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<東京怪談・PCゲームノベル>


お兄ちゃんは心配性

●1:恋沙汰話の大好きな面々
零は鼻歌を歌いながら、手紙を書いている。其れを不安げに見ている草間。その風景はその場にいる者達に面白くみえる。
まずは、海原みなもだ。羨望の眼差しで零を見ており、有名恋愛小説を詰め込んだ鞄から、引用を引き出している。そして、鈴代・ゆゆ。彼女はまるで自分がラブレターを貰ったかのように喜んでいる。
次に、相変わらず暇人なのか江戸崎・満が、珈琲を飲みながらこの平和な空気を楽しんでいるようだ。どっちかと言えば…みなもの笑顔に見とれているのが正しいか?
一番、楽しげなのがシュライン・エマ。この件から微笑み続けている。ずっと、草間兄妹を見てきた彼女にとって、こういった心温まるような風景は一番気持ちが良いのだろう。
草間が不安なことを察してか、シュラインが珈琲を差し出してこういった。
「だいじょうぶよ。武彦さん」
「しかしだな…」
「私が大丈夫だと言ったら大丈夫。それに分かるでしょ?零ちゃんのことは」
「…あ、ああ」
草間は更に困った顔をしていた。シュラインは彼の顔をみてクスクス笑う。
「過保護も良くないわよ」
「…」
「気がかりなのが…何処かで見た相手と言うことでしょ?」
シュラインは草間の肩を叩いて、軽やかな足取りで台所に向かい、何かを支度し始めた。

ずっと、沈黙している満は溜息をつき、
「まったく…草間。他の仕事に手がつけられない顔をするな…」
と、諭す。そして、問題の手紙をマジマジ眺めた。
「ふむ…」
「何か分かるのか?」
「書写かもしれんな…」
「なに?」
「文字から読みとれることは数多くある。それが字に表れる。特に気持ちはな…これは…」
満が持っている手紙の一枚をそっと手に取ったシュラインが続ける。
「やっぱり…誰かが書き直したモノよ」
「やはり。只、住所だけは違っている…物書き家業のシュラインなら分かるだろう?」
「そうね…あたし思うのよ。手紙から僅かに感じる『気持ち』はたぶん…」
一間置いて…
「海塚君かも」
その言葉に思いっきり横転した草間。相手を聞いて呆然とする満。
「何故だ!何故あいつが!?…!」
もう言葉にならないほど叫ぼうとするところ、満に口を押さえられ、羽交い締めもされる。我を忘れ、暴れそうだったからだ。仕方有るまい…、前の事件が(『妹?』参照)彼の冷静な思考を吹き飛ばしているからだ。
「落ち着いて…武彦さん(汗)」
彼女は此処まで取り乱す草間を見てかなり心配している。
「仕方ない…これ以上こいつに「この手」のストレスは害だな」
満は、龍気を込めた点穴にて草間を眠らせた。
「其処まではする必要…あったかも…」
苦笑するシュライン。満もつられて溜息。
彼女は封筒の差出人を見て…
「…うんうん。確か会ったこと有るわね…」
「しかし、何故こいつが書くのだ?要と代筆する関係でもないぞ?」
「考えられるのは…」
「ふむ…」
シュラインと満は同時に頷く。満はそのまま事務所を出て行き、シュラインはまた台所に向かっていった。

●2:当日の草間興信所
2〜3回の手紙のやりとりが続いた。すぐに逢うというのはやはり恥ずかしいという零の言い分だった。
そして、初デートの日になる。
(不安だ…)
草間のそのモヤモヤしたオーラが事務所に浸食していく。しかし、シュラインや満、みなもとゆゆは気にしない。
「そろそろね」
シュラインがお菓子の詰め物を用意している。
「恥ずかしいけど…後ろからお願いします」
ぺこりとお辞儀をする零。
「いいよいいよ♪」
先が楽しみでならないゆゆとみなも。
満とはいうと、黙ったままだ。
「では、武彦さん、満さん、お留守番よろしく〜☆」
「ああ」
「ま、…いや、行ってらっしゃい」
シュラインはにこやかに女性陣を引き連れて事務所を後にした。ちなみに前者の返事は満、後者は草間ということは言うまでもない。

