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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


幽霊満載トンネル

:オープニング:

同行者募集! 投稿者:HAL

みなさん、こんにちは。
某心霊トンネルに、一緒に行きませんか?
結構有名な心霊スポットだから知ってる方も多いかも知れませんが、
東入口に老婆、西入口にセーラー服の少女、内部に複数の幽霊が出る
と言うトンネルです。
心霊写真なんか撮り放題、具合悪くなっちゃう人続出、命と精神の
保障は出来ません!でも、探検してみたいなぁ!って物好きさんは
いませんか?
HALは行ってみたいのですが、ちょっと1人じゃ恐いのです。
どなたか、おつき合い下さいませ。
一緒に行っても良いよ!って人は、直接メール下さいね。
待ってま〜す!



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「これが噂のトンネルか……」
古ぼけた、今時珍しい木の電信柱にもたれて、征城大悟は見るからに陰鬱そうなトンネルを見ていた。
幽霊が出ると言うトンネルを憎悪を込めて睨み付けているように見えるが、決してそう言う訳ではない。
目つきが悪いだけの話しだ。
紫色の坊主頭に額の鋭い剃り込みとサイドの三本ラインの剃り込み。鼻、唇、耳にピアスと言った少々目立つ出で立ちに為に恐そうに見えるが、実はなかなか気の良いにいちゃんなのだ。
元暴走族だが今は至って真面目に長距離トラックの運転手をしている。
幽霊トンネル探検の書き込みを見たのはほんの数日前。
興味本位で発案者のHALとか言う人物に連絡を取ってみたら、今日この場所を指定された。
昔の族仲間からカメラを強奪…もとい、快く貸して貰って、写真を撮る気満々でやって来たのだが。
「他の連中はどうなってんだ?」
目線を移動させて辺りを見回すが、参加者らしい姿が見えない。
目に写るのは、道路を挟んだ向かいに立った髪の長い、全体的にちんまりした造りの子供1人。
もしやあの子供が発案者のHALとか言う奴だろうか。
メールでは他に3人の参加者がいると言っていたが、他に姿が見えない。
となれば、何時までもここで突っ立っていても仕方がない。
探検なりなんなり、とっとと始めようではないか。
取り敢えずはあの子供がHAL或いは参加者かどうかを確かめよう。
「お?」
動きかけた大悟はふと体を止めた。
子供の方が自分に向かって歩いてくるではないか。
やはり参加者なのだろう。
大悟は時計を確認する。
午前11時。
指定された時間を既に15分ばかし過ぎていた。



:::::

