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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


兎目の石


「ちょいと、お兄サン、月の石ってのを知ってるかしらねェ?」
 やけに馴れ馴れしい態度で話しかけてきたのは、水商売上がりと解るような徒っぽい女だった。年の頃は四十過ぎだろうか。だが、長年の化粧で痛んだ肌は五十過ぎにも見える。色の抜けた髪は艶がなく、きめの粗い肌と相まって女を乾燥した印象に見せていた。
 俺はゆっくりと足を組み替えながら首を横に振った。
「いいえ、存じません」
「だろうねェ。アタシも知らないのさ」
 喉の奥で引きつった笑い声をあげ、女は身を乗り出してきた。
「だからね、お兄サン。それを探して欲しいのさァ」
「料金の方はどのようにしてお支払いいただけますでしょうか」
「その月の石をあげるよォ。アタシはそれが見たいだけなんだから、手に入らなくたって構やしないのさァ」
「わかりました。では早速、調査に」
「あァ、そうだ。お兄サン。兎に気をつけなさいよォ」
 そう言って、死んだ女は姿を消した。現れたときと同様に。
 残された俺は行動を共にしてくれる調査員を捜すことから始めなくてはならなかった。





 秋雨前線が停滞している。そのおかげでここ十日は雲の切れ間を覗いたことがない。全く、鬱陶しい。天候は人の気分にも影響を及ぼす。それはこの事務所の所長、草間探偵も同様のようで。
「変わった依頼人ですね」
 ノックもせずに扉を開けた少女を見て、草間探偵は思わずため息をついた。そして、少女を上目遣いに見上げる。
「盗み聞きかい?」
「まさか。これを持っていこうと思ったんですよ」
 そう言って少女は左手に持っていた盆を掲げた。その上には茶筅に乗った茶碗が二つ。草間探偵と依頼人に給仕してくれようとしていたらしい。
 少女、我が興信所のボランティアスタッフである海原みなも嬢は流れるように机の前に歩いてくると、空いていたスペースに盆を置いた。そして依頼人が腰掛けていた椅子を一瞥する。その仕草でさえ、擦れた印象はなかった。
「この依頼、どう片づけるつもりなのでしょう?」
 机に頬杖をついて、草間探偵は彼女を見上げた。自然と上目遣いになった彼に何かを感じ取ったらしく、みなもは唇の端を引き上げるように微笑んだ。
「私に任せていただけるんですね?」
「頼めるか?」
 みなもは微笑みを湛えたまま頷いた。
「引き受けましょう。これであたしも久しぶりの調査活動に出られるんですもの。何の不都合があるというんです?」
 みなもの細面に、微笑みが細波のように広がる。彼女の出自が伺える一瞬だ。草間探偵はそれを見て、満足そうに、いつもの苦み走った微笑みを浮かべた。
「それで、どうするんだ?」
「月の石を探せばいいのですよね?」
 そこでみなもは人差し指を唇に当て、思案深げに目を伏せた。青い瞳に影が落ち、深い紺色に見える。
「月の石……どういう意味かしら」
 草間探偵も彼女と同じように首を傾げた。
「言葉の意味そのまま……ってワケじゃないだろうな。本物の月の石は上野の国立科学博物館に二つも展示されている。だから、月面で採取された『月の石』じゃない」
「それに、宝石のムーンストーンでもないでしょうね。宝石店へ行けばムーンストーンのアクセサリーぐらい置いてあります。ですから、依頼人は何かを『月の石』と喩えた……そう考えるのが一番正解に近そうですね」
「そして、その『月の石』には兎が関係している。これも手がかりになるな。兎なぁ……耳が長いヤツとか、目の紅いヤツということか? 月と兎じゃ、餅つきぐらいしか思い浮かばないな」
