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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


幽霊満載トンネル

:オープニング:

同行者募集! 投稿者:HAL

みなさん、こんにちは。
某心霊トンネルに、一緒に行きませんか?
結構有名な心霊スポットだから知ってる方も多いかも知れませんが、
東入口に老婆、西入口にセーラー服の少女、内部に複数の幽霊が出る
と言うトンネルです。
心霊写真なんか撮り放題、具合悪くなっちゃう人続出、命と精神の
保障は出来ません!でも、探検してみたいなぁ!って物好きさんは
いませんか?
HALは行ってみたいのですが、ちょっと1人じゃ恐いのです。
どなたか、おつき合い下さいませ。
一緒に行っても良いよ!って人は、直接メール下さいね。
待ってま〜す!


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はいっはいっはいっ!みあお行きたいっ!幽霊写真撮りたいっ!見たいっ!
と、掲示板を見て騒ぎ出した海原みあおは殆ど遠足気分で当日に望んだ。
ポテトチップスに飴にガムにクッキーに桃のジュースをバッグに詰め込んで、殆どどころか完璧に遠足気分。
探検に相応しい持ち物と言えば、辛うじて懐中電灯が一つ。それから心霊写真撮影の為の使い捨てカメラ。
念の為に乗り物酔いの薬と、エチケット袋。洗面器まで持っているので大層な大荷物だ。
小柄な体に大きすぎるバッグは、中身こそ軽いのだがやたら重そうに見える。
「良かったら半分持とうか?」
と、みあおに声をかけるのは、幽霊トンネル探検発案者のHALだ。
予定通り東入口の前で合流した二人は、他3人のメンバーを待って15分ばかし立ちっぱなしでいる。
「ううん、大丈夫」
と、にこやかにHALの申し出を断ってみあおは暗いトンネル内部を少し覗いた。
『妖しいです』と立て看板でもしたほうが良さそうな陰鬱とした様子は、これからの探検に相応しいと感じる。
実のところ、みあおにこのトンネルの知識は全くない。
書き込みを見て興味をそそられて参加を決めた。
予備知識はない方が楽しいだろうと思い、わざと何も調べずにやって来たのだ。
書き込みでは確か、西入口にセーラー服の幽霊、東入口に老婆の幽霊、内部には複数の幽霊が出没するらしい。
HALが話すところによると、何度か心霊番組で取り上げられた事があるらしい。
「どんな風に出るの?何か思いを残して死んじゃった人なのかな?」
言いながら、みあおは周囲を見回す。
山の中である。
民家のあるところまで戻るには30分程歩かなければならない。
元々は隣町との距離を狭める為に作られたトンネルだが、新しい道路が出来た現在、使われなくなって久しい。
トンネル入口に彫られた完成年月日は昭和初期。
みあおは勿論生まれていない。
「えーっと、確か、50年くらい前にこの辺一体で土砂崩れが起こって、その犠牲になった人だって聞いたんだけど」
他にも、古戦場の跡だと言う話しもある。
つまり、実際のところ何もかも不明確なのだ。
「ふぅん?」
頷きながら、みあおは飴を一つ口に放り込み、HALにも一つ勧める。
「なんだか分かんないけど、ずっと彷徨ってたりするのは可哀想だよね。浄化出来ないのかな」
「どうなんでしょう。出来るとしても、HALはちょっとそーゆー力を持ち合わせてないので……」
HALに出来なくてもみあおには出来る。
よく幽霊から話しを聞いて、浄化を望んでいるならばそれを叶えてやろう。
「でも、皆さん遅いですねぇ」
と、トンネルを覗き込むみあおの横で、HALは溜息混じりに時計を見る。既に20分が経過している。
急遽参加できなくなった、と言う連絡は受けていないし、3人揃いも揃って不参加と言う事はないだろう。
「もしかして、場所間違えたんじゃないのかな?」
「え?」
「西入口と東入口」
ここに至る道中、道が二つに分かれていた事を思い出してみあおは言った。
「トンネルの向こう側で待ってるのかも。行ってみようよ」
もう充分に待った。
早く探検したいみあおとしては、これ以上は待っていられない。
「そう…そうかなぁ、うーん。ま、いいか。違ってたら後から追って来るだろうし」
HALの方も待ちくたびれたようで、アッサリと同意した。
「わぁい!それじゃ、幽霊トンネル探検に出発っ!」
全く恐れた様子もなく、みあおは元気良くトンネルに飛び込んでいった。