「すみません、もしかして、HALさんですか?」問われて、「違う」と短く返す。
その時点で互いに幽霊トンネル探検のメンバーであると分かる。
「私、志神みかねって言います。友達に誘われて参加したんですけど、友達の方が急に来られなくなってしまって」
と人懐こい笑みを浮かべて笑うみかねに、自分も名乗って征城大悟は辺りを見回した。
「他のメンツはどうなってんだ?何か知ってっか?」
「いえ。友達は、他の参加者は現地で待ってるって言ってましたけど……、ここって、東入口ですよね?」
みかねも辺りを見回して、他の参加者を捜す。
「東入口だと思うんだけどな……あ、」
と、トンネルの入口に目をやって大悟は言葉を切る。
つられてみかねもトンネルに目をやった。
「………違いましたね………」
西入口である。
「阿呆だな」
本人達は至って東入口だと思って待っていたのだが、どこで間違ってこちらにやってきたのだか、ここは西入口。
待てど暮らせど他の参加者が見えない筈だ。
「じゃ、皆さん反対側で待ってるんですね」
反対側と言うのが勿論東入口なのだが、そもそもみかねと大悟はトンネルに至る道中に道を間違っている。
「どうしましょう、戻りましょうか?」
東入口へ行く為には、徒歩30分程の距離を戻らなければならない。
「いや、いいだろ別に、西入口でも」
これから探検をしようと言う時に、30分も余計に歩くのは面倒くさい。
トンネルを抜ければ東入口なのだ。
「こっちから入りゃ良いだろ、中で他のメンバーと合流するさ」
中、と言われてみかねは身を竦めた。
そして、つい溜息を付く。
「何だ、嫌か?戻った方が良いのか?」
「そうじゃなくて、実は、恐いんです」
「はぁ?」
参加するからには、それなりに興味があったり何かしら目的があるものではないのか。
尋ねる大悟に、みかねは嫌々ながら参加したと言う経緯を話す。
「ユーレイなんてこわかねぇって」
と、大悟はさっさとトンネルに向かいながら言う。
「死んでるからって何で生きてる奴を襲う必要があるんだ?見た目が生ッ白くて薄らぼんやりしててよ、おっ死んでるから元気がねェのは当たり前の話で。見た目は病人みたいだからそら【ヤベェ】って思うかもしんないけどよ、びびる必要は無ェだろ。」
トンネルに入るのは恐いが、1人で待つのはもっと恐い。
みかねは慌てて大悟の後を追う。
「本当に?大丈夫ですか?」
「…多分」
絶対じゃないんですね…、とは口に出さず、みかねは強張る足を進める。
外から見て陰鬱なトンネルは、入ると更に陰鬱だった。
「お、みかねもカメラ持って来たのか。良いカメラじゃねぇか」
みかねが取り出したカメラを、大悟は褒める。
カメラに詳しい訳ではないが、自分が仲間に借りてきたカメラより高級そうに見える。
「父のカメラなんです。友達に心霊写真のお土産お願いねって言われてて」
恐いと言いつつ律儀なことだ。
「大悟さんも写真撮るんですか?」
「こういうのって景気よく写ってる写真とかだとテレビとか雑誌とかに送って賞金とか貰えんだろ?」
景気良く幽霊の写った写真………。
想像するだけで恐いではないか。
「そ、そうですねぇ………」
殆ど泣きそうな面持ちで、みかねは歩きながらカメラを構える。
とは言え、恐怖で脚が思う様に動かない、顔は引きつったまま、硬直してぎこちなく冷汗をかいて…ロボットの様だ。
ひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………と不気味な音で抜ける風をものともせずシャッターを切る大悟。
みかねは羨ましく思いつつ、出来る限り大悟にピタリと寄り添って目を閉じたままファインダー覗いてシャッターを切る。
ひゅぅぅぅぅぅぅ〜………と冷気が足元を抜ける。
使われなくなって久しいトンネルに電灯はともっておらず、灯りは入口からわずかに差し込む光のみ。
それも少しずつ遠ざかって、目の前は殆ど闇と化しかけている。
トンネルの長さはどれほどだろう。
早く東入口から入ったメンバーと合流して外に出られないものか、とそればかりを祈るみかねに、ふと誰かが触れた。
「っきゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」
「うぉっ!?な、何だぁっ!?」
驚きに悲鳴を上げつつ無意識にシャッターを切りまくるみかね。勝手に巻き上げて勝手にストロボを放つカメラ。
ストロボに目をやられつつ、みかねにつられて驚く大悟。慌てて見えない何かに向かってパチンコ玉を弾く。
「あのぅ……す、すみません、何だか驚かせてしまったみたいでー……」
キャアキャアギャァギャァと慌てふためく二人に、恐縮したような声がかかる。
「……え?」
暗くて見えないものの、目の淵に涙を浮かべたみかねと、早鐘の如く打つ心臓に手を当てた大悟。
「あぁ?」
声の主を捜し当てた大悟は、思わず『てめぇが驚かせやがったのか』と相手を睨み付ける。
「すみません……、驚かせるつもりはなかったんですけど」
声の主は、まだ若い女。
見ると、セーラー服を着た少女である。
「はぁぁぁぁっお、驚いた……」
ひくひくとしゃくり上げながら呟くみかね。
「ごめんなさい、あの、私おばあちゃんを捜してるんですけど、貴方達、見かけませんでした?」
「ああん?」
人を驚かせておいてババアがどうしたって?とばかりに凄む大悟にぺたりとくっついて、みかねは首を振った。
「そうですか、もう、おばあちゃんったら何処に行っちゃったのかしら……」
凄まれても睨まれても全く怖がる様子を見せず、少女は溜息を付く。
「いなくなちゃったんですか?」
「そうなんです。もう、困ったわ」
「あの、私達、東入口の方まで出るんですけど、良かったら一緒にどうですか?もしかしたらおばあさん、向こうの方に行ってるのかも…」
トンネルの付近では老婆を見かけなかったし、トンネルに入ってからも見かけていない。
と言う事は、東入口の方に出てしまっている可能性があるのではなかろうか。
こんな心細い場所では、人間は1人でも多い方が良い。
そんなつもりもあって、みかねは少女を誘う。
「あー、まあ、そうだな。向こうで他のメンツに聞けば何か分かるかも知れねぇしな」
と、気を落ち着かせた大悟も頷く。
「わぁ、構いませんか?すみません〜。おばあちゃんったら最近徘徊癖がついちゃって……」
少女は嬉しそうに笑った。


