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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡線・時のない街>


湧水の大皿 −満月の大宴会!?−
●始まり
「圭吾、面白い物を持ってきてやったぞ」
「あ────! 遊羽ちゃん☆」
 前触れもなく店に入ってきた青葉遊羽は、その体いっぱいくらいの平たい包みを抱えていた。
「じいさまの蔵をあさっていてな、興味深い物を発見したので持ってきたのじゃ」
 言って遊羽はテーブルの上にどかっとその荷物を置いた。
「何々?」
 興味深げに覗き込むヒヨリの前に現れたのは大きな皿。
 その細工、絵がの見事さもさる事ながら、大きな相当なものだ。
「これにお料理でも乗せるんですか?」
「馬鹿者! どうしてそうお主は想像が貧困なのじゃ」
 ビシッと小さい指先を突き付けられて圭吾は困った様な顔をする。
「この大皿はな、満月の晩に水を少し張り、その面に月を移すと滾々と水がわき続ける皿なのじゃ」
「……それで?」
「うむ。そこからが今回の議題じゃ!」
「ぎ、議題って」
 さらに困った様な顔になった圭吾の前で、遊羽はニヤリと笑う。
「この皿が不思議なのは、油を注いでも水になって沸き続けるのじゃが……何故か酒を入れた時だけは、数十倍にきついお酒になって沸き続けるのじゃ」
「面白そう♪」
「そうじゃろそうじゃろ。それで物は相談だが」
 ポンと大皿を一回叩き、遊羽は瞳を細めた。
「宴会でもせぬか?」

●大皿の秘密?
「ちょっと見させて貰ってもよろしいかしら?」
「構わぬぞ」
 当麻鈴に言われて、遊羽は皿の前から体を退ける。
 骨董屋の血が騒ぐのか、鈴はそれを慎重に手にとりしげしげとながめる。そして、同様に興味を示したのは、同じく骨董屋の武神一樹。
 二人でなにやら専門用語に似た言葉を話し出し、知らない物には外国語のそれを同じだった。
「遊羽ちゃん、久しぶりね」
「シュラインか、久しいな。健勝息災でなによりじゃな」
「…相変わらずな口調ね」
「うむ」
 遊羽の口調にシュライン・エマは小さく苦笑した。
「酒は何の為にあるか…と問われれば、返す答えはただ一つ。飲む為だ。御神酒あがらぬ神はなし…という。神とて出されれば酒は飲む。目の前にある酒はどうしたらいいか。飲む。これだけだ。これは四象八卦、陰陽の理に匹敵する」
「……早い話が、飲む訳ですね」
「そうとも言うな」
 神妙な顔で語り始めた真名神慶悟に、九尾桐伯があっさり言う。
「珍しいお店が出来た、って話には聞いてたけどこういった面白い物もあるんですね」
 桐伯の知り合いで、今回一緒に来てみた斎悠也は興味深げに、しかし不躾にならない程度に店内を見回した。
「月の古い呼び名には『水鏡』というのが在りますから、そこからの現象かもしれませんね。……ああ月酒(ソーマ)というインド神話の霊酒も在りましたっけ……」
 お酒関係に詳しい桐伯の瞳は、やたらと嬉しそうである。
「なんだか楽しそうですね」
「そうですね。ちょうどお花見も出来そうですし」
 白里焔寿に微笑まれ、圭吾も笑みを返す。
「桜色のツーピースもいいですね」
 言われて焔寿は頬を赤くしてうつむく。
「騙されちゃ駄目だよ、焔寿ちゃん! これは圭吾の魔の手なの!!」
「…人聞きの悪い事を言うもんじゃありません」
 ビシッと指を突き付けてきたヒヨリに、圭吾は苦笑。
「あ、私、店内を拝見させて頂いてもよろしいですか?」
「はい」
 ほてった顔を隠す様に焔寿はうつむいたまま壁際へと移動する。
「我々が知らないというだけで、この器の様な風流な仕組みもあるのだろう。結構な事じゃないか。この夜には不思議な事などないもないのだよ」
「神仙の類とかに関係してるんじゃないかしらねぇ。細工の見事な事といい……人の手仕事には見えないわ」
「ふむ。そうなると……」
 古代中国のどうたら、とまた二人の話が始まる。
 その二人の間にある大皿をデジカメにおさめて、シュラインは小さく息をつく。
「会話がつきないようだから、私、ちょっとクレセントに顔だしてみるわ」
「母の所へ行くのか?」
「ええ。お皿の事とか気になるし。春風さんなら何か知ってるんじゃないかしら?」
「……」
 シュラインの言葉に遊羽はかたまったまま眉間に皺を寄せる。
「こ、これはじゃな…その…」
「もしかして、承諾を得ないで持ち出したりしたのかしら?」
「う、うむ…。その通りじゃ」
「その通りじゃ、じゃないでしょ。ちゃんと使用許可貰わないと駄目よ。一緒に行きましょう?」
「う、うむ…」
 よほど春風が怖いのか、遊羽はそのままぎくしゃくと店を出て行くシュラインの後をついて行った。
「俺達は宴会の用意でもしましょうか?」
「そうですね」
「おし、俺も酒の用意するか」
 悠也の言葉に桐伯が賛同し、慶悟は意味もなく腕まくり。
「焔寿ちゃん、あたし達も料理の用意しよ♪ 手伝ってくれる??」
 楽しそうに店内を見ていた焔寿にヒヨリが声をかけると、焔寿は照れたような笑顔で振り返った。
「勿論です! 誰かと一緒に料理を作るなんて初めてです。不慣れですけど、よろしくお願いします」
 体二つに折れるくらい、焔寿は大きくお辞儀をした。