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「すごーい、音が反響するねぇ………」
暗い内部を懐中電灯で照らしながら、みあおはゆっくりと歩く。
足音と話し声が深く響く。
「どの辺で幽霊が出るのかなー?」
と、HALに話しかける声と吹き抜ける風が幾重にも重なってワァンワァンとトンネル内部に響き渡る。
ひゅぅぅぅぅぅぅ〜………と冷気が足元を抜ける。
「取り敢えず適当に写真撮ってみようかな」
みあおは手探りで使い捨てカメラを取り出すと、フラッシュのボタンを持ち上げてランプが灯るのを待った。
「ねえ、HALは写真撮らないの?」
殆ど喋らない同行者を振り返って、みあおは首を傾げた。
ゆっくりとみあおの後ろを歩きながら、HALはしきりに胸の辺りを撫でている。
「どうしたの?」
「うーん、何かちょっと胸焼けが……」
声に張りがない。早速何かしらの霊障だろうか、みあおはサッと辺りを見回した。
しかし、目に見えるものはコンクリートの壁ばかりである。
「大丈夫?」
『心霊写真なんか撮り放題、具合悪くなっちゃう人続出、命と精神の保障は出来ません!でも、探検してみたいなぁ!って物好きさんはいませんか?』
などと書き込んだ張本人が早速この調子では話しにならないではないか。
「た、多分、食べ過ぎだと思う……、朝すっごく沢山食べたの…」
話すのも辛そうなHALにみあおは慌てて洗面器を差し出した。
自分で使う事はないだろうと思ってはいたが、やはり持ってきたのは正解だった。
その場にしゃがんで洗面器を抱え込んだHALは何度か苦しげに嘔吐を繰り返す。
まだ内部に入って数メートルしか進んでいない。この調子で果たして向こう側に辿り着けるのだろうか。
「ごめんねぇ、大丈夫だから、ちょっと待ってね……」
とぎれとぎれに喋るHALに心配しないようにと答えながら、みあおは少々不安になっていた。
やはり残りの3人をもう少し待って見た方が良かったのかも知れない。
と、その時。
「あれぇ、どうしたの?具合が悪いのかね?」
「え?」
突然の老婆の声に、みあおとHALは顔を上げた。
みあおが懐中電灯で照らすと、眩しそうに顔を歪めた老婆が二人を覗き込んでいる。
「キャッ!」
思わず叫んでみあおに抱きつくHAL。
「大丈夫かね?」
老婆は心配そうにHALを見た。
HALに抱きつかれたみあおも、突然の老婆の出現に少々驚いて、左手に持っていたカメラを落としてしまった。
慌ててカメラを拾い上げながら、みあおは老婆を観察する。
背の曲がった、濃い色合いの服を着て、頭に白い手ぬぐいを被っている。
「具合が悪いんなら、うちに来て休んでいくと良いよ」
老婆の言葉に、みあおとHALは顔を見合わせた。
「おばあさんの家って、どこ?」
尋ねるみあおに、老婆はにこりと笑った。
「このトンネル抜けて、ちょっと行った処だよ」
この老婆は付近の民家に住んでいるのだろうか。
「孫がいなくなったもんだから、捜しにこっちに来たら、あんた達がいたんでね」
「このトンネルって、幽霊が出るんでしょ?おばあさん、恐くないの?」
「はて、幽霊?そんなもん出やせんよ、大丈夫」
まるでお化けを怖がる子供にでも言うように、老婆は言った。
「え、出ないの?」
みあおはガックリと肩を落とした。
折角やって来たのに、幽霊の噂は嘘だったのか。
「え、でも、テレビなんかでよく取り上げられてますよ?」
まだ辛そうに、HALが老婆を見る。
「テレビ?さあ、わしみたいな年寄りにはわからんねえ」
地元でも有名な幽霊トンネルだ、とHALは聞いていたのだが。
「古戦場の跡じゃないんですか?」
「ああ、それは、そうだよ。だけど、幽霊は見た事ないねぇ」
再び顔を見合わせて、みあおとHALは溜息を付く。
折角の探検が早々に終わってしまったようだ。
「あんた、具合が悪いんじゃろう。うちに来て、休んでお帰り。美味しい饅頭があるから、それでも食べて」
「はー、つまんないのー……」
みあおはふてくされた様に頬を膨らませた。
「でも、折角だから写真を撮っておいたら?来たって、証拠にもなるし」
「そっか、そうだね。中と、外で一緒に記念撮影しようか。おばあさんも一緒に」
言いながら、みあおは老婆とHALを並ばせて暗いトンネルの中で1枚写真を撮る。
続けて、適当に周囲を数枚撮った。
パシッパシッと光るフラッシュが眩しい。
使い捨てカメラは、3つ用意してきたのだが、1つだけで充分に事足りてしまう。
残ったカメラはどうしようか、と使い道を考えながら、みあおは老婆に促されてトンネルを進んだ。