:::::

暗いトンネル内部に、足音が響く。
「幽霊なんざ出ねぇじゃねぇか」
適当にシャッターを切りながら大悟は呟いた。
恐らく半ばあたりまで進んだであろうが、未だこれと言って変わった事はない。
少女の出現にあれほどまでに動揺したのが恥ずかしいほど、暗く静かな、なんの変哲もないトンネルだ。
みかねはまだ怖々とした様子で、大悟と少女の間で二人に寄り添うようにして歩いていた。
「幽霊なんか、出ない方が良いです……」
出来れば、心霊写真も撮れない方が良い。と、思っているのだが、こればかりは友人から頼まれたので取り敢えず写真を撮ってみなければならない。恐る恐る歩きながら、相変わらずファインダーも覗かずみかねはシャッターを切る。
大悟とみかねが放つフラッシュで、時折明るくなる内部に人影はない。
「他の皆さん、まだ向こうで待ってるんでしょうか」
もし向こうがこっちに向かっているのならば、もうそろそろ合流出来そうな筈だが。
「さぁな」
短く答えて、大悟は時計を見る。
内部に入ってから10数分が過ぎようとしている。
「なぁ、このトンネルって幽霊が出るんじゃねぇのか?」
みかねの隣を歩く少女に、大悟は尋ねてみた。
「え、幽霊ですか…?」
ゆっくりとこちらを向いて、少女は首を傾げる。
「さあ、私は聞いた事ないですけど……」
「何だよ、デマかよ……」
『結構有名な心霊スポット』と言う書き込みを思い出しながら、大悟は溜息を付いた。
このまま何事も起こらず向こう側に辿り着いてしまったのでは面白くない。
と言っても、何事か起こったらそれはそれでまた対処に困るのだが。
せめて心霊写真でも撮れていれば良しとするしかないのか。
大悟は虚しくポケットに仕込んだパチンコ玉を指で弄びながら足を進める。
「あ」
と、みかねがカメラを下ろして声を発した。
「ああ?」
「あれ」
みかねが指さす前方に、人の影。
「お、残りの奴らだな」
大小の影が、こちらに近付いてくる。小さい影の手の辺りから、光が放たれている。
「おーいっ!」
口の周りを手で覆うようにして大悟は呼びかけてみた。
その声が反響して、ワァンワァンとトンネル内に響く。
「HALさん達ですかー!?」
みかねもカメラを仕舞って呼びかけてみた。
「はーい!」
向こうから返事があった。
みかねは大悟を見てにこりと笑う。
これで無事、何事もなく探検は終了。そんな安心感が胸に広がった。
「こちらはHALと海原みあおでーす!征城大悟さん達ですかー!?」
少し近付いた影が、呼びかけてくる。みかねと、友人の名も確認してきた。
「そうですー!でも、私達二人しかいません。志神みかねと征城大悟ですー」
みかねは友人が急遽来られなくなった事を告げる。
「それから、女の子がいます。1人、おばあさんを探してるんですけど、そちらの方におばあさんがいませんでしたかー?」
向こうから来るメンバーが知らなければ、トンネルの向こう側に行った可能性は低い。
そう思って、みかねは尋ねながら少女を見た。
と、すぐに返事があった。
「いますよー!お孫さんを探してるってー!」
「おばあちゃんだわ!」
嬉しそうに少女が声を上げる。
「よし、行こう」
大悟はみかねと少女を振り返って、走り出した。
向こう側も走り出したらしい。騒々しい足音がトンネルを包み込む。
「わーっ!」
意味のない歓声を上げて、漸くトンネル探検のメンバーが合流した。
「良かったー、私達、場所を間違えちゃって」
HALとみあおと握手をしながら、みかねは漸く楽しそうな笑みを浮かべた。
「多分そうだろうと思った」
と言ったのはHALと同行してきたみあお。
「全然、幽霊なんか出なかったよ。そっちは出た?」
残念そうなみあおに、みかねと大悟は揃って首を振った。
