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<東京怪談・PCゲームノベル>


零の誕生パーティ

1.電話連絡:シュライン・エマ
草間はまず、シュライン・エマに電話をかけた。
「え?てっきり中の鳥島から引き取った時と思ったわ(汗)」
予想通りの返答だった。
「その日はかなり曖昧だったし、零も可哀想な気もする。だからこの日にしたんだが」
「それでも、かならず、私遅れちゃうわー(むー」
向こうで拗ねているようだ。
「でも、必ず行くからね!」
「ああ、わかった」
電話を切り、草間は溜息をついた。
彼は肝心なところが抜けていると自己嫌悪してるのだろう。
彼女が間に合うために、また電話を取った。

2.シュライン・エマ
宿泊先で、紙型と生地を見てにらめっこするシュライン。
「間に合わないわ…どうしよう」
後数日では、零に贈るエプロンが出来ない。ケーキも作ることも出来ないのも困ったことだ。
なんとか家でつかうおそろいのカップは手に入れていた。問題なのは、心のこもったプレゼントを贈りたいという事だ。
悩んでいると、携帯にメールが入った。
「誰かしら?」
メールを見ると…いつぞやの剣客からだった。
【外で待っている】
どうして彼が居るのか検討がつかない。
指定された場所に着いたシュラインは、木にもたれている和装の銀髪の男を見つけた。
「エルハンドさん、どうしてここに?」
「草間から頼まれてな」
「武彦さんから?どうして?」
「シュラインに妹の祝い事に遅れないようにサポートするっていうことで来たのだ…」
「そう…」
たしかに、時間をコントロール出来るエルハンドなら容易いことだろう。しかし其れではプレゼントは意味をなさない。彼もそのことは知っているはずだ。
「気持ちはありがたいけど…」
「そういうと思った」
静かに剣客は言った。
「何、君は仕事をしっかりこなして、当日の1時間前にはあやかし荘に着くようにするだけだ」
「それならいいわ」
「よし、決まりだ」
剣客は、足音も立てずその場を去った。シュラインも踵を返し軽い足取りで立ち去った。

数日後、シュラインは一仕事を終えた時、剣客が指定した林を目指して駆けていった。時間がない。
一寸したトラブルがあったため、このままでは遅刻どころか参加できないのではと不安になる。
林の中で目立つ銀髪の男。夕焼けの朱に染まった彼の姿は儚くも美しいと感じるだろう。
しかし其れは其れ、これはこれ。シュラインに心の余裕がないので残念という方向で…。
「ん?来たか、ギリギリだぞ」
「ごめんなさい」
息を切らして、立ち止まるシュライン。
剣客は責めることもなく、彼女が落ち着くのを待った。そんなに急ぐ必要は無い。彼女が大事な零の誕生日に参加できれば其れで良いのだから。
「ここからどうやって、あやかし荘にいくの?」
「単純に瞬間転移するだけだよ」
エルハンドの返答に、なるほどとシュラインは納得した。そうでなければ、エルハンドが此処にいるはずがない。彼は優れた魔技だから、テレポートなんて簡単すぎる。
「では、行きますか」
「ええ、空間酔いが無ければいいけどね」
シュラインの返答に、苦笑する剣客。
彼は彼女に許しを得て、シュラインの手を取ったのち、二人ともその場から瞬く間に姿を消した。

3.零の誕生パーティ準備
草間は零に何も告げず、あやかし荘に来いと言ってから、先に出かけてしまった。
零は何のことか分からないので、兄に従う。
この数日、何事もないように零に隠していたのは、サプライズパーティにしようと思ったからだ。
零の驚く顔を見たいという気持ちがあったのだろう。
先に着いた草間と、丁度エルハンドがシュラインを連れて戻ってきたところでばったり出会った。
「お疲れ様エルハンド、お帰りシュライン」
「何とか間に合ったな、草間」
「武彦さん、無計画すぎるわよ」
「わるいわるい」
シュラインの声を聞いた時に、謝るも安堵感があった。
「今、あやかし荘では準備の修羅場と思う、済まないが料理の方手伝ってくれないか?」
「ええ良いわよ」
草間の頼みを快く引き受け、軽い足取りであやかし荘に向かうシュライン。
「俺たちも飾り付けをするか」
草間は腕まくりしてあやかし荘に入っていった。

