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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


妹?

●ヲタク合戦
魔王こと…すでに真の魔王ではないな…海塚・要は使い魔を通して事の事情を知った。
彼は…ごつい肉体の上にメイド服を着て…感涙にむせび泣きしていた。
「零よ!良い物を見せてもらったぞ!これこそ…これこそ今、巷でとっても大ブレイクな神秘!妹萌え!この力を完成させたその時こそ!吾輩は永遠の宿敵を打倒し、レジェンド(?)となるのだ!」

アホだ。
根本的にアホだ。
この際、関西的侮辱発言である「バカ」でもいい(たいしてかわらねーよ)。
過去の経歴からして、もう彼は魔王という威厳すらない。
もっとも、彼がこのように変になったのは宿敵のせいともいえるのだが…。

其れは…吸血鬼ハンターの水野・想司。14歳にして「萌え」を極め、男装と女装コスプレ可能の万能ヲタクだった。属している組織からの情報と全てのネットワークで要の行動を把握しているのだ。
「世の中は情報戦なんだよ☆」
しかし、組織が彼の趣味の情報まで提供するとは…組織自体も疑うべきものだ…。
そのおかげか、今回の零と草間武彦のデート情報も見事キャッチしている。
「ほほー、草間クンと零さんがデートかぁ」
わくわくと、キーボードを叩く想司。
このときから、想司は要に与える情報を少し変えていく…。すでに分は想司に傾いている。

しかし、想司も要もこの先の未来など知るよしもない。
とんでもないお節介焼きが居ると言うことを…。


●草間信興所前
要が今では珍しい、表が漆黒で裏が深紅のマントに漆黒のタキシードという姿で現れた。彼も一応羞恥心があったのか…それとも何か企んでいるのか…。

……
前言撤回…頭にシルクハットに顔に仮面、口にバラを加えている。未だに人気のあるアニメのコスプレだ…。肉体程度は魔法で何とかごまかせるから良い。変にゴスロリ服を着て闊歩されるより、ましといえる。
これは…宿敵の想司に勝てるという意気込みを表しているのに違いない。
「うーむ、完璧な装備にするために時間をかけてしまったか…吾輩としたことが…」
ちらりと時計を見る。確かに遅刻だ。これではもう草間と零は何処かに行っている。探すことは容易いかもしれないが、デート前に二人に会わなければ失敗だ。
「仕方ない、次の機会にするか」
彼は、まだ時間があるといった感じできびすを返して帰っていった。
ビル街の陰で想司はニヤリと笑っていた。


●帰り道で遭遇
しかし、要の計画は変更する。デート中に指摘すればいいのだ。簡単なことではないか。
公園で手品を披露する要。魔王として簡単な手品や魔術などはお手の物だ。シルクハットの中から可愛いウサギをだしたり、卵から鶏をだしたり、杖から様々な物を出す。極めつけは、バラの花びら乱舞。これで見物客はウケないことはない。バラの一輪を、彼好みの「萌え」な女の子に差し上げて幕を閉じる。
多少の路銀を手にした彼の目的は…草間と零が此処を通ることを知っているからだ。当然…見物客に二人が居た。
見た感じ、二人の仲は進展しているに思える。零の感嘆ぶりを喜んでみている草間。見た目は兄妹かホントに恋人同士になったか分別がつかないが、良い感じだ…。しかし、
(これは、極普通の誰かがねじ込んだデート成功法だな…其れでは違うぞ…)
要は思った。

「先ほどの手品師…何処かで見た感じだったが?」
草間が零に訊いた
「私もそう思った。誰だったかなぁ?」
二人して首を傾げる。
「まさか彼奴があんな格好をするのは思えないしな…」
「う〜ん…そうよね、兄さん」

兄さんだって!
要はショックを覚えた。誰だ!零に兄さんと呼ばせている!
これでは行けないではないか!
真の妹萌えは「お兄ちゃん☆」と相場が決まっているのだ!
陰からめらめらと萌えの暗黒面オーラを発し始める。
「吾輩の計画は、零にゴスロリなメイド服をきて、草間に対し「お兄ちゃん☆」と呼ばせる事だ!妹萌えの頂点は其処にある!」
拳を握りしめ彼は叫んだ。
しかし、あの宿敵の気配を感じたので振り向いた。
想司が感心したように、拍手をする。彼の衣装は極普通の春物だった。
「流石、流石だね、流石だよ、要っち♪零さんにゴスロリーなメイド服を進呈するに飽きたらず、『お兄ちゃんっ☆』の秘技を伝授しようと画策するとは、恐れ入ったよっ☆」
彼は力強く要を指さした。
「駄菓子菓子!それでも僕には勝てないよ!それは…君が草間クンの特性を見誤っているからさっ♪」
「な…なんだと!」
心理の中で雷が走る。
「それは、草間クンが常時つけている『メガネ』さ!」
「ああ!」
想司の指摘に驚愕する要。
「今では、メガネは「ちょっと大人♪」「渋さもしくは奥底に眠るかわいさの封印」を醸し出す重要な『第三の萌え』なのだよ!」
「くぅ!」
「そしてキミは草間サンを過小評価しているだろ?彼は『メイド服大全』と『萌え萌え巫女服友の会定例新聞』に屈しなかった事を知らなかったようだね!」
「な…なに〜!?あの草間が!」
「『メガネ』『メイド』『妹』『お兄ちゃんっ☆』この四位一体が完成してこその究極!」
この想司の発言で要は負けを悟った。
「またしても、またしても吾輩は勝てなかった…!」
膝をつき、敗北を味わう要。