:::::

暗いトンネル内部に、足音が響く。
「幽霊、全然出ないね……」
適当にシャッターを切りながらみあおは言った。
恐らく半ばあたりまで進んだであろうが、孫を捜している老婆と出会った以外、未だこれと言って変わった事はない。
「だねぇ」
だいぶ気分が良くなったらしいHALが手に持った2つのナイロン袋を体の遠くの方にやりながら答える。
みあおに貰ったエチケット袋だ。当然、1つは汚れた洗面器で、もう1つは自分の出したものだ。ゴミを捨てて帰る訳にはいかないので、仕方がない。
「他の人達、どうしただろう?やっぱり遅刻しただけなのかな」
もし場所を間違えたのであって、向こうがこっちに向かっているのならば、もうそろそろ合流出来そうな筈だが。
「さぁ……」
短く答えて、HALは腕を上げる。暗い中で浮かび上がった腕時計の文字版の針を見ると、内部に入ってから10数分が過ぎようとしている。
入口からの光が少しずつ頼りなくか細くなってきたが、まだ出口は見えない。
「幽霊は出ないし、他の人達と合流出来ないし……」
退屈、と言う言葉をみあおは飲み込む。
こんな暗い中に居たら、元気でも具合が悪くなるだろうし幽霊なんかいなくても、いると思ってしまうかも知れない。
『結構有名な心霊スポット』と言う書き込みを思い出して、みあおは少し溜息を付いた。
その時。
「あ」
と、HALが声を発した。
「どうしたの?」
「あれ」
HALが指さす前方に、人の影。
「あ、残りの人達だよね。やっぱり場所間違えてたんだ」
みあおは懐中電灯を影の方に差し向けてみた。
3つの影が、こちらに近付いてくる。足音と、何やら話し声も聞こえてきた。
「おーいっ!」
男の声が呼びかけてくる。
その声が反響して、ワァンワァンとトンネル内に響く。
みあおとHALは顔を見合わせた。
「HALさん達ですかー!?」
続けて、少女の声。
間違いなく残りのメンバーだ。
「はーい!」
みあおとHALは殆ど同時に返事をしていた。
「こちらは海原みあおとHALでーす!征城大悟さん達ですかー!?」
HALに聞いた残りのメンバーの名前を呼びかけると、返答がある。
「そうですー!でも、私達二人しかいません。志神みかねと征城大悟ですー」
少女の声―――志神みかねがもう1人の参加者が急遽参加出来なくなった事を告げてきた。
「あれ?それじゃあの3つ目の影は誰……?」
と、HALが首を傾げた処で向こうから声が届く。
「それから、女の子がいます。1人、おばあさんを探してるんですけど、そちらの方におばあさんがいませんでしたかー?」
その言葉に、みあおは後ろの老婆を振り返った。
「おばあさんを探してるって、女の子が」
と、老女が嬉しそうに笑った。
「孫娘だよ。探しに来てくれたんだねぇ」
二人で探しあっていたと言う事か。
「いますよー!お孫さんを探してるってー!」
みあおは口の周りを手で囲って返事をした。
「行きましょうか」
HALはみあおと老婆を振り返って、ゆっくりと走り出した。
向こう側も走り出したらしい。騒々しい足音がトンネルを包み込む。
「わーっ!」
意味のない歓声を上げて、漸くトンネル探検のメンバーが合流した。
「良かったー、私達、場所を間違えちゃって。西入口の方に行っちゃったんですよ」
HALとみあおと握手をしながら、みかねが楽しそうな笑みを浮かべた。
「多分そうだろうと思った」
と、みあおは笑う。
「全然、幽霊なんか出なかったよ。そっちは出た?」
尋ねると、みかねと大悟が揃って首を振った。
「いや、全然」
「つまんないのー」
頬を膨らますみあおの横で、老婆が嬉しそうに声を上げた。
