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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


茸姫
●序
「キャサリンを探してください」
 草間興信所に突如訪れた、木野・公平(きの こうへい)はソファに座ると同時に口を開いた。年は35くらいであろうか。
「キャサリン、ですか」
「ええ。可愛いんですよ、キャサリン」
 草間の顔が引きつるのもお構いなしに、木野はうっとりとしながら口を開く。
「優雅に歩きましてね、そしていつも僕を心配そうに見ていたり、時には慰めるように寄り添っていてくれたり……」
(犬か猫か……はたまた、兎か?いや、大穴で爬虫類かも)
 草間の頭には、キャサリン=ペットという図式がしっかりとなされている。
「あのですね。もっと外見の特徴を言って頂かないと」
「そ、そうですね。キャサリンは……赤い頭で」
「赤?!」
「滑らかな白い肌をして」
「肌?!」
「ずんぐりずんぐりと歩きます。興奮すると、たまに炎の胞子を飛ばしますね」
「胞子?!い、一体どういう生き物なんですか?」
 草間が想像出来ずに尋ねると、木野は「あれ?」というような顔をして一枚の写真を取り出す。そこに映っていたのは、赤い傘を被った茸。木野と一緒に映っているその茸は、対比からして大きさは三十センチほどであろうか。
「……何の冗談ですか?」
「冗談なんかじゃありません。キャサリンは、僕の大事な相棒ですよ?」
 木野はそう言って、一枚の名刺を机の上に置いた。
「僕、茸研究をしているんです」
 名刺には、確かに『茸研究所・研究所長』と書いてある。
「ともかく、他の研究者に捕まっていかがわしい実験をされたらと思うと気が気でなくて」
(茸に対して、いかがわしいもクソもないだろうに)
 草間はそう思ったが、あえて口にはしなかった。そして、溜息を一つつく。
「分かりました。で、キャサリンは何処に逃げたんです?」
「僕の研究所の裏にある山、葦岳(あしだけ)山です。宜しくお願いします」
 深々と頭を下げる木野に、草間はただ溜息をつくだけであった。

●君の元に
 草間興信所に、六人の男女が集まった。一同を、木野がぐるりと見回した。
「茸って何だか可愛いわよね」
 にこにこと笑いながら、シュライン・エマ(しゅらいん えま)が言った。黒髪の奥に覗く青い目が柔らかく光る。
「むにっとぽにぽにしてて」
 妙に嬉しそうなのは、気のせいか。
「動く茸とな?……しゅりーかー、ですかな?」
 小さく首を傾げながら、護堂・霜月(ごどう そうげつ)が言った。銀の目が悪戯っぽく光る。
「何だ?それは」
 草間が眉を顰めながら霜月に尋ねる。霜月はにやりと笑って答えた。
「確かいんぐらんど地方にある茸らしいぞ。よくRPGとかに出てくるのじゃよ」
「いえ、キャサリンは遺伝子操作によって生まれた、全く新しい種族の茸ですよ」
 いたって真面目に、木野が答えた。霜月は「そうか」としか答えられなかった。
「では、妖怪か何かか?」
 金髪から覗く黒い目で訝しげに木野を見ながら、真名神・慶悟(まながみ けいご)が言った。口に煙草を一本くわえながら。木野は小さくむっとして反論する。
「キャサリンは僕の大事な相棒です!妖怪だなんて、失敬な」
「昔から植物と人間との怪異など記録にも溢れている」
 ぼそり、と金髪を耳にかきあげながらレイベル・ラブ(れいべる らぶ)が言った。緑の目はじっと木野を見つめている。
「依頼者を診るか……憑かれているのは明白だ」
 微妙な言葉のニュアンスだった。木野自身は「疲れている」と取って手を左右に振る。大丈夫です、と言いながら。
「茸は……食べるもの、若しくは毒を作る時に使うんだよな」
 口元に手を当て、守崎・啓斗(もりさき けいと)が言った。木野が慌てて立ち上がる。
「止めてください!キャサリンを殺すだなんて」
