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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


桜の木の下で

◆オープニング
「もう春かぁ〜」
 雫は学校の教室から外を眺めると呟いた。
 短い春休みを終え、気づけは新学期。
 桜咲く校庭には、初々しい新入生達がはしゃぎながら帰って行くのが見える。
 なんだか懐かしいなぁ・・・。
 そんな事を思いながら、薄いピンクに色づくその小さな花をぼーっと眺め、雫は聞くともなしに周りの話を聞いていた。
 その時であった。
「ねぇ。聞いた?」
「うん。聞いたー」
「新入生が行くんだって?あの桜を見に」
「えー。大丈夫なのかなぁ・・・。だって、ねぇ?」
 ん?あの桜?
 耳に入ったその言葉。
 思わず雫は振り返った。
 あの・・・桜?
 その言葉に、雫は思わずピンと来ていた。
 彼女達の言う「あの桜」とは、恐らく校庭に一本離れて立つ、白い桜の事だろう。
 品種のせいなのか判らないが、この一本だけが何故か白い。
 そして、この桜には「出る」という噂があった。
 この桜の前で写真を撮ると、一人、見知らぬ女の子が写ると言う。
 悲しそうな顔して、何かを訴えかけるようにカメラに目を向けているそうだ。
 だが、そこまでなら通常の学園七不思議。
 彼女達の声が翳ったのには理由がある。
「あの噂・・・・本当なのかな?」
「さぁ・・・でも、卒業生の代には居たって話じゃない?」
「うん」
「夜、あの桜を見て、行方不明になった人」
 あの桜には、もう一つ噂があった。
 夜、くだんの桜を見ると、花が真っ赤に染まっているという。
 そして、それを見た人は桜に取り込まれてしまう・・・・と。
「でもさ・・・桜が赤く染まるなんて、それ自体嘘っぽくない?そんな事、ありえないじゃない」
「えー、実際に行方不明なったって言う人が居たって」
「そうだけどさー」
 そんな彼女達の話を聞きながら、雫はむむっと唸った。
 ゴーストネットの管理人としては真相が気になるところだ。
 そうだ!
 ぽんっと、手を打つ。
 雫は己の閃きに目を輝かせた。
 ゴーストネットで募集して、新入生より先に真相を確かめに行けばいいんだ♪
 よし!
 思いついた雫は、我慢できずに、ホームルームの鐘が鳴ると同時に教室を飛び出していた。


 数時間後、ゴーストネットのBBSに書き込みをしながら雫は考えていた。
 うーん。
 でも、女の子は何故出てくるのだろう?
 この学校の制服を着ているということは、卒業生なのだろうか?
 一体、彼女は何者なの?
 そして、何が望みなの?
 何か・・・探してるのかなぁ?
 そんな問いがぐるぐると頭を回る。
「今日の七時、学校の正門前集合・・・っと。よし、これでOK!」
 カタカタッとキーボードを打ち終える。
 あとは参加者を待つだけだ。
「うーん」
 一体、何が・・・・?
 にゃーん。
 いつの間に入ってきたのか、一匹の猫が雫の脚に顔を摺り寄せてくる。
 参加者を待つ雫の頭はその問いで一杯で、それに気づかずにいたのだった。


◆鉢合わせ
 風がそよぐ。
 まだ冷たさの残る春の風は、思いのほか強く吹き、満開に咲いた花びらを散らていた。
 舞った風が眼に入りそうになって、空木・栖(うつぎ・せい)はその黒い瞳をそっと閉じる。
 周りで風と共に柔らかな髪が舞う気配があった。
 栖がその桜の前に立ったのは、微かに暗くなろうという時間であった。
 むろん、約束の時間よりはずいぶん前ではあるが。
 とっくに下校時間の過ぎた校庭に生徒の姿はない。
 栖は誰もいない校庭に立ち、桜の群れを見つめた。
「・・・赤く染まる桜。現れる少女・・・ね。小説の題材としては新鮮ではないけれど」
 そっと視線を送るは、校庭の端にある一本の桜。
 白い、桜。
 噂のように赤くはない。
「さて」
 もしあの噂が本当ならば、少女は今でも一人彷徨っているのだろう。
 何かを求めて。
「折角の春の宵、独り桜の下と言うのも、寂しい話だな・・・・」
 ならば、と栖が歩き出そうとした時であった。
「あの、すいません」
 女の子の声。
 まさか、くだんの少女が?
 だが、桜は赤くないし、まだ夜ではない。
 一瞬そう思った栖だが、振り返った先に居たのは生身の人間であった。
 そこにいたのは、制服を纏う少女。
 だが、この学校の生徒ではないらしい。
 小柄で髪の長い少女である。
 風に吹かれた髪が、腰のあたりで揺れていた。
「あの・・・もしかして・・・ゴーストネットOFFを見ていらしたんでしょうか・・・?」
「・・・・!」
 微かに小首をかしげる少女。
「じゃぁ、君もかい?」
「はい」
 少女はあったり頷く。
「志神・みかね(しがみ・みかね)といいます」
 そう言って、みかねは懐っこく笑った。