●3:デートの定番は…
待ち合わせ場所は、遊園地近くの公園。日曜だけあり、人人人…。そこで目印なるものを持っていないと分からないのが普通だ。
零と、その相手…はお互い、それぞれ分かる目印を付けている。バラの造花を目立つように指しておくことだ。恥ずかしいが、一番わかりやすい方法だ。保険としてあらかじめプリクラで自分の写真を貼って送ってあるので問題はないのだが。
零はキョロキョロと探す。それを、見渡せる範囲でシュライン達がいる。もっとも、その後ろに草間が居るのだが。すでにシュライン達にばれていた。
「あーあ、きてるよ」
「しかもバレバレ〜」
「心配なのは分かるから、分かり切ったことよ…」
3人はやっぱり「草間はシスコンだ」という答えを見つけ溜息をつく。
「あ!あの人じゃないの?」
ゆゆが、相手の男性を見つけて2人に言った。
確かに顔立ちも似ているし、バラをジャケットに指している。
恐る恐る、零が近寄っていく。
ドキドキする3人。後ろでそわそわして、花壇に蹴躓く草間…。

「あの…お手紙出してくださった…水瀬・夏紀さんですか?」
零が、相手の名前を訊いた。
「はいそうです。零さん、いきなり手紙出して済みません…」
ぺこりと謝る夏紀。
「いえいえ、こちらこそありがとうです」
二人ともガチガチのようだ。まぁ初対面でデートだから仕方有るまい。
「面白くなりそう♪」
ゆゆは乗り気だ。みなもも、彼の容姿や態度をマジマジ観察して頷く。
シュラインは苦笑するしかなかった。


二人は、遊園地に向かう。これも定番。
みなもが、先に動いた。そのあとに2人が続く。


デートは順調だ。お互い友達のような感覚でおしゃべりをして、アトラクションで遊んだ。流石にお化け屋敷だと、お互い戦闘本能でアトラクションを壊す可能性があるので行かなかった(定番からはずれてます)。
「零ちゃんが怖がってモノを壊しちゃうか、あの彼の肋骨が砕ける可能性があるわね」
シュラインは苦笑する。
「良い感じだけど…なんかくやしいなぁ」
みなもが呟いた。
「まぁまぁあわてずあわてず」
ゆゆは、たしなめるようにいった。

最後に零達が向かった先は…夜にはイルミネーションで有名な広場だった。
時刻はもう夕刻だ。

●4:最終決戦?
イルミネーションが灯った。その場にいた皆は感動する。
シュラインとみなも、ゆゆもそれに見とれた。
「綺麗…」
「そうね…」
「今度は彼氏作って行きたいなぁ」
とそれぞれ呟いた。
シュラインは聞き慣れた足音を聞いたので後ろを振り向く。
「あれ?武彦さん?」
「よう…土産も持ってきている」
草間はスパイスーツで身を固めながら、想司を猫つかみでやって来た。
完全に猫状態の想司。
「にゃー☆」
「あれ?」
みなもと、ゆゆは首を傾げた。向こうにも草間が居る。
「あいつは「満」だ」
「「「え〜!!」」」
その場にいた女性陣と想司は驚きの声を上げた。
「なにか…恐ろしいことが…」
「逆に丸く収まるかもよ」
「う〜ん」
「僕…しらないよ♪」
「ノンビリ見物しようか…」
「武彦さん…なんか開き直ってない?」
「このスーツを着ているとどうも冷静になれるのでな…おかしな服だ」
「そう…。あ、想司君、お菓子要る?」
「いる〜☆」
完全にピクニックとなってしまった。
イルミネーションでは今から死闘(?)が繰り広げられそうになるというのに…。


