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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


真実は藪の中

□オープニング
 ゴーストネットに日々書き込まれる不思議の数々。
 真偽の程はともかくとして大量に書かれていく記事たち。
 その中に少し不思議な書き込みを雫は見つけた。
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タイトル:嘘と真実  投稿者:占い師 MAIL
 真実の境目とはどこにあるのでしょう?
 周りが「嘘」を「真実」として認めてしまえば、
 例えどんな真実でもそれは嘘になってしまう、
 そうは思いませんか?
 これはそんな話の一つかもしれません。
 ある精神病院にいる女性の事です。
 彼女は娘と旅行をしていたそうです。
 なんでも、実家は佐賀の田舎町だとか。
 彼女は娘と楽しい旅行をしていましたが、
 ドライブの途中事故を起こしてしまった。
 気を失って気がついた時には病院でした。
 当然のように娘に彼女は会おうとしました。
 しかし、それは果たされなかった。
 なぜなら娘はいなかったからです。
 周囲の人は一様に口を揃えて言った。
 運転していたのは貴方で、貴方一人しか
 車には乗っていなかったと――。
 でも、彼女の記憶では運転していたのは自分ではなく娘だった
 納得できずに泊まっていたホテルにもレンタカーの事務所にも
 問い合わせたそうです。
 答は同じ。
 貴方一人だった――。
 それでも諦めずに女性は探し続けて、
 とうとう精神病院に入れられたそうです。
 そして、今も娘を返してと泣いているそうです
 さて、娘は果たしていたのでしょうか?
 異常だったのは周りだったのか、女性だったのか
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 これだけならちょっとした都市伝説だ。
 しかしこれにレスがついていた。
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タイトル:Re:嘘とまこと   投稿者:佐賀県民 MAIL
 俺の実家って佐賀の海沿いの小さな村なんだけどさ。
 似たような話を知ってるよ。
 いなくなったのは俺の同級生。二年くらい前の話。
 母親と旅行に行ってそれっきり帰って来なかった。
 親父さんが捜索願い出したら、母親は精神病院にいて、
 娘はどこにいるかわからなかったってさ。
 母親は娘と一緒にいたって主張してるんだけど、
 旅行先では娘は一緒にいなかったって話だったんだ。
 警察は母親が殺したんじゃないかって疑ってたみたいだけど
 すんげー仲のいい親子だったのに、そりゃあないよな。
 まあ、母親が精神病院だから何もわかんねえけどさ。
 場所が九州だったからちょっと思い出しちゃったよ。
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 偶然と言えば偶然の一致だ。
 しかし、何か雫の心に引っかかる物がある。
 調べてみよう。
 そう思い、雫は仲間を募る書き込みを始めた。

■港町にて
 まだ夜の明けきらぬ暁の空。海は黒く深く色をたたえていた。響くのは波の音のみ。――否もう一つ。
 ちゃぷん。
 小さな水音と共に岡に上がった影がある。海の色と同化する青い髪は腰までの長さ。体を覆う水着。誰かがこの深夜に泳いでいたのだろうか。――それも否。彼女は泳いできたのだ。人の身の上半身と人ならぬ魚の足から下。見た人はまず口を揃える事だろう。人魚を見た、と。
「あー、疲れました。流石に遠いですね」
 幼い声が呟く。水が入り込まないように梱包した荷物からタオルと着替えを取り出すと彼女は物陰を探した。そう、彼女は既に完全なる人の姿をしていた。
 人でありながら人魚の末裔としてその姿を保つ者――それが海原みなも(うなばら・)だ。
 着替えて髪を乾かして漸く人心地ついた海原は送ってもらったメールなどを街灯の下で広げていた。漁で町が目覚める前までに予習をしておこうというわけである。
(結構このメール詳しく書いてあるんですよねぇ)
 佐賀県民にメールを出したその返信にみなもは目を落としていた。それも事故に関してのみ。だが、それのおかげで海原は予想以上の手間を省けていた。
(でも、佐賀県民さんの情報って偏っている気がします)
 そう、同級生だという割には娘本人のデータよりも事故のデータに偏っている気がする。もしかしてこの人も事故を不審に思って調べていたのだろうかとも思う。
(きっと、この人も『お母さん』の事を信じているんですよね。あたしと同じように)
 海原には何が真実が判らない。しかしどうしようもなく気になって足を運んだのだ。
 もしも女性の言う事が正しいのならおかしいのは町の方だ。町がおかしいのでなけえれば、それは意図的なものになる。
 そして、事故を起こした道。それも海原の気になるポイントだった。その道は運転の出来ない海原から見ても入り組んでいて地図でもなければ入り込めなかっただろうと思う。そして、彼女が調べられる限りの情報ではその道の先には取り立てて何もないのだ。頂上に繋がっているから景色が良いといえなくはないが、展望台は他の場所にある。これは一体どういう事なのか。
 何故、町ぐるみで隠さなければならなかったのか。
 何故、そんな片田舎の道で事故を起こしたのか。
 何故、娘だけが消えたのか。
 疑問は尽きない。しかし、だからこそ調べてみる価値があるのだと思う。
(とにかく明日、朝一番で地図を買って図書館に行って、それから現場に行ってみなくちゃいけませんね)
 自分の目で確かめるよりも確かな方法は今の所海原には思いつかなかった。