「冗談よねぇ、啓斗君」
 シュラインがそう言って嗜めるが、啓斗の茶髪の奥にある緑の目は至って真面目だった。
「自分で焼き茸になるのなら、便利だよな。夕餉の一品になる」
「キャサリン!」
 慌てて草間興信所から飛び出そうとする木野の上着の裾を、きゅっと持つ存在がいた。黒の澄んだ目に、地に付きそうな程の茶髪。
「女の子の茸なんて、凄いのね」
 にっこりと鈴代・ゆゆ(すずしろ ゆゆ)が言った。思わず木野の動きが止まった。ゆゆの笑顔に、落ち着きが多少は取り戻されたのであろう。
「ねぇ、これだけ懐いてるって言うか仲良さそうだもの。キャサリンちゃんが山に向かったのにはワケがあるんだと思うの」
 シュラインが口を開いた。そして、じっと木野の方を見た。
「最近彼女の前で、何か山にある物で必要な物があるとか口にしたり、……もしかしたら別の茸を褒めるなりしてヤキモチやかせちゃったりとかしたんじゃない?」
 ぐっと木野の言葉が詰まる。
「……だって……」
 その様子を見て、レイベルが小さく溜息をつきながら口を開いた。
「残念ながら植物と人間は生物として違い過ぎ、共に歩むにはどちらかが歩み寄らなければならない。その無理が祟ったのが原因かもしれないな。彼女と、そして研究についても聞かせてくれ」
「僕とキャサリンは……無理なんて……」
 語尾が弱まっていく。レイベルの「無理」という言葉にショックを受け、本題である最後の言葉が耳に入っていないようだ。
「山が彼女の故郷じゃないのか?」
 レイベルが更に言う。ぽん、と啓斗が手を打つ。
「成る程、実家に帰ったのか」
「キャサリーン!」
 啓斗の一言に、木野は半泣きになりながら叫んだ。
「もう、椎茸を大きくする研究などしないから!」
「……は?」
 慶悟の口から、くわえていた煙草がぽろりと落ちる。霜月が思わずぷっと吹き出す。
「椎茸……ほほう、成る程のう」
「つまり、浮気しようとしたのね」
 ゆゆの言葉に、木野は本格的に泣き始めた。
「まぁ……失せ物探しだと思えば、何であろうと関係ない。……火の胞子を吹くというのが気になるが」
 励ますつもりか、慶悟はそう言ってぽんと木野の肩を叩いた。それが拍車になり、更に木野の泣き声が強まった。思わず慶悟は眉間に皺を寄せる。
「状況を整理してもいいだろうか」
 泣いている木野をほぼ無視するように、レイベルが言った。皆もそれに倣い、木野を放っておいてレイベルに向かって頷く。レイベルはそれを確認し、口を開く。
「まず、キャサリンは木野が遺伝子操作によって作り出した、全く新しい茸である。そして、キャサリンの逃走の原因は木野が椎茸に浮気をしたからである……」
「しかも、椎茸まで大きくしようとしたのよねぇ」
 苦笑しながらシュラインが付け加えた。木野はやっと落ち着き、大きな溜息をつく。
「キャサリンが帰ってくるのなら、もう椎茸を大きくしようだなんてしませんよ」
「しないのか?」
 諦めた口調の木野に、啓斗が尋ねる。
「した方がいいと思います?」
「ああ。食べがいがありそうだ」
 青くなる木野、至極真面目な啓斗。
「ともかく。事情も分かったし、後は探すだけだよね。準備してから、各自で葦岳山に行くっていうのでいいかな?」
 ゆゆの言葉に、皆が頷く。
「キャサリンを無事な姿で見つけてくださいね」
 赤い目のまま、不安そうに木野は言うのだった。

●望まれた再会
「ねぇ、木野さん」
 シュラインは目の前に座っている木野に声をかける。
「このレコーダーにキャサリンちゃんに謝罪の言葉を入れて欲しいんですけど」
「謝罪……ええ、分かりました」
 木野は暫く考え、ごほんと咳払いをしてからレコーダーに向き直った。カチ、とレコーダーのスイッチを入れると、木野は再び涙目になりながら口を開く。
「キャサリン……僕はキャサリンだけだよ。もう椎茸に浮気なんて、し、しないから……」
 涙声は次第に本当に涙へと変わり、レコーダーにしっかり鼻を啜る音まで録音されてしまった。シュラインは苦笑する。
