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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:太陽に鳴け!  〜草間猫しりーず〜
執筆ライター  :水上雪乃
調査組織名   :草間興信所
募集予定人数  :1人〜6人

------<オープニング>--------------------------------------

「うにゃ‥‥厄介にゃ事件だにゃ‥‥」
 草間猫がデスクで毛繕いを始めました。
 にゃにゃまがり署、捜査一課。
 凶悪犯を扱う部署です。
 なんと草間猫は、ここの課長なのです。
 びっくりです。
 でもまあ、びっくりしてばかりいても話が先に進みませんので。
「鰹節三〇本が強奪されるなんてにゃ。すごい事件だにゃ」
 わざわざ三課からやってきた綾猫が、同情するふりをしています。
「うにゅう」
 近年まれに見る大事件です。
 猫警察の威信に賭けても解決しなくてはなりません。
「わたしの課からも、何人か出すかにゃ?」
 三課には盗犯の専門家が揃っています。なにかと助けにはなるでしょう。
「それは助かるにゅ」
 珍しく素直にお礼を言う草間猫。
 なにしろいまは、意地の張り合いをしている場合ではありません。
「三〇本の鰹節を奪うんだもんにゃ。かなりの凶悪犯なのにゃ」
「そうにゃ。気を引き締めにゃいとまずいにゃ」
 深刻そうに毛繕いをするふたり。
 果たして、凶悪な強奪犯を捕まえることができるでしょうか。








※草間猫しりーずです。コメディーです。
※ニックネームを付けていただけると、より面白いかもしれません。
※水上雪乃の新作シナリオは、通常、毎週月曜日と木曜日にアップされます。
 受付開始は午後8時からです。


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太陽に鳴け!  〜草間猫しりーず〜

 港町。
 沈みかかる夕日。
 なんだかモノクロチックな街並みを、懸命に走る二つの影。
「あぃらぶにゅー 嘘ににゅれたー♪」
 なぜか歌いながら走ってるのは、斎猫です。
 当然のように苦しそうです。
「冷たい肩を抱いにぇー♪」
 パートナーのサト猫も走っています。
 二匹ともサングラスなんかかけて、かっこつけてますね。
 雰囲気抜群です。
「太陽にー ぐっにゃい♪ ぐっにゃい♪」
 大きくジャンプする二匹。
 瞬間。
 フィルムが切れるかのように静止する情景。
 背景は船ですね。
 イイ感じです。
「‥‥現場を荒らすにゃ!!」
 降りかかる声。
 襲いかかる白い閃光。
 瞬殺のねこきっくで、斎猫とサト猫は遙か彼方の空へと飛んでゆきました。
 そして、きらりと光ります。
「まったく‥‥」
 白衣を着て怒っているのは、金色の瞳のチンチラ。
 戒那猫です。
 鑑識班のひとりで、その厳しさと正確さには定評があったりします。
 まったく刑事課の連中ときたら、捜査をなんだと思ってるのでしょう。
 走り回れば良いというものではありません。
 まして、スタイリッシュであれば良いというものでもありません。
「地道に証拠を集めるのにゃ。そこからすべて始まるのにゃ」
 まさにその通りです。
 地味で根気のいるこの作業が、猫警察を実務レベルで支えているのです。
 現場に残された肉球紋を採取し、抜け毛を調べ、前科を調査し。
 犯猫逮捕というのは、そういう作業の集大成なのです。
 にもかかわらず、かっこつけるために走り回って現場を荒らすとは、いったいどういう了見でしょう。
「あんたたちときたらー」
 落ちてきた「危ない猫刑事」たちを、べしべしとハリセンで叩く戒那猫。
 たぐいまれなルックスで人気のある斎猫とサト猫ですが、彼女の前では、借りてきた猫を又貸ししたくらいおとなしいものです。
 もともと猫なんですけどね。
「うにゅう」
「ごめんにゃ。戒那にゃん‥‥」
「まあ、あんまり番組の趣旨と違うことするにゃ。進行が遅くにゃるから」
 進行のことまで考えてくれるとは。
 さすがは戒那猫です。気配りやさんです。
「とにかく、現場百回って言うのにゃ。現場に百回足を運べば幽霊が出るのにゃ。その幽霊に話を聞くと事件解決なのにゃ」
「それは百物語だにゃ」
 隅っこの方で、こそこそ会話を交わしているのは、啓斗猫と葛西猫です。
 なんで隅っこかというと、じつはこの二匹は新人刑事だからでしょう。
 一応、猫警察も組織ですから、序列というものがあったりします。
 所長、部長クラス、課長クラス、係長クラス、ベテラン刑事、刑事、事務員、犬、ネズミ、ハエ、カ、ゴキ、新人刑事。
 だいたいこんな順番です。
 とりあえず、ゴキ以下の新人刑事としては、あんまり出しゃばるわけにはいかないわけですね。
 でも、出しゃばれないからといって、名誉欲がないわけではありません。
 ぶっちゃけ、これだけの大事件ですから。
 お手柄を立てれば目立つこと請け合いです。
 捜査一課にしても三課にしても、あまり出世コースではありませんが、やっぱり目立たないと損というものでしょう。
 啓斗猫は一課、葛西猫は三課。
 あまり交流があったわけではないですが、今回は共同戦線です。
「三十本の鰹節にゃんて、よほどの力持ちか大食らいじゃにゃいと持っていけにゃいにゃ。俺だって十分の一くらい食べたらおなか一杯にゃ」
「‥‥充分すぎるくらい大食漢にゃ‥‥啓斗にゃんも」
「男はいっぱい食べる方がモテるにゃ」
「それはそうかもしれにゃいにゃあ」
 ‥‥なるべくなら事件の話をした方が良いと思うんですが、なかなかそうもいかないようです。
 まあ、若いですから。