 みなもは僅かに顔をしかめた。草間探偵は軽く肩を竦め、少女をおもしろそうに見つめている。彼女の性格を知っていて、わざとやっているのだ。
 そんな草間探偵にため息を零し、みなもは長い髪に手を触れた。流水を形にしたら、こんなになるだろうというような髪だ。
「月の参考文献を当たるのが一番のようですね。それとも、インターネットで調べた方が早いでしょうか……」
 小首を傾げて思案する。
 参考文献をあたるなら、蔵書が揃っていると評判の区立図書館に行けばいいだろう。だが、時計を見れば閉館時間が近い。今から急いでも、調べものをする時間をとるには無理がありそうだった。
 ならば、今日のところはインターネットで情報を探し、明日の土曜日、その情報を元に参考文献をあたればいいだろう。
「草間さん、パソコンをお借りしますね」
「どうぞ」
 隣室へと続くドアを示して、彼は快く頷いた。みなもが頷いて、そのドアへ向かうと、背中に声がかけられた。
「解ってるな?」
「兎さんに気をつけて、でしょう? 解ってます」
 そうして、みなもは隣室へ滑り込んだ。





 兎と月。
 誰でも、すぐに思い出すのは子供の頃に訊かされたおとぎ話だろう。月には兎が住んでいて、餅つきをしている。その話だ。同時に思い浮かぶのは、ススキだろう。
 しかし、今はススキは関係ない。問題なのは、『月の石』なのだ。
 月の石、とは何だ。何かの比喩表現だとして、石はそのまま「石」を示した物だと思われる。もしくは、それに類する鉱物。だが、そうすると随分と幅が広がる。そして何を「月」と喩えたのか。月で喩えられるのは、女性であったり、神秘的なもの、癒しなど、受動的なイメージが強いものばかりだ。
 みなもは、マウスを操りながら、体内の血がざわめくのを感じていた。彼女の中に流れる血が、月に反応しているのだ。
 遙か昔。満月の夜に、彼女の先祖たちは婚礼の儀式を行ったという。海の上を渡る風に乗って、婚礼の歌は遠くまで響いていった。月の光が降り注ぐ中、月に住まう男たちが空を駆け、海の娘たちの元へ降りてくる。そして、婚礼の儀式が行われた。
 大分薄れたとはいえ、未だ力を残す血が落ち着かない。みなもは苦笑し、検索サイトに接続した。キーワードは、最初は単純に『月の石』と入力する。途端に画面には、本物の月の石に関する情報を扱ったサイトの情報が並んだ。だが、どれも違う。月から持ち帰った石でも、ムーンストーンでもない。それ以外のものに関する情報を探し、ページをめくっていく。
「あら……」
 視線が止まった。青い目に見えるのは、見慣れぬ文字。
「呉剛……?」
 ごごう、と読みが振ってある。そのページへのリンクをクリックした。
 画面の表示が変わる。黒を基調にしたサイトだ。背景の画像は、月の写真。ざっと中を見ていけば、どうやら東洋の神話や伝説を扱っているサイトのようだった。中心は日本の神話・伝説だが、呉剛とやらに関する伝説は中国のものらしい。
 水面は、そのページに目を通した。
 中国の伝説に曰く、中秋の夜半、霊隠寺という寺の僧侶が屋根を打つ水滴のような物音を不審に思って庭へ出ると、そこには色とりどりの粒が散らばっていたとある。その粒は美しく冷たい光を放っていた。その僧侶がそれらを拾い集め、翌朝、和尚に見せたところ「月にあるという桂の大木から落ちてきた物だ」と言う。
 固く、色のある、粒。
 印刷ボタンをクリックする。プリンターが動き出すのを見ながら、みなもは不思議なほどに確信していた。これが「月の石」に違いないと。資料に依れば、それは月の桂、すなわち月桂樹の種とある。だが、色を持ち、光を放つというのであれば、それは宝石のことではないだろうか。ならば、石という鉱物にも当てはまる。月から降ってきた石だ。それを縮めて、『月の石』と読んだとして、何の不思議があるだろう。
