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<東京怪談・PCゲームノベル>


お兄ちゃんは心配性


●1:混沌の退魔剣士
零にラブレターが届くまで時間はかなり遡る…。
水瀬・夏紀の元に一通の手紙が届く。彼は現在で覚醒した退魔剣士。…異能者たちからブラックリスト扱いのはぐれ者だ。根は優しいらしいのだが…。
「これは?誤送じゃないのかな?」
彼は、手紙の宛先をみて呟いた。興信所宛だからだ。
しかも、相手は…『萌えの暗黒王』として名高い海塚・要だ。
「依頼でも頼むつもりだったのか?」
本当はいけない事なのだが…ペーパーナイフで封を切り恐る恐る見た…。
『(上略)零タン、ハァハァ…(以下略)』
ダイナミックにずっこける夏紀。
「これは問題だ!このままでは純朴な零さんが危ない!こんな馬鹿の毒牙にかかるのは見逃してはならない…草間さんに連絡すべきか…」
しかしまて。と彼の思考が留めた。
乱雑に置いている、様々な資料から一枚の新聞を見つけた。『萌えの暗黒面ニューズ』だ。
今の世の中、情報が必要。圏外な事も必要なので渋々会員になって居るようだ(これで彼も立派なオタクの仲間入りと知らずに)。
「やはり…これは自分で行動するしかないな…」
そのニューズには…草間武彦は妹萌え…と大きな見出しで書かれていたからだ。
さっそく夏紀は、小説などを資料にして初めてのラブレターを書く。しかし、失敗があった…殆どが…要の気持ちが込められた手紙をベースにしていたのだ。危ない内容をはしょり、まともな表現に手直しする。何もかも初めてなので書き直しが続いた。
そして…完成した手紙を送った。


●3:デートの定番は…
待ち合わせ場所は、遊園地近くの公園。日曜だけあり、人人人…。そこで目印なるものを持っていないと分からないのが普通だ。
零と、その相手…はお互い、それぞれ分かる目印を付けている。バラの造花を目立つように指しておくことだ。恥ずかしいが、一番わかりやすい方法だ。保険としてあらかじめプリクラで自分の写真を貼って送ってあるので問題はないのだが。
零はキョロキョロと探す。それを、見渡せる範囲でシュライン達がいる。もっとも、その後ろに草間が居るのだが。すでにシュライン達にばれていた。
ドキドキする3人。後ろでそわそわして、花壇に蹴躓く草間…。

「あの…お手紙出してくださった…水瀬・夏紀さんですか?」
零が、相手の名前を訊いた。
「はいそうです。零さん、いきなり手紙出して済みません…」
ぺこりと謝る夏紀。
「いえいえ、こちらこそありがとうです」
二人ともガチガチのようだ。まぁ初対面でデートだから仕方有るまい。
「面白くなりそう♪」
ゆゆは乗り気だ。みなもも、彼の容姿や態度をマジマジ観察して頷く。
シュラインは苦笑するしかなかった。
二人は、遊園地に向かう。これも定番。
みなもが、先に動いた。そのあとに2人が続く。

要は、草間に「どじっこ」を演出するためのコツを随時語っている。草間はそれに反応して予想以上の失敗ぶりだ(成功しているのだが…)。しかし不思議と、相手側は分かっていない。特に気配など敏感な零が…だ。
「むむむ!どうして上手くいかない!?」
作戦がうまくいかない事で苛立ちを覚える要。
「こうなれば奥の手しかないのか!プロジェクトX発動!」
久々の魔王らしい姿に戻った要。
さてどうするのだろうか?

デートは順調だ。お互い友達のような感覚でおしゃべりをして、アトラクションで遊んだ。流石にお化け屋敷だと、お互い戦闘本能でアトラクションを壊す可能性があるので行かなかった(定番からはずれてます)。

夏紀は、草間と魔王、萌えマスターの気配を感じた。すでに敵は近くにいる。
(ココは慎重に守らないと)
夏紀は実際…護衛する目的で零と接触をした。しかし…一緒に遊んでいる内に…心に変化が表れることを自覚する…。数回の手紙のやりとりと、このデートでまさか自分が零に恋心を持ったのが信じられないのだ。夏紀は能力者でも人の子。しかたあるまい。それが…一瞬のはかなき感情なのかは定かではないが…。
零の風でたなびく髪からかすかに零の匂いをかいだ…。考えてみれば其処まで接近していたのだ。
「あの?どうしました?」
零がきょとんとした顔で訊ねる。
「いえ、何でもないです。…えっと次何処に行きます?」
「う〜んと…」
零が指さしたところは…夜にはイルミネーションで有名な広場だった。
時刻はもう夕刻だ。