□白根が淵
 鬱蒼と生い茂った木々が道の両脇を囲んでいる。街灯一つ無い道だ。細い道幅は向かい側からの車両が来た場合、どうやって離合しようかと悩ませる程だった。
 助手席の窓から外を眺めながら海原は言う。
「やっぱりこんな道、普通通りませんよね」
「……道に迷ったか、地元の人間が教えたか、どっちかだろうな」
 後部座席で行儀悪く座っている瀬水月隼(せみづき・はやぶさ)が面倒そうに答えた。足を組み窓枠に肘をついたままの姿勢は隣できちんと姿勢を正して座っている水無瀬麟鳳(みなせ・りんおう)と非常に対照的である。
「そうですよね。……もし迷い込んだのなら俺だったら引き返したいけど」
「無理でしょうね、ある程度進むしかありません。この道じゃUターンできませんよ」
 水無瀬の言葉に運転席から九尾桐伯(きゅうび・とうはく)が答えた。
「じゃあ、事故って向こうから車が来て正面衝突ですか? 事故の詳細新聞に載ってなかったんですよね」
「いや、違う。曲り損ねて山肌に激突だった筈だ」
「こんな道で事故を起こしたら、誰も助けに来てくれそうに無い場所ですよね。俺だったら怖いから無謀な運転は出来ないな……」
「そうですね、かなり慎重に運転せざるを得ないでしょう。よほど急いでいたか……」
 九尾の言葉に瀬水月が身を起こした。
「気をそらすような事態が起こったか、……運転がとんでもなく下手だったかだな」
 年少者二人が顔を見合わせる。九尾はハンドルをきりながら、全員に言った。
「まあ、若葉マークだったそうですが、彼女。……ああ、あそこが事故現場のようですね」
 急なカーブで曲がるその場所が事故現場、この辺りは通称白根が淵というそうだ。
 カーブを通り過ぎてから停まった車から4人は降りると辺りの捜索を始めた。慰霊塔があるかもしれないという海原の言葉に瀬水月と九尾が道の周りを調べていく。水無瀬は彼らとは別にぶつかった辺りに立っていた。しばし瞑目した後、手袋を外してそっと岩肌に触れる。
 サイコメトリと呼ばれる能力がある。所謂テレパシーの一種であるが、人間の思念ではなく読み取るのは物品に宿る記憶である。水無瀬はその能力をもって、この場所のかつての記憶を探ろうとしていたのだ。
 いくつもの光景が水無瀬の頭をよぎる。
 ――助けて! お母さんが死んじゃう!
 娘の悲鳴と助手席で倒れ伏す母親。そして歩いてやってくる青年の影。
 ――あ! ……さん、お願い助けて! 救急車を呼んで下さい
 青年はなんと答えたのだろうか。そして光景は変わる。
 車の中から降りてきたのは先程とよく似た背格好の青年。どこかに花をそっと手向けるとこちらにやってきた。
 ――ごめんな。こんな事になるなんて
「!?」
 その顔を見た瞬間、水無瀬の集中が途切れた。ぐらりと状態が傾ぐ。
「大丈夫ですか?」
 素早く異変を察知した九尾が地面に座り込んだ水無瀬を支えた。海原が車の中から冷えたペットボトルを慌てて持ってきて差し出す。
「……ありがとう」
 やや荒い息遣いでそう言うと水無瀬は受け取ったペットボトルをかなりの勢いで飲み干した。漸く落ち着いた水無瀬に瀬水月が声をかける。
「一体何を見たんだ?」
「……事故の光景ともう一つ。……みなもちゃん、そこのしげみ見てもらえるかな?」
「あ! はい!」
 慌てたように海原が立ち上がってしげみをかき分けて驚きの声をあげる。
「ありました! これってもしかして、慰霊碑?」
 粗末な石造りのそれが慰霊碑である事をしめる証拠はたった一つ。手向けられた花束。
「事故の光景の後にそこに花を手向ける人を見たんです」
「事故の方は? 娘はいたのか?」
 瀬水月の言葉に水無瀬は頷く。運転していたのは娘だった。レンタカー事務所でのサイコメトリの結果と同じ。嘘をついていたのは村の方で母親ではない、事故の瞬間まで娘は確かにいたのだ。
「……娘さんはどうなったんですか!?」
 判らないと首を横に振る水無瀬に海原はそんな、と首を振った。慰霊碑があると言う事は多分娘は死んだのだろう。しかし、娘がいた事が判ってもこれでは手が出せない。
「これからどうすれば良いんでしょう……」
「方法はあります」
 途方にくれた海原に確信有り気に九尾は答えた。九尾の耳には先程から様子を伺っている存在の息遣いが感じ取れていた。ジャケットの内ポケットに滑り込んだ手が鋼糸に触れた。
「出てきなさい。隠れているのは判ってるんです」
 一角を睨み据えた九尾は低く言う。三人もその方向を睨みつけた。
 ややあってしぶしぶと出てきたのは一人の青年。水無瀬が見た男である。そして――。
「レンタカーのお店の受付のお兄さん!?」
 海原が驚きの声をあげる。どうして、と誰に問い掛けるでもなく呟きがもれる。
「やっぱり来たな。……佐賀県民さんよ?」
 瀬水月の不機嫌そうな声に青年はびくりとする。九尾がややあって納得の声をあげた。
「……成程。事故にだけ詳しいデータを送ってきたのはそういう訳ですか。クラスメイトだというのは嘘だったんですね」
「そういう事だ。ついでに言えば村長の息子。事件を警察が深く嗅ぎ回らないようにしたのはあんたの父親の力じゃねぇのか?」
 青年は――佐賀県民と名乗った男はとうとう頷いた。力なく呟くような声が漏れた。
「そうだ。他にどうすれば良いのかわからなかったんだ……」