「どうにゃ? にゃまさん。あのふたりは、ものになりそうにゃ?」
 窓のブラインドに爪をかけ、ぺこっと小さく開いた草間猫が振り向きもせず訊ねました。
 捜査本部です。
 ふつうに窓を開ければ良さそうなものですが、まあ、こだわりというやつでしょう。
「まだ若いですからにゃ。失敗も多いでしょうにゃ。でも」
「でも?」
「とても良い素質を持ってますにゃ」
 草間猫の問いに答えているのは武神猫。
 堅実無比の名刑事ととして、数々の功績を立ててきた大ベテランです。
 もっとも、なんで「にゃまさん」という愛称なのかは謎です。
 したがって、つっこんではいけません。
「ちゃんと現場まわりをしているしにゃ。基本を守るのはいいことにゃ。きっと良い刑事になるにゃり」
「そうだにゅ‥‥」
 曖昧に頷く草間猫。
 微妙にかっこつけてる仕草です。
「じゃ、俺もちょっと聞き込みに行ってくるにゃ」
「例の情報屋だにゃ?」
「ボスの愛しのシュラインのところにゃ。一緒にくるにゃ?」
 にゃまさんがからかいます。
 猫人生、酸いも甘いも噛み分けてきたベテラン刑事は、草間猫ととあるスナックのママ猫が互いに憎からず想い合ってることも、ちゃんと知っているのでした。


「ふつうに考えると、犯猫は複数よにぇ」
 シュライン猫が言います。
 出汁割りを作りながら。
 店内にはムーディーな音楽。
「それに、犬だって必要だにゃ。三〇本の鰹節を運ぶんだからにゃ」
 思慮深げに毛繕いをするのは、にゃまさんこと武神猫です。
 大型の犬でなければ、大量の鰹節を運ぶことも難しいですから。
「盗難犬の方は調べてにゃん?」
「そっちは悠にゃとサトが調べてるにゃ」
「さすがにソツがにゃい」
 ただ、それほど大型の犬が盗まれたら、いくらなんでも被害届が出そうなものです。
 逆に、そんな犬を持っているような猫が強盗などするかという疑問もあります。
「どっちから考えても、ちょっとおかしいにゃぁ」
「シュラインの言うとおりにゃ。だからこそ鑑識連中も頭を抱えてるにゃり」
「そっか。戒那にゃんも困ってるのにゃ‥‥?」
「うにゅ」
「じゃあ、武彦にゃんも?」
 おずおずと、シュライン猫が問いかけます。
 なんとなく人の悪い笑顔を作り、
「この事件、解決できなかったら辞表を出すそうにゃ。ボスは」
 武神猫が言いました。
「にゅ‥‥」
「そこで、ちょっとだけ情報を分けて欲しいにゃりが、どうかにゅ?」
「‥‥わかったにゃん。私の知ってることは何でも教えるにょ」
 苦笑するシュライン猫。
 べつに恩に着せるつもりはありませんが、馬鹿で意地っ張りな草間猫のために、少しくらいは役に立ってあげましょう。
「と、いうわけにゃ。こそこそしてにゃいで出てきたら良いと思うにゃ。ボス」
 突然にゃまさんが、店の外に向かって声を投げかけます。
 ややあって、ばつの悪そうな顔をした草間猫が、スナックに入ってきました。


