「準備おっけー?」
と、電灯で確認する。Okサインがゴールから見える。
「位置について…よーい……」
緊張が走る。心地よい緊張だ。
雫たちもどうなるか見てみたかった。
ぱーんと銃がなる。
同時に砂埃が舞い、エディーの視界を遮った。
「なんやこりゃ!」
咳き込みながら周りを見渡すが誰もいない。
時雨と婆さんは、風のトンネルをくぐっていた。
「本気やなわかいの!」
「俺の性能を甘く見るとえらい目にあるぜ」
「よういったな!」
どんどん加速する。加速する加速する。
ゴール先にいる二人は、異常な速さでやってくる二人を見て、
「これでは巻き添え来ますね」
「うん…」
「多分2.5km地点で空気の壁と戦っているから…」
「じゃあ、この辺で音速に?」
「急いで逃げましょう!雫様!」
驚く深澄は雫を抱いて、その場を離れた。
深澄の予想は当たった。
時雨も、婆さんも己の限界を突破し、5km地点で音より速く到着し…通過したのだ。
当然此処までの領域に達したら、読者の皆様はおわかりになるだろう。
轟音と、衝撃波が周りに大きな被害を与え、しかも二人ともブレーキが効かなく、そのまま数km先にある高めの防波堤に突き刺さってしまった。バイクは何とか大丈夫そうだが、時雨は海の中に…婆さんはコンクリートにめり込んでいる。
「ありゃりゃ」
「これってやばいよ…」
難を逃れた3人は急いで婆さんと時雨を助けて、その場を逃げた。
もちろん、新聞に「音速の跡!?」という奇妙な記事が載ることになる。

■レース終わって
肘駆け婆は意識を取り戻した。
「ここは懐かしい香りがする」
「滝畑ダムだよ」
「おー、そうか」
雫が場所を教えた、滝畑ダム。地元住民では有名な心霊スポットだ。
「勝敗は不明です」
深澄は彼女に報告した。
「そのようやな…なんか儂燃え尽きたわ、此処で隠居することにする。昔みたいにのう」
彼女は何をしたかったのか、4人は何となく分かった気がした。
寂しかったのだろう…。
様々な噂が沿岸部まで移動し、その念が彼女を呼び寄せたということもあり得る。
「じゃーねおばあちゃん」
雫が握手を求めた。婆さんは微笑んで握手する。
深澄、エディーとも握手を交わした。
最後に時雨には、
「良い戦いやった。これは儂のここからの礼や」
と、言って時雨に飛びつきキスをしようとする!
「うわ〜!やめてくれ〜!」
「恥ずかしがることも無かろう!」
その場で逃げまどう時雨をみて3人は笑った。
「笑わずにたすけろ〜!」

ゴーストネットOFF〜
精神的ダメージで思考がストップした時雨を担いで戻ってきた一行。
深澄は、完全に冷めたタコヤキ10パックをもって店長の下に行く。
「はー、さんざんやったなー」
エディーは深く溜息をついた。
「でも楽しかった〜」
「あんたはええけど、うちは何のために来たかわからんわ」
「じゃーもう一度行く?」
「それは勘弁…」
半泣き状態のエディー。
雫は、何事もなかったの様に家に電話して帰宅するのだった。

End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1179/影守・深澄/28/執事】
【1207/淡兎・エディヒソイ/17/高校生】
【1323/鳴神・時雨/32/あやかし荘無償補修員(野良改造人間)】
※番号順です
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■         ライター通信          ■
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初めまして滝照直樹です。
『私を大阪につれてって』に参加して頂きありがとうございます。
今回誰がレースに参加するかで悩みましたが、鳴神様に致しました。
深澄様、ちゃんとお土産にタコヤキ10パック買いましたが、ご主人様の反応が楽しみです。
淡兎様、貯金使うことなく大阪行けたので良かったですね。
そして鳴神様、本当にご苦労様でしたm(_ _)m 。

ではまた機会があれば宜しくお願いします。

滝照直樹拝