●宴会準備
「いらっしゃいませー」
 シュラインと遊羽は『クレセント』に来ていた。入り口のドアを開けると、春風のよく通る声が飛んでくる。
「あら、遊羽。どうしたの? ……シュラインさんも一緒?」
 以前足を運んだ事があるシュラインの事を、春風は覚えていた。そこでシュラインは事の次第を簡潔に春風に告げる。
「ゆーうー」
「ああああ、すまぬ。申し訳ない。この通りじゃっ」
 母親には弱いらしく、遊羽はシュラインの前でぺこぺこと頭を下げまくる。その様子につい笑みが浮かんだところで文句は言えまい。
「許してあげて貰えませんか?」
 困った様な笑みで言うと、春風は大仰にため息をつきながら遊羽の頭に手を乗せた。
「今度やったらピーマンの肉詰め5個の刑」
「ああああああ、それだけはいかん。ピーマンはいかんのじゃ……」
 口調がじじくさくても味覚はお子様。ピーマンは嫌いらしい。
「あれは人間の食い物ではない……」
 ブツブツ言う遊羽を余所に、春風と話を始める。
「そのお皿について、逸話とかってないんですか?」
「んー、おじいさまの蔵にあるものはみんななんかしらの曰くとかがついてるんだけど……」
 お皿はどれだったかしら? と春風は遠くを見つめる様にして何かを思い出す様な顔になる。
「あ、そうそう。確かうちの祖先がどこかの山に登った時、それを酒宴をしていた老人に貰った物だ、って言っていたわね。その時何かと交換した、て言っていたけど、何だったかしら……?」
「そのおじいさまは今?」
「もう亡くなって何年になるかしら。蔵の権利は実は遊羽が持ってるのよ。でも未成年だから管理人は私だけど。遊羽が蔵に入るのが好きで、それでおじいさまが遺言で蔵を丸ごと遊羽にくれたの」
「それはまた……」
 苦笑したシュラインと同じように、春風も苦笑する。
「それじゃあ」
 と今度は大皿を撮った写真で出版社などに問い合わせてみてもいいか、と尋ねると、わかったら私にも教えて頂戴、と快諾してくれた。
 その後色々問い合わせて見たが、大皿についてわかるものはいなかった。
 仕方がないのでそのままシュラインは自宅に戻り、宴会の準備の為、料理を作り始めた。
「武彦さんも呼んであげようかしら……」

「持ち込むお酒はこんな感じでいいですかね……」
 本人の趣味で集めているお酒類を眺めながら、桐伯はお酒を取り出す。
「まぁ、普通にカクテルも作るとして……」
 これなんか何になるんでしょうね……とアルコール度数63度のバーボン『ブッカーズ』と96度のウォッカ『スピリタス』を手にとる。それは純粋なる好奇心。
「それにしても……」
 醸造酒が蒸留酒になったりするんですかね、と呟く。
「ビールがウィスキーになったり、ワインがブランデーになったり……興味深いですね」
 普通のお酒も用意しつつ部屋の中で準備をしていると、ふと何かを思い出す。
「折角の宴会ですからねぇ……お呼びしてもいいですかね……」
 電話を見つめて呟いた。