「まだ‥‥夜は冷えるにゃ‥‥」
「同感にゃ‥‥」
 覆面パト犬の陰。
 アンパンと牛乳で夕食中の啓斗猫と葛西猫。
 もちろん今は、張り込みの真っ最中です。
 食事が粗末なのは、やむをえないところでしょう。
 それに、張り込みには「アンパンに牛乳」と、昔から決まっているのです。
 ニューウェーブの二人も、この程度の伝統は踏襲するのでした。
 やがて、
「どうかにゃ? なんか動きはあったかにゃ?」
 差し入れを持った戒那猫がやってきました。
「こっちは全然ですにゃ」
 葛西猫が応えます。
 三課と鑑識は、けっこうつきあいが深いものですから、このふたりもそれなりに仲良しだったりします。
 もっとも、あんまり仲良くすると、一課の斎猫にいぢめられるたりにらまりたりしますから、注意が必要ですけど。
「戒那にゃんの方は?」
 問いかけたのは啓斗猫です。
「確認された肉球紋は五つ。そのうち一つは登録されてるにゃ。警視庁のメインコンピュータに」
 あっさり答える鑑識の才媛。
 まあ、まったくの素人にできるほど簡単な犯罪ではないでしょう。
「『猫頭』の幹部にゃ」
 金の瞳が妖しく輝いています。
『猫頭』とは、中国猫マフィアを中心とした犯罪グループです。
 密航、猫身売買、管理売春、違法またたびの横流し、はては鰹節の密造まで。
 この世のありとあらゆる悪に手を染めている悪猫集団。
「充分すぎるほどでかい相手にゃ‥‥」
「‥‥意外‥‥ではにゃいけどにゃ‥‥」
 不敵な笑みを浮かべつつも、ごく微量の汗を流す葛西猫と啓斗猫。
「もう悠にゃが内偵に入ってるにゃ。あんたたちもがんばるにゃ」
 戒那猫の、ありがたい激励でした。


