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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


大阪怪奇事件簿その4 In The Abyss


------<オープニング>--------------------------------------

封印されている「奈落」を探して数日…。何も手がかりがつかめない。
不思議なことに異世界の空気すら感じなかった。
おかしい…。何かある
草間は探偵としての勘で思った。あの、奈緒子が嘘をつくはずはない「奈落」は大阪にある。
ホテルの窓からずっと大阪市内を眺めている時…
「た、大変です!」
「どうした零?」
「川を!いえ水自体がアメジスト色に!」
「なに?」
彼は急いで洗面所の水を出す…アメジスト色にきらきら輝いている。
「これはいったい?」
この怪現象が…奈落なのか?
TVで特報が流れる。
[大阪全域の河川、池がアメジスト色に!不可思議な異常?]

草間氏と共に「奈落」を封印してください。
尚、水はコップなどに注いで飲めば何も悪影響は有りません。

大阪怪奇事件簿その1、その2を参照してください。
その2の本文中「奈落」にティアマットが存在すると書きましたが、今回の設定では「別外世界」の存在という設定にさせていただきます。

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海原・みそのとシュライン・エマは淀川付近を調べていた。しかし、奇妙なことに気づく。
「あれ?」
「どうされました?」
シュラインは奇妙な風景を見つけたのだ。
県境に位置している川で綺麗にアメジスト色の川が無くなっている。
「あら…おかしいですわね」
盲目だが、万物の流れで周りを感じるみそのもその景色を感じ、首を傾げた。
「やはり…あたしの考えは間違ってなかったわ…」
「どういう事です?」
「川は…只の現象…、「門」自体は大阪全体といっても良いわ」
「…そうなのですか?」
確信は持てない、その可能性は高い。
「一度、八尾に行きましょう」
シュラインはみそのと共に八尾に向う。
「一寸待ってください」
「?」
みそのは可愛い小瓶で淀川の水を入れた。少し濁っているとはいえ…綺麗なアメジストの水。
「おみやげに♪」
のんきに答えるみその。
苦笑するしかないシュラインだった。
「さ、行きましょう」


草間は零と情報を「足」で探していた。どこもかしこもアメジストの水。目がおかしくなりそうだ。食い倒れの聖地「道頓堀」でさえアメジストになっている。喫茶店に入っても、水道からそんな色が出るから…客も居ない。おそらく水道局は苦情の電話でてんてこ舞いだろう…。清涼飲料水、ジュースは全て売り切れになっており、例の水で作った麦茶で我慢する。味には問題はない…。
「やっかいだな…」
一旦、合流することが良いと考えた草間。大阪全体の水域「だけ」こんな色というのはいささかおかしい。
零も、霊力がその水に感じないのだから、首を傾げるばかり。
「異世界に詳しい…あの「自称:神」はどういうのだろうか?」
携帯で全員に集合を呼びかけ…ホテルに戻る兄妹だった。


2.集合
ホテルのロビーで集まった一行。すぐに着いたのはシュラインとみそのだった。
皇騎はその数分後。
しかし、ダージエルがこない。
「何しているのだ?ダージエルは」
草間は苛立ち呟くが
「気まぐれな方ですから、落ち着きましょう」
とほんわかとみそのがたしなめた。