やはり幽霊話しは嘘だったのだ。
「つまんないのー」
頬を膨らますみあおの横で、老婆が嬉しそうに声を上げた。
「おばあちゃん!もう、心配したんだから」
と、それに答えるのは少女。
幽霊こそ出なかったが、取り敢えず行方不明の祖母が見付かったのは喜ばしい。
「あーあ」
溜息を付いて大悟はカメラを構える。
せめて心霊写真を、と言う足掻きだ。
「記念撮影、しようよ。みあお達、向こうでもやって来たんだ。皆で撮ろう!」
言われて、みかねもカメラを取り出した。
みかねが持参していたミニ三脚を立てカメラを入れ替えつつ、老婆と少女も含む全員で写真を撮る。
心霊写真が撮れているかどうか定かではないが、取り敢えず友人への義務は果たした。そう思うとみかねの恐怖心もすっかり消え失せてしまった。
「じゃ、帰りましょうか」
写真を取り終えたHALがフィルムを巻き上げながらメンバーを見渡す。
「そうだな」
と、それに答えて大悟もみかねもカメラを仕舞った。
どちらの入口から入っても幽霊が出なかったと言う事は、どちらから出ても同じと言う事だ。
「西入口の方に出ますか?」
少女達も一緒に帰れば良い、と言われて、みかねも大悟も同意した。
しかし。
「あ、あれ…?」
行きましょうか、と少女を振り返ったみかねが声を上げる。
「何だ、どうした?」
と、大悟が振り返る。
「あれ、おばあさんは…?」
みあおが自分の後ろを振り返った。
「あれ…?」
いない。
「ど、何処行ったんだ?」
少女も老婆も、忽然と消えている。
「何で?今までここにいのに、何も言わずに帰っちゃうなんて……」
慌てて辺りを見回しながら、みあおは懐中電灯で周囲を照らす。しかし、人影は全くない。
「セーラー服の少女と老婆……」
ふと、HALが呟いた。
「ええっ!?」
3人が一斉に声を上げた。
「そ、そう言や俺達が入ったのは西入口だ……」
半ば呆然と、大悟はみかねを見た。
「うそ………」
東入口からやって来たのはHALとみあおと老婆。
「やだぁーっ」
みかねは服が汚れるのも構わず、その場にペタンと座り込んだ。


::::

2時間後。
山のトンネルから遠く離れたファーストフード店で、3人は急遽現像した写真を囲んで言葉を失っていた。
少女と老婆も一緒に映した筈の記念写真に二人の姿はなく、不自然に開いた3人の周囲を白い無数の手が取り囲んでる。
「よしっ!売りに行くぞっ!」
他にも、白いもやの写ったものや、人の顔らしい影の映った写真をテーブルに並べて、大悟は意気揚々と宣言した。





end





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】 
0662 /征城・大悟  /男/23/長距離トラック運転手
0249 /志神・みかね /女/15/学生
1415 /海原・みあお /女/13/小学生
  
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■         ライター通信          ■
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時々「変温動物」と呼ばれる佳楽季生です、こんにちは。
この度はご利用有り難う御座いました。
生息地から1時間ばかし離れた場所に、幽霊が出ると噂の
トンネルがあります。
老婆の幽霊らしいのですが、何とその老婆、車やバイクを
追い掛けてくるらしいです。
走る老婆。
まるで某引っ越しセンターのCMのようで、ちっとも恐くな
いですよね。でも、一度は見てみたいものだと時折用もな
いのにそのトンネルを利用してみたりしています。

それでは、また何時かお目にかかれたら幸いです。