 さて、潜入捜査を始めている斎猫とサト猫ですが、意外な危機に直面していたりします。
 途中で正体を見抜かれ、銃撃戦になってしまったのです。
「うにゃあっ?!」
 びしびしと銃弾が飛び交う中、頭を抱えて走り回るふたり。
 わりと壮絶です。
 敵はギャング。
 しかも数が多いです。
 いくら、あぶ猫刑事(でか)の異名をとるふたりでも、さすがに逃げ回るしかないというものです。
「にゃああああ! 俺の人生で二番目の厄日にゃ!!」
 襲いくるねこぱんちなども、まとめてかわしながら、サト猫が喚きました。
「ちにゃみに、一番の災厄はなんですにゃ?」
 斎猫が訊ねます。
「おみゃえにゃんかとコンビを組んだことにゃ!!」
 いっそ見事なほど即答してみせるサト猫。
 もちろん斎猫は、一ミリグラムの感銘も受けませんでした。
 ぽむほむと相棒の肩を叩き、にっこりと笑ってみせます。
 無理するなって。俺と一緒で嬉しいくせに。
 金に輝く瞳が、如実にそう語っていました。
 激戦の中にあって、すごい余裕です。
「やめるのにゃー! その勝ち誇った微笑をやめるのにゃ〜〜〜〜!!」
 泣き叫んでいるサト猫も、けっこう余裕があるのでしょう。きっと。
「まぁ、冗談はこのくらいにしてにゃ」
「‥‥冗談だったのにゃ? ホントに冗談だったのにゃ?」
 サト猫が胡散臭そうに問います。
 一顧だにされませんでした。
「過去形ではなく未来形ですにゃ。厄日は。これから先、状況が良くなる可能性は円周率が割り切れる可能性より低いと俺は思いますにゃ」
「古いにゃ。悠にゃは。いまは約三ってことで良いらしいにゃ。円周率は」
 まぜ返すサト猫。
 この場合、「俺も同感だ」などと言っても誰も救われません。
 空元気でも、ないよりはマシなのです。
 と、そのとき。
 覆面パト犬が一匹、倉庫街に飛び込んできました。
 乗っているのは、もちろん啓斗猫と葛西猫です。
 飛び交う銃弾をものともせず。
 運転は葛西猫が、そして後部座席の啓斗猫は、
「あんにゃものまで持ち出して‥‥」
 斎猫が首を振りました。
 なんと啓斗猫が構えていたのは、猫ぱんちバズーカだったのです。
「まあ、派手好みと無責任さは比例関係にあるからにゃ」
 新米刑事二人が現場を引っかき回してる隙に、ボスとにゃまさんがこっそりと斎猫に身を寄せてきました。
「‥‥これじゃ西にゅ警察だにゃ‥‥」
 すこしだけ番組が違うような気もしますが、まあ、出演者はほとんど同じですから。
「いや、そうとはかぎにゃんぞ」
 至極冷静に、武神猫が指摘します。
 誰に対する指摘だったのかは、永遠の謎です。
 斎猫、サト猫に加えて、啓斗猫、葛西猫、武神猫、草間猫。一気に戦力は三倍になりました。
 このまま事態が推移すれば、じきに全員逮捕できるでしょう。
「そういうことにゃ」
 ほてほてと、のんきに戒那猫が歩み寄ってきます。
 鑑識の彼女がここにいるということは、
「包囲は完了したんだにゃ?」
 確認するボス。
 戒那猫が軽く頷きます。
 ちゃんと手筈は整えてるわけです。この点、猫警察はけっして無能ではありません。
「武器を捨てて投降するにゃ。おみゃえたちは完全に包囲されてるにゃ」
 拡声器を持った武神猫が、一応、呼びかけてみます。
 あまり効果は期待できませんが、儀式のようなものです。
「故郷(くに)のご両親は泣いているにゃ〜」
 そこまで言うとさすがにウソでしょう。
 まあ、とりあえず相手の気をそらすことができれば充分。
 猫頭たちは倉庫の一つに追いつめられていますから。
 あとは、突入のタイミングだけです。
「ざっと見積もって、敵は一二人ってところにゃ」
 最初からここにいた斎猫が言いました。
 ひとりあたま二人の計算です。もちろん鑑識の戒那猫は戦力には数えられていません。
 もっとも、斎猫にしてみれば、敵の数がどれほど増えたとしても、彼女に戦わせたりしないでしょうが。
「じゃ、そろそろいくかにゃ」
 啓斗猫が鼻を舐めます。
「油断するにゃよ」
 葛西猫が、にゅっと爪を出しました。
「三‥‥二‥‥一‥‥突入にゃりっ!!」
 にゃまさんの号令とともに、猫刑事たちが敵陣に躍り込みました。
 やや遅れてボスが続きます。
 なんとなく悔しそうなのは、きっと号令役を取られたからでしょう。
 まあ、こういうのは早い者勝ちなんですよ。
 猫警察では。