「じゃあ、行きましょうか」
 木野を促し、草間興信所を出る。木野はまだ涙目だ。
「ねぇ、木野さん。キャサリンちゃんのお気に入りの木とか、同種の茸が生えている場所とかないかしら?」
 歩きながら、シュラインは木野に尋ねた。木野は「うーん」と考え込みながら記憶を辿る。
「キャサリンは……葦岳山の小川が好きでしたね。そこに生えている紅葉の木がいたくお気に入りで……」
「小川のほとりに生えている、紅葉の木ね」
「ええ。秋になると、赤く染まった紅葉の葉とキャサリンがよく映えて……」
 木野はその時の様子を思い出したのか、うっとりと物思いにふけた。
(あらあら。まるで恋人同志ね)
 シュラインは小さく微笑んだ。正しくは、苦笑したと言うべきか。物思いにふけていた木野が再び涙目になり始めるのだった。

 葦岳山は、登山者の姿も無く静まり返っていた。
「僕は一度研究所に戻ってから、葦岳山に行きますので」
 妙に慌しく木野は言った。自分も探しに行きたい気持ちが多々あるのであろう。シュラインは「分かったわ」と苦笑しながら答え、葦岳山に足を踏み入れる。
「ええと、小川に生えてる紅葉の木は……」
 きょろきょろと辺りを見回すと、近くに小川が流れているのを見つける。
「これを辿れば、いつか紅葉に辿り着くわね」
 さらさらと流れている小川を見て、シュラインは微笑んだ。手にはレコーダー。
「……これを使う羽目にならないといいんだけど」
 シュラインはそう言いながら鞄に入っているものの存在を確認する。携帯消火器。ここに来る途中に購入したものだ。
「あら」
 一瞬、視界の端に何かが動いた。紅白の色をしていたような気がする。
(キャサリンちゃん?)
 シュラインはレコーダーのスイッチを押す。途端、木野の情けない声が辺りに響いた。
(いつ聞いても、情けない言葉ねぇ)
 苦笑しながら、じっと様子を窺う。すると、近くにあった木の向こうから赤い頭がひょっこりと出てきた。
「キャサリンちゃん?木野さんは聞いてのとおりだから……」
 そっと近付くとそれは、キャサリンとはちょっと違っていた。確かに赤い頭をしており、白い胴体をしてはいた。だが、それは何処かで見たことがあるものではあった。
「真名神君の……式神?」
 赤い笠に、白い導師衣。蹲るその姿は、まるでキャサリンそのものだ。
「仲間のふりをして、キャサリンの警戒心を解こうとしているのかしら?」
 そう言いながら、シュラインは式神に近付く。キャサリンそっくりの姿は、妙に笑いを誘う。
「キャサリンちゃんを見つけたら、教えてね」
 シュラインは慶悟への伝言のように式神に言い、再び小川のほとりを歩き始めた。
「あら」
 暫く歩いていくと、目の前に何かの木がちらりと見えた。目を凝らすと、それはどうも紅葉の木のようだった。
「あれかしら?」
 季節ではない為、赤く染まってはいないものの、間違いなく紅葉の木であった。小川のほとりにあると言う、木野の言っていた紅葉の木で間違いは無いだろう。
「ともかく行ってみましょうか」
 そう呟くと、慶悟の式神もシュラインの後をついてきていた。シュラインが何かしら考えて動いている事に便乗し、一応の確認をする為であろう。
「木野さんが、キャサリンちゃんのお気に入りの場所が小川のほとりにある紅葉の木だって教えてくれたのよ」
 式神に向かってシュラインは言う。
『紅葉の木?』
 式神から答えが返ってきた。式神を通じて慶悟が話しているのだ。
「ええ」
『それならば……近くにいるが』
 慶悟の言葉にシュラインは辺りを見回す。すると紅葉の木のある対岸に、慶悟の姿があった。式神が慶悟の元に近寄る。
「合流したわね」
 シュラインが微笑む。慶悟は口にしていた煙草を携帯灰皿に押し付けながら頷いた。
「真名神さん、シュラインさん」
 にっこりと笑いながら、誰かが近付いてきた。指をさしながらまずゆゆが、次に啓斗がやってきた。
「見つかったか?」