□忌み子の里
「俺は元々双子だったんだ」
 伊野武文(いの・たけふみ)と名乗った青年はぽつりぽつりと話し始めた。
「俺達の村では双子は不吉だとされていて……片方を捨てるって風習があるんだ」
「捨てるって……何でそんな酷い事するんですか!?」
「勿論ただ捨てるんじゃない。ちゃんと引き取り手がいる。忌み子の親となるのは特定の家だ」
 海原がそうと聞いてやっと胸を撫で下ろした。捨て子、忌み子と聞いて、瀬水月は不機嫌な表情で黙り込んでいた。
「もっとも戸籍は無い。いない筈の子供だからだ。家も村から離れた場所にあって、ほとんど村とは接触がない」
「無いものだから遠くに置いておくという事ですか……もしかしてこの近くにあるんですか?」
 九尾の言葉に、伊野は頷いた。
「もっとも近いって言ったって5キロはある。村の大人達でもごく一部にしか知られていない場所にあるんだ。忌み子の存在はだからほとんどの奴が知らない。俺も偶然弟に会うまで知らなかった」
「それがどう事件に関わってるってんだ?」
「……その弟さんが、事故に立ち会っていたんです」
 瀬水月が水無瀬を振り返り、見えたのかと呟いた。水無瀬は軽く首肯する。
「弟は彼女を助けようとしたんだ。でも……、俺が双子だって事はばれちゃいけなかったんだ。弟もそれが普通の事だと思ってた。それを彼女は普通じゃないって知らせてしまったんだ」
「そのために殺されてしまったんですか!? 酷いです」
 海原の悲鳴染みた声に伊野は首を振る。肩を落としたまま言葉を続ける。
「忌み子の家に閉じ込められる事になったんだ。その為にあのおばさんにはひどい事してしまったけど……まさか親父達が精神病院に入れてしまうなんて思わなかった」
「警察と病院の方には息がかかってるよな。でもってあの家には見舞金まで払ってる。まあ、見舞金じゃなくて口止め料って感じなんだろうがな」
 だから口座に手もつけずにいるんだろうなと瀬水月は独り言のように付け足した。おそらくは父親もそう思ったからこそあの口座の金に手をつけなかった。そういう事なのだろう。九尾がしばしの間を置いて先を促がした。
「弟さんと娘さんはその後どうなったんです?」
「閉じ込めようなんて元から無理があったんだ。逃げようとしてあそこから二人で落ちた。……いや、もしかしたら自殺だったのかもな」
 ため息のように言葉が漏れる。彼が指差した先には見晴らしのいいカーブがある、そこから落ちればひとたまりもないだろう。
「あの石碑はお墓のつもりですか? 作ったの、あなたですよね」
 水無瀬の言葉に伊野は頷く。海原が事故のじゃなかったんですねと小さな声で呟く。
「あなたは、何故あの書き込みにレスをつけたんですか? ……勝手な話だけど、俺はどうにかして欲しかったんじゃないんかと思ったんです。だって、あのレスがつかなければ俺達はありがちな怖い話の一種として流してしまっていたかもしれない」
「それってSOSだったって事ですか? 確かに、あたしもレスがつかなければ何もしなかっただろうし、それに佐賀県民さんの事故の記事は凄く詳細だった。占い師さんの書いた話が別の物でも、事故の方に目が行ってしまいそうだって思いました」
 水無瀬の言葉に海原が頷く。九尾は軽く肩を竦めた。
「……それは随分と都合の良い話ではありませんか? 本当にどうにかしたかったんなら自分で告発すれば良いのです。それをしなかったという事は、つまり村を壊したくなかったという事でしょう?」
「他人の力だけで何とかなんて無茶な話だぜ。無駄な騒ぎになって元も子もなくなる可能性だってあるんだぜ?」
 瀬水月はそう言うと肩を竦めた。
「……まぁ、良いさ。のってやるよ。だが、あんたの親父達にはそれなりの罰を受けてもらう、いいな」
「どうするつもりなんです?」
 瀬水月の思わぬ鋭い眼光に気圧されて頷く伊野とは裏腹に平静な声で九尾はたずねる。
「この事件を表沙汰にせずに解決する方法を考えついたのなら」
「あ、あたしも! あたしも参加しますからっ」
 九尾の言葉尻を捕えて海原が手を上げて意志を表明する。水無瀬もしっかりと頷く。
「表沙汰に出来ないんなら、別の方法で解決すればいい。こいつらが作った虚偽の檻を壊して少しでも歪みを消す。真実は結局藪の中だけどな」
「歪み……まずは娘さんの遺体を回収しないといけませんね。手元に戻してあげなくては」
「あ、それ、あたしに出来そうです! えっと、あとお母さんを病院から解放してあげなくちゃ」
 海原が声をあげる。先ほど覗き込んだ崖下には川が流れていた。川の水を使って死体を捜せばいいと思ったのだ。
「こっちで作る新しい話に添った形で証言を微妙に変えてもらえれば良いんだがな。後は快方に向かったとして退院させられる」
「では、その説得は私がやりましょう」
 瀬水月の言葉に九尾が頷いた。父親とも実際会っていてる彼が一番の適任だろう。水無瀬が遠慮がちに声をあげる。
「ちょっと待って。他にその家に閉じ込められている人達はどうすればいい?」
「逃がす。戸籍は……ネットをから何とかできねぇか試してみよう。サイアクの場合でも戸籍が無くても自由は得られる」
「じゃあ、俺は逃がす方を手伝うよ」
 水無瀬が頷く。瀬水月は伊野を振り返った。
「悪ぃがあんたの親父さん達には罰を受けてもらう。……俺は集めた村長の不正データを警察とTV局に流すつもりだ」
 伊野はやや躊躇ってから頷く。
「弟を殺した父さんは罪を償うべきです。よろしくお願いします」