1時間経って…。
「遅くなって済まない」
「遅いぞって…どうした?その姿!」
草間とその場にいる皆は驚いた。
ダージエルの服が、何かと戦ったようにボロボロで、彼自身もいくつか傷を負っていた。
「途中で、バルログに遭ってな…かなり手こずった」
「バルログ?」
誰とも無く訊ねる。
「奈落にいる魔神(デーモン)の一種だ。地獄が悪魔(デヴィル)と私の世界では分別している。アレは奈落の生き物の中で最高位になる。アメジストの水から飛び出してきた」
ダージエルが傷つくというのなら…どんな恐ろしいものか…はっきりしてきた。シュラインが手当をしようとするが、勝手に治るから良いとダージエルは止めた。
「やっかいだな、シュラインの言うとおりなら、川を見ていても意味がない。大阪全土が門だとすれば…」
草間は言う。
「早く我々も動かないと、世界が危ないです。私は先に本家と分家を総動員して大阪の守備を勤めます」
皇騎は、すぐさま立ち自分が可能な仕事に向かうが…
「一寸待って…」
シュラインが止めた。
「此処による前に、聖徳太子にあったの。そしてこの鍵と木簡について訊ねたわ」
テーブルに、古びた鉄の鍵と凡字が書かれている木簡をだした。
「…彼はなんて言っていた?」
「これは、奈落の門を閉めるアイテムだそうよ。ただ、状況がこういうのだから…この鍵で使えるか判らないの。この凡字の木簡は、奈落に入ってしまった時、この世界に出るための切符と彼は言っていたわ」
「下手すると…奈落に一度入り込み…閉ざさないと行けないのか?」
「可能性はあるわね。混沌な世界と言われているけど少なからず、法律は有るみたいよ」
質問に答えるシュライン。その隣でダージエルは頷いた。
「可能な限り、奈落に入らずに封印できる方法を考慮しないことには行けないな」
草間の意見に皆は同意する。
「わたくしは、本当なら夜に流れを見ようと思ったのですが、今すぐ奈落の門の中心を探してみようと思いますわ」
みそのが立ち上がる。傷が癒えたのか、ダージエルが護衛をすると言った。
「探ろうとなると…魔神が干渉しかねないからな」
彼の言葉はなにか不安じみていた
「では私たちは…集団で行動取った方が良いわね」
シュラインと草間、零は皇騎と集団で行動することにした。
「よし、門の位置が判れば、即集合だ」
草間が言った。それぞれの行動を開始する…。



3.潜んでいる魔
草間達は今、大阪環状線に沿って異変を調べていた。今は玉造当たりを調べている。
皇騎が手配した、巨大魔法陣は徐々に完成している。大阪全体に記念碑らしきところに部隊を設置した。
彼らには、水を制する「地」の術と水を浄化する「お神酒」を用意させている。
モバイルから逐一本家分家の術者や調査員からの情報を元に現地の割り出しをはかる。しかし、これといった方法は水の変化いがい、つかめていない。
霊力の優れている零が、いつ何処で魔神が襲いかかってくるか…ずっと水面を見ている。
「あれ?」
零は川の流れに何か居ると感じた。
彼女は、とっさに草間とシュラインを抱え込み川から飛んで離れる。皇騎もその行動をすぐに理解し、不動明王を召還させ、武器を構えた。
同時に、3体の人型で黒い肌を持つ存在が飛びかかってきた。
「これは!混血魔?」
神から訊くところ、暗殺者として名高い種族のようである。
襲いかかってくるところを、明王が殴りつけて霧散させた。
「危なかった…」
前もって、ダージエルから魔神の耐性を訊いておいて良かったと安堵する。
奈落の魔神は純エネルギーか、氷、聖純銀でないと効率よくダメージを与えられないというのだ。外世界の術法則に偏りがあるという。
「助かったわ、零ちゃん」
零におろして貰ってシュラインがお礼を言う。丁度メールの着信音が鳴った。
「あ、みそのちゃんが場所を特定できたみたいよ」
「本当ですか?」
「大阪城といっていたわ」
「かなり近くまで来ていたのですね。好都合です」
「そうなれば急ごう」
草間は、車に乗り皆を乗せる。
皇騎は上級術者に呼びかけ、大阪城全体の封鎖を1時間以内に済ませるよう示唆した。