「ただいま戻りました」
「早かったな」
「いえ、また出かけるんですが」
 同棲、というより今はまだ同居人の羽柴戒那が手にしている紙から目をあげずに言う。
「そうか。とりあえず夕飯は頼むな」
「わかりました……戒那さん」
「なんだ?」
「今夜宴会があるんですが、参加しませんか?」
「置いていく気なら後が怖いと思うぞ」
「……わかってます」
 淡々とした戒那の言葉に、悠也はお菓子作りの準備に入りながら笑顔を浮かべた。
 悠也は元々料理上手で、最近はお菓子作りにはまっていた。宴会料理はみんなが揃えてくれるだろうから、という事で悠也はお菓子を作る方を選んだ。
「この間のアップルパイ、うまかったぞ」
 遠回しのリクエストに、悠也は瞳を細めた。

「そうそう、なるべく安く譲ってくれ」
 電話で知り合い、それから過去の顧客などに電話をして酒を安く購入する。
「勿論ただでくれればもっといいけどな」
 ほぼ単刀直入にくれ、と言っている。しかしそれが嫌味に感じないのは、慶悟の普段の生活からくるものなのか、人徳か。
 かなり高価な酒をただで手に入れつつ、自分でも安価なお酒を購入。
「まぁ、酒のプロもいる事だしな、こんなもんでいいだろ」

 一通り大皿を検分し終えた鈴は、魚屋に赴いていた。
 そこでいくつか新鮮な刺身用の魚を仕入れると、自宅に戻りさばきはじめる。
「これくらい新鮮なものならいいわね」
 専用の包丁で、魚が自分が死んだ事に気づかないんじゃないか? と思われる程の見事な包丁さばきだ。
「それにしても……結局どんな逸話を持った皿なのか解らなかったのが残念ね…」
 364年も生きている鈴であるが、大皿についての記憶がなかった。判断出来るのは、それよりもずっと古い物で、世に出回っていなかったのだろう、という事。
「ま、今日は宴会を楽しむ事にしましょうか」
 見事な絵皿の上に刺身を並べながら、鈴は小さく笑った。

 一樹は家に連絡をいれると、以前時無町に来た時に目をつけておいた枝垂れの桜の古木を訪れていた。そしてそこが、今回宴会の場所へと選ばれた。
「これだけ見事な桜なのに、人がいない、と言うのも寂しい物だな」
 場所取りようのゴザを広げて、その上にあぐらをかいて座る。
 家では住み込みの店員、草壁さくらが腕によりをかけて料理を作っている頃だろう。
「そうか、お前達も参加したいか」
 一樹の嬉しそうな雰囲気に誘われて、付近の妖や木霊が集まり始める。
「今更お前らの存在に驚く物もいまい。一緒に楽しもう」

「ヒヨリちゃん、こんな感じでよろしいですか?」
「あー、んとね。そうそう。OK、OK」
 女の子二人がキッチンに立って料理をしている、という様は結構華やかな物である。
「私こういうの初めてなので、とても嬉しいです」
 始終笑顔の焔寿に、ヒヨリも笑う。
「そっかー。んじゃ、暇ならいつでも遊びにおいでよ☆ ヒヨリもいるし、遊羽ちゃんもいるしね。きっと楽しいよ♪」
「はい」
 次々にできあがっていく料理。
 他のメンバーも沢山用意しているはず。一体食べきれるのか少々不安ではあるが、作っている当人達が嬉しそうなので、圭吾はあえて口を挟むのはやめにした。

