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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


neighboring Assassin

*オープニング*

 「最近、暗殺者が増えてなぁ」
 実に物騒な話を、武彦の旧知の刑事はのんびり煙草のフィルターを噛みながら言った。
 「まぁ暗殺者と言っても自称、なんだがな。素性は、高校生から主婦、OLに自営業者、フリーター、ミュージシャン、実に様々…と言うよりは節操が無い。どうしてそんな奴らが暗殺者だと分かったのかと言うと、ある日突然、人に襲い掛かって来るんで、驚いた周りに居た奴らに取り押さえられるだろ。そうすると、自分は暗殺者だと名乗るんだそうだ」
 「…大体、観衆の目前で人に襲い掛かるって辺りが既に暗殺者じゃないだろう」
 そう武彦が突っ込むと、刑事はその通りだと大きく頷いた。
 「その通りだし、第一、検挙された自称暗殺者は今の段階では全て、極々普通の、俗に言う善良な市民って奴だ。暗殺術どころか、武術の心得も殆どない。あっても、学生時代にちょっと齧った、程度の話だ。自分が暗殺者だって言うのも自己申告だし、それさえも騒動を起こした直後の話だ。暫くして興奮が収まれば、元の善良な市民に簡単に戻ってしまう」
 「…戻る?それじゃ騒動を起こしている間の記憶とかが無くなっているのか?」
 「無くなる奴も居るし、朧げながら覚えている奴も居る、…ああ、一人、鮮明に記憶していた男が居たな。ただ、その最中は『自分が自分でないような気がしていた』らしい。…まぁ、よくある話だが」
 「…で?」
 このまま、最近起こった事件に付いて雑談をしに来た訳じゃないだろう。そう言いたげな目で武彦が刑事を睨むと、彼は当たり前のような顔をして武彦の肩をぽんとひとつ叩いた。
 「…調べてくれ」
 「何をだ」
 「決まっているだろう、この騒動の裏側をだ。話がこんな眉唾物なだけに、マスコミへの公表は今のところ控えている。だが、街では既に噂がちらほら出ているようだ、『どこそこへ行くと洗脳されて暗殺者にされる』とか『なにそれを買ってどうにかすると暗殺者になれる』とか、その程度の噂だがな。まぁ、そんな噂はどうでもいいんだ。怖いのは、今のところは襲いかかったと言ってもなにしろ元は素人、しかも目撃者の話ではどこか夢見心地な、トランス状態のような雰囲気なので動きもぎこちなく、だから被害者は難なく攻撃を避ける事ができて誰も怪我を負っていない。だが、今後、自称暗殺者の中にもし武術の経験者等が現れたら、無傷では済まないかも知れない、最悪、死者が出る。そうなる前に、これ以上自称暗殺者が増えるのを止めなければ」
 「その、自称暗殺者や、或いはそいつらが襲った被害者に共通点は? 襲うったって方法は色々だろう。それにも共通点とかはないのか?」
 「ない。今のところは。だが、きっと何かある筈だ、それを推理するのが探偵の仕事であり、特技なんだろう?期待してるんだよ、お前の探偵としての能力に」
 嘘付け。ただ面倒事を押し付けに来ただけだろう。
 即座にそう答えたかったが、多少はプライドもあるので、武彦は肯定も否定もしなかった。ただ、分かったと言うように頷いただけであった。