4.決戦
一行は大阪城にたどり着いた。
確かに、姿は見えなくても…魔神が空間干渉で地面から出てくる気配を感じさせる。
この近辺半径10kmを「不発弾撤去」という目的で封鎖した。
問題なのが、門がこの大阪城の何処かにあるというだけである。
昔は難攻不落といわれた大坂城。実際はこの大阪城は昔の物ではなく、歴史資料からみれば少しずれているという。其れもその筈、大阪の(夏・冬)陣に堀を埋められて行き、戦は徳川家の勝利となる。そのとき天守閣が燃え尽きたからだ。そのあと、残るのは過去の僅かな資料での再建築だが、わざとか元の大坂城の位置をずらした言われている。
大きな巨大石「失敗岩」で集まる草間達。
大阪城の何処かに、「門」があることで緊張を隠せない。
「平凡な日常が一変して…こうなっちゃうのって悲しいよね」
シュラインは「鍵」を見ながら呟いた。
「そうですよね…本当なら、今日近くのドームでコンサートや、更に西にある会館で催し物などあったようですし」
零が相槌をうった。
「今は、その心配より…封印が先だ…もっともはっきり何処か判別出来ないと分からないが」
草間は、タバコを吸って辺りを見渡す。
「神様はどうした?」
ふと気づいた草間。
「あれ?さっきまでいらっしゃいましたが?」
みそのが首を傾げた。
「…あの人は天守閣の屋根にいますよ」
皇騎が指さした。
大阪城のスポットライトで天守閣がはっきり見える。その屋根の上にダージエルは立っていた。
「目立ちたがり屋だな」
溜息をつく草間。別件で会って以来、「アレ」の思考に着いていけない。似たような「者」が、あやかし荘に居るのも…。

ダージエルは…先見能力で未来を見た…この先に何が起こるかを…。
間違いなく…この城の真下に封印されている。ひょっとすると、この城自体が「封印物」と推測できる。
この城が壊れた時に、大きな門が見つかる。魔力の激流で城が壊れるのは…あと1時間後…。自分はたいしたことはないが…空を飛べる者は仲間にいない。彼らをどうやって救うか…悩んだ。
戦っているため、魔力をかなり消費しており、慎重に行動しなければならない。
驚異的な魔力を持つ皇騎は別格として、草間達が心配だ。零もみそのも強力であるが、対応性に欠ける。
考えてみれば…つぶれるのを待つより…今からつぶして再封印することが良いのかも知れない。
魔力を節約するため、携帯電話で皇騎に連絡を入れた。

「もしもし」
「今から、大阪城を壊すが良いか?」
「ええっ?!」
話を聞いた一行はびっくりする。
「私の先見能力が真実を見たのなら…いま全員の命が危ない。城が門の魔力で瓦解した時はすでに遅い」
「……其れは確かに」
皇騎は…重要文化財が眠っている大阪城を壊す気にはれなかった。しかし、「奈落」が壊す以上その運命は変えられないことに苛立ちを覚える。
「ダージエル…本当に壊すの?」
シュラインが皇騎の携帯を借りて訊ねた。返答はYesだった。
草間は…タバコを踏み消し、
「こちらはどうすればいい?か訊いてくれ」
とシュラインに言った。
「10分以内に、大阪城から最低2kmは離れろって…」
「できるか、皇騎?結果的に大阪城が壊れるというなら…やむ得まい」
「やりましょう…」
皇騎は頷く。

素早く大阪城から退避していく以上メンバーたち。携帯の着信音でダージエルはOKサインと判断した。
彼は、手元から「Sword of Dark Heavens」を召還して、自分の神格と魔力を高める。
彼の額の宝石が砕け散った時…大阪城の頂上は大きな光に包まれた。
そして…彼は大阪城を剣で真っ二つにした…。

「急げ!」
テレパシーのように皇騎の脳に直接ダージエルの声が届いた。
走って光っている大阪城に向かう。其れと同時に、高位術者が結界を展開し始めた。
「奈落」からの反応はない。完全に封印が解けたわけではないのだ。少し亀裂が入っているだけ…。しかし、神の結界がその亀裂を埋めているために魔神達は出てこられないようだ。
大阪城は、確かに綺麗に真っ二つになっているが…崩れていない。切れ目が青白く光っている。皇騎はその城の中に入っていこうとすると、後から足音がする。草間達だ。
「危ないですよ…草間さんシュラインさん」
「最後まで封印を見ないと仕事は終わらない」
草間はニヤリと笑った。
「それにちゃんと鍵をかけないとね」
シュラインは例の鍵を見せた。
「殿方の活躍はしっかり見ないことには、おみやげ話も出来ませんわ」
呑気の笑って答えるみその。

