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<東京怪談・PCゲームノベル>


超流動的熱血ドラマ『エターナルヴォイス』
●悪の枢軸卿、大いに萌える
 魔道帝国シルバーフロスト。その海の玄関口である要衝、アクアシーズ領では、帝国の悪の枢軸として名高いサラザード卿(キャスト:海塚要)が、解放軍によって叩き壊された砦を視察し、壊された東の塔を見て、吼えていた。
「えぇい! 前任者は何をやっておったのだ! せっかく捕えた萌っ子を逃がしおってからに!」
 ばさりと漆黒のマントを翻し、怒りもあらわにそのあたりへ所構わず雷を降らすサラザード卿こと要。むろん、特殊効果も可燃物も、一切使って居ない。セットを破壊しまくって居るのは、彼の魔王としての能力である。
「お、落ち着いて下さい。サラザード様! まだそう遠くへは逃げておりませぬゆえ‥‥」
「ならばすぐさま捕えて、我が前にひきづり出すのだ! エルランサス様に献上する前に、私がじっくりと検分してくれる!」
 じゅるりとよだれを流さんばかりの表情を浮かべる要。
「ふははは! あれほどの、漢やら腐女子やらを『ハアハア』させるステキ属性な萌えッ子も他におらん!彼は我が陣営にこそ相応しい!ということで良いか者共!彼を引っ捕らえたら早急に祭り上げ、有明晴美のご本尊として崇め奉るのだ!」
「はは!!」
 萌えの暗黒面に肩までドップリ浸かった爛れっぷりをご披露しまくる彼。その辺りがチャームポイントといえば、チャームポイントなのだが、宿敵の某吸血鬼ハンターの姿が見えない事を良い事に、やりたい放題である。
「ときに‥‥。三姉妹の捜索はいかがいたしましょう」
「そんな者はあの変わり者に任せておけ! 私は女子どもに興味はないっ!」
 何気に問題発言を叫ぶ要。
「しかし‥‥。相手はかなりの使い手と聞きます。ここは、何か手を打った方が良いのでは!?」
「うむ。私に手抜かりはないっ。こんなときこそ、狂信者どもをたきつけるのだ!」
 部下の要求に、そう答えながら指示を出す姿は、突然現世に蘇って世界制服を企む傍ら、ドラマなんぞに出ている魔王様の貫禄充分である。
「では、急ぎ使者を‥‥」
「いや。待て」
 そう言った部下の行為を、要@サラザードが止めた。
「私が直接行こう。あの娘は、どこかつかみ所がないからな。下手な使者が行こうものなら、軽くあしらわれるだけだからな」
「かしこまりました。では魔道戦艦をご用意しておきます」
 そして用意された魔道戦艦バスターに乗り、彼が向かったのは、『メイド様萌え萌え党』の党首であり、帝国屈指の魔道師でもある、人形遣いハヤテ嬢(キャスト:ファルナ・新宮)の元だった。
「成る程。わたくしの可愛い人形さん達の力を借りたいと言うのですね」
 どこかほえほえとした表情で、彼女はそう言った。その傍らには、身辺の世話と警護を兼ねたメイドゴーレム、ファルファが、常に付き添っている。
「うむ。自室の研究室に引き篭もってばかりでは、美容と健康に悪かろうと思ってな」
「それだけではないでしょう? 暗黒卿殿」
 にこやかにそう言われ、ぎくりと顔をこわばらせる要。この辺が、『世界制服の道は果てしなく遠い』と言われるゆえんだろう。
「貴公、最近は帝都にすら顔を出して居ないと聞く。忠誠心が薄れれば、どのような目に合うか、解っていないわけでもなかろう?」
「別に帝国に対する忠誠は失って居るわけではございませんわ」
 表情をそれまでのおちゃらけ三枚目から、偉そうな魔王のそれに戻し、彼はそう問うた。と、彼女の方は、あいかわらずの笑顔で、こう言葉をつむぐ。
「エルランサス殿行っていると噂の実験‥‥。ご存知でしょう?」