*調査1*

 草間興信所の応接室で、海原・みなもと雪ノ下・正風が向かい合ってソファに腰を下ろしていた。間に挟んだローテーブルの上には乱雑にA4サイズの用紙が散らばっている。二人はそれを幾つか手に取っては見比べたり見直したり、または違う用紙を手に取ってみたりと暫くは無言のまま黙々と作業を進めていた。が、さすがに疲れたのか、紙の擦れ合う音だけが響く空間が重苦しくなったのか、手にしていた用紙を全部ローテーブルに戻すと、みなもがソファの背凭れに凭れて、うーん!とひとつ大きく背伸びをした。
 「疲れたか?」
 そんな様子のみなも視線を向け、目元で笑いながら正風が言う。みなもは、少しだけ苦笑いをして緩く首を左右に振った。
 「ううん。ちょっと目が疲れちゃっただけ。…それにしても、やっぱり一見すると共通点なんて見つからないですね…」
 「ああ、まぁその辺は警察も一通りは調べたうえでの話だからな。しょうがないのかもしれない。普通に見てたら見られない物を捜すのが、俺達の今回の仕事だからな」
 「そうですね、警察の人が見ても分からないものも、素人のあたし達が見たら気付く事もありますものね」
 「それ以前に、警察がぼんくらかもしれない、って可能性もあるがな?」
 そう言うと悪戯っけな目をして正風が笑う。釣られてみなもも、くすっと小さく肩を竦めて笑った。
 「ところで、雪ノ下さんはどう考えます?あたしは、共通点は無いように見えてやっぱりあると思うんです。何かある筈なんです。一見して共通項がないと言う事は、その人個人の年齢とか職業とか立場とか…そう言った、目に見える物ではないような気がするんです」
 「ああ、それは俺も同意だな。職業も年齢もばらばらな人間が集うと言うと、一番手っ取り早いのは宗教絡みだと思うんだが、それももう関連はないと警察の方で調べが付いている。そう言うんじゃなくって、もっと、…そう普通の人では分からないような共通点、…そう言うもんじゃないかなって思うんだが」
 「普通の人では分からない?」
 そう聞いただけでは思い浮かばなかったのか、みなもが小首を傾げて尋ね返す。ひとつ浅く頷いて、正風が言葉を続けた。
 「例えば…そう、前世。とか。前世で彼等は皆、ある組織に属する暗殺者だった…とかね。自称暗殺者達は、何らかの暗示か洗脳を受けていると見るのが妥当だと思うのだが、そのきっかけとなるものが前世の記憶であるとすれば、話の辻褄は合う」
 「そうですね…私はそれに加えて、遺伝子的な要因も可能性に含まれると思うんです。或いはもっと単純に、暗示や催眠に掛かり易い質の人。いろんな人が集まるような場所…例えば駅とかデパートとか。そう言う場所で、そう言うある特定の何かを持った人だけに影響を与えるような操作がしてあったとすれば、……幾らでも自称暗殺者が作り出せますものね」
 その考えは、薄ら寒いものをみなもに感じさせたのか、僅かに身を震わせて彼女は表情を引き締めた。それを見て正風も、真摯な表情で頷いた。
 「この騒動を裏で操る張本人が何を目的としているのか…ただお遊びで役にも立たない暗殺者を増やしているだけなのか、それともそいつ自身、過去の暗殺集団の首領で、昔の仲間をまた集めようとしているのか。集めてどうするつもりなのかも分からないが、物騒な事には変わりないな。例え素人で何の武術の心得も無い奴らだと言っても、もしもその手に何か得物を持っていたりしたら、みなもちゃんのようなカワイイオンナノコでも人を殺せてしまうからな」
 「…怖いこと言わないで下さいよ……」
 細い声でみなもが抗議するのを、正風がゴメンと笑顔で謝って宥めた。
 「いずれにしても、この自称暗殺者さん達の、過去の足取りを追ってみた方がよくないですか?」
 「そうだな。どうも騒動を起こした場所と暗示なり洗脳なりを受けた場所が同一で同時であるとは考え難い。どこかでそれ以前に影響を受けていたと考えるのが妥当だな」
 「…でも本当は、こう言うのは警察の方の仕事ですよねぇ……」
 どこかぼやくように呟くみなもに、正風は喉で笑った。

