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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


有名タレントの謎

------<オープニング>--------------------------------------
「三下君」
碇が三下を呼んだ。
雑用を任せるような口調ではないので、三下はすんなりとやってくる。
「編集長、何でしょう?」
「前に独占インタビューできた有名タレントの葛城輝…もう少し詳しく調べられないかしら?」
「はい。確かに其れは僕の仕事ですし…」
少し声を詰まらせる。何かイヤな予感がする三下。
「どうも…怪しいのよね。…匂うのよ」
「そんなに匂いますか…僕」
天然ボケする三下に、書類の束で突っ込みを入れる碇。
「ばか。此は特ダネになるのよ〜。何かあるわ」
「その真相を調べるわけですね?」
「ま、そうね。貴方にしては上出来なネタ。ちゃんと上げてきなさい。特にいきなり彼がビッグになったことをね!」

補足:
有名タレント葛城輝。あやかし荘TV取材の時のレポーターのほか、有名ドラマで引っ張りだこの好青年。
三下の独占インタビューを受けた事がある。『あやかし荘TV取材』参照。

0. 先を見据えて。
碇は、有る教会の事故のことをTVやラジオのニュースよりいち早く入手した。
「テロリズムかしら。でもこの資料やレポートの様子から…「能力者」ね」
時間を見ると、「彼」は今自宅には居ない。
「三下君の取材は他の人に助手を頼んだし、こっちはこっちで片を付けなきゃ」
早速、碇は今回の目的にふさわしい人物を選択した。

1. 夏崎・刀示
あの退魔剣士の存在をかぎつけて、微笑む。
粛正者・夏崎刀示…彼もまた時間を旅する者である。そして、殺人鬼として退魔剣士の中では危険人物として扱われている。完全に狂気に支配された男。
「彼に会ったのは…53年前だね…再会できるのはうれしいよ」
彼は懐かしんで笑った。
アトラスから三下を共に出て行く「彼」を見つける。刀示の目的は先日の教会崩落事故で不足分の死者を埋め合わせるためだ。
計画としては、この後職員を洗脳し、無駄な命の奪い合いをすることだった。
しかし、予想できないことはいくらでもある。そういうのが世の中ってものだ。
背後に何者かがいることに気づく。
振り向けば、女性と、黒マントで銀髪の男だった。
「碇編集長…?そして、どちら様かな?」
「名前を知ってもらっていて光栄ね…と言いたいところだけど…」
碇が言い続けるのを銀髪の男が止めて。
「反吐がでる」
まるで憎しみと怒りを吐き捨てるかのように刀示に言い放つ。
「初対面には失礼だね」
「阿呆に礼儀は必要ない。私の弟子に手を出すどころか、矛盾した均衡を主張する阿呆に!」
銀髪の男は刀示に言い返す。
刀示は少し調子に乗ってしまったかと思った。本能的に暗器をいつでも出せるようにしていたのだ。
それもそのはず…異世界の神だからだ。異世界排除本能が働いたのだ。
しかし…、計画がこの段階で失敗したことにため息をつく。
「先手をとられたのは、失敗ですね…。場所をかえますか?」
刀示は、男に提案した。
「…殺戮を楽しみたいなら…、此処の区域でするがいい」
銀髪の男は、紙切れを紙飛行機にして投げ渡した。
「私はそこで待っている。ルールは簡単…どれだけその地域の人間を殺したかだ」
「先ほどは、阿呆と言っていましたよね?あなたも同じでは?」
「おまえのルールに従っただけだ。場所だけ変更権はあるだろう」
「なるほど」
刀示は一応頷いて、その場から消えた。
「頼んだわよ」
碇はポンと男の背中を軽くたたいた。
「まぁ、お前の頼みは聞かないとあとで三下がかわいそうだからなぁ…弟子も…」
「お人好しね」
碇は微笑む。
「今回の場所…私にとっても好都合なことだ…。この「世界」にきた意味がある」
「任務開始ってこと?」
「そういうことだな。行ってくる」
男は、碇の頭を撫でてから、瞬間移動で消え去った。


2殺戮
血肉わき起こる。彼は、指定した区域の人間を数える。ちょうど良いではないか!
「あの男も、人のことをいえたモノじゃない」
刀示はほほえんだ。結局彼も殺しをしたかったのだろう。
全ての防御魔術を展開し、結界をはる。流石に余分な死者を出すのはルール違反だ。そうすると、人助けするという目的が増えてしまう。
「始めるとするか…!」
後ろから何者かが襲ってきた。素早くかわし身を翻すと…相手は刀を持った少女だった。その刀には恐ろしいまでの呪いがかけられている。
「ほほう…」
刀示はほくそ笑む。
少女は、12歳ほどの若さながら、人を超越した跳躍で刀示の間合いを詰め、斬りかかる。しかし、彼には刃は通らなかった。
「!?」
刀示は魔法の力場でほとんどの物理攻撃を無効にする皮膚を作り出したのだ。
「若い少女を殺すのもまた快感だ…」
少女の首を片手でつかみ、軽く持ち上げる。そのまま握りしめる。
「あ…あう…あ!」
骨の砕ける音がしたと同時に、少女は息絶えた。
「まず一人…。しかし、「彼」が来ないな?」
逃げたのか?とふと思ったがどうでも良かった。

