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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


哀しい夢
<オープニング>
『まだ誰も知らないところへ行こう、とあなたは言うの。
そこへ一緒に行けるんだと思うととても嬉しくて、私はあなたに手を伸ばす。
けれど、そこは誰にも赦されない場所だった。
おねがい、だれか。誰か彼を止めて。一分でも一秒でも早く彼に追いついて。
誰でもいいの。誰か。だれか…………おねがい。』

「……とまあ、こういう感じなんだが」
表示された文字を指で示して、自称「紹介屋」の太巻大介(うずまきだいすけ)は振り返った。
「ネットサーフをしていると、突然画面が切り替わって、スクリーンにこのメッセージが表示されるんだな。スピーカーをオフにしていても、しっかり電源が入って音楽が流れるっつぅスグレモノだ。…で」
太巻が再びエンターキーを叩くと、スクリーンに新しい文章が浮かび上がる。

・貴方の大事なものはなんですか?
・貴方が一番心に残っている思い出は?

質問の下で、答えを待つかのようにカーソルがチカチカと瞬いている。
「コイツが一体なんなのか、確かめて欲しいって依頼だ。こんな簡単なことで小遣いもらえるんだから、ボロい商売だよ。どうだ?受けてくれるんなら、このサイトに辿り着く方法を教えてやるよ。大丈夫、コイツのせいで人が死ぬなんてことはねぇからさ。……たぶん」
最後にぼそりと付け加え、肩肘を突いた銜え煙草で太巻は返答を待っている。


「胡散クサぁ…」
隼の隣で話を聞き終えた桜夜がボソリと呟いた。全くその通りだ。桜夜風に言うなら「アヤシー」ことこの上ない。突然画面が切り替わる、オフにしていたスピーカーが強制的にオンになる。話を聞く限りは、ウィルスのように聞こえなくもない。が、スクリーンに現れる文字は妙にセンチメンタルだ。
「胡散臭い話だから、お前らに仕事が回ってくるんだよ」
と太巻は言い、まあそれもそうだなと隼も思う。太巻の職業はその道の人間の間では有名だ。怪奇現象だの超常現象だの、妙な事件ばかり他人に「紹介」する「紹介屋」。彼の依頼が胡散臭くないほうがおかしいのだ。が、
「簡単な依頼っつーけど、ボロ儲けかどうかはオッサンには断言できないんじゃねえの?」
「オッサン?」
銜えタバコを取り落とすほどに動揺して、太巻は恨めしげに隼を睨んだ。ムキになんなよ、と思いながら「オッサンはオッサンじゃねえか」と正直な感想を述べる。余計傷ついた顔で何かを言いかけた太巻を、脇で見ていた桜夜が止めた。
「まあまあ、二人とも大人気ないよ!…でも、ここで何かが動いてるのは確かみたいね。この文章、なあんか切羽詰ってるし。第一、彼って誰よ。彼って」
桜夜は、胡散臭いと言いながらも結構真面目な顔でスクリーンを見つめている。桜夜に代わって、隼は太巻を見る。
「それだけじゃ、情報が足りねえよ」
あー、と生返事をして太巻が何かを答えようとしたところで、
「……いよっし!」
気合満々な大声が隼と太巻の会話を遮った。嫌な予感がして振り返ると、桜夜が「もう決めたわよ」と言う顔で握り拳を作っている。
「なんだか知らないけど、止めろというなら止めて見せましょう!受けて立とうじゃないの、この依頼」
「おいおいおい……」
マジかよ、と隼は呟いた。まだ大筋を訊いただけで、依頼がどんなものかも分かっていないのに。
説教をしても聞く相手ではないのは分かっていたので、諦めにも似て隼は天井を仰いだ。