 さてさて。
 ギャングと警察では、戦闘力において比較になりません。
 一応は訓練も受けていますし、研修とかだってやっているんですから。
 ひとり、またひとりと、猫頭どもは逮捕されていきました。
 仲良く首錠で繋がれています。
 まだ散発的な抵抗は続いていますが、すべての出入り口はすでに閉鎖済みです。
 文字通り、猫の子一匹這い出すことはできません。
「観念するにゃ」
「もう逃げられにゃいぜ」
 グラサンで決めた斎猫とサト猫が縦横に走ります。
「大人しくするにゃ!」
「無駄な抵抗をするにゃ!」
 まとめて三、四匹をふん縛った啓斗猫と葛西猫が鬨の声をあげました。
「若い衆は元気でいいにゃ」
 やたらとジジむさいことを、にゃまさんが言っています。
 もうすぐ定年退職、仕事は倦怠期に入ってしまってるのでしょうか。
 叩き上げ警官人生。
 生涯一刑事として通した長い長い日々。
 過ぎてしまえば一瞬の幻と変わりません。
 はちわれの顔に、懐旧の靄がたゆたいました。
 一瞬の隙が生まれます。
「ぼっとしてるにゃっ!!」
 敵が投げつけた、なにか。
 射線上に割って入るボス。
 草間猫の腹部で、ぱっと散る紅の花。
 信じられないものでも見るかのように、草間猫が真っ赤に染まったお腹を見ます。
 そして、
「にゃんじゃあ!! こりゃあ!!!」
 叫び。
 ゆっくりと地に倒れるボスの身体。
 殉職。
 それは、刑事という過酷な仕事を選んだ者たちにとって、同衾する恋人のようなものです。
 もちろん、草間猫もまた例外ではありえません。
 捜査一課長、草間武彦。
 凶弾に倒れる。
 享年‥‥。
「盛り上がってるところ悪いんだけどにゃ。それはトマトの潰れたヤツだにゃ。当たっても、にゃかにゃか死ねにゃいな」
 どこまでも冷静な戒那猫のツッコミ。
 このとき、猫頭の最後の一人が葛西猫に首錠をかけられました。
「し‥‥死んだかと思ったのにゃ‥‥」
「死ねるものなら死んでみるがいいにゃ」
「まったくだにゃ」
 えらく不人情な武神猫と斎猫でした。
「にゃ〜 鰹節があったにゃ☆」
 どうやら啓斗猫が奪われた鰹節を発見したようです。
 こうして、前代未聞の鰹節大量強奪事件は幕を閉じました。
 しかし、この世から犯罪が無くなることはありません。
 かつての大泥棒、石川ごにゃもんも言ったではありませんか。
「砂の真砂は尽きるとも、世に盗猫の種は尽きない」と。
 だからこそ、猫警察は頑張っているのです。
 夜明け前の倉庫街に、パト犬の回転灯が輝いていました。
 赤く赤く。


  エピローグ

「結局、ママの言ったとおりだったにゃ」
 鰹煙草をくゆらしながら、草間猫が言います。
 いつものスナック。
 青い目の美人ママ、シュライン猫のお店です。
「お役に立てて嬉しいにゃ」
 はにかんだようにママが微笑しました。
 よさげな雰囲気ですが、お互い意地っ張りなのと照れ屋のため、なかなか前に進めないふたりだったりします。
「ええとにゃ‥‥」
「にゅ?」
 ごそごそとポケットを探る草間猫。
 じつは、今回の功績によって署長から温泉の宿泊券と休暇をいただいたのです。
 もちろん彼としては、シュライン猫を誘うつもりですが‥‥。
「にゃあママ‥‥」
「どしたのにゃ? 武彦にゃん?」
「その‥‥来週の月曜と火曜にゃんだけど‥‥」
「にゅ?」
「もし迷惑でにゃかったら‥‥一緒に‥‥」
 なけなしの勇気を振り絞って誘おうとします。
 ところが、
「ボスっ!!」
 でかい声とともに、乱暴に扉を開けて啓斗猫が飛び込んできました。
「八番街で立て籠もり事件が発生ですにゃ!!!」
「わかった。すぐ行くにゃ!!」
 席を立つ草間猫。
「‥‥いくじなし」
 シュライン猫が呟きました。
 でも、その声はとっても小さくて、ボスの耳には届かなかったようです。
「遠くで〜♪ 汽笛を〜♪ ききにゃがら〜〜♪」
 店の客が気持ちよさそうにカラオケなんかを歌っていました。
 にゃにゃまがり署のメンバーは、今日も大忙しです。
 グラスの中の氷が、カランと音を立てました。
 もう、本格的な春です。







                           おしまい


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0086/ シュライン・エマ /女  / 26 / 翻訳家 興信所事務員
  (しゅらいん・えま)
0164/ 斎・悠也     /男  / 21 / 大学生 ホスト
  (いつき・ゆうや)
0121/ 羽柴・戒那    /女  / 35 / 大学助教授
  (はしば・かいな)
0173/ 武神・一樹    /男  / 30 / 骨董屋『櫻月堂』店主
  (たけがみ・かずき)
0554/ 守崎・啓斗    /男  / 17 / 高校生
  (もりさき・けいと)
1294/ 葛西朝幸     /男  / 16 / 高校生
  (かさい・ともゆき)

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■         ライター通信          ■
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大変お待たせいたしました。
「太陽に鳴け!」お届けいたします。
今年もまた、函館だの釧路だの行ってきました。
なんだか恒例になりつつあるようです。
総走行距離は1200キロメートル以上。
ラリーでもしているような気分でした。
ああ〜 
つぎの魔シリーズは、ラリーにしましょうか〜

それでは、またお会いできることを祈って。