シュラインが台所に来た時には、焔寿とみなも、恵美が料理をしていた。
「こんにちは」
「「こんにちは」」
笑顔で挨拶する。
「シュラインさんが来てくれると大助かり!それに何より零さんが喜びますね!」
みなもは嬉しそうに言った。焔寿も頷く。
「ありがとう」
そうまで言われると照れるなぁとシュラインは思った。
「さて、急いで戻ってきたけど手伝い出来ること無いかしら?」
彼女は零の心に残るパーティにしようと張り切って料理をし始めた。

数時間後全ての準備は整った。



4.主賓登場
零は、あやかし荘に着いた。
しかし様子が違う。全て明かりがついていない。
「どうしたのだろう?」
不安があった。
兄が何気なく来いと言うことだけしか言わなかった。何があるのと問うとはぐらかされた。
いつものことだからあまり気にもしていなかったが、これは違う。
静まりかえったこの場所はとんでもない事になっているのではと考えてしまう。

恐る恐る玄関のドアを開けた。
「こんにち…」
すると、いきなり明かりがついて、クラッカーの音や「ハッピバースデー!」と大声で祝いの言葉の嵐が耳に届いた。
クラッカーの紙まみれになった零は呆然とする。
目の前には、草間や遠出をしていないはずのシュライン、みなもと焔寿達が待っていたのだ。
「これは?」
「零ちゃんの誕生日会よ」
「え?私」
「そうよ」
まだ状況を理解していない零にシュラインが優しく説明した。
みなもと焔寿、そして柚葉は、彼女の手をひっぱってこっちこっちと食堂に連れて行く。
と、食堂は豪勢な料理と、綺麗な飾り付けで誕生パーティという事が彼女にも分かった。
「皆さんありがとう」
零は驚きながらも、とても嬉しそうな笑顔で答えた。

時音と歌姫の歌をBGMにしてワイワイと盛り上がる。
焔寿の猫チャームとアルシュ、草間の赤猫は行儀良く椅子に座っていた。かなり賢いようだ。
草間はみなもが居ないと気づく。まぁ手伝いに専念するらしいから今厨房にあるのだろうと思っていた。
零と一緒に食事をして話をしていると、喉が渇いた。
「ウィスキーあるかな?」
テーブルを探したが無い。
「ここりあります」
みなもの声がした
「ああすまない…ってなんだ!その格好!?」
思わず、手にしたグラスを落としそうになった。
バニーガール姿のみなも。流石に不意打ちである。
「何故そんな格好…?」
「姉さんが、この服が良いって言うから…う〜ん」
3人して悩む。彼女は、この格好をしているのは、とても恥ずかしそうだから、兄妹はそれ以上聞かないことにした。
中盤、みなもが十八番の水芸で皆を驚かせる。極めは、リクエストした飲み物を「それ」で淹れるというものだ。焔寿の友達チャーム率いる猫たちは、時音の伴奏にあわせにゃーにゃーと歌う。なかなか可愛い。
プレゼントを贈る時間帯になった。
みなもは、海から採ってきた自然の宝石をビーズで結んだネックレス。形はいびつだが、心はこもっているのが分かる。時音は、くまのぬいぐるみ、焔寿は鍵のかけられるアンティークの小物入れ、シュラインは珈琲カップだった。他にも様々なプレゼントを貰う。
兄、草間のプレゼントは小さな箱だった。指輪ケースみたいだった。
「別に兄妹が指輪を贈るって言うのも悪くないかな…と思ってな…」
照れながら答える草間。まぁ思いついたのが指輪だったのは仕方有るまい。
「大切にするよ、兄さん。ありがとう」
にっこりと微笑む妹だった。

最後に零が、お礼の挨拶をして幕を閉じた。

誕生パーティがおわったあと、皆で片づけをして、おのおのが家路につく。
零はとても嬉しそうに軽い足取りで兄と帰っていった。
「また1年後が楽しみ」
零の言葉は幸せの気持ちが一杯だった。

End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0759 / 海塚・要 / 男 / 999 / 魔王】
【1109 / 水瀬・夏紀 / 男 / 17 /若き退魔剣使い】
【1219 / 風野・時音 / 男 / 17 / 時空跳躍者】
【1252 / 海原・みなも/ 女 / 13 / 中学生】
【1305 / 白里・焔寿 / 女 / 17 /天翼の巫女】

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■         ライター通信          ■
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こんばんは
滝照直樹です。
『零の誕生パーティ』に参加してくださりありがとうございます。

また機会が有れば宜しくお願いします。

滝照直樹拝