皆は中に入る。すると、ロビーに大きな黒い穴があった。周りは、青白いオーラによって、
「これが奈落の門…」
草間が呟く。
「正確には、イメージでしょうね」
みそのが答える。
「鍵があるということは、大きな扉かも知れないわ。たぶん安部晴明はそのときどうしても鍵がなかったから大坂全土を封印対象にしたのかも?」
「可能性はありますね。後で見つかったが、再封印するには無理があったのでしょうね」
皇騎が推測を述べた。
「飛び込みましょう」
勇気を出して、彼らは飛び込んだ。
奈落というのだから、永遠に落ちていくのかという恐怖を感じたが、ダージエルの力はかなり奥まで影響を及ぼしている。ゆっくりと「底」らしき所にたどり着いた。
一種の異空間的なホール。周りにマントラを明文化したような魔法陣が刻まれている。そこかしこに魔法陣が切れており、術が弱くなっていることを物語っている。そして真ん中に大きな鉄の「門」があった。「門」は開けっ放しになっており、そこから、奈落のエネルギーが地面にしみこんでいる。その先は…完全な闇。
「綴り直すのは無理がありますね…」
皇騎は魔法陣を眺めて言った。そして自分の力では封印すら出来ないだろうと思ってしまう。
「ダージエル様とわたくしの「力」を利用して、多重結界を作るのはどうでしょう?
みそのが提案する。神の力が2種類もあれば皇騎の魔力もさほど消費しないだろう。
「ありがとうございます」
そして術に入る。みそのは力を皇騎に託すように祈り続ける。頂上の神は門の闇に封印するための魔法陣形を映し出した。皇騎は奈落の存在が出られないようにする魔法陣と理解する。
術は完了した丁度に…地震が起こった。大阪城自体を奈落の門が壊そうとしているのだ。
「ギリギリ間に合ったのか?」
草間が零とシュラインを庇いながら言った。
「しかし、今のままだと全てが台無しに!」
皇騎はみそのを抱えている。
「門を閉めて、鍵さえ…」
「そうだ!」
シュラインはよろめきながら門に駆け寄り、扉を閉めようとする。幸い結界のおかげで魔物は出てこられない。後に続いて皆が閉めようとする。
「重い!」
ぐらつきと異常な重さの扉。
しかし…
「うんしょっと!」
零が大きな声をだしたとき…扉が閉まった。
零の兵器としての力で成し遂げたものだった。
揺れが収まり…安堵するも…シュラインは真剣に門を睨む。
「これで…終わりね…」
鍵穴を見つけた彼女は、鍵を差し込み…右に回した。

ガチャリ…。

門は完全に閉まった…。気が付くと…彼らは大阪城の1階に立っていた。
一方、ダージエルは屋根の上で疲れ果てている。

危険な外世界の門を封印した。
大阪城は何事もなかったかのように建っている。
河川の色も元通りだ。

大阪の事件はこれにて終わった。

End or To be continued?

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0461 / 宮小路・皇騎 / 男 / 20 / 大学生(財閥御曹司・陰陽師)】
【1388 / 海原・みその / 女 / 13 / 深淵の巫女 】
【1416 / ダージエル・ー / 男 / 999 / 正当神格保持者/天空剣宗家/大魔技】

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■         ライター通信          ■
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滝照です。参加してくださりありがとうございます。
無事に封印出来ました。
残る1話までお付き合いしていただけると私は嬉しいです。

ではまたの機会がありましたらお会いしましょう。

滝照直樹拝