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だいえっと・だいえっと
■act.1
Subject:こんな話聞いたことある?
投稿者:ゆかりん☆
こんにちは〜。
丁度さ、春に向けてダイエットの季節だよね〜っ。
でさ、最近、広告バナーで見つけた
「つけてるだけでダイエット出来るイヤリング」
ていう奴を、友達と一緒に一週間前に通販で買ったんだっ。
早速つけてみたら、あたし体がスリムになって来てさ〜
(もちろん、食事制限はしてないよっ)
もう吃驚って感じ(^-^)
でも一緒に買った友達は、それつけるようになってから「頭痛い」「勉強分かんない」って言い出してさ〜、昨日から学校に来なくなっちゃったんだ(T_T)
メール流しても返事返ってこないし、ちょっと心配……
ほかに、こんな経験した人いない?
原因何か調べたいんだけど、
誰か調べるの手伝ってくれないかなぁ……
■act2
「顧客は急激に増えてるわけではないんだな」
瀬水月隼(せみづき・はやぶさ)は、そう呟きながらキーボードをいじっていた手を止めた。
ゆかりんの書き込みを見た朧月桜夜(おぼろつき・さくや)の「この気持ち判るわ〜」と言いだし、手伝おうと決めたのが昨晩のこと。
すぐにゆかりんに連絡を取り、今日会うことになったのだが、先にWebサイトのデータ解析して置いてもいいだろうと思ったので、桜夜だけを先に送り出し、隼は「お仕事モード」に入っていた。
常接しているパソコンを探し、そのIPアドレスとパスワードをちょっと拝借して、そのサイトのホストコンピューターにハッキング中。
まぁ、いつもやってることに比べたら、この程度のサイトのファイアーウォールなんて、ちょろいちょろい。
「でもまぁ、これ以外、胡散臭いところは特に見あたらないんだけどさ……」
問題の広告バナーの店は、秋葉原に店を持っているパワーストーンを扱うアクセサリー店のものだった。
Webページのメインはパワーストーンの説明が主で、その隅の方にちらっと「ダイエットに効くイヤリング」が載せられている。
パワーストーンには詳しくないが、その石に呪文を書いてパワーを上げてあるもの、ってのがこのイヤリングのようだ。
「こんなの効くもんなのか?」
ちょっと冷えかけのコーヒーを口に含んだ隼は、「実はちょっと太ってきてるのよね〜」と言いながらHPを熱心に見ていた桜夜を思い出す。
しかしあいつ、一体どこに肉が付いたって言うんだ?
昨日風呂ん時ちらっと見たけど、別に太ったと思わなかったが……
「っと、なに思い出してるんだ俺は」
こほん、と一つ咳払いをした隼は、ほてってきた頬を軽く叩いた後、再度データをチェックしていく。
しばらく巡回していて発見した、ユーザーからの苦情のデータを見てみると、苦情は全て「イヤリング」に関するもので、
頭痛がする。
体調不良になった。
やる気がなくなった。
逆に太った。
などなど、逆効果な症状に文句がでているようだ。それに対しては、身長体重データも併記されているのだが、隼にはこれが痩せてるのか太ってるのか、いまいちよく判らないので、桜夜に見せる為ファイルコピーをする。
で、それに対する返事は
「あなたにはいらない物ですので、すぐに外して下さい。一週間程度で元に戻るでしょう」
と言う物がほとんどだった。
「合わない、じゃなくていらない、なのか」
その言葉に引っかかる物を感じた隼は、販売先の住所や近くにある販売店のチェックをしてから、ネットから落ちた。
■act.3
桜夜達と合流した隼は、最初に、桜夜と並べると少し丸いなと言う感じの、ゆかりん☆こと谷川由加を以前の写真付き紹介され、失礼ながら『よくあるダイエット広告の写真』を思い出してしまっていた。
その事は口にしないで置こう、と心に決め、コーヒーを注文していると、桜夜はイヤリングの取扱説明書を差し出した。
「由加の友達ね、一時は文字が読めない程衰弱して、携帯メールに返信、どころか操作の仕方も忘れてしまっていたらしいわ。イヤリング外してからはだいぶんよくなってるみたいだけど」
ついでにイヤリングに霊的な反応があることも桜夜に告げられた隼は、ふーんと返事をしながら、さっきプリントアウトして来た苦情者のパーソナルデータを桜夜に渡した。
勿論「いらない」という言葉も伝えておく。
「え? いらないなの? 合わない、じゃなくて?」
桜夜もやっぱり、目をぱちくりさせる。
「普通はそう言う言い方しないわよね?」
「そうだな」
「……太ってる人って、いないじゃん」
横からプリントアウトを覗き込んでいた由加が、ぼそっと呟く。
「それは写真見なきゃ判らないけど、あたしより痩せてる子もかなって子いるわね、確かに」
「……ふーん」
そう二人に言われて、隼は何となく「太った」のイメージを想像する。
そうか、あれより肉が付いないのか……
「なによ」
トゲのついた桜夜の言葉で、隼ははっと我に返った。
「……べっつにぃ」
胡散臭いわね、と一睨みされ、考えてた事を悟られまいと、すっとぼけて、隼は取扱説明書に視線を移した。
睨まれてるみたいだけど、取り敢えず無視無視。
ともかく、取扱説明書をじっくりと読んでみる事にした隼は、石の説明の多さに読むのが嫌になってくる。
しかし、一つの石でも結構な効果があるみたいなのに、これ、いくつもつけて大丈夫なのか? と言う疑問がむくむくと湧いてきた。
そう言うことは女の子の方が詳しいから、二人に聞いてみるのが早そう、と思った隼は、一対のイヤリングを手に取って見ている桜夜に、
「パワーストーンっていくつもつける物なのか?」
と、疑問を投げかけてみた。
その問いに、桜夜と由加は顔を見合わせる。
「そう言えば、そんなのあまり聞かないわ」
「いくつか合わせたら副作用がでる、とかある?」
「どうでしょ。お守りとか護符は、複数つけると喧嘩するとか言うけど……」
そこで、うーんと唸る3人。
作用が喧嘩するなら、目の前の由加が痩せた理由が思い付かないしなぁ、と思っていると、
「あら?」
と桜夜が呟いた。
さっきまで持っていたのとは違うイヤリングを手に取って、まじまじと見ている。
「……ひょっとしたら、なのだけど」
何かを思い付いたらしい桜夜が隼の手の中にある取扱説明書をひったくり、テーブルの上に広げた。
「ほら、ここに書いてあるダイヤモンドの説明で、負の波動を引き寄せる危険もあるって書いてあるでしょ? これ、ダイエットが必要ない子がつけたら、負の波動を引き寄せ、本来の効果とは反対の作用が出てくるんじゃないかしら」
「そういや……苦情の一つに、逆に太った、ってのがあったな」
それなら話が通じるんじゃないか?