●宴会のはじまり♪
 大皿を大きな桶の中央に置き、持ち寄った酒を一つ、注ぎ込んだ。
 桶はいくつか用意されていて、ある程度一つの桶がいっぱいになったら次のに違うお酒でうつす、という感じだ。
「あたし達はジュースだもんねー♪」
 ヒヨリと焔寿、遊羽は紙コップにオレンジジュースを注ぐ。
「なんか人が沢山になって楽しいですね」
 にこにこ笑顔の焔寿。周りを見れば、誰かの関係者、という形で最初の人数より大幅に増えていた。
「まぁ、固い事いいっこなしだな。今日は楽しもう!」
 勝手にもりあがっているのは草間武彦。タダ酒・タダ飯に目が輝いているのを見て、シュラインはこっそりため息。
「お待たせしました」
 草壁さくらが一樹の元へ料理を届ける。
「それじゃいきますか?」
「わーい☆」
 最初にお酒をいれたのは桐伯。これは普通の物である。
 その横では寒河江深雪が座っており、駒子も大はしゃぎをしている。
「花見酒か、いいものだな」
「そうですね……」
 すでに先にさっさと飲んでいる戒那に、悠也は同意しつつも困った笑顔。
 桐伯が大皿にお酒を注ぎ、満月が移る位置へと動かすと……。
「うわぁ」
 誰からともなく声がもれる。
 こぽこぽこぽ、と小さな音をたて、大皿からお酒がわき出してきた。
 そしてみるみるうちに桶にこぼれ出す。
 辺り一面に広がるアルコールの匂い。
 一樹は柄杓で酒をすくうと、小さなコップにそれをうつし、桜の木の根本に並べる。
 そこには小さな妖が集まっていた。
「……妙な気は感じないな」
 大皿に意識を集中していた慶悟が顔をあげる。陰の気を感じないかさぐっていたのだが杞憂におわった。
「それじゃ、飲むか!」
 皆のコップに移し終える頃には桶の半分くらいにお酒はたまり、つぎの桶へとうつさえる。
 そうこうしているうちに用意した桶は瞬く間にいっぱいになり、最後には桐伯の持ち込んだアルコール度数がこの中で最強お酒が注ぎ込まれた。
 みなの注目する中わきだしたそれは、とろけるような甘い匂いを放ちはじめた。
 それも半分までためると、ようやく大皿はお役ご免となる。
「初めて飲むお酒ばかりですね……」
 大皿からわきだしたそれは、どれもが味ものどごしも違っていて。アルコール度数が激しく高くなってはいるものの、悪い酔いするような感じではなかった。
「この皿、欲しいですね……」
 桐伯の呟き。本心かもしれない。
「さあ、お刺身も食べて頂戴ね」
 鈴の用意した見事の刺身盛り。他の人も用意したので、ものすごい量の食事になったが、すべて平らげてしまいそうなくらい人も集まっていた。
「4人で歌いまーす☆」
 ハンディマイクを片手にヒヨリが立ち上がり、焔寿、遊羽、駒子が並ぶ。
 始まったのは『海野いるか』の春の新曲。
「……しまった、出てたのか……」
 との慶悟の呟きは、誰も聞こえなかった。
「そうなの……うんうん、すっごいわかる……ううううう」
「た、当麻さんって泣き上戸なのね」
 シュラインと草間、鈴で話しをしているうちに、鈴は話全てに相づちをうちながら泣き始める。
「飲み過ぎは気を付けて下さいね」
「大丈夫だ。自分の限界はわきまえている」
 悠也と戒那の二人。そう言ってる二人だが、酒をあけるスピードは並ではない。しかし平然と顔色一つ変わっていない。
「最近作ったカクテルなんです。どうですか?」
 シェーカーでカクテルを作り、深雪のコップにそれを注ぐ。
「これじゃ折角のカクテルもさみしいですよね」
 と困ったように笑いつつ、しかしカクテルグラスのようなデリートな物を大空宴会場に持ち込む訳にはいかない。
「それでは、ショータイムです♪」
 言って圭吾が取り出したの大小様々な人形やぬいぐるみ。
「さぁ皆さん、起きる時間ですよ」
 パチン、と指をならすと、人形達に一斉に起きあがり「ここはどこだ?」と言うように辺りを見回す。
「皆さんにご挨拶♪」
 圭吾の言葉に合わせてそれらが頭をさげる。
「可愛い……」
 アルコールの匂いだけで頬を上気させた焔寿が、うっとりとした眼差しで人形、そして圭吾を見つめる。
「お酒やジュースをついであげてください」
 人形達は命をえたように歩き出し、ジュースや柄杓を持ってつぎ始める。