*調査2*

 二人は手分けをして(勿論、警察の手も借りて)自称暗殺者・現段階の総勢十一人の騒動を起こした日から過去に遡った足取りを調べてみた。立ち寄った場所と時間帯、その経路、言葉を交わした人、目にしたものや耳に聞こえたもの。人数が人数だけになかなか困難を極めたが、それでも徐々に集まる情報を元に、正風とみなもは実際にその場所へと赴いてみる事にした。
 「こう言う事って、直感に頼った方がいい時もありますからね。特にこんな、得体の知れない事柄に関しては」
 「ある意味で人間の本能だからな、直感ってのは。ヘタな知識で頭でっかちになり、肝心なものが見えなくなるよりゃ、真っ新な状態で臨んだ方がいい。…さて、どこから回ってみるかね」
 正風が一枚の地図を広げる。何色かに分けて地図上のポイントからポイントへと矢印が引いてある。ピックアップした自称暗殺者の、数週間にわたる足取りを大雑把に記したものだ。さすがに全員分を巡るのは消耗するだけなので、行動範囲の狭い何人かの足取りだけを取り敢えず追ってみようと思ったのだ。正風が手にした地図を脇からみなもが覗き込む。
 「どうだろう、ここ…この駅とその周辺、取り敢えず此処に行ってみないか?」
 「いいですね。この駅からなら何ヶ所かは歩いて回れますし」
 「よし」
 頷き、地図を一旦しまうと二人は歩き出す。程近い繁華街の駅に辿り着くと、時間が中途半端な所為か、然程人影は見られない。二人は、駅の改札に立って辺りを見渡してみた。
 「…なにも目立ったものはないようですね」
 「だな。じゃあ次に行ってみるか」
 「ええ。次はここ…ここから一番近い、この公園に行ってみましょう。公園も、不特定多数の人が集まる場所ですから、何かの仕掛けがしてあってもおかしくはありません」
 だがその公園内でも、目立った何かは見られなかった。試しに二人は植え込みの中や遊具の裏側、近隣の建物なども調べてみたが、何も見つかる事はなかった。
 「……あたし達の考え違いだったのかしら…?」
 少し疲れたような顔をしてみなもが呟く。手にしたポラロイドカメラで参考にと周囲の写真を撮っている。ふと気が付くと、正風が立ち止まって足元をじっと見詰めていた。
 「…雪ノ下さん?」
 「みなもちゃん、これの写真を撮っといてくれないかな」
 「これ……ですか?」
 みなもが同じように視線を正風の足元へと落とすと、そこには下水道のマンホールがあった。
 「これな、この模様…ちょっと変わってるだろ?」
 「…余り意識して見た事はないですけど……言われてみれば、変わった模様ですよね」
 「…なんか感じるんだよ。ついでに俺は、この模様見た事ある気がするんだ」
 正風の言葉に、え?と言う表情でみなもが男を見詰め返した。正風は顔を上げ、自分を見詰める少女ににこりと笑い掛けた。
 「なぁ、次の場所に行ってみないか?もしかしたら、同じものがあるかも知れない」