イルミネーションで良い雰囲気な零と夏紀。
「きれいですね〜」
「ええ〜」
「本当に、デートに誘ってくださってありがとうです」
零は夏紀にお辞儀をした。
「いえいえ、あの…また…一緒に…」
不意に夏紀が出た言葉…。
(し、しまった!これでは僕が…本当にデートに誘っていることに!)
気づくのが遅い。
そのグッドタイミングで、草間が駆け寄ってきた。
「おい!夏紀とやら!零をそそのかしたようだな!」
「え?草間さん!」
「兄さん、これは違うの。お手紙のお礼を…」
「零は黙ってろ」
草間は、零を見る。零はその目に見覚えがあるが…気迫に負けた。
「お前…、これが分かるか?」
草間が取り出した一通の手紙…。焦る夏紀
「其れを何処で!」
「お前の家で発見した真の差出人が書いた手紙…。誤送したことを連絡せず、それに便乗してデートに誘うとは最低だな!」
「え?兄さん?それじゃあ?」
「読んでみるか?」
「それはやめろー!」
夏紀は止めようとするが、草間のデコピンで3メートルは吹き飛ばされた。
「???」
何がなんだか分からない夏紀。草間氏はこんなに力があったのか?
「そ…そんな…だ…だましたの?」
すでに読み終え、愕然とする零。
「…この責任はどうする?」
「いえ、そのあの…」
迫り来る兄妹に…なすすべがない夏紀。しかし…彼は空から急落下してきた要に踏みつぶされた。
「ぷぎゅう!」
「草間ぁ!シナリオとはじぇんじぇんちがうではないかぁ!」
怒りをあらわに叫ぶ要。
「アホ」
それに対して冷ややかに返事する草間。しかし声が違う。
それで、要は我に返った…。
「その声は!あのときのぁ!」
要は驚きの声を上げた。
零は、先ほど見た草間の瞳で正体が誰か判っていた…草間に変装した江戸崎満なのだ。
彼は指を鳴らすと術が解け、草間の顔が満本人になる。
「本当の手紙の差出人は…この要だ…」
満がそう零にいった。そして事情…誤送により夏紀が彼女を守るために送ったことなどを推測の範囲で伝えたのだ。
「え…」
「じ…じつはその…零さんの…メイド服の…」
もじもじと要が赤面して話し始める。前の事件で本当に恋をしたのか判らないので回りくどいこういった作戦を実行したそうだ。しかし、純真な彼女に心の傷を負わせたのは重罪だ。
結局はだまされた事を知り、零は涙を流している。彼女を慰めるかのように満は頭を撫でた。事の顛末を聞いたみなもとシュライン達が駆け寄る。みなもは…怒り狂っている。
「零さんを泣かせた!ゆるせない!」
近くにあった、池から水を操り…大きな拳を作り上げる。
「ま…まってくれ…」
焦る要…しかし遅すぎた。
「問答無用!!」
会心の拳が要にクリーンヒットして、要は空の彼方に消えた…。
息を切らしたみなもを満が落ち着かせる。
想司は、出なくて良かったと背筋に寒気を感じた。
「結果的に…嫌な事になったけど…零ちゃん…」
「…」
シュラインが慰めようとするがその次に出る言葉が出ない。
「零、大丈夫か?」
割り込むように草間が妹に寄る
「大丈夫…」
零は草間のうでに自分の腕を絡ませた。
「一緒に残りの時間を楽しもう兄さん、みんな!」
涙で目が赤くなっているが満面の笑みで草間達に言った。
それに反対する者は居なかった。
(やり♪)
想司は心の中でガッツポーズを決めた。
ゆゆは…何かひらめいて、その場にいる人たちにむかって…或る幻影を出した。
「すごい…」
近くの噴水に、綺麗な星座の幻影をだしたのだ。
これは後日…幻のイルミネーションとして語り継がれる。


手紙は想いを運ぶ。其れが何であれ…。

End


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0424 / 水野・想司 / 男 / 14 /吸血鬼ハンター(萌えマスター)】
【0428 / 鈴代・ゆゆ / 女 / 10 /鈴蘭の精】
【0759 / 海塚・要 / 男 / 999 / 魔王】
【1109 / 水瀬・夏紀 / 男 / 17 /若き退魔剣使い】
【1252 / 海原・みなも/ 女 / 13 / 中学生】
【1300 / 江戸崎・満 / 男 / 800 / 陶芸家】


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■         ライター通信          ■
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こんばんは
滝照直樹です。
『お兄ちゃんは心配性』に参加してくださりありがとうございます。
ラブコメなのかどうか自分で判らなくなるという結果になりましたが…如何でしょうか?

また機会が有れば宜しくお願いします。

滝照直樹拝