□藪の中の真実、日のあたる虚構
 あれからニ週間が経過していた。
 4人はそれぞれ忙しい日々を送り、漸く一同が揃うのにそれだけの日々がかかったのだ。
「もう、疲れましたよぉ。判ってたけど死体ですし、ちょっと怖かったです」
 海原が少し潤んだ眼差しで言うと上体をテーブルに伏せた。水無瀬が笑いながら声をかける。
「お疲れ様。でも、みなもちゃんのおかげでお墓に入る事が出来たんだから、ね?」
「そりゃあそうなんですけど、あ、それで水無瀬さんの方はどうだったんです?」
「まあ、なんとか。たまに連絡をとるけど、馴染めてるみたいだよ」
 忌み子と呼ばれた子供もそれを育てる家ももうない。娘を失った夫婦と彼らは肩を寄せ合って暮らしていた。
「奥さんも無事退院しましたしね、あそこは大所帯ですよ。毎日退屈する暇がなさそうです」
「まあ、あの夫婦も閉じ込められてた連中もまったく別の土地で一からやり直した方がいいんだよ」
 九尾の言葉に瀬水月が肩を竦めた。九尾は仕事の合間を利用して何度も彼らの――今は佐賀から引っ越して福岡にある――家に足を運んでいたし、瀬水月は連日徹夜に近い勢いで色々と情報操作をしていたらしく生あくびを先程からかみ殺していた。
「そう言えば遅いね、佐賀県民さん」
「……名前で呼んでやれよ」
 水無瀬の言葉にやや呆れたように瀬水月が突っ込みを入れた。
 水無瀬はあの後、伊野に言われるままに彼の家の隠し金庫から選挙違反の書類を見つけ出ていた。息子に告発された父親は退任を余儀なくされたという。
「あ、井野さん! こっちですよ!」
 海原が手を振る。家を捨てて上京した青年は軽く会釈をしてこちらに近寄ってくる。
 井野の弟とあの娘の遺体が見つかった事により、母親は駆け落ちを反対したと言う記憶を取り戻して精神病院から退院できた。
 陳腐な筋書きかもしれないが、それが彼らの作った事実であった。
 真実ではない。真実は相変わらず藪の奥に潜んだまま。前よりはマシな虚構が出来上がっていくのに彼らは手を貸した。果たしてそれは正しかったのだろうか。
 答えの出ない疑問は胸の奥底でいつか答を出すのだろうか――。