◆聞き込み
「幽霊と桜が赤く染まる、っていうお話にはやっぱり訳があるんですよね、きっと・・・」
 横を歩くみかねがごわごわと呟いた。
 幽霊が怖いというみかね。
「・・・幽霊さんがいるならお話を聞かない事には解決のしようもないだろうし・・・私には何ができる、っていう訳でもないけれど、お話を聞く位なら・・・って思うんです」
 誰もいない学校はしーんとしていて、騒がしい昼間とは比べものにならないぐらい静寂に満ちている。
「何かをきちんと聞いてあげる事で晴れるものもあると思うんです。興味本位でただここにやって来て、お話を聞いてあげないで騒ぎ立てれば・・・怒っちゃいますよ・・・」
 小さな声であったが、みかねの言葉は思ったより響いた。
 そんなみかねの言葉に、栖は微かに微笑む。
 自分には何も出来ないが、せめて何か力になりたい。
 みかねの言葉いはそんな気持ちで溢れている。
 二人は校庭で合流した後、校内へと来ていた。
 学校の事は、学校の人に聞くのが一番。
 誰か捕まえて話を聞こうというわけだ。
「でも、教えてくれるでしょうか・・・・」
 みかねが不安げに呟く。
 学校にせよ、なんにせよ、あまり世間体のよろしくない話はしたがらないものである。
 それ以前に、この時間に部外者が校内にいるのはいかがなものか?
「まぁ、まかせなさい」
 栖は不安げなみかねに、くすっと笑ってその肩をぽんっと叩く。
 栖の意図のわからぬみかねは、こくんと頷くしかなかった。
 二人は薄日の射す廊下をそっと歩いた。
 栖の服の端を掴み、みかねのこわごわとした様子にちょっと笑いながらも、電気のついている部屋を見つけ、二人は足を止める。
 そっと覗くと、中には一人の先生。
 これ幸いと、二人は顔を見合わせた。
「あの・・・すいません」
 意を決してみかねが口を開く。
 何か書き物をしているようだったが、その声にすぐ気づくと顔を上げた。
 三十代ぐらいの男性の先生である。
 見慣れない顔にいぶかしがりながら、立ち上がってこっちにやってくる。
 スリッパに、安藤と書かれているのが見えた。
 この先生の名前なのだろう。
「なんだね?君たち。見慣れない顔だね。そもそも、こんな時間にこんな所に・・・・」
 思ったとうり、旗色はよろしくない。
 その時である。
「安藤先生」
 栖がその名を呼んだ。
 何か・・・不思議な声音がしたような・・・・。
 そんな気がして、不思議そうに栖の顔を見上げる。
「伺ってもよろしいでしょうか?」
 微かに微笑を含んだ栖の言葉。
「・・・・・・。あ、あぁ。なんだね?」
 その言葉に、みかねは眼を丸くした。
 栖が名を呼んだ途端、先生は眼を瞬かせると態度が一変したのだ!
 ちらっと栖がこちらを見て笑ったように思うのは気のせいだろうか・・・。
「数年前、行方不明になったという生徒がいると伺ったのですが。心当たりはありませんか?」
「行方不明・・・・?もしかして、あの桜の一件か?けしからん。確かに行方不明者がいることは確かだが、あの桜とは無関係だ。そんな事あるわけないだろう」
「ほんとうに居るんですか?」
 先生の言葉に、みかねは声を上げた。
 学校の怪談とはたいがい不確かなモノで、らしき話はあっても、本当ではない事が多いものだ。
「あぁ・・・何年前だったかな・・・。それまではまったくなかったのに、あの事故が起きてからだ」
「あの事故・・・ですか」
 呟いた栖の言葉を受けるように、安藤というらしい先生は自慢気に胸をそらした。
 案外、自己顕示力の強いたちらしい。
「学校の近くで交通事故があったんだ。七森・静という。二年生でな。学校や部活が終った時間だったのに、なぜ学校周辺に居たのか、今だ謎なんだ。それ以来だ。行方不明者が出たり、桜の噂が立ち始めたのは」
 事故以来・・・?
「あの・・・その亡くなった七森さんの住所は判りますか」
「ん?あ、あぁ。えーっと」
 探し出した先生を尻目に、二人はにやりと顔を見合わせたのだった。