 しかし、本当にこれで良いのだろうか。
 みなもは、打ち出された紙を手に取り、じっとディスプレイを見つめた。
 これを『月の石』と仮定する。すると、これを探しに行かなければならない。だが、どこへ行けば、伝説にあるとおりの『月の石』が見つかるのだろう。まさか、中国の寺まで行かねばならないのだろうか。学校もあることだし、それは草間探偵に頼むしかないだろう。
 だが、兎はなんなのだ。この『月の石』を手に入れようとするのを邪魔してくる存在なのだろうか。ならば、兎というのはあだ名か何かで、相手は邪魔をすることが可能な存在と言うことになる。人間や、悪意を持つそれ以外の何かや、それに準ずるものだ。
 みなもはふと気づいた。
 資料を持ったまま立ち上がり、所長室のドアをノックした。
「失礼します」
 コーヒーを啜っていた草間探偵が顔を上げる。
「何だ?」
「あの依頼人さん、どなたか解りますか?」
「ああ。知り合いじゃないが、ほら、そこの裏の路地にあるスナックのママだ。名前は知らないが、店は確か『レイナ』だったな。まぁ、ご近所か、昔の依頼人から紹介でもされない限り、この事務所の場所を知ってるヤツは少ないからな。彼女は運がいい」
 にやりと笑う彼を黙殺して、みなもは一つ頷いた。
「解りました。ありがとうございます」
「行くのか?」
「ええ。兎についての情報も欲しいですからね。『月の石』に関しては、これではないかと思う情報を見付けました。目を通して置いてください」
 手にしていたプリントを、散らかり放題な机の上に置く。
「解った。じゃ、気を付けろよ」
「ええ」
「兎さんが、バニーちゃんだったら教えてくれ。俺も会ってみたいからな」
 今度こそ、みなもは本気で黙殺し、景気良く音を立ててドアを閉めた。





 草間探偵が教えてくれたとおり、その店は裏路地の一画にあった。うらぶれた感じの店かと思っていたが、予想外に小綺麗な外観をしている。
 まだ夕暮れなので、日はある。それを確かめてから、みなもは鍵のかかっていないドアを開けて中へ入った。
 薄暗い店内の中、磨かれたカウンターにスポットライトのような灯りが落ちている。感じからして、ダイニングバーのような店か。
「すみません、まだ開店前なのですが……」
 カウンターに立っていた男が顔を上げた。長い金髪は緩やかにうねり、その白い貌の中で赤い目が異様に光る。その目が鋼巡査を見ると、ふわりと笑った。
「おや、これは可愛らしいお客様だ」
「こんにちは。こちらのママさんのことをお窺いしたいのですが、宜しいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
 そう言って男は俺たちに席を勧めた。そして、磨いたグラスに水を注いでくれる。グラスの外側には水滴が浮かび、さも美味そうに見えた。
 しかし、みなもは口を付ける気にはならなかった。何か、嫌悪感を感じるのだ。水を操る彼女が、水に対して生理的であれ嫌悪感を抱くなど、普段ならあり得ない。思わずグラスを凝視した。
「それで、水野さんのことをお訊きしたいとか?」
 声をかけられて肩を揺らし、みなもは用心深く彼を見上げた。
「水野さん、と仰るんですね。ママさん」
「ええ。水野礼子さんですよ。私は、店では兎、と呼ばれています」
 男はあでやかに笑った。
 水面は驚いて、思わず唖然としたまま男を見つめた。長い金髪に赤い目。飄々としたところは捕らえ所がなく、どこか不安感さえ覚える。
 彼が、兎。
 この依頼、全てお膳立てされている気がする。みなもは警戒心を強くした。
「水野礼子さんを殺したのはあなたですね?」
 にっこりと、彼は笑った。自分のしたことに欠片ほども罪悪感を抱いていないような、そんな無邪気な笑顔だ。