□───ゴーストネット/個室
ゴーストネットの奥にある少人数用の個室に、隼と桜夜はやってきていた。太巻の注意に従って電気をつけていないので、部屋は薄暗い。
「サーバーはアドレスバーに表示されてるURLのもので特に問題なし。本来表示するべきページのかわりに、あのメッセージが表示されているだけ。ウィルス探知にも引っかからないし、出現するサイトのタイプもバラバラ。……結論、行ってみなくちゃわからない。ウヒ♪」
「あのオッサンも、よくこんな依頼とってくるよな」
ウキウキしている桜夜に文句を言う気もなくして、隼は席に付いた。結局、太巻が寄越した情報からは何も知ることが出来なかった。危ないんじゃねえのと思うが、桜夜はすっかり乗り気なのである。どうやら、隼が入力する「大事なもの」と「思い出」の回答が知りたいらしいのだ。
それぞれのディスプレイには、太巻から教わった方法で既に例のメッセージ画面が呼び出されて二人の回答を待っていた。
「じゃあ、行くぞ。……おい、こっち見んなよ?」
「見ない見ない♪……」
「見んなっつってんだろ!!」
画面を隠して文句を言うと、桜夜はつまらなそうに唇を尖らせた。はいはいわかりましたよー、とコンピューターに向き直るが、意識はばっちり隼に向いている。ため息をついて、隼はキーボードに手を置いた。と、何の力も入れていないのに指が勝手に動き出す。
「あ、あれ?」
なんだ?と思っていると、隣でも桜夜の焦った声が聞こえた。その間にも指はカタカタと答えを打っていく。

・貴方の大事なものはなんですか?
>>同居人
・貴方が一番心に残っている思い出は?
>>朧月桜夜との……

「うわっ!」
ぎょっとして思わず隼は声を上げた。勝手に動いていたはずの指も動きを止めて、隼はモニターを覆うように自分の回答を隠す。
(ありえねえ……!)
つーかそれは違う。違う、断じて違う。大慌てで自分の心を打ち消すが、一気に上昇した体温で顔が火照る。
「ちょっと、何て書いたの!?」
「見んなって!!」
桜夜の声に、隼は大慌てでエンターキーをヒットした。


□───???
……気が付くと、隼は桜夜と一緒に奇妙な空間に浮かんでいた。
辺りは乳白色の靄(もや)に包まれている。そこには上もなく下もなく、不安定になった自分の足が地面を探して頼りなく揺れる。
一瞬前まで、コンピューターの前に座っていたのだ。ネットカフェの個室を暗くして、音が入ってこないようにドアを閉め、桜夜と隣りあわせで鈍い光を発するスクリーンに向かいあった。
「なのにここはどこなのよ」
「さあな…これはお前の得意分野じゃないのか?」
隼が訊くと、困ったように桜夜は首を振った。
「霊的なものは何も感じないわよ。かといって、コンピューターの中にこんな世界があるとも思えないし」
一寸先も見えない靄の中だ。静まり返っていて人の気配はなく、風もないのに取り巻いた煙はゆっくりと移動し続けている。誰も居ない世界。どこからともなく微かに、空耳とも間違うような哀しげな旋律が流れてくる。桜夜が呟く。
「これって、あのページで流れていた音楽……」
「だよな。てーかお前、呪術的なものには音楽はお約束っつってたじゃないか。コレも仕方ないのかよ」
思わず厳しい表情になってしまう。心がざわざわする。それが言いようも無い不安や哀しみだと知って、隼は動揺した。哀しくなったり、不安になったりする理由など、隼には思い当たらないのだ。
足を踏み出しかねて佇んでいる二人を促すように、ふわりと温い風が吹いた。息苦しいほどに立ち込めている靄が、重たい腰を上げてゆっくりと揺らぐ。風の吹いてくる先に注目していると、靄は重々しく割れて前方に道を作った。
「うーん、とにかく、行こっか」
あっけらかんと桜夜は言った。隼を促すように肘を引いて、とっとと歩き出す。足の裏が地面につく感覚がないので、隼は漕ぐように足を動かした。周囲に立ち込めた靄がゆらゆらと移動していくので、きっと前に進んでいるのだろう。