 啓斗の問いに、二人は首を振る。
「近くにはいると思うんだけど」
 ゆゆが呟くように言う。紅葉の木にそっと手をあて、「知らない?」と尋ねている。
「ぬ、合流したのう」
 次に来たのは霜月とレイベルだった。皆がこの紅葉の木に集結したのだ。
「皆、この近くにキャサリンちゃんがいるみたい」
 紅葉の木に聞いていたゆゆが皆に告げた。皆がきょろきょろと辺りを見回す。慶悟は式神を集め、界隈を探させる。
「……あれじゃないのか?」
 レイベルが指を差す。そこには確かに写真で見た通りの茸が、恥ずかしそうに木の陰からこちらを見ていた。
「刺激しちゃ駄目よね」
 シュラインが言うと、皆が取り敢えずの対処に戸惑う。そんな中、啓斗だけが一歩前に進み、口を開く。
「きゃさりん、か?」
 もじもじ、と茸が近付いて来た。ゆゆが微笑む。
「あのね、あたしはゆゆって言うの。こんにちは」
 もじもじ、と茸は恥ずかしそうにお辞儀をした。シュラインがにっこりと笑う。
「可愛い……」
「キャサリンちゃん、どうして出ていったりしたの?」
 ゆゆが尋ねた途端、キャサリンはブルブルと小刻みに震え、火の胞子を放つ。思い出して興奮したのであろう。慶悟は式神に命じ、持たせていた禁呪の符を放たせてキャサリンの動きを封じた。それでもキャサリンはもがいて、禁呪を抜け出そうとし、同時に火の胞子を更に放つ。
「火の胞子は任されよ!奥義!澄伝寺(ちょうでんじ)竜巻!」
 火の胞子は霜月が錫杖を回転させる事によって弾かれる。弾かれ、草に燃え移ったものはシュラインが持ってきた携帯消火器とレイベルの足で踏みつける行為によって、難を逃れた。ゆゆは幻覚視聴を発動させ、キャサリンに花園の幻を見せる。キャサリンの動きが、やっと止まった。啓斗はそれを見計らい、キャサリンを抱き上げ、川につけた。水浸しになってしまったものの、キャサリンはやっと落ち着いた。
「……やっぱり、椎茸に浮気したのが気に入らなかったんだ」
 キャサリンの言葉を、ゆゆは皆に伝える。
「でね、女を磨こうと思ったんだって」
「キャサリンちゃん……聞いて」
 シュラインは手にしていたレコーダーを再生する。
『キャサリン……僕はキャサリンだけだよ。もう椎茸に浮気なんて、し、しないから……』
 木野の声だった。キャサリンの心が揺れる。
「この通り、木野さんは反省してるわ」
「……でも、なんて言わないで。大丈夫、誰も怒ったりしてないから」
 ゆゆがキャサリンを励ます。まだもじもじするキャサリン。
「……キャサリーン!僕が、僕が悪かったぁ!」
 キャサリンがびくりとする。突如情けない声で叫んだのは、他でもない木野であったからだ。木野は涙目で更に叫ぶ。
「椎茸なんてもう大きくしようと思わないから!」
「しないのか……」
 小さく残念そうに、啓斗が呟いた。
「お前だけだから!」
「恋人の発言のようじゃのう」
 妙に感心し、霜月が呟いた。
「こんな出来心は……多分……恐らく……しないから!」
「またするな、これは」
 冷静にレイベルが分析する。
「だから戻ってきてくれ!」
「逃げられた女房に向かって言う言葉みたい」
 苦笑しながら、ゆゆが言った。
「キャサリン!」
 今一度、木野が叫んだ。その瞬間、キャサリンは凄い勢いで木野に抱きついた。かなりの高さを飛び上がり。
「……茸とは、このように飛ぶものだったのか」
 慶悟が呆気にとられて呟く。そんな言葉も耳に入らないかのように、ひっしと木野とキャサリンは抱き合っている。
「なんだか羨ましいな」
 柔らかそうなキャサリンの体を見て、ぼそりとシュラインが呟くのだった。

●困らせ隊
「皆さん、有難うございました」
 キャサリンを抱き上げたまま、研究所前で木野は深々と頭を下げた。
「もう浮気なんてしないようにね」
 シュラインが言う。木野はそれに対してただ笑みを返すだけだ。これはまた何かやらかすな、と皆が感じ取る。
「キャサリンちゃん、良かったら次は遊ぼうね」