「人の子など、はいて捨てるほど居るだろうが。なんなら、次は貴公に指名しても良いのだぞ?」
 この辺りは、掛け値なしの悪党である。面と向かって脅迫して見せる。ファルファが、ぴくりと動いたが、ファルナ@ハヤテは、それを制止しながら、こう答えた。
「うふふふ。そんなに怖い顔をしなくても、力を貸して差し上げますわ。ちょうど、新しく個人輸送用に改良したウッドゴーレムの実験を兼ねさせていただきますから。それに‥‥差し向けた追っ手の中に、居るんでしょう? あの方が」
「何故それを‥‥」
 後を追わせた面々の事は、まだ何も言っていない。だが、彼女は相変わらずの表情で、『蛇の道はヘビ。わたくしとて、まだ勢力を失ったわけではないのですわよ』と、意味深な言葉を唇に乗せていた。
「奴は、何時裏切るかわからぬ。急ぎ、同行して欲しい」
「わかりましたわ」
 彼女が、帝国屈指の剣士であるグラファリトと、その手勢とともに、風の村の少年を追いかけたのは、それから間もなくの事である。

●流浪の三姉妹
 さて、そんな事なんぞつゆ知らず、帝都テンプルムを追われた三姉妹レイフォード、レンレ、クライスラは、一路解放軍を取‥‥りまとめるガルザス公の領地へと向かっていた‥‥。現在、そこが一番安全だと言う氷将軍ゼルフィード(キャスト:九尾・桐伯)。本来、その役目は女性が負うべきなのだが、この辺りを野郎に変更してしまう辺りが、流動的ドラマの特徴である。
「姫様‥‥いえ、お嬢様方。こちらにお召し変えを」
 そう言いながら、民間人の衣装を纏い、偽装キャラバンと言う形で解放軍のガルザス公の元を目指そうとする彼ら。
「このような衣装‥‥。私、着たくありませんわ」
 だが、その差し出された衣装を見て、一番下の姫、クライスラが、不満そうな声を漏らす。姉姫二人も、口にこそ出さないが、昨日までは召使にかしずかれ、豪勢な生活を送っていた彼女達には、市民の質素な衣装は、あまり見に付けたくないもののようだった。
「父王を助けたいのならば、一時の屈辱など耐えねばなりません。牢に幽閉された父君の苦労を思えば、どれほどの事が在りましょう」
「クライスラ、我慢しなさい。これも、帝国再建の為、仕方がないことなのです」
「お姉さまとゼルフィードがそう言うのなら‥‥。わかりました」
 そんな彼女達に、静かに告げる桐伯@ゼルフィード。彼もまた、商人風の衣装‥‥と言うか、普段の仕事着そのまんま‥‥を見につけている。簡単な変装を施し、彼らは密かに帝国領を脱出し、解放軍領との境へたどり着いていたのだが‥‥。
「ずっと歩き詰めでお疲れでしょう。ここは一つ、温泉でも浸かって、疲労を回復いたしましょう」
 遠くに立ち上る湯気を見て、桐伯はそう言った。
「温泉‥‥? ああ、そう言えば、この辺りは、地面が暖かいのでしたね」
 山間部でもあるこの地域には、名も知られて居ない温泉も数多い。なんでそんなところを歩いている疑問は、視聴者は抱いてはいけないのだ。むろん、名も知られて居ない温泉にもかかわらず、何故か宿屋が会ったりするの事もまた、視聴者が抱いてはいけない疑問である。
「では、お嬢様方。湯から上がられましたら、お部屋の方へ早急にお戻り下さい。よろしいですね?」
「ええ。判りましたわ」
 女湯に入るわけにも行かず、桐伯@ゼルフィードは三姉妹を残し、一人男湯へと向かっていた。なんでここでカメラが映るのが野郎風呂なんだと言う疑問には、プロデューサーの趣味と、読者さぁびすはお約束だからだ。
「ん? あれは‥‥」
 その視線に、見覚えのある背中と、髪が映った。
(間違いない‥‥。帝国きっての剣士‥‥黒き雷帝
グラファリト‥‥。何故、奴がこんな所に!?)