fin.

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
 1252/海原・みなも(うなばら・)/女性/13/中学生
 0072/瀬水月・隼(せみづき・はやぶさ)
                /男性/15/高校生(陰でデジタルジャンク屋)
 0332/九尾・桐伯(きゅうび・とうはく)/男性/27/バーテンダー
 1147/水無瀬・麟鳳(みなせ・りんおう)/男性/14/無職

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■         ライター通信          ■
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 依頼に応えていただいて、ありがとうございました。
 小夜曲と申します。
 今回のお話はいかがでしたでしょうか?
 もしご不満な点などございましたら、どんどんご指導くださいませ。

 判り難いオープニングで大変申し訳ありませんでした。
 真実と虚構――本当なら不可逆なものですが、自分の真実を周りが全員否定してしまったらどうなるのでしょう? 簡単に真実と虚構はひっくり返ってしまうかも知れませんよね。そう考えると少し怖い気も致します。

 海原さま、2回目のご参加ありがとうございます。
 今回人魚の海原さまを個人パートで書かせていただきましたが、いかがでしたでしょうか? 月夜に泳ぐ人魚って素敵ですよね。
 現場にひっそりと慰霊碑、ビンゴでした。あまりにも目立たない形ではあったのですが、手作りのものだったりします。
 今回のお話では各キャラで個別のパートもございます(■が個別パートです)。
 興味がございましたら目を通していただけると光栄です。
 では、今後の海原さまの活躍を期待しております。
 いずれまたどこかの依頼で再会できると幸いでございます。