歩いていくうちに周囲は少しずつ明るくなり始めていた。どちらからともなく立ち止まると、隣で桜夜がふぅと息をついた。
「明るくなってきたな」
相変わらず靄の中に佇んでいたけれど、辺りはさっきよりもずっと光があった。
包むように覆われていた靄が薄くなって、何故か突然心許無い気分になった。わけもわからないうちにどんどん息苦しくなっていく。桜夜の手が隼の服をぎゅっと握った。
耳の奥で、どくどくと心臓の鼓動が聞こえる。桜夜が心細げに名前を呼んだ。
「隼ぁ……」
「情けない声出すなよ、何もないって」
答える自分の声も緊張している。この不安は、なんなんだろう。
身体に桜夜をへばりつかせながら、隼は周囲を見回した。揺れてたゆたう、靄。何か、とても不安なもの……見たくないものが近づいてきている。どんどん大きくなっていく胸のざわざわが、嫌なことが起こると告げている。
立ち込めていた靄の一部が不吉な動きを始めた。
「おい、桜夜。離れるなよ…って」
答える声がないので、ぎょっとして隼は振り返った。桜夜がいない。肘を痛いほど掴んでいた桜夜の手は、どこにもなくなってしまった。
「あのバカ…!」
どこかに桜夜の陰が見えないかと、慌ててあたりを見回す。
(居た)
靄の中に、シルエット。何やってるんだよ、と隼はそれに声をかけた。
「隼?」
「はぐれるな、バカ。心配すんだろうが」
「もういいんだよ」
乱暴に腕を掴んでこちらを向かせると、桜夜はきれいな顔をしてにっこりする。
「何言ってんだ、お前…」
「隼がいなくても、あたし生きていけるしさ。ここでサヨナラだね」
「は?お前、何バカ言って…」
バイバイ、ととても気さくに手を振って、桜夜は楽しそうに駆けていく。まるで、隼の側から離れられるのが嬉しくてしようがないというように。信じられない気持ちで隼はそれを見送った。あまりのことに一瞬思考が停止する。本当に、一瞬。
「つーか!ありえねえだろ…」
脳裏に閃いた考えに、我に返って隼は頭を振った。冷静に考えてみろ。突然桜夜がこんなことを言い出すはずがない。突然態度を変える理由がない。
(さっき入力した、アレだ)
「貴方の大事なものはなんですか?」。自分は何て答えた?「朧月桜夜」だ。
「クソっ」
今見た桜夜は、幻だ。あの時の答えを元に、どんな原理か知らないが、この世界が隼に見せた、ただの幻だ。
(タチ悪いんだよ、チクショウ)
腹立たしく頭を振って、あらためて周囲を見回す。本物の桜夜が、どこかにいるはずだ。
「隼!?隼、ちょっと待って!待ってよ」
居た。桜夜の声だ。誰かに向けて、桜夜は必死に何かを訴えている。彼女も隼と同じように、幻を見ているのだ。声のするほうに、隼は足を踏み出した。
「桜夜!」
「どこ行くの!?行っちゃやだよ、隼」
靄の中で虚空に語りかける桜夜の腕を掴む。走って行ってしまいそうになる身体を力づくで引き戻した。
「桜夜!」
腕の中で暴れる桜夜を羽交い絞めにして、隼は声を荒げる。
「桜夜っ。バカ、何やってんだよ。一人で行ったら迷子になるって」
「隼が…隼が行っちゃうんだよ!」
「俺はここに居るって!落ち着けよ」
はっとしたように動きを止めて、桜夜が恐る恐る隼を振り返る。その瞳が濡れていた。
「隼……」
「ここに居るっつーの」
間違えるなバカ、と腹を立てて、隼は桜夜から視線を逸らす。こいつが涙を零すところを、見ていてはいけない気がしたのだ。
「見ろよ。誰かいる」
か細い旋律が再びあたりに流れていた。途切れ途切れだが、誰かの歌声が音楽と一緒に流れてくる。哀しげな調べは、太巻が見せたスクリーンのメッセージを思い出させる。
「アキラを止めて。……おねがい」
泣きそうな歌声が祈っている。桜夜が隼の腕の中で深呼吸をした。
「行くぞ」
隼が言うと、こっくりと桜夜は頷く。両手でしっかりと隼の服を握り、桜夜は声のするほうへ足を踏み出した。
重苦しい世界に慣れていた視界が、突然広くなった。靄が晴れたのだ。靄が晴れたその先に、一人の少女が座り込んでいる。年は隼より少し上くらいか。俯き加減に見せる横顔がとても寂しげな印象の少女だ。薄幸の美人というやつだ、と隼は思う。白いワンピースから覗く肩が、細くて痛々しいほどだった。
いつの間にか歌も音楽も止んでいた。声を掛けるタイミングを逸して、桜夜と隼はそこで頭を垂れた少女を見つめる。視線に気づいて顔を上げた彼女は、涙に濡れた目を驚きに見開いた。
「あなたは……?」
訊かれて、顔を見合わせる。
「ネットに現れるメッセージを辿って、ここまできたんだ。俺が瀬水月隼で、こっちは同居人の桜夜。…あんたの名前は?」
少女は黒い瞳でじっと桜夜と隼を見つめ、震える声でかろうじて「ナミ」と呟く。それからはらりと涙を零した。
涙が漂っている靄に落ち、ふわりと靄を揺らして消えてしまうと、胸に小さな痛みが走った。また、わけもなく哀しくなる。
「あの、泣かないでいいんだよ。あたしたちが来たからには大丈夫。あなたの言う『彼』を、止めるためにここまできたんだから」
宥めるように言ったのは桜夜だった。泣かないで、と桜夜は少女を慰める。
「あなたが泣くと、あたしまで悲しくなっちゃうのよ」
もう一粒涙を零して、少女は小枝のような指で涙を拭った。
「ここにいると、誰もが哀しい夢を見続けてしまうの」
涙に濡れた瞳を瞬かせて、ナミは二人を振り仰ぐ。どう見ても年上だというのに、彼女はとても頼りなかった。桜夜はナミに一歩近づくと腰を折って彼女に視線を合わせた。
「事情を教えてくれる?彼って誰?アキラっていうのが、あなたの探している人なの?」
「…そうです」
涙を堪えるように俯いてから、少女は話しはじめた。
「アキラは……、アキラは人を操る方法を研究していました。そうすれば人は神になれるんだって言って……。でもそんなことは意味がないんだって、誰かに彼を止めてもらいたくて、私はずっと呼びかけていたの」
「それが、おれたちが見たメッセージだったってワケか」
腕を組んで、確認するように少女を見下ろすと、痩せて尖った顎を頷かせて少女は目を伏せた。ぽろりと涙が睫を濡らして頬を伝う。ぬくもりを求めるように、桜夜が隼の腕を取った。
「私は、この場所を離れられないの。だから、お願い。もしもどこかでアキラを見つけたら、彼を止めてくれますか?」
桜夜と隼は顔を見合わせた。桜夜の顔を見て、隼は渋い顔をする。桜夜は、今にも「大丈夫、どうにかしてあげる」と言い出しそうな顔をしていた。無理だとか、口約束をするなとか言う次元の問題ではなく。涙を見せられると桜夜は弱いのだ。案の定、桜夜はナミに向かって頷きかけた。
「うん、わかった。あたしたちに任せなさいって!もちろん、絶対止められるなんて言わないわよ。だけど、もしアキラという人にあったら、その人を止めなきゃいけないと思ったら、きっとあたしたちがアキラ君を止めてあげる。ね?だよね、隼」
「お前ならそう言うと思ってたぜ」
聞こえよがしに息をついて、隼はナミを見る。しょうがねえなと思うけど、桜夜のこういうところは欠点ではないと思う。
「ま、そういうワケだからさ。確約はしないけど、出来る限りのことはしてやるよ」
「……はい」
ほんの少し口元をほころばせて、少女は微笑む。瞳は哀しい色を湛えたままだったけれど、二人が始めて見たナミの笑顔だ。
「そのかわり、約束だよ。あなたにとってアキラ君が大切な人なら、諦めちゃだめよ。約束だよ」
桜夜の言葉に、ゆっくりとナミが頷いた。その顔も、靄に霞んで次第に見えなくなる。