 ゆゆがにっこりと笑う。キャサリンはもじもじと頷く。
「それで、仲間には見えましたかな?」
 自らの格好を見返し、キャサリンに問う。ゆゆがキャサリンの言葉を代弁する。
「何だか、お父さんみたいだったって言ってますよ」
「うむ……お兄さん、の方がいいのう」
 何となく不満そうな霜月。
「……な、何ですか?」
 木野が小さく困惑しながら言った。啓斗がじっと残念そうにキャサリンを見ていたのだ。
「いや……不手際が無くて、何よりだと」
「……まだキャサリンを狙っていたんですか?」
「別に」
 木野は恐怖を覚えたのか、一旦研究所に入り、袋一杯の椎茸を6人に配る。
「これ、あげますから」
「いいのか?」
「ええ」
 啓斗が袋一杯の椎茸を見て微笑む。
「……思わぬ収穫だ」
 レイベルも小さく微笑む。多額の借金があるというレイベルは、金以外の報酬も大歓迎なのだとか。
「もう二度と、その茸を逃がすな」
 慶悟が煙草を口にくわえながら言う。目の前で見せられた茸と人間のドラマに、疲れを覚えてしまったようだ。
「大丈夫です!……もう椎茸ではしませんから。……シメジとかで」
 ぼそり、と木野が何かを呟いた。その瞬間、皆の動きが止まった。幸い、キャサリンには聞こえなかったようだ。ほっと、安心する。
「懲りるということを、知らないのねぇ」
 苦笑しながらシュラインが呟いた。その時、レイベルが突如ぽん、と手を打つ。
「私はな、今回は辛い別れになるかちょっと嫌な喜ばしい結果になるだろうと思っていたんだが」
「見事的中、という訳じゃのう。勿論、後者の」
 こっくりとレイベルは頷いた。そして今一度、一同は木野とキャサリンを見る。妙に絵になる二人だ。
「次はシメジ騒動かな」
 ぼそり、とゆゆが呟いた。皆そうなるだろうと思っていたものの、あえて同意は示さなかった。同意するのが、怖いような気がしたというか。
「シメジも美味いよな」
 ただ一人、啓斗だけがシメジと聞いて別の事を考えているようであった。
「皆さーん、有難うございましたー!」
 帰ろうとする六人の背中に、木野の声が投げかけられた。キャサリンも、もぞもぞとお辞儀をしている。
(可愛かったなぁ、キャサリンちゃん)
 シュラインは、もぞもぞと動くキャサリンの動きを思い返し、小さく微笑むのだった。

<依頼完了・椎茸付き>

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト 】
【 0389 / 真名神・慶悟 / 男 / 20 / 陰陽師 】
【 0428 / 鈴代・ゆゆ / 女 / 10 / 鈴蘭の精 】
【 0554 / 守崎・啓斗 / 男 / 17 /高校生 】
【 0606 / レイベル・ラブ / 女 / 395 / ストリートドクター 】
【 1069 / 護堂・霜月 / 男 / 999 / 真言宗僧侶 】

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■         ライター通信          ■
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 お待たせしました、コニチハ。霜月玲守です。この度は「茸姫」にご参加いただき、本当に有難うございます。如何だったでしょうか?
 シュライン・エマさん、いつも有難うございます。今回は「茸が可愛い」と仰っていただけたので、それを中心にしてみました。いかがだったでしょうか?
 茸、可愛らしい形と柔らかな肌触りですよね。個人的に食べ物としての茸はそこまで好きではないのですが。いたらきっとこんな感じだろうなぁと思いながら書きました。可愛く書けていれば幸いです。
 さて、今回も個別の文となっております。他の方のお話と見比べていただくと、より一層深く読み込めると思います。
 ご意見、ご感想等心よりお待ちしております。それでは、またお会いできるその時迄。