隼は軽く指を鳴らした
「それ、正解かもしれないぜ?」
「そんな危険なの、ネットで販売しちゃうわけ?」
急に由加が、泣きそうな表情になった。
「私は効果があったから、別にいいんだけど、頑張ろうとした美里ちゃんがかわいそう」
そう言う問題もありか、とも思った隼は、
「そうよね〜。痩せた太ったってのは、女の子にとって一大事なんだもの」
と言いながら頷く桜夜に、嫌なものを感じた。
これはやばいのでは……と思っていた隼は、
「販売店の住所判ってるし、お店に行ってみましょ」
と言う桜夜の台詞に、不思議そうに見ている由加の前で、思わず一歩下がってしまっていた。
■act.4
秋葉原の一角にある、細い階段を上ったところにあるその販売店は、通販先の占い専門部の店だった。
3人で受付の所で用件を話したところ、奥の部屋に通された。
そこは、古今東西のあやしげーな占いグッズが並んでいて、いかにも占い部屋という感じ。
「このイヤリング、デザイン私が考えたんですよ」
で、そこの主任だという長い髪のおねぇさまが、あっさりとイヤリングについて話し出した。
「これでも占星術をやりましてね、それに基づいてパワーストーンの配置をしたりしてみたんです」
すっかり話してやがる。
はぁ、とため息をついてしまった隼の横で、桜夜はやる気満々だ。
「でもこれ、負のパワーをものすごーく吸いやすいんじゃないですか?」
「そうですか?」
軽く突っ込む桜夜に、おねぇさまは笑顔を崩さない。
「でも、パワーストーンは人間が本来備えている力を引き出すお手伝いをする物ですし……」
「でも、負のエネルギーは結構簡単に寄ってくるものでしてね……」
と、二人は笑顔の鉄仮面のまま、あとの二人をそのまま置き去りに、なにげに専門的な話に突入して行ってしまった。
「桜夜さん、すごい」
横で目を白黒させる由加に、隼は軽く肩を竦める。
「まぁ、この手のことはまかしておけば大丈夫さ」
そしてその隼の台詞通り、そのまま喧々囂々と2時間以上、相手と笑顔でやり合った結果、、
「今後は作用の事も考ええてさせていただきます」
とおねぇさまに言わせ、HPでの説明をもっと詳しくすることと、由加と美里が支払った金額は全額返還する事まで桜夜は勝ち取ってしまった。
勿論由加に、感謝されたのは言うまでもない。
部屋に帰ってきた途端、桜夜は由加から貰ったチョコレートケーキを食べるべく、紅茶を入れ、
「まったく、あのお姉さん頑固だったわね。こういうダイエットに関することは、もうちょっと気を使え〜ってのよっ」
と言いながらも、かなり嬉しそうだ。
行列の出来る店のものらしく、美味しいんだろう。
でも、最近太ってきたんじゃなかったのか?
そんな疑問を頭の中に張り付け、
「……あんまり喰うと太るぞ、桜夜」
と隼は注意してみる。
が、今日はイイのよっ、と桜夜はウインクして、さっさと食べ始めてしまう。
おやつは別腹だ、なんてよく言ったものだな、と、隼は軽く肩を竦めていた。
おしまい。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0444/朧月・桜夜/女/16歳/陰陽師】
【0072/瀬水月・隼/男/15歳/
高校生(陰でデジタルジャンク屋)】
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■ ライター通信 ■
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ども、へっぽこライター、小杉 由宇です。
今回も参加いただきまして、本当にありがとうございました!
少々、私事でどたばたしておりましたので、前回より時間が
掛かってのお届けになってしまいました。
申し訳けございません。
さて今回はまるで、別の商品のようにお二人でのシナリオと
なっておりますです(笑)。
個人的には少人数の方が得意ではあるので、ものすごく楽し
く書かせていただきましたが>まて(汗)
いつも仲良い桜夜さんと隼君を目指して書いたつもりではお
りますが、いかがでしょうか?
これからも仲良いお二人の活躍、楽しみにしております。
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それでは最期になりましたが、感想や苦情や文句等々、お伝
えいただけると嬉しいです。
それではまた、お会いする機会がありますことを!
小杉 由宇@黄砂は嫌い 拝
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