*繋がる何か*

 そうして調査を終えた皆が、最初の事件が起こったと言う繁華街の裏路地へと集まった。なにやら疲れた顔をした武彦が皆に労をねぎらう。
 「司録さんとエマは事件の起こった箇所を、みなもちゃんと雪ノ下さんはそれ以前の自称暗殺者の足取りを追って貰ったんだったな。どうだった?」
 「駄目ね、これと言った特徴や共通点は無かったわね。何処からでも見える建物とか、或いは同じ植物があるとか考えたんだけど…」
 「騒動の起こった時間は考慮してませんが、今日訪れた場所が、朝と夜とでは何かが全然違ってしまう、と言う事も考えられませんでしたしね。近くに常にそこにいる人物とかいたのなら、少々記憶を…ではなく、お話を伺いたかったのですが」
 「それでも、二人が言うように、己は暗殺者だと擦り込まれた場所と実行した場所が別であるのなら、何かきっかけとなる物があったことは間違い無さそうだな」
 では、擦り込まれたきっかけとはなんだろう。話の中心がエマと司録から、正風とみなもへと移った。
 「今確認されている例の全員分の足取りを辿るだけの時間はなかったのですが、幾人かのは追ってみたんです。実行現場と同じように、場所そのものには共通項は無かったように思えました」
 「ああ、自称暗殺者達のプロフィールがあれだけバラバラである事から、俺達は不特定多数の人間が出入りする場所が、洗脳された現場だとは考えたのだが、だとするともっとたくさんの人間が暗殺者になっていないと可笑しいだろ。だから、場所はそこでも、洗脳する相手をもう少し限定する何か…条件みたいなものがあるんじゃないかと思ったんだ」
 「条件?でもそれは、目に見えない事なんだよね。一見した所で共通項はないって事だから」
 武彦と行動を共にしていた想司がそう尋ねる。こちらは武彦とは逆に元気一杯の様子だ。
 「そうなんです。私達が考えたのは、目に見えない特徴…暗示や催眠に掛かり易かったり、或いはもっと分かり難い遺伝子的なもの、または特定の能力を持った人物にしか分からない、前世等が共通しているのではないか、と」
 「でも、それじゃあすぐには分からないわねぇ…遺伝子や暗示に掛かり易い云々は調べればいずれかは分かるけど、前世云々は今ここにいるメンバーの能力じゃ無理ね」
 「まぁ前世がどうのってのはあくまで仮説なんだが…それよりも気になったものがあってね。ちょっと見て貰えないかな」
 そう言って正風が傍らから取り出したのは数枚の写真だ。さっきの個別調査でみなもと共に撮ったものだ。そこには道路のマンホールが幾つか映っている。
 「これがどうかしたの?」
 皆と共に写真を覗き込んだ想司が、顔を上げて正風に問う。ひとつ小さく頷いて、正風が話し始めた。
 「これはさっきのみなもちゃんとの調査で、俺達が回った先々にあった下水道のマンホールなんだが、ふと気付いてね。この模様を見て貰えるか」
 正風が指差す先にあるのは、一見何の変哲もないマンホールの蓋だ。形は当然円形、色も良くある、黒に近いような濃い焦げ茶色である。ただ、その模様は少し変わっているかも知れない。何を図案化しているのか分からない、ただ何かの渦巻模様のような柄が浮き彫りにされているのだ。
 「この模様…?何か奇妙な感じがするわ」
 エマが眉を顰めてそう呟く。寒気でも催したかのように、自分で自分の身体を抱き締める。その傍らで、写真をじーっと見詰めていた想司が、何でもない事のように言った。
 「これって、魔法陣じゃないかな。ギルドで見た事があるような気がする」
 「魔法陣?」
 司録が言葉を繰り返すと、写真を持ったまま正風が頷いた。
 「俺もそうだと思う。俺は専門じゃないが、母親の関係で確か古い書物で見た事あるような気がするんだ。この魔法陣が何のための物かまでは覚えてないが、自称暗殺者達の行動範囲内にこれと同じものが幾つかあったんだ。だから気になってね」
 その言葉を聞きながら、エマは何やら考え込んでいる。はっと目を軽く見開き、正風から奪うようにして写真を受け取ると、食い入るようにその紋様を見詰め、言った。
 「…そう言えば…さっきも見たわ、これ!自称暗殺者達が被害者を襲った現場に、確か!」
 「…そう言われてみればそんな気もしますね。と言うか、エマさんの記憶の欠け片…こっそり覗かせて頂きましたが、確かに全ての現場にありましたよ」
 「嫌ね、変な所まで覗かないでよ?」
 笑ってエマが肩を竦めるのを見て、司録は大丈夫と言うように、恭しいような礼をして口元で笑った。
 「では、このマンホールに描かれた魔法陣が、洗脳だが暗示だかの要素になっているのは確実ですね」
 みなもがそう言うと皆が同意して頷いた。それまで黙って聞いていた武彦も、写真を覗き込みながら口を開く。
 「纏めると、自称暗殺者達は、恐らくこのマンホールを踏む事で自分は暗殺者であると言う暗示に掛かる。一度踏んだだけで掛かるのなら、もっと多くの自称暗殺者が誕生していそうなもんだから、例えば数日に渡るとしても、ある決まった順番で決まった場所の魔法陣を踏むと効果が現れるとか、或いは本当に遺伝子や前世のような、一見した所では分からない特徴に引っ掛かるとか。そして、その因子を抱えたままで、もう一度同じ魔法陣を踏むと暗示が発動し、襲い掛かる…と言う感じだな」
 「そう言えば、被害者に共通点はないって言ってたよね。被害者と加害者の間に共通点はないのかな?」
 何気なく口を開いた想司のその言葉は、考えてみれば誰も何も気にも止めなかった事項であった。
 「…警察の資料では、被害者と加害者の間には、友達や知り合いだったり親子だったりする場合もあるけど、全くの赤の他人である場合もあって、一概に共通点があるとは言い難いわね」
 「しかし、その場に複数の人間がいたにも係わらず、その被害者を狙ったように行動した、と言う報告もあります。もっと身近に違う人間がいたが、その人の横を通り抜けて襲いに行った、等。と言う事は、魔法陣の影響で発動した暗示は、不特定多数の相手を狙う為の暗示では無かったと言う事になりますか」
 「じゃあ例えば、魔法陣を踏む事だけでは暗示は発動せずに、それと一緒に視界に誰かが目に入った時だけに発動する…とも考えられますね」
 みなもの言葉に皆が頷く中、正風が手にした資料を捲って眺めながら言った。
 「そういや、被害者が面識のある人間であった場合の加害者の話に寄ると、それ程深く深刻ではないが、加害者は被害者を多かれ少なかれ恨んだり怒ったり妬んだり…まぁ纏めて言ってしまえば負の感情を持っていたことは確認している。とすると、この暗示と言うのはもしかしたら己の憎い相手を殺せ…と言う類いのものかも知れない」
 「そうね、そして見ず知らずの相手を襲った人と言うのは、そう言う負の感情を持っていない人…或いは、持ってはいるけれど特定の相手に対してではない、例えば『最近の若者は…』と言うように若者全般を疎んでいる、とかそう言う場合はたまたまそこにいた、その条件に当て嵌まる人を襲った…とか。どうかしら、武彦さん?」
 「ああ、もしかしたら、そう言う感情を持っていると言うのが、暗示を掛ける為の条件だったのかも知れないな」
 腕組みをした武彦が、深く頷いて答える。
 「じゃあ、この騒動の黒幕ってのは、そうやって人と人を衝突させて喜んででもいるのかな。どっちにしても、物凄く不完全な事だよね。だって、本当に相手を襲えるかどうかも分かってないじゃない。もう一回マンホールを踏まなかったら、そのまんま掛けた暗示は発動しないで終わっちゃうんじゃない?」
 想司の言葉に、みなもが不安そうに眉を寄せて呟いた。
 「もしかしたら、まだこれは実験段階なのかもしれませんよ」
 「実験段階ですか?まだ本番ではないと言うことで?」
 「分からないけど…直感ですけど、これはただの遊びだったり愉快犯なだけじゃないような気がするんです。怖い…のかもしれません。そう言うのが当たり前な世の中に、もしなってしまったら、と思ったら」
 「尤もな話だな。麻薬を用いて暗示を掛け、暗殺者に仕立て上げた、まさにアサシンを地で行くような話じゃないか。そんなのがこの辺をうろうろしていると思ったら、おちおち街も歩けないしな」
 「…いずれにしても、その話も今は不透明だし、とにかく俺は依頼人のあいつに会って、この模様のあるマンホールを撤去して貰うように言うよ。ついでに、これを設置した奴の事も聞いて来ようと思う。まぁそう簡単には尻尾を出すとは思えんが、何かの手掛かりにはなるだろう。皆、ご苦労さん」
 武彦がそう労うと、ひとまず皆に笑顔が浮かぶ。この先の事は、事が多少なりとも明らかになってから考えればいいか、と言う結論に落ち着いたらしい。