 即座に、警戒態勢へ移行する桐伯@ゼルフィード。女性もうらやむ黒髪。水に濡れ、余計な贅肉の一切ついていない背中。正面を見ないでも判る彼の引き締まった腰の筋肉。それらは全て、バランスの取れたボディラインを際立たせている。そんな‥‥ため息が出るほど完璧な体躯を持つ彼の前で、一人の少年がこう尋ねていた。
「ほんとにエルランサスおじさんの言うこと聞くつもりですか? グラファリトおじさ‥‥お兄ちゃん」
 途中で睨まれたのか、慌てて訂正するのは、グラファリトの従者として同行しているアースソウル(キャスト:ラルラドール・レッドリバー)だ。彼は、答えぬグラファリトに対して、こう進言する。
「エルランサスおじさんは、ヴァイド君を捕まえたら‥‥きっと僕もグラファリトお兄ちゃんも、みんなみんなポイしちゃうですよ? 僕はそんなの嫌ですぅ」
「ああ。おそらくはな‥‥。わかってるさ」
 だが、彼はその言葉に、関心なさそうに答えていた。何を解っていると言うのだろう。
「ならどうして‥‥」
「だが、あそこを捨てて、どこに向かう?」
 否、斬り捨てられると解っていても、従うしかない。何故なら、そこしか居場所がないから。
「解放軍なら‥‥。ヴァインド君が一緒から、きっとガルザスおじさんも優しくしてくれるですよ」
「どの道、あいつを追わなければなるまい。その後、どうするかはお前の自由だ」
 裏切りを薦めるラッシュ@アースソウルに対し、グラファリトはそういい残して、湯船から上がって行った。一人、残された彼は、誰に告げるでもなく、こう呟く。
「ぼくは‥‥グラファリトお兄ちゃんについていくです。このままじゃ、だめだから」
 彼が、主の後を追うように、湯船から上がったのは、それから間もなくの事。
「あの方にも事情があると言う事ですか‥‥」
 今の彼からならば、三姉妹を安全に逃す事が出来るかもしれない。
 それを証明するかのように、同じ宿に止まって居るにも関らず、帝国に属する者と属していた者は、別々に旅立つのだった。

●追う者と、追われる者
 さて、一方砦から傭兵たちに救出されたヴァインド少年は、解放軍側のエージェント『ユウ』と共に、ガルザス公の元へと向かっていた‥‥。
「てやぁっ! とりゃあっ!」
「力押しでは、私には勝てん」
 必死で打ち込むヴァインドに対し、冷たくそう言うユウ(キャスト:田中・裕介)。彼もまた、カルザスに集いし戦士の一人。そのガルザスの命により、少年ヴァイントを保護し安全に主の元に届ける役目を負っていた。
「くそっ。ちったぁ手加減しろよな! 全然勝てないじゃないか!」
「そんな事をしていたら、力はつかない。悔しいと思うのなら、もっと技量を磨く事だ」
 彼は、ぶーたれるヴァインドに、そう言い放った。彼は、護衛であると同時に、ヴァイントに自分の身の守り方、戦い方を教える役目を背負わされている。冷たいと思うかもしれないが、そこはそれ、性格設定が、冷静沈着でとても無愛想。常に冷たい視線で周りを見ている感じという希望だ。仕方のない事ではある。
「ちぇっ。少しは可愛げが出て来たと思ったのによー」
「お前と居ると調子が狂う‥‥」
 からかうようにそう言ったヴァインドに、ユウはぼそりと呟いた。長い間裏の世界で生きていた為に、感情を表に表したことがない彼。そんな彼が、ヴァインドに対して、焦りの様相を見せるあたり、すでに『変わって』来ている事に、彼自身、気付いているのかどうか。感情のない暗殺人形は、ヴァイントと仲間達と一緒に旅を続けるうちにだんだんと感情を取り戻していきつつあった。
 だが。
「だ、誰か‥‥!」
「女の子の声‥‥! 近い! ユウ、行って来る!」
 微かな悲鳴を聞きつけて、ヴァインドは即座に走り出す。ユウが止めようとした事さえ、気付いて居ない。
「ちっ、仕方がないな‥‥」
 折り畳み式の大鎌『BAPTME DU SANG』を出し、後を追いかける彼。二人がたどり着いた先では、空中から降下する沢山のメイドロボットと、ソレを率いるファルナ@ハヤテ、そして嬉々として破壊の限りを尽くしている要@サラザードだ。
「野郎ッ! 寄ってたかって女の子を‥‥ッ!」
「現れたな、ヴァインド! ここであったが百年目! とっ捕まえて、我が『メイド様萌え萌え党』のご本尊にしてくれるわ!」
 やれい! メイドロボども! と、要@サラザードのカットインが入る。
「させるか!」
「ユウ‥‥! どうして‥‥!?」
 あれだけ愛想のない奴が、レイピアを投げていた。狙い過たずそれは、要@サラザードの肩口へと刺さる。普通なら病院送りな怪我だが、魔王の超回復能力を持ってすれば、この程度はかすり傷だ。