●4:最終決戦?
イルミネーションが灯った。その場にいた皆は感動する。
イルミネーションで良い雰囲気な零と夏紀。
「きれいですね〜」
「ええ〜」
「本当に、デートに誘ってくださってありがとうです」
零は夏紀にお辞儀をした。
「いえいえ、あの…また…一緒に…」
不意に夏紀が出た言葉…。
(し、しまった!これでは僕が…本当にデートに誘っていることに!)
気づくのが遅い。
そのグッドタイミングで、草間が駆け寄ってきた。
「おい!夏紀とやら!零をそそのかしたようだな!」
「え?草間さん!」
「兄さん、これは違うの。お手紙のお礼を…」
「零は黙ってろ」
草間は、零を見る。零はその目に見覚えがあるが…気迫に負けた。
「お前…、これが分かるか?」
草間が取り出した一通の手紙…。焦る夏紀
「其れを何処で!」
「お前の家で発見した真の差出人が書いた手紙…。誤送したことを連絡せず、それに便乗してデートに誘うとは最低だな!」
「え?兄さん?それじゃあ?」
「読んでみるか?」
「それはやめろー!」
夏紀は止めようとするが、草間のデコピンで3メートルは吹き飛ばされた。
「???」
何がなんだか分からない夏紀。草間氏はこんなに力があったのか?
「そ…そんな…だ…だましたの?」
すでに読み終え、愕然とする零。
「…この責任はどうする?」
「いえ、そのあの…」
迫り来る兄妹に…なすすべがない夏紀。しかし…彼は空から急落下してきた要に踏みつぶされた。
「ぷぎゅう!」
「草間ぁ!シナリオとはじぇんじぇんちがうではないかぁ!」
怒りをあらわに叫ぶ要。
「アホ」
それに対して冷ややかに返事する草間。しかし声が違う。
それで、要は我に返った…。
「その声は!あのときのぁ!」
要は驚きの声を上げた。
零は、先ほど見た草間の瞳で正体が誰か判っていた…草間に変装した江戸崎満なのだ。
彼は指を鳴らすと術が解け、草間の顔が満本人になる。
「本当の手紙の差出人は…この要だ…」
満がそう零にいった。そして事情…誤送により夏紀が彼女を守るために送ったことなどを推測の範囲で伝えたのだ。
「え…」
「じ…じつはその…零さんの…メイド服の…」
もじもじと要が赤面して話し始める。前の事件で本当に恋をしたのか判らないので回りくどいこういった作戦を実行したそうだ。しかし、純真な彼女に心の傷を負わせたのは重罪だ。
結局はだまされた事を知り、零は涙を流している。彼女を慰めるかのように満は頭を撫でた。事の顛末を聞いたみなもとシュライン達が駆け寄る。みなもは…怒り狂っている。
「零さんを泣かせた!ゆるせない!」
近くにあった、池から水を操り…大きな拳を作り上げる。
「ま…まってくれ…」
焦る要…しかし遅すぎた。
「問答無用!!」
会心の拳が要にクリーンヒットして、要は空の彼方に消えた…。
息を切らしたみなもを満が落ち着かせる。
想司は、出なくて良かったと背筋に寒気を感じた。
「結果的に…嫌な事になったけど…零ちゃん…」
「…」
シュラインが慰めようとするがその次に出る言葉が出ない。
「零、大丈夫か?」
割り込むように草間が妹に寄る
「大丈夫…」
零は草間のうでに自分の腕を絡ませた。
「一緒に残りの時間を楽しもう兄さん、みんな!」
涙で目が赤くなっているが満面の笑みで草間達に言った。
それに反対する者は居なかった。
(やり♪)
想司は心の中でガッツポーズを決めた。
ゆゆは…何かひらめいて、その場にいる人たちにむかって…或る幻影を出した。
「すごい…」
近くの噴水に、綺麗な星座の幻影をだしたのだ。
これは後日…幻のイルミネーションとして語り継がれる。

手紙は想いを運ぶ。其れが何であれ…。

End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0424 / 水野・想司 / 男 / 14 /吸血鬼ハンター(萌えマスター)】
【0428 / 鈴代・ゆゆ / 女 / 10 /鈴蘭の精】
【0759 / 海塚・要 / 男 / 999 / 魔王】
【1109 / 水瀬・夏紀 / 男 / 17 /若き退魔剣使い】
【1252 / 海原・みなも/ 女 / 13 / 中学生】
【1300 / 江戸崎・満 / 男 / 800 / 陶芸家】


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■         ライター通信          ■
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こんばんは
滝照直樹です。
『お兄ちゃんは心配性』に参加してくださりありがとうございます。
ラブコメなのかどうか自分で判らなくなるという結果になりましたが…如何でしょうか?

また機会が有れば宜しくお願いします。

滝照直樹拝