◆訪問
 教えてもらった住所は、学校からそう遠くない番地を示していた。
 今からいけば七時の集合に間に合うと踏んだ二人は、話を聞きに七森静の家に向う事となった。
 尋ねると、出てきたのは母親らしき女性であった。
「以前、静さんを担当したことのある講師の空木と申しますが、久しぶりにこちらを訪れてみたら、亡くなったととのお話でしたので・・・」
 栖が痛ましげに言うと、明らかに学生と判るのみかねにいぶかしみながらも、母親は悲しげに微笑んだ。
「そうですか・・・・ありがとうございます」
 中に通された二人は、お仏壇に向かい、手を合わせる。
 しばらく和やかに話が進んだ。
 栖の声は心地よく耳に届き、母親の心を解きほぐしたようである。
 再びみかねは不思議に思わずにはいられない。
 頃合を見計らって、栖が確信に迫った。
「しかし・・・一体なぜ?」
 こんな事に?
 声に出さなかった問に、母親は察したのか、小さくため息をつく。
「それが・・・・・。あの子、桜の根元に子猫を隠したらいしのです。傷ついた子猫を」
「子猫?」
「はい。付近で苛められていた子猫らしいんですが・・・子猫を拾ったから、うちで飼いたいと言ってきたのですが・・・。うちじゃ、飼うことは出来ませんし。そしたら・・・・。動物の好きな心優しい子でした。こんな事になるのなら、猫ぐらいうちで飼わせてあげればよかった・・・」
 はぁーっと、母親は深いため息を漏らす。
 すでに数年を経ているとはいえ、娘の死は母親に暗い影を落としているのだろう。
 しかし、なぜ静が遅い時間に学校周辺にいたのか、これで判った。
 隠していた子猫にエサを上げに行ったのだ。
 そして、事故に合った。
「その後、子猫はどうなったんでしょうか?」
 気になったみかねは、気づかれないように、そっと栖に囁いた。
 静が事故にあった以上、子猫の世話をするものはいなくなる。
 ならば、その子猫は・・・?
 栖はみかねの問に、首を振ることしか出来ない。
 母親がそれ以上知っているようには見えなかった。
「すべては子猫の為・・・か。少女は花を捕えているのか捕われるのか。どちらにせよ、かの少女を解き放ってあげないとね。花は寂しく眺めるものでなく、愛でるものだと思い出させてあげたいものだよ」
 寂しげに微笑むと、栖は小さく呟いたのだった。


◆集合
 時刻は七時数秒前。
 雫は校門前に立って、時計の針を眼で追った。
 一、二、三、四・・・・・。
「ぴたったり七時ジャスト☆はーい。みなさん、集合してくださいねっ!」
 にっこり笑って、ガイドのお姉さんよろしく手を振る。
 雫の前に集まったのは、鳴神・時雨、空木・栖、海原・みなも、志神・みかねの四人であった。
 雫はそんなメンバーをぐりるりと見渡した。
「じゃ、出発☆」
 集まったメンバーに高らかに宣言すると、雫は校門へ向かって歩き始めた。