「探したよー」
「探したはこっちの科白。おばあちゃん!もう、心配したんだから」
と、それに答えるのは少女。
幽霊こそ出なかったが、取り敢えず老女と孫が無事再会出来たのは喜ばしい。
HALの具合もすっかり良くなったようで、楽しげに話しをしている。
「あーあ」
溜息を付いて大悟がカメラを構える。
せめて心霊写真を、と言う足掻きだ。
「記念撮影、しようよ。みあお達、向こうでもやって来たんだ。皆で撮ろう!」
言われて、みかねもHALカメラを取り出した。
みかねが持参していたミニ三脚を立てカメラを入れ替えつつ、老婆と少女も含む全員で写真を撮る。
「じゃ、帰りましょうか」
写真を取り終えたHALがフィルムを巻き上げながらメンバーを見渡す。
「そうだな」
と、それに答えて大悟もみかねもカメラを仕舞った。
どちらの入口から入っても幽霊が出なかったと言う事は、どちらから出ても同じと言う事だ。
「西入口の方に出ますか?」
少女達も一緒に帰れば良い、と言うと、みかねも大悟も同意した。
しかし。
「あ、あれ…?」
行きましょうか、と少女を振り返ったみかねが声を上げる。
「何だ、どうした?」
と、大悟が振り返る。
「あれ、おばあさんは…?」
みあおが自分の後ろを振り返った。
「あれ…?」
いない。
「ど、何処行ったんだ?」
少女も老婆も、忽然と消えている。
「何で?今までここにいのに、何も言わずに帰っちゃうなんて……」
慌てて辺りを見回しながら、みあおは懐中電灯で周囲を照らす。しかし、人影は全くない。
「セーラー服の少女と老婆……」
ふと、HALが呟いた。
「ええっ!?」
3人が一斉に声を上げた。
「そ、そう言や俺達は入ったのは西入口だ……」
半ば呆然と、大悟はみかねを見た。
「うそ………」
東入口からやって来たのはHALとみあおと老婆。
「やだぁーっ」
みかねは服が汚れるのも構わず、その場にペタンと座り込んだ。


:::::

2時間後。
山のトンネルから遠く離れたファーストフード店で、3人は急遽現像した写真を囲んで言葉を失っていた。
少女と老婆も一緒に映した筈の記念写真に二人の姿はなく、不自然に開いた3人の周囲を白い無数の手が取り囲んでる。
「これって、間違いなく心霊写真だよね!」
他にも、白いもやの写ったものや、人の顔らしい影の映った写真をテーブルに並べて、みあおは満足そうにジュースを飲み干した。




end





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】 
1415 /海原・みあお /女/13/小学生
0662 /征城・大悟  /男/23/長距離トラック運転手
0249 /志神・みかね /女/15/学生
  
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■         ライター通信          ■
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時々「変温動物」と呼ばれる佳楽季生です、こんにちは。
この度はご利用有り難う御座いました。
生息地から1時間ばかし離れた場所に、幽霊が出ると噂の
トンネルがあります。
老婆の幽霊らしいのですが、何とその老婆、車やバイクを
追い掛けてくるらしいです。
走る老婆。
まるで某引っ越しセンターのCMのようで、ちっとも恐くな
いですよね。でも、一度は見てみたいものだと時折用もな
いのにそのトンネルを利用してみたりしています。

それでは、また何時かお目にかかれたら幸いです。