「偉いわね。人形がここまで出来るなんて……凄い、とってもすごいわ……うううう」
 相変わらず泣いている鈴。
「こっちも飲んでみていいのか?」
 一樹の言葉に、一番アルコール度数が高いお酒を入れた桶の事を思い出した。
 その一樹の前にはさくらお手製のふきのとう、タラの芽、うど、こごみ等の天ぷらが並び、古備前焼の酒器まで置かれていた。
「どれ、一口……」
 取り出して注ぎ、皆が見守る中一樹はそれに口をつけた。
「……うまいな……」
 口の中にほのかに広がる甘さ。すでにお酒、という事を超えてしまったような感じで、アルコールの強さは感じない。
「これはこれは懐かしいのぉ」
 聞き覚えの無い声に全員が桜の木を見上げると、太い枝に老人が一人、腰をおろしていた。
「遙か昔に誰かにあげた物だったが、また見られるとはなぁ」
 すとん、と体重を感じさせない動きで木から飛び降りると、桶の傍に腰をおろし、杓でそれをすくい、飲む。
「これはまたおいしい酒じゃ……ん? どうかしたかの?」
「も、もしかしておじいさまは仙人ですか?」
 春風の話をシュラインから又聞きしていた皆は、老人の存在に呆然となる。
 老人は焔寿の問いに首をかしげ、含みがあるように笑う。
「そう呼ぶ者もおるが……はてさて、ワシは自分がなんのかはわからん」
 お前さん達は、自分がなんなのかわかるのかの? と問われて困惑する。
「そうだよね、うんうん……」
 一人すっかりできあがっている鈴は、しきりに頷き、涙を流す。
「それは問われて困るな。まぁいいさ、じいさんが何者でも。一緒に宴会楽しめれば、な」
 久々の上物の酒に舌鼓をうちながら、慶悟がにやりと笑う。
 それに皆賛同して、それ以上老人の存在を問う事はなかった。
 多分全員が素面だったらとても気になっていただろうが、いかんせん子供以外は酔っぱらっていた。顔や態度にでていなくとも。
「皆さん楽しそうで……」
 優しい笑みで宴会風景を見ながら、さくらは同じ名を持つ大木を見上げた。
「もしかしたらあの方は、この桜の精霊かもしれないですね……」
「そう考えると素敵ですね」
 そっと桜に触れて、さくらの声をきいていた深雪が答える。
「武彦さん! 飲み過ぎ!!」
「まだまだぁ!」
「まだまだじゃないっ!!」
「痴話げんかは犬も食わないっていうしな。それよりヒヨリ、さっきの曲のタイトル教えてくれ」
「んとねー……」
「そうだよね、そうだよね、うんうん……うううう」
「この菓子うまいな」
「そうですか? じゃ、また作りますね」
「圭吾さんも食べて下さい……これ、私が初めて作ったんです」
「ありがとうございます」
「このカクテルは、実はあるものがベースでして……」
「えー、そうなんですか?」
「こまこねぇ、あっちの《はちみつれもん》もすきー☆」
「ふむ、お主もなかなかいける口じゃな」
「やはりさくらの作った天ぷらは天下一品だな」
「沢山召し上がってくださいね」
「久々の俗世も楽しいものよのぉ」
 会話が入り乱れて飛び交いつつ、世は更けていくのであった……。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0086/シュライン・エマ/女/26/翻訳家+時々草間興信所でバイト】
【0164/斎悠也/男/21/大学生・バイトでホスト/いつき・ゆうや】
【0173/武神一樹/男「/30/骨董屋『櫻月堂』店長/たけがみ・かずき】【0319/当麻鈴/女/364/骨董屋/たいま・すず】
【0332/九尾桐伯/男/27/バーテンダー/きゅうび・とうはく】
【0389/真名神慶悟/男/20/陰陽師/まながみ・けいご】
【1305/白里焔寿/女/17/天翼の神子/しらさと・えんじゅ】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、夜来聖です☆
 今回は花見シーズンって事もあって、宴会ネタでした(笑)
 みなさん楽しんで貰えたましたでしょうか?
 関わりのある人物とかちょこちょこ出してみました。
 桐伯さんの持ち込んだ強いお酒は、イメージ的に仙酒と相成りました。
 PC・PLさん共々、楽しんで頂けたら嬉しいです♪
 それではまたの機会にお会いできる事を楽しみにしています☆