しかし、或る影が二つ寄ってくる。
この馬鹿げた話を、例の二人がじっと見ていたのだ。
「おい、お前ら…」
草間の額には青筋が浮かんでいるが、零は何事か把握していないようすだ。
想司は冷や汗をかいた。計画的には、彼らに気づかせずに事を納めようとしたのだが…。
「あれ?ふ、二人ともどうして?」
「だいたいの察しはついている。…零に電波的要素を与えるつもりだったって事をな!」
草間は、退魔銃を構えた。流石の想司も要もこれを向けられると命が危うい。有無を言わせず分解でお陀仏だ。
しかし、此処までする草間に突っ込みたくなるのが想司と要の性…
「ねぇ要っち…」
「なんだ?」
「やっぱり草間サンって…」
「…だよな…」
「うん、シスコンだね☆」
その言葉で草間が切れた。
「誰がシスコンだぁ!」
退魔銃の乱射で大穴が開いていく。必死に逃げる想司と要。掠りでもしたら命がない「魔」だからだ。
リボルバーでも何故か弾が尽きない。
「草間サン殺気立ってる!」
流石の想司も焦り出す。
「我らの思案が図星だったからだろう…」
「なっとく☆」
「このままでは、命が危うい。ひとまず休戦協定で草間をなだめるしかない」
「同感」
想司はマジカル・ソージーに変身し、ステッキからピンクのエネルギー弾を発射させた。
「攻撃してどうする!」
要がつっこみを入れる。
しかし、このピンクのエネルギー弾は「和み」弾だった。
クリーンヒットした草間は銃をすて木にもたれ、のんびりとしている。
「ふーたすかった〜♪」
安堵する二人。
「ひとまず、助かったね」
「ああ…」
しかし、大きな殺気が背後からした…。恐る恐る…振り返る二人
後ろに零がいた…。かなりご立腹。
「兄さんに…何したの?」
「え?え?な…なにも…」
「こんな事も有ろうかと、ちゃーーーんとあなた達にふさわしい助っ人を呼んでいたの…」
「え?」
「ふー此処に魔王らしからぬ馬鹿が居ると聞いたのだが…ここか」
どこからともなく、銀髪の男が現れた
「エルハンドさん。このタキシード男をお願いします」
零が男に頼んだ。
「ああ、害をなす者はとっとと「封印」するより殺しておいた方が良い」
男は宝石がたくさん埋め込まれた西洋剣を召還した。
要は本能で悟った…今までの悪の行為で死んでいった者がこの男の手で…イヤ神の剣で仕留められたということを…。この男…神だ…。
「吾輩はまだ萌を極めていない!逃げる!」
「待て!お前は世界に害をなす!封印だけでは生ぬるい!」
「おたすけー!」
地平線のかなたに逃げていく要…。しかし、エルハンドは其れ以上追うことはなかった。
「やれやれ…」
男はため息をつく。
「さて…想司君は…」
「零、彼の方は任せろ。すでに到着している」
「え?」
「ダークさん…ひょっとして…」
零は首を傾げるが、想司はエルハンドの表情からイヤな予感を感じた。
「忍…」
「そうよ…想司君…学校さぼって何してるのかなぁ〜」
「あ…」
忍の殺気だったオーラが、いやこれは神格というべきか…。彼女は「神様御用達」と書かれているハリセンを持って仁王立ちしている。
「このばかーーーーーっ」
神格を込めたハリセンの一撃。
「うわぁあああ!」
想司は忍のハリセンで空の彼方に消えた…。
「全く人のプライベートに関わるなんて!」
「まぁ私たちも同じような事だからいえないが」
忍とエルハンドは深くため息をついた。
「楽しみの所、邪魔して済まなかったな」
「とんでもないです。助かりました」
「では私たちはこれで」
エルハンドは、草間にかかった呪縛を解いていく。
その後、零と助っ人達はその場で分かれた。


●事が終わって…
草間信興所…。
相変わらずの昼。昼食時である。草間は新聞を読みながら、零が珈琲を持ってくるのを待っていた。
「はい珈琲よ『お兄ちゃん☆』」
零の言葉に椅子からダイナミックに転ける草間。
「そ…其れは何処で覚えたぁ!」
草間が焦るように叫ぶ。
「先日の事件で面白そうかなーって…だめ?」
「だめ!頭が痛くなる…」
「しゅーん…わかったよう…兄さん☆」
しかし、鼻歌交じりで、昼食の準備に取りかかる妹だった。
「あの呼び方…確信的犯行だな…」
絶対あの二人の息の根を止めようと決意する兄草間だった。
当然、闇の萌え世界では『草間はシスコン』というレッテルが貼られていることだろう。

終わって良いのか?いいのか?


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0424 / 水野・想司 / 男 / 14 / 吸血鬼ハンター】
【0759 / 海塚・要 /男 / 999 / 魔王】

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■         ライター通信?          ■
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エルハンド「あーごほごほ、著者の滝照直樹は貴兄たちの行動内容に笑いが止まらない様なので(おいおい)、私が代弁する事をご容赦願いたい。さてと、今回『妹?』に参加していただきありがとう。お二人方。特に水野・想司殿、久しぶりだな。剣客の下宿1以来か?海塚・要殿、初参加ありがたく存じる。これに懲りず、また参加していただきたいと滝照は言っているから、参加してくれることを願う」

エルハンドは一礼して立ち去った。

滝照直樹/エルハンド・ダークライツ拝