はっと気が付くと、モニターに向かったまま椅子に座り込んでいた。暗い部屋、青白い光を発して明るいコンピューターディスプレイ。周りを取り囲んでいた靄はどこにもないし、ナミという名の少女も居なかった。モニターの中には、チカチカと動画広告が切り替わる何の変哲もない検索サイトが表示されている。
長くて疲れる夢を見た後のように、桜夜と隼はしばらく椅子に身体を埋めてぼうっとしていた。
と、誰かが蛍光灯の電源を入れて、部屋は突然明るくなった。
「いやァ、ご苦労さん」
振り返ると、戸口のところに太巻が立ってタバコを燻らせている。室内だというのにサングラス。
「随分長いトリップだったから、そろそろ起こさなきゃならんかと思ってたとこだ。無事でなにより」
言いながら、渦巻きは両手の指を耳に突っ込んで詰めていた耳栓を外した。
(っつーか、なんで耳栓を……)
耳栓とは音を遮断するためのものだ。太巻は、耳にしたくない音があったから耳栓をしていたのだろう。たとえば…強制的に流れる哀しげな旋律とか。
「おい……」
隼は椅子から立ち上がりながら、太巻に向かって剣呑な声を出した。
「あんた、なんで耳栓してんだ?このサイトについて説明した時、音楽の事は話題に出さなかったよな?」
「そうだっけ?」
ヤクザみたいな顔にとぼけた表情を浮かべて、太巻はポケットに手を突っ込んだ。そういえば、なんて白々しく喋り始める。
「あのページには視覚と聴覚を刺激して、人間の脳波をある特定の幅に持っていく仕掛けがしてあった。いわゆる催眠状態になりやすい脳波だな。つまり、あの音楽を聴きながらスクリーンを見てると、催眠に掛かりやすい状態になっちまうわけだ。……あれ?言ってなかった?」
「言ってねえよ!」
依頼を断られては困るから、はじめから教える気などなかったに違いない。隣で桜夜も呆れた声を出した。
「根性悪いなァ!何かあったらどうしてくれるのよ」
「ヤバそうだったら、起こしてやるつもりでいたさ」
「そういう問題じゃねえだろ!」
ヤバい事件を人に押し付けるな、と怒りがこみ上げてくる。怒りに任せて太巻を睨めば、平気な顔で「おれがそういう商売だってことはわかってて依頼受けてんだろ」などと屁理屈を持ち出されるので、余計に腹が立った。隼の怒りなどどこ吹く風で、太巻はニヤリと口元を歪める。
「まあそう怒るな。貧乏学生には、依頼遂行祝いに焼肉食いに連れていってやるからさ」