◆染まる桜
「うわぁ〜・・・・」
 誰ともなしに声が上がった。
 超常的な事に恐れを抱くみかねに至っては、年下のみなもの袖を掴んでいる。
 すでにあたりは暗かった。
 天に昇る満月と、校庭を走る風。
 誰もいない校庭はがらんとして、ひろびろとしていた。
 いつもより明るい月の光が桜を照らす。
 校庭の端には、ピンクの花を咲かせた桜たち。
 そして、すこし離れた所には・・・・。
「真っ赤に染まるっていう話。ほんとうだったんですね・・・・」
 みかねほどではないにしても、微かに震える声で、また13の少女であるみなもが小さく呟く。
 白い桜はもはやここにない。
 そこにあるのは、噂どおりに真っ赤に染まった桜の木であった。
「では、噂の少女も・・・・」
 カメラに映るという少女。
 染まる桜が本当なら、現れる少女も本当の可能性が高い。
 時雨はカメラの機能を持つ己の目を、桜へ向けた。
 真っ赤に染まる桜の木の枝。
 そして・・・・佇む少女。
「・・・・!!」
 時雨は驚きに思わず飛びのき、構えた。
 いつ何が起きてもいいように、周辺へすばやく視線を送る。
 だが、見えているのは自分だけではないらしい。
 他の三人も同様に桜の根元へ驚愕の視線を送っていたのだ。
 俯いていた少女は、ゆっくりと顔を上げる。
 その眼は、何かを訴えかけているかのように寂しげであった。
「ねぇ・・・・」
 少女は言う。
 その声は、まるで地を這うかのように、重く暗い。
「あの子を、知らない・・・・?」
「あの子?」
 みなもが首をかしげた。
 一体少女は何を言っているんだろうか?
「知らないの?あの子は、私が守ってあげなければならないのよ」
「なんの事?」
「あなた・・・あの子を苛めに来たのね?」
「え?あの??」
 少女の声が剣呑になりかけたその瞬間。
「あ、あの!」
 みかねが意を決したように声を上げた。
 はっきり言って、幽霊は怖い。
 今にもみかねの持つ特殊能力であるパニック性の念動力が発動してしまいそうになるぐらい怖い。
 それでも同じ学生として、なんとか手を貸したい。
 そう思ったみかねは、精一杯勇気を振り絞った。
「あなたは・・・静さん・・・ですよね?」
 みかねのその言葉に、少女はみかねを見つめた。
 空ろな瞳が一同を見つめる。
「君が探しているのは、もしや、その桜の根元に隠した子猫かい・・・・?」
 悲しげに少女に問うたのは栖だ。
 死してなお、この地に呪縛されるほどの思いは寂しすぎる。
 だからこそ、栖は少女を呪縛から解き放ってあげたかった。
 案の定、栖の言葉に静はハッと眼を見開いた。
「知っているの?ねぇ・・・あなたは、知っているの?あの子が何処に居るのか・・・知っているの?」
 静が初めて見せたその変化に、みなもは困惑した。
 みなもとて、なんとかしてあげたいと思う。
 しかし静が事故にあった後、子猫は桜の下で死んでいるのが発見されている。
 静かの言う『あの子』が記事にあった子猫であるなら、静の元に子猫は帰らない。
 もはやこの世に居ないうえに、その後どうなったかも判らないのだ。
 一体、どうすれば?
 その時であった。
「いや・・・子猫はいる。貴様のその足元に」
「え?」
 時雨の声であった。
 その場に居る全員が耳を疑った。
 一体、時雨は何を言っているのか?
 だが、センサーの機能を持つ時雨の眼には、桜の木の下に埋まっているものを捕らえていた。
 何かが、土の中に埋まっている。
 小さく丸いもの。
 何が埋まっているかまでは確定できなかったが、それでも予想はつく。
 そこに埋まっているのは、子猫の死体であった。
「私の・・・足元?」
 のろのろと視線を動かした先には、一体何が起きたものか、先ほどまでは何もなかったそこに、確かに居た。
 可愛い声で鳴く、子猫が。
 子猫はにゃーんと泣くと、静の足に擦り寄った。
「あぁ・・・こんな所にいたのね・・・」
 静はそっと微笑むと、子猫を抱き上げる。
「よかった・・・・これで誰もあなたを苛める事は出来ないわ・・・・」
 少女は安心したように呟いた。
「あの・・・行方不明になった人たちは何処に・・・?」
 先ほどとは裏腹に、穏やかな顔を見せる静に安心してみかねが小さく問いかける。
 今まで出ているという数人の行方不明者。
 それをなんとかしなければ、今回の一件は解決しない。
 だが、それを言った瞬間に、静の顔が曇った。
「あの人達は、この子を探してくれているの。だから、帰ってこれないわ・・・」
 大切な、大切なこの子を。
 静はそう言って子猫にそっと頬ずりする。
「あの人たちは、そんなもの知らないって言ったのよ。あんなにこの子を苛めておいて・・・!!」
 だから、帰さない。
 微かな悲しみと、怒りを込めて言う。
 静が言っていることは、どこか理が通っておらず、いまいち理解し難い。
「でも、見つかったのでしょう?人の気持ちはそれぞれで、他人に私の気持ちが解るか、って言われたら返す言葉は見つからないけれど・・・幸せになって欲しいんです。貴女も含めて、皆に」
 お願いだから・・・憎しみに捕らわれないで。
 そっと心の中で祈るみかねの言葉が届いたのか。
「・・・判ったわ」
 そう一言言うと、少女は姿を消した。
 後に残ったのは、白い桜の木であった。