「水野さんにはお世話になりました」
「なら、何故、殺したんですか?」
 兎は赤子のように無邪気に笑う。
「水野さんが私と一緒になりたいと言ったんですよ。だから」
「殺した? 意味が分かりません!」
「私と一体になりたいと望んだのは彼女の方なんですよ?」
「あなたと、一体になる?」
 言葉の真意を測りかね、みなもは眉間にしわを寄せた。兎は小首を傾げ、カウンター上のスポットライトを見上げた。
「人は死なないと、私と一体になれないんですよ。お世話になった水野さんだから、私はその願いを叶えてあげようと思ったんです」
「あなた、何を言ってるんです?」
 みなもの声が緊張で強張る。だが、そんな彼女に、マスターは寧ろ困ったような顔をした。何故、彼が緊張するのか解らないと言った顔だ。
「私が月に帰るために手を貸してくれた水野さんだから、私は一緒になりたいと言った彼女の願いを叶えたんです。それだけのことでしょう?」
 彼は、本当に解らないのだ。
 みなもは慄然として、つばを飲み込んだ。
「水野礼子さんの死体は、どこにあるんですか?」
「ここですが?」
 そう言って、マスターは自分の腹の上に手をおいた。意味を悟ると、少女は知らず立ち上がり一歩退き、顔を歪めた。
「……食べた、のですか?」
「ええ。死んだ人は私の食料ですから。私と一体になってるでしょう?」
 そう言う意味か。
 再び唾を嚥下して、みなもは掠れそうになる声を振り絞った。
「あなたは『兎』なのに!」
 そこでようやく兎の顔に緊迫感らしきものが浮かんだ。だが、それはほんの一瞬でかき消え、また笑みを浮かべる。
「何だ、ご存じじゃないですか。私は月に帰りたいんですよ。月の兎ですから」
「……本気で言ってるんですか?」
 みなもの押し殺した怒声に男は微笑んだ。
「私はね、ヒキガエルと一緒にいるのが嫌になって地上に来たんですけど、やっぱり長年暮らしていた場所が恋しくなりましてね。その話をしたら水野さんは喜んで協力してくれましたよ。月へ帰るために、大きな木を育てなくちゃいけないんです」
 息を呑み、みなもは一歩進み出る。
「それって月の桂の木のことですね? やはり、『月の石』はその種だったのですか!」
「ああ、よくご存じですね。ええ、その通りですよ。あの木は我が儘でしてね、綺麗な水でないと育たないのですよ。昔はどこに出もあったんですが、今は探すのが難しくて」
「綺麗な水……?」
「ええ。綺麗な水が、たくさん必要なんですよ。とてもたくさん、ね」
 マスターはにっこりと笑った
「これが、その月の石にもあげている綺麗な水です。美味しいですよ?」
 手つかずのグラスを示し、マスターは口を付けるように勧める。みなもは息を止め、唇をグラスに付けて、水を飲む振りをした。断ると話が進まない気配があったのだ。
「美味しいでしょう? 月の桂もこの水が好きでしてね、たくさんやるんですよ。でも、まだ足りなくて、なかなか大きくならないんです。だから、私が月へ帰れるのは当分先の話なんですよ」
 実に残念そうに言って、マスターはほっと息をついた。
「もうたくさんです。それより、『月の石』を見せてください」
「ええ、良いですよ」
 あっさりと承諾した兎に、みなもは一瞬呆気にとられた。親しかった水野礼子でさえ見たことがないと言うから、よっぽど大事にしているのだろうと思っていたのだ。かたくなに拒まれることも覚悟していたのに、これでは拍子抜けだ。
 男はカウンターの奥のドアを開け、どうぞと手招いた。扉の先には階段があり、地下へと潜っている。薄暗いそこには小さな電灯が点っているきりだ。
「この先にあるんですよ」
 そう言って先に立ち、どんどん地下へと降りていく。みなもは扉は開け放したまま、その後に続いた。