 問題は、その傷付けられたプライド。
「貴様‥‥よくも余に傷を‥‥!」
 ブチ切れた要@サラザードの魔力が、吹き上がる。それは、ユウを狙い、受身を取った彼ごと、崖際まで追い詰める。
「く‥‥っ。さすがは暗黒卿‥‥。すさまじいパワーだな‥‥」
「ユウ!」
 魔力と気の力がぶつかり、その余波で周囲にスパークが飛び散る。森を焦がし、大地をえぐるそのパワーに、三姉妹が悲鳴を上げ、彼女達を守ろうとするゼルフィードが、苦悶の声を漏らす。
「ほほぅ。どこまで耐え切れるかな‥‥!」
「ぐぅ‥‥」
 方膝を付くユウ。と、その時だった。
「サラザード卿、そこまでにしていただこう。それを捕えるのは、俺の役目だ」
「ふん。貴様になど任せておけるか。なんなら、二人まとめて、我が餌食になるか?」
 ラッシュ@アースソウルを伴ったグラファリトが、要@サラザードを睨みつける。意識が、そちらに向いた事で、魔力の放出が止まり、ユウはその場に倒れ込んでいた。
「情けないな‥‥。あの程度で‥‥」
「無理すんなって。あいつ‥‥かなり強い‥‥」
 睨みつけるヴァインド。負担のかかる身体ながら、それでも鎌を握り締めるユウ。強い視線をぶつけ合うサラザードとグラファリト。三姉妹を庇うゼルフィード。緊迫感と沈黙を破ったのは、ラッシュのこの一言。
「もういいかげんにしてください! グラファリトお兄ちゃんも、サラザードお兄ちゃんも!」
 それほど大きな声でもなかったが、張り詰めた糸を切るには、充分だ。
「もっと素直になるです。本当は、こんなこと嫌だって、顔に書いてあるですよ」
「‥‥」
 グラファリトは答えない。
「貴様、裏切る気か!」
 要@サラザードが、今度こそ容赦はしないと言った雰囲気になる。と、ラッシュはそんな彼に、ぴしゃりと言った。
「サラザードおにいちゃん。うわきのこと、ガーランドお兄ちゃんに言いつけるもん!」
「待て! 奴だけは困る! 勘弁してくれ!」
 とたん。露骨に態度を変える要@サラザード。カメラの後ろ側では、カンペで『ガーランドには、君の苦手なあの人を用意します』と書いてある。
「ガーランドって、誰?」
「帝国の将軍の一人だ。あいつが‥‥皇帝の他には、唯一適わない相手」
 ヴァインドの言葉に、ユウがそう答える。裏稼業に従事してきた彼にとって、この程度の情報は、簡単に手に入るシロモノの様だ。と、それを聞いた彼は、にやりと笑って意地悪くこう言う。
「おいおっさん。そいつにチクられたくなかったら、とっとと帰るこった」
「おのれぇ。覚えておれよー!!」
 お約束な一言を残し、さっさと姿を消す要@サラザード。無論、転移能力は自前だ。
「さて、後は‥‥」
「私は、輸送機の実験に来ただけですわ。ただの技師。全ては‥‥なかった事」
 視線を向けられたファルナ@ハヤテは、穏やかにそう告げ、輸送機を飛び立たせる。
「貸しが、一つ出来たな‥‥」
 グラファリトの呟きは、その轟音に紛れて、他の面々に届く事はなかった‥‥。

●スタッフロール
 と、こんな感じでロケは何事もなく終了していた。
「はいカット! ご苦労様でした!」
 プロデューサーが、満足げな表情で、そう続ける。周囲のセットが、あらかた破壊されて居る様な気がするが、多分気のせいだろう。
「中々『萌え』でよかったわよ。でも、一つ注文をつけてもよろしいかしら?」
「何だ」
 裕一は、まだ役が抜けきってないらしい。と、プロデューサーは、まるでファルナのようなにこやかな笑みを浮かべて、こう要求して来る。
「このままだと、視聴者飽きちゃうかもしれないから、違うパターンも考えてね。じゃ、次回に♪」
「違うパターンって、どないせーっちゅーんじゃー」
 出演者の叫びは、当然の事ながら、彼女の耳には全く届いて居ないのだった‥‥。

CAST
暗黒卿サラザード>海塚・要(0759)
人形師ハヤテ>ファルナ・新宮(0158)
氷将軍ゼルフィード(男)>九尾・桐伯(0332)
アースソウル>ラルラドール・レッドリバー(0152)
解放軍エージェント『ユウ』>田中・裕介(1098)

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■         ライター通信          ■
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うむっ。見事なまでに野郎ばかりだ。余は満足である!(違)
まぁ、こんな感じですが、次はもう少しメイキングシーンみたいなのを入れたいなぁとは思っております。