大通りにたどり着くと、10人の武装した集団が、待ちかまえていた。どれも何かしら魔力を持っている武器だ。命中し怪我を負うと毒に犯されるが如く、呪いがかかるような仕組みなのだろう。
「ほほう、何の組織か知らないが…、抹殺すればいいこと」
粛正者は自分が負けるはずはないことを知っている。
銃声が鳴り、無数の弾が、刀示をとらえる。しかし…。その場所に彼はいなかった。
【時間停止】の魔法により、その場から移動したのだ。
いる位置は…集団の後ろ。
彼は一気に、時間停止中に仕掛けた鋼鉄糸刃を引っ張った。
瞬く間に10人を切り刻む。切り刻まれた死体は、地面に崩れると同時に傷口から血が噴き出し、地面が血の海となる。
「他愛ない…」
ほかの殺気を感じれば、いち早く反応しあらゆる術で殺した。
恐怖で士気が落ちた者には、失血死に至るだけの傷を残すという生き地獄を味あわせる。
ルールはルール。しかし一向に相手は来なかった。
それを不安とは思わない。逆に自分の仕事を手伝ってくれたことに感謝することだ。
すこし、面白味に欠けるところだが、標的が抗うことである程度の楽しさをしる。
「なかなか、いいところを選んでくれたものだ」
魔法のかかった銃器で、相手を殺し、魔法での自発トラップで苦しめていくことで、目的より、人を殺す快感が支配してきた。
落ち着きながらも酔いしれる刀示。
最後の一人を、ビルの屋上まで追いつめた。おそらく、この区域の実質的な支配者なのだろう。
しかし、みると彼は驚いた。お気に入りの退魔剣士にそっくりではないか。
「ははぁ…世の中には3人ぐらいは似ている人間がいると言うが…本当のようだね…」
彼は笑った。顔も体つきも似ているのは確かだが、17歳の少女だ。彼女は灰色の光刃を構えている。まだ【魔】に染まっていない証だ。しかし、通常の光刃より威力は15倍である(ちなみに暗黒光刃は200倍以上)。
彼女は何も言わずして、刀示に斬りかかる。万物分解効果をもつ光刃は流石の力場さえ切り裂くので、対光刃用の刀「魔道丸」で受ける。
相手はかなりの手練れであり、刀示も驚きを隠せない。
「ほほう!この時代にもこんなに強い使い手がいたとは!感心!感心!」
少し手を抜けば、自分が危ういと考え、すぐに彼女の技を見切った刀示は、笑いながらも…殺気を込め…光刃もろとも彼女を切り裂いた…。
首は、ビルの屋上から落ちていく。
「私の勝ちか…」
そう独り言を言っているが…この場所を教えた男が来ない…ことで警戒はしている。
「私をただ楽しませるだけなら…こんな親切なことをしなくてもいいはずだが…」
やはり疑問だった。
その答えは、とてつもない冷気によって思い知らされる。


3神の怒り
自分が張ったこの区域の結界が解呪されるのを知った。そこから書き換えられるように、見たこともない魔法陣が空に浮かび上がった。
「?」
周りを見てみると…今まで殺した人間から魂が抜け…空に浮かぶ魔法陣に集まっている。
その中央には…、銀髪の男が西洋剣を空にかざし浮かんでいた。その剣に魂が吸収されていく。
「それが目的だったのかな?剣士くん」
「当たらずとも遠からず…貴様が倒した者たちは、霊や呪詛による心霊テロリスト組織だ」
「ほほう。で、その力がほしかったわけかな?汚れ役を私に押しつけたわけだね?」
「どう思うかは貴様の自由だ。しかし、貴様を殺した者どもの力を結集した方が…貴様を殺すことは簡単だし、そして…この世界は一応一時の平和になる」
男は、一息つきこう言った。
「単に挑戦状を送りつけるかをすれば簡単なことを、陰湿きわまりない作戦をたて、仕事の邪魔をし、相手を悩ませそれを楽しむことは気に食わぬ!私の怒りをしっかり受け止めるがいい!」
男の叫びと共に、集まった魂が大きく光り出す。しかし徐々に漆黒の球体を作り出した。死体の血が凍り始めるほど周りの空気が低下している。そして刀示は…恐ろしいと思った…。
「恐怖?」
おそらくそうだろう…。目の前にいるのは…まさしく神…。今や、未来でも神はいないしこの時代でも影響力は薄い。まともに神の力を受けると想像したなら、恐ろしい事はない。此処を案内した事自体が、この男の仕事であり、罠だった。
「お前の殺した者どもの恨みと共に死ぬがいい…」
漆黒の球体は、この区域全体に落ちた。光も音もなく…。刀示はその球体の中に吸い込まれる。
言葉も出なかった。
球体は瞬時に消え…そして死体も刀示の姿もなかった。
男が地に降り立ち、足下にある赤黒い宝石を拾い上げると、そのまま歩き去った。


4終わりを告げて
編集部に戻った男は、仕事を終えた証拠品を碇に見せた。
「まったく、いらぬ手間があるのは面倒だな」
「あなたも本来の仕事が片付いたのだしいいのじゃない?」
ため息混じりの男の愚痴に碇は笑う。
「今日はご苦労様。私が何かおごるわ」
「ほほう。明日雨が降らなきゃいいが…」
「それぐらい先のことなんかわかるでしょ?あなたは」
「それもそうか…とりあえず雨だな」
二人とも珈琲を飲む。ちょうど三下が帰ってきて必死に仕事を始めている姿を見守っていた。
「いきなりシュレッダーは無しな」
男は碇に釘を打った。

End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1394 / 夏崎・刀示 / 男 / 170 / 粛正者】

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■         ライター通信          ■
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滝照です。
依頼内容から全くかけ離れていたので、別方向にいたしました。
本当にこれでいいのかと、悩むところであります。
では、失礼いたします。

滝照直樹拝