 ちなみに、武彦の進言に寄り、魔法陣の描かれたマンホールの蓋が撤去されると、自称暗殺者の起こす騒動もぱたりと止んだ。だが、一旦生まれた噂は中々消える事なく、今も姿形を変えて生き残っている。武彦にはそれが、尾鰭が付いて勝手に膨らんでいくと言う、噂の特性だけではないような気がするのだった。


おわり


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 0424 / 水野・想司 / 男 / 14歳 / 吸血鬼ハンター 】
【 0441 / 無我・司録 / 男 / 50歳 / 自称・探偵 】
【 1252 / 海原・みなも / 女 / 13歳 / 中学生 】
【 0086 / シュライン・エマ / 女 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト 】
【 0391 / 雪ノ下・正風 / 男 / 22歳 / オカルト作家 】

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■         ライター通信          ■
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 あれは数ヶ月前の事だったでしょうか。私は街でマンホールの蓋に靴の踵を引っ掛けて転び掛けました。その時、恨めしげに睨んだマンホールの蓋の模様を見て、この話のきっかけが浮かんだのです。
 と言う訳で大変お待たせを致しました、ライターの碧川桜です(前置き長いよ)
 水野・想司様、無我・司録様、いつもいつもありがとうございます(多謝)
 海原・みなも様、またお会い出来て光栄です(多謝)
 シュライン・エマ様、雪ノ下・正風様、初めまして。ご参加ありがとうございます(多謝)
 さて、今回はプレイングの内容から、三つのグループに分けて書かせて頂きました。ご了承くださいませ。一応、ご自分の分だけでも分かるように書いたつもりですが。
 今回も皆様の特徴溢れるプレイングを楽しく読ませて頂きました。それがちゃんと反映出来、尚且つ楽しめる読み物になっていればいいのですが…。
 それでは今回はこの辺で。またお会い出来る事を心からお祈りしています。