「ねえねえ、隼〜」
太巻の奢りで腹十二分に焼肉を詰め込んだ帰り道。明るいネオンの入り乱れる通りを歩きながら桜夜が隼を見つめた。
「あの靄の中で、あたしたちは現実になったら哀しい夢を見たよね」
「ああ」
思い出すと、嫌なものがこみ上げてくる。そもそも、おれの思い出コイツに関することばっかりかよと思うのも嫌なら、そんなイヤな事態を体験したこともイヤだ。何より、それを体験したことで、本当にこの同居人に対する感情を再確認したので、余計にムカつく。そんな隼の気も知らず、桜夜は隼の横顔をじっと見詰めた。
「隼は、あの時何を見たの?」
「…言わねえよ」
なんともいえない表情を隠して、隼はそっぽを向いて桜夜の視線を避けた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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PC
【整理番号 0444/ PC名 瀬水月隼/ 性別 男/ 年齢 15/ 職業 高校生】
【整理番号 0444/ PC名 朧月桜夜/ 性別 女?/ 年齢 16/ 職業 陰陽師】
NPC
 太巻大介(うずまきだいすけ)/ 性別 男/ 年齢 オジサンと言われてショック/ 職業 紹介屋
  備考:タバコ狂・コーヒー狂・スピード狂
 ナミ/ ネット「哀しい夢」で哀しい夢を見続けている少女
 アキラ/ 委細不明。神になる方法を探している。

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■         ライター通信          ■
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はじめまして!
依頼をお受けいただいてありがとうございます。物凄く楽しんで書かせていただきました。同じように、瀬水月さんと朧月さんが楽しんでいただけたら幸いなのですが…。
朧月さんのご依頼とは、それぞれ視点を変えて書いてみました。カッコ良いお二人のイメージを崩していないといいんですが(怖)。
機会がございましたら、また魅力的なお二人を書かせていただきたいです。
本当にありがとうございましたー。

在原飛鳥