 階段の天井はかなり低い。彼女ですら身を屈めなければならない。それなのに、兎は易々と階段を下っていった。
 一階分ほど下ると、開けた空間に出た。古いワインセラーのようだ。中央にはコンクリートで作られた長方形の水槽。中に電灯でも仕込んであるのか、水面からほのかに光を放っている。
 だが、木の陰はない。辺りを見回しても煉瓦の壁があるばかりだ。
「この中ですよ」
 マスターはそう言って、コンクリートの水槽の中を示した。みなもは恐る恐る近づいて中を覗き込み、息を呑んだ。
 水槽一杯に張られた水。その床には色とりどりの石が敷き詰められている。その上に横たわる、白い骨。漂白されたように白いそれに、石の光が反射して美しい。
「あァ、ようやく見られたよォ」
「きゃッ!」
 不意に聞こえてきた声に、少女は思わず悲鳴を上げていた。
「み、水野さん?」
「ありがとうねェ。お兄サンの助手サン」
「おや、水野さん、どうしたんです?」
「あァ、兎。アタシはねェ、あんたがご執心だった『月の石』を見たくってねェ」
 水野礼子は自分の骨が漂う水槽を、満面の笑みを浮かべて覗き込んでいた。
「あんたと一緒になっちまう前に見せて貰おうと思ったのさァ」
 目元の辺りに笑みの気配を漂わせて、水野礼子は満足げに呟いた。兎はにっこりと笑って、俺たちを見た。
「そういうことでしたか。しかし、困りましたね。滅多な方にはお見せしたくないんですよ。水野さんはお世話になった方ですし、お見せするのは構わないんですけどね」
「兎、やめておくれよォ。頼んだのはアタシなんだからさァ。アタシを少しでも好いてくれるんなら何もしないでおくれよォ」
「大丈夫ですよ。何もしやしませんよ」
 腕を伸ばし、白い指先で水槽の水を跳ね上げる。濡れた指先を唇に当て、兎は冴え冴えとした笑みを浮かべた。
「この水を飲まれたんですから、私が何をしなくてもいずれ、あなた方も私と一つになるんですから」
 白骨の漂う水槽。その寝台の如き月の石。微笑む兎。苦笑する女の死霊。
「……そういう水だったのですか……」
 みなもの喉から絞り出された声は、それこそ干涸らびていた。




「……それで、依頼は完了したのか?」
「ですから、依頼人からの依頼はちゃんと果たしましたよ。彼女に『月の石』を見せることが出来たんですから。それで終わりでしょう?」
 長いため息をついてから、草間探偵は調査依頼書に完了の判子を押した。
 あの兎の店を飛び出してから、一夜明けた今日。みなもは、ことの顛末を草間探偵に話した。その結果がこれである。何故、ため息をつかれなければならないのだ。
 それを感じ取ったのか、草間探偵はみなもをじろりと睨んだ。
「その水を始末するべきだったな。被害が増える可能性もある」
「ああ……そういうことですか」
 確かに、アレをそのまま放置してきたのはまずかった。みなもは、素直に反省し、それでも、あそこに再び赴くことは出来そうにもないと、眉を寄せる。
 ちらりと草間探偵を見れば、みなもが迷っているのを楽しんでいる様子が見えた。ため息が零れる。
「解りました。行って来ます」
「ヨロシイ」
 にやりと笑った彼に背を向け、真っ直ぐにドアへ向かった。隣室にいた零に声をかけてから、外へ出る。そのまま、昨日辿った道を歩いていった。
 だが。
「……そんな、まさか……」
 昨日訪ねた場所は、ぽかりとビルの谷間に出来た空き地になっていて、中でセイタカアワダチソウが揺れている。そして、若いススキの穂が靡いている。
「月に、帰れたのでしょうか……」
 見上げた空に、昼の月が浮かんでいた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
 1252/海原・みなも/女/13/中学生