◆すべての終わり・白い桜
 数日後、日差しはだんだんと強くなり、花は盛りと咲き誇っていた桜は散り、校庭には青葉の繁る木々が残されていた。
 あの晩、静が消えた後、みなもが持って来たスコップで根元を掘ると、確かに動物の骨が出てきた。
 誰がなんのためにかは判らないが、静の事故後、発見された子猫の死体を木の根元に埋めたらしい。
 それに気づかず、静はずっと彷徨い続けていたのだ。
 一時、学校周辺で動物虐待の事件が起き、静はその犠牲となった子猫を桜の下に隠したらしいと判ったのは、また少し後の事。
 一同はこの子猫の骨を近くのお寺に持っていって、弔って貰う事に決めた。
 あの夜、判ったとだけ言い残して姿を消した静だが、約束は守ったようである。
 数年ぶりに、行方不明になった人たちが帰ってきたのだ。
 連日ニュースで報道され、ちょっとした話題になった。
 ただ行方不明の間の事は、何も覚えていないようではあるが。
 そして、あれ以来、桜が赤く染まる事はなかった。
 探検に向かった一年生が、やっぱりあれは噂だったと、広めるのにそう時間は掛からない。
 その噂を聞きつけた卒業生や在校生は、どうした事かと首を捻っているとか。
 雫は後日談を掲示板に書き込みつつ、クスッと微笑んだ。
「これでよし・・・・っと。無事に解決。よかったよかった!」
 これで悲しい桜の話に終止符を打てたし、なにより、事件の真相が明らかになったのだ。
 世の為人の為になったし、なにより自分の好奇心は満たされた。
 よかったよかった。
 そう思う雫である。
 ただ・・・怖い話が一つ減ってしまったのは寂しいけど・・・。
 一抹の寂しさを感じながら、心の中でそう呟いて、雫は掲示板に「了」の文字を書き込た。
「さて・・・次の事件はっと・・・」
 パチパチと、キーボードを叩く音がインターネットカフェに響いていた。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0249 / 志神・みかね / 女 / 15 / 学生
0723 / 空木・栖   / 男 / 999 / 小説家
1252 / 海原・みなも / 女 / 13 / 中学生
1323 / 鳴神・時雨  / 男 / 32 / あやかし荘無償補修員(野良改造人間)

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■         ライター通信          ■
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 ども、こんにちは。ライターのしょうです。
 時雨さん、はじめまして。みかねさん、みなもさん、栖さん、いつもありがとうございます。
 今回は、依頼にご参加いただきありがとうございました。
 ちなみに今回、改めて白い桜の品種を調べてみたのですが、確かにうちの近くにあるのもこれだと、新たな発見をしました(笑)
 いかがでしたでしょうか?ご感想等頂ければ幸いです。
 最近、自分のペース的にかなりまったりと依頼を出していますが、またお会いできる機会がありましたらうれしいです。
 では、またお会いできる事